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一人が全財産を相続するときの遺産分割協議書

2023-03-03

1一人が全財産を相続することができる

①相続人が一人だけ

相続人になる人は、法律で決まっています。

配偶者、子ども、親などの直系尊属、兄弟姉妹です。

家族の状況によっては、相続人が一人だけの場合があります。

相続人が一人だけの場合、その相続人が全財産を相続します。

②他の相続人全員が相続放棄

相続人は、家庭裁判所に手続をして相続放棄をすることができます。

相続人は、各自の判断で相続放棄をすることができます。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

他の相続人全員が相続放棄をした場合、相続人は一人になります。

相続人が一人だけの場合、その相続人が全財産を相続します。

③遺言書で一人が相続すると指定

被相続人が遺言書を作成していた場合、原則として遺言書のとおり相続します。

相続人が兄弟姉妹の場合は遺言書のとおりで問題がないでしょう。

兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。

遺留分とは、相続財産に対する最低限の取得分のことです。

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

④相続人全員で一人が相続すると合意

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員で合意しなければなりません。

相続人全員で合意ができれば、一人が全財産を相続するという合意をすることができます。

2一人が全財産を相続するために相続放棄をしたら

例えば、配偶者と子どもが相続人になる場合、配偶者に全財産を相続させたいと合意することがあります。

配偶者一人に全財産を相続させるため、子ども全員が相続放棄をすることがあります。

子ども全員が相続放棄をした場合、配偶者が全財産を相続するように思うかもしれません。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものとされます。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、親などの直系尊属はいない場合になります。

子どもと親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。

兄弟姉妹や兄弟姉妹の子どもと相続財産の分け方について、合意をしなければならなくなります。

兄弟姉妹や兄弟姉妹の子どももいない場合に、相続人が一人の場合と言えます。

単に配偶者に全財産を相続させたい意思であれば、配偶者と子ども全員で遺産分割協議をするだけでいいでしょう。

3一人が全財産を相続するときの注意点

①相続財産の分け方は相続人全員で合意が不可欠

相続財産の分け方は、相続人全員で合意しなければなりません。

相続人の多数決で決めることはできません。

認知症や未成年で物事のメリットデメリットを充分に判断できない人がいる場合、代わりの人が判断します。

行方不明の人や疎遠な相続人を無視することはできません。

必ず相続人全員の合意が必要です。

②相続人全員の合意ができたら遺産分割協議書にとりまとめる

相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議書に相続人全員が記名し実印で押印します。

押印が実印によるものであることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

③相続放棄をした人は遺産分割協議に参加しない

家庭裁判所で相続放棄が認められた人は、相続人ではなくなります。

相続人でないから、相続手続に参加する必要はありません。

相続財産の分け方についての話し合いに参加することはありません。

相続放棄をした人が相続財産の分け方に合意することはありません。

遺産分割協議書に記名することも押印することもありません。

一人が全財産を相続する場合、相続財産を受け取らない人が相続放棄をしたと表現する場合があります。

家庭裁判所で手続をしていない場合、相続放棄ではありません。

遺産分割協議でプラスの財産を受け取らない合意をした場合、相続人のままです。

相続人だから、相続財産の分け方に合意をして遺産分割協議書に記名し押印する必要があります。

④債務の相続を合意しても相続人の内部的合意に過ぎない

一人が全財産を相続するとき、プラスの財産もマイナスの財産も相続する合意でしょう。

相続人全員で一人が債務を相続する合意をした場合、相続人の内部的な合意に過ぎません。

債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。

4一人が全財産を相続するときの遺産分割協議書の書き方

①被相続人の書き方

記載例

共同相続人である私たちは、以下の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人のの氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 〇〇 〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 〇〇 〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の最後の本籍、被相続人の最後の住所、被相続人のの氏名、被相続人の生年月日、被相続人の死亡日を記載します。

相続が発生した後、相続手続のために戸籍謄本や住民票を集めているでしょう。

戸籍謄本や住民票の記載どおりに、一字一句間違いなく記載しましょう。

②相続財産の書き方

相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。

所在 ○○市○○町○丁目

家屋番号 ○番○

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡

相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  普通預金

口座番号  ○○○○○○○

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  定期預金

口座番号  ○○○○○○○

合意の対象となった不動産や預貯金を特定できるように列挙して記載します。

相続人○○○○がすべての財産を相続する。

一人が全財産を相続するのだから、上記のような書き方でも不適切なわけではありません。

もしかしたら主要な財産の存在を知らない相続人がいるかもしれません。

主要な財産の存在を知っていたら合意をしなかった。合意は無効だと主張するリスクがあります。

相続手続先によっては、重要財産が列挙されていない遺産分割協議書は無効になるリスクがあると判断するかもしれません。

相続トラブルに巻き込まれることをおそれて、遺産分割協議書を作り直すように言われるでしょう。

せっかく相続人全員の合意ができたのだから、トラブルになりにくい遺産分割協議書を作ることをおすすめします。

③遺産分割協議書に記載のない財産が見つかったときの書き方

記載例

本協議書に記載のない財産は、相続人○○○○が相続する。

相続財産の分け方は、相続人全員で合意しなければなりません。

些細な財産が見つかった場合、あらためて相続人全員で合意をするのは煩わしいでしょう。

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合について、合意しておくと相続手続がスムーズになります。

④債務の書き方

記載例

相続財産中、被相続人名義の債務については、相続人○○○○が相続する。

なお、相続人○○○○は他の相続人に上記債務の弁済について、求償しない。

一人が全財産を相続するとき、プラスの財産もマイナスの財産も相続する合意でしょう。

相続人全員で一人が債務を相続する合意をした場合、相続人の内部的な合意に過ぎません。

債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。

相続人間の内部的合意に過ぎませんが、合意内容を明記しておくといいでしょう。

5相続人が一人だけなら遺産分割協議は不要

相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

相続人が一人だけの場合、相続財産の分ける必要はありません。

一人だけの相続人が当然に全財産を相続します。

他に相続人がいないから、相続人全員の合意も意味がありません。

相続財産の分け方についての相続人全員の話し合いを遺産分割協議といいます。

相続財産の分ける必要はないし、相続人全員の合意も意味がありません。

相続人が一人だけの場合、遺産分割協議は不要です。

遺産分割協議書は、相続財産の分け方についての相続人全員の合意を取りまとめた文書です。

遺産分割協議が不要だから、遺産分割協議書も不要です。

相続人が一人だけの場合とは、はじめから相続人がいない場合だけでなく、他の相続人全員が相続放棄をした場合を含みます。

相続放棄が認められた場合、相続放棄をした人ははじめから相続人でなくなるからです。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

数次相続があったときの遺産分割協議書

2023-02-22

1数次相続とは

①数次相続とは相続手続中に相続人が死亡して新たな相続が発生した状態

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。

相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。

最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。

数次相続は、どこまででも続きます。

どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。

最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。

二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。

相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。

②数次相続と代襲相続のちがい

数次相続も代襲相続も相続が複雑になる代表例です。

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。

代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人になるはずだった人が死亡した場合です。

数次相続では、死亡した相続人の相続人が最初の相続の遺産分割協議に参加します。

代襲相続では、死亡した相続人の直系卑属が最初の相続の遺産分割協議に参加します。

数次相続と代襲相続では、遺産分割協議に参加する人が異なります。

遺産分割協議に参加すべき人が参加していない場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。

遺産分割協議に参加すべきでない人が参加している場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。

だれが話し合いに参加すべきか間違えると、せっかく合意をしても合意が無効になります。

慎重に判断しましょう。

2数次相続では被相続人ごとに遺産分割協議書を作成するのが原則

数次相続とは、最初の相続の話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することです。

最初の相続と新たな相続は、別の相続です。

最初の相続と次の相続で相続人が異なる場合があります。

例えば、最初の相続で被相続人の配偶者と長男と長女が相続人になる場合です。

最初の相続の話し合いがまとまる前に、被相続人の長男が死亡して新たな相続が発生することがあります。

新たな相続の相続人は、長男の配偶者と長男の子どもです。

最初の相続の話し合いがまとまる前だから、相続人の地位が相続されます。

相続人であった長男の相続人が相続人の相続人として最初の相続の話し合いに参加します。

話し合いがまとまったら遺産分割協議書は、被相続人ごとに別々に作成します。

遺産分割協議に参加すべきでない人が参加している場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。

2つの相続をまとめると、遺産分割協議に参加すべきでない人が参加しているように誤解されるおそれがあるからです。

あえて誤解を招く必要はありません。

誤解のない分かりやすい遺産分割協議書を作ることを優先しましょう。

3数次相続の遺産分割協議書の具体的記載例と注意点

被相続人〇〇〇〇が平成〇〇年〇〇月〇〇日に死亡し、その相続人である□□□□が令和□□年□□月□□日に死亡した。

よって、被相続人〇〇〇〇の相続人●●●●、●●●●、□□□□の相続人■■■■、■■■■の相続人全員が下記のとおり遺産分割の協議をした。

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人のの氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 〇〇 〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 平成〇〇年〇〇月〇〇日

相続人兼被相続人の最後の本籍 □□県□□市□□町□丁目□番地

相続人兼被相続人の最後の住所 □□県□□市□□町□丁目□番□号

相続人兼被相続人のの氏名   □□ □□

相続人兼被相続人の生年月日 □□ □□年□□月□□日

相続人兼被相続人の死亡日 令和□□年□□月□□日

1. 相続財産中、次の不動産については、相続人●●●●が相続する。

(省略)

令和〇〇年〇〇月〇〇日

住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

相続人 ●●●● 実印

住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

相続人 ●●●● 実印

住所 □□県□□市□□町□丁目□番地

□□□□の相続人■■■■ 実印

住所 □□県□□市□□町□丁目□番地

□□□□の相続人■■■■ 実印

最初の相続と新たな相続では、遺産分割協議をする人が違います。

遺産分割協議書を分けて作ります。

最初の相続の話し合いがまとまる前に、相続人が死亡しているから、相続人の相続人であることが分かるように肩書をつけるといいでしょう。

新たな相続は、通常の相続と同じです。

通常の相続と同様に、遺産分割協議書を作成します。

4数次相続の相続人が共通する場合はまとめて遺産分割協議書を作るとラク

数次相続とは、最初の相続の話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することです。

最初の相続と次の相続で相続人が全く一緒になる場合があります。

例えば、最初の相続で被相続人の配偶者と長男と長女が相続人になる場合です。

最初の相続の話し合いがまとまる前に、被相続人の配偶者が死亡して新たな相続が発生することがあります。

新たな相続の相続人は、長男と長女です。

最初の相続と新たな相続で、相続人は一緒になります。

原則どおり、遺産分割協議書は別々に作っても差し支えありません。

最初の相続と新たな相続で相続人は一緒だから、まとめて話し合いをしてまとめて文書に取りまとめるとラクです。

5死亡した相続人が財産を相続する合意をすることができる

数次相続とは、相続手続中に相続人が死亡して新たな相続が発生した状態です。

最初の相続の他の相続人全員と死亡した相続人の相続人全員で遺産分割協議をします。

最初の相続の他の相続人全員と死亡した相続人の相続人全員で、最初の相続の相続財産を死亡した相続人が相続することを合意することができます。

この後、死亡した相続人の相続人全員で、死亡した相続人が相続した財産の分け方を合意することができます。

登記は、それぞれの原因ごとに分けて申請するのが原則です。

権利が移っていった過程もきちんと記録されなければならないからです。

売買などで、A→Bの後、B→Cと所有権が移転した場合、2つの登記申請が必要です。

途中を飛ばして、A→Cとすることはできません。

Bに所有権が移転したことが分からなくなってしまうからです。

相続登記をする場合、途中の人が1人の場合に限り、途中の人を飛ばして登記することができます。

途中の人が1人になる場合とは、最初から1人の場合だけに限りません。

もともとの相続人はたくさんいたけど、他の相続人全員が相続放棄をした場合や、遺産分割協議で1人が相続すると合意した場合も含みます。

遺産分割協議をしないまま、相続人が死亡して、最終の相続人が1人になった場合、途中を省略することはできません。

最終の相続人が複数であれば遺産分割協議ができますが、最終の相続人が1人になった場合は遺産分割協議はできないからです。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書が複数

2023-02-03

1遺産分割協議書とは

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。

電話でもメールでも差し支えありません。

一度に全員合意する必要もありません。

一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。

最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。

全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。

一部の財産についてだけ合意をすることもできます。

遺産分割協議書は、司法書士などの専門家に作ってもらうこともできるし相続人のひとりが作ることもできます。

2遺産分割協議書は相続人の人数分作成する

①相続人が各自保管する

相続人全員の合意内容を文書に取りまとめた文書が遺産分割協議書です。

単に銀行などの相続手続をするだけであれば、1通あれば足ります。

後々、合意したはずの内容について争いになるかもしれません。

争いになったときに遺産分割協議書を確認する必要があります。

遺産分割協議書には、相続人全員の合意内容が書いてあるから、相続人間のトラブルを防止することができます。

各自遺産分割協議書を確認することができるように、遺産分割協議書は各自保管しておく必要があります。

②遺産分割証明書は取りまとめがラク

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

合意内容を文書に取りまとめた後、間違いないことを確認して相続人全員が記名し実印で押印します。

多くの場合、1通の文書に相続人全員が連続して記名し押印します。

相続人が多人数の場合や遠隔地に住んでいる人がいる場合、1通の文書に相続人全員が連署することは難しいものです。

相続人が集まりにくい場合、相続人のひとりが記名押印した後、持ち回りで各相続人の記名押印をしてもらうことになります。

遠隔地に住んでいる人がいる場合、相続人のひとりが記名押印した後、郵便で次の人に送ることになります。

大きなな労力と時間がかかります。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

合意していることを確認できれば、相続人の連署にこだわる必要はありません。

遺産分割の内容を各相続人が証明することができます。

遺産分割の内容を各相続人が証明する場合、遺産分割証明書と言います。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を相続人の人数分用意して、各相続人が記名押印をする方法です。

相続人全員が合意内容に記名押印をして、相続人全員の印鑑証明書が揃った場合、相続人全員の合意があったことが確認できます。

遺産分割協議書と遺産分割証明書は、どちらも同じ効力です。

遺産分割証明書の場合、郵送の手間と時間を節約することができます。

途中で紛失したり、汚してしまう心配も減ります。

3遺産分割協議書が複数ページに渡るとき

①ページの抜き取りや差し替えができる状態では相続手続を進められない

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

合意内容を文書に取りまとめた後、間違いないことを確認して相続人全員が記名し実印で押印します。

記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、文書の内容は真正な合意内容ではなくなってしまいます。

遺産分割協議書が抜き取りや差し替えができる状態である場合、文書の内容は真正な内容でないおそれがあります。

遺産分割協議書の内容が真正でないおそれがある場合、相続手続は進めることができなくなります。

遺産分割協議書をクリップなどで簡単に綴じただけの場合、相続手続を進めることは難しいでしょう。

②遺産分割協議書を両面印刷する

遺産分割協議書の内容が2ページ以内の場合、紙の両面に印刷することができます。

2ページ以内の制約はあるものの、両面印刷は手軽にすることができるのでおすすめです。

③A3に見開きで印刷する

一般的な家庭用プリンターではA4の紙しか印刷ができない場合が多いです。

A4の紙を2枚並べて、A3の紙にコピーすることができます。

コピーした紙に相続人全員が記名し実印で押印をすることができます。

A3の紙にコピーするのであれば、コンビニエンスストアのコピー機で作ることができます。

④相続人全員で契印を施す

遺産分割協議書の内容が多い場合、複数ページに渡ることがあります。

複数ページに渡る場合、一般的なのが契印を施すことです。

契印とは、文書が複数ページに渡るときに1通の文書であることを証明するためページの見開きにまたがって押印することです。

契印は、最初のページから最後のページまで施します。

最初のページから最後のページまで契印がある場合、書類の改ざんがないことを証明できます。

遺産分割協議書では、相続人全員が実印で契印を施します。

記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、契印がつながらなくなります。

契印がつながっている場合、改ざんがないと言えます。

⑤袋とじにして相続人全員で契印を施す

財産内容が複雑であったり、相続財産の分け方の合意内容が複雑である場合、遺産分割協議書は長文になります。

ときには何十ページにも及ぶ場合があります。

最初のページから最後のページまで契印を施すのは、手間がかかります。

遺産分割協議書を袋とじにするといいでしょう。

袋とじにするとき、製本テープを使うと便利です。

袋とじにしてあれば、最初のページから最後のページまで契印を施す必要はありません。

製本テープと文書にまたがるように相続人全員の契印が必要になります。

4遺産分割協議書は財産ごとに複数作ることができる

遺産分割協議書は、すべての財産についてまとめて作成してもいいし、一部の財産について作成しても構いません。

まとめて作成した遺産分割協議書も、一部の財産についてだけ作成した遺産分割協議書も有効です。

不動産についてだけ合意した遺産分割協議書の他に、銀行の預貯金についてだけ合意した遺産分割協議書があることがあります。

相続登記用の遺産分割協議書の場合、不動産だけについて合意した遺産分割協議書を作るのが通例です。

一部の不動産を売却する場合、売却する不動産についてだけ先に遺産分割協議書を作ることはよくあります。

相続財産すべてについて合意したと相続人全員が考えて遺産分割協議書を作成した後で、新たに財産が見つかることがあります。

新たな財産について、あらためて相続人全員で合意し、新たな財産についてだけの遺産分割協議書を作成します。

新たな財産が重要財産であって、かつ、新たな財産の存在を知っていたら当初の遺産分割の合意をしなかったと言えるような特別の場合、当初の遺産分割協議は無効になります。

5遺産分割協議書に収入印紙は不要

不動産を売買するときなど高額な契約書を作成する場合、収入印紙を貼ります。

遺産分割協議書は、普段目にする金額より大きな金額の財産についての書類です。

遺産分割協議書を作成した場合、収入印紙が必要ではないかと心配になるかもしれません。

遺産分割協議書は、収入印紙の貼付不要な文書です。

遺産分割協議書を複数作成しても、収入印紙は必要ありません。

収入印紙が必要な文書を課税文書と言います。

①印紙税法別表第一に書いてある20種類の文書で課税事項が書いてあること

②当事者間で課税事項の証明目的で作成されたこと

③非課税文書でないこと

①~③すべてにあてはまる場合、課税文書です。

遺産分割協議書は、①にあてはまりません。

遺産分割協議書は、相続人全員で共有していた相続財産の分け方を記載した文書です。

不動産の譲渡をする契約ではありません。

遺産分割協議書は、印紙税法別表第一に書いてある1号の1の文書ではありません。

国税庁ホームページ>法令等>法令解釈通達>第1号の1文書で調べることができます。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続登記用の遺産分割協議書を自分で作成

2023-01-02

1遺産分割協議書とは

2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。

相続人全員で話し合いのことを遺産分割協議といいます。

話し合いの合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書といいます。

遺産分割協議は、相続人全員の合意が不可欠です。

相続人全員の合意の証明として、遺産分割協議書は相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

相続登記では遺産分割協議書が必要な場合と必要ない場合があります。

次の場合は、遺産分割協議書が必要ありません。

①相続人がひとりだけの場合

他の相続人が相続放棄をした結果、相続人がひとりになった場合を含みます。

②遺言書があるため相続人全員による合意が必要ない場合

遺言書があれば遺言書のとおり分ければ済みます。

③法定相続をする場合

相続人全員で法定相続分で共有する相続です。

不動産を共有することになりますから、デメリットが大きくあまりおすすめできません。

④遺産分割調停の場合

相続人全員の話し合いで合意ができない場合、家庭裁判所の助力を借ります。

家庭裁判所が作成する調停調書で相続登記をします。

相続登記用の遺産分割協議書は、客観的に適切に作成されていないと相続登記ができなくなります。

遺産分割協議書は相続人のひとりが作成しても差し支えありませんが、相続登記と一緒に専門家に依頼する方が安心です。

2相続登記用の遺産分割協議書の書き方と注意点

①被相続人を特定する書き方

被相続人の最後の本籍、被相続人の最後の住所、被相続人のの氏名、被相続人の生年月日、被相続人の死亡日を記載します。

相続が発生した後、相続手続のために戸籍謄本や住民票を集めているでしょう。

戸籍謄本や住民票の記載どおりに、一字一句間違いなく記載しましょう。

記載例

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人のの氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日

共同相続人である私たちは、上記の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。

②相続登記用の遺産分割協議書は不動産のみ記載でよい

合意の対象となった不動産を特定できるように記載します。

「自宅」などの記載は客観的に特定できるとは言えません。

家族にとっては自宅は当然のことですが、法務局など第三者にとっては自宅はどこにあるどの不動産なのか分からないからです。

不動産の所在は自宅住所と異なることが多いので、登記簿謄本を書き写しましょう。

固定資産税の課税明細書は、登記簿謄本と異なる表記がされていることや内容が省略されている場合があります。

登記簿謄本と異なる表記の場合、相続登記が認められない可能性があります。

登記簿謄本の記載を見て、書き写します。

財産すべてを1通の遺産分割協議書で作成することが多いですが、財産ごとに分けて作っても差し支えありません。

相続登記用の遺産分割協議書は、不動産だけ書いて預貯金などは別に作ることも多いものです。

たくさんの不動産がある場合、法務局の管轄ごとに別に作成することもあります。

それぞれの遺産分割協議書に添付書類を用意すれば、同時に相続登記を進めることができるからです。

(1)土地の記載例

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

(2)建物の記載例

所在 ○○市○○町○丁目

家屋番号 ○番○

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡

(3)敷地権のあるマンションの記載例

(土地の表示)

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 ○○○.○○㎡

持分 ○○○○○○分の○○○○○○(敷地権の割合)

(一棟の建物の表示)

所在 ○○市○○町○丁目○番地○

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根3階建

床面積 1階 ○○○.○○㎡

    2階 ○○○.○○㎡

    3階 ○○○.○○㎡

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 ○○町○丁目○番○の○

建物の名称 ○○○○マンション

種類 居宅

構造 鉄筋コンクリート造1階建

床面積 ○階部分 ○○.○○㎡

(4)被相続人が共有持分を持っていたときの記載例

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

持分  ○分の ○

③日付を記載する

相続が発生した日以降であれば、いつでも差し支えありません。

遺産分割協議はいつまでにやらなければならないといった期限はないからです。

④相続人全員の記名と実印で押印する

遺産分割協議は、相続人全員の合意が不可欠です。

話し合いの合意内容を取りまとめた文書が、遺産分割協議書です。

相続人全員が合意したことの証明として、遺産分割協議書に記名し、実印で押印をします。

本人が合意したことの証として、署名した方がよりいいでしょう。

記名でも署名でも、どちらでも問題ありません。

住所と氏名は印鑑証明書の記載どおり、一字一句間違いなく記入します。

遺産分割協議書は実印で押印します。

実印がない人は、あらかじめ印鑑登録をしなければなりません。

印鑑証明書を添付しない場合や印鑑証明書の印影と異なる印影の押印の場合、相続登記は認められません。

未成年者が相続人である場合、自分で相続財産の分け方の合意ができません。

未成年者は物事のメリットデメリットを充分に判断することができないからです。

合意ができないから、遺産分割協議書に記名押印をしても無効です。

未成年者は契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代理をします。

遺産分割協議は法律行為だから、親などの親権者が代理をするのが原則です。

親などの親権者が代理できる場合、遺産分割協議書には未成年者に代わって親などの親権者が記名押印をします。

未成年者と親などの親権者が2人とも相続人である場合、親などの親権者は未成年者を代理することはできません。

一方がソンすると他方がソンする関係になるからです。

一方がソンすると他方がソンする関係のことを、利益相反と言います。

利益相反になる場合、親などの親権者は未成年者を代理できません。

親などの親権者に代わって遺産分割協議をしてもらう人を選任してもらう必要があります。

親などの親権者に代わって遺産分割協議をしてもらう人を特別代理人と言います。

親などの親権者が代理できない場合、遺産分割協議書には未成年者に代わって特別代理人が記名押印をします。

⑤複数ページになるときは相続人全員の契印が必要

遺産分割協議書が複数ページにわたる場合には、相続人全員が実印で契印を施します。

袋とじにして、相続人全員が実印で契印を施しても構いません。

⑥印鑑証明書に有効期限はない

遺産分割協議書には、印鑑証明書を添付します。

印鑑証明書に有効期限はありません。

以前に取得したものがある場合、古い印鑑証明書を使うことができます。

古い印鑑証明書を添付する場合、印鑑証明書の住所や氏名と遺産分割協議書の氏名や住所が異なる場合があります。

氏名や住所が異なる場合、氏名や住所の移り変わりを証明する必要があります。

3遺産分割協議書は原本還付をしてもらうことができる

相続登記のために提出した遺産分割協議書や印鑑証明書などの添付書類は、手続をすれば原本を返してもらうことができます。

登記申請をする際に、返してもらいたい書類をコピーし、コピーに「原本に相違ありません」と記載して申請人が記名押印をします。

「原本に相違ありません」と記載して申請人が記名押印する場合は、認印で構いません。

「原本に相違ありません」と記載する余白がない場合は、コピーの裏に記載することができます。

4遺産分割協議証明書でも相続登記ができる

遺産分割協議書も遺産分割証明書も、相続人全員の話し合いの合意内容を取りまとめた文書です。

遺産分割協議書は、相続人全員が連名で記名押印する形式の文書です。

遺産分割協議証明書は、相続人全員の人数分の同じ書類を作り各自が記名押印する形式の文書です。

相続人の人数が少なく集まりやすい場合、遺産分割協議書で記名押印するといいでしょう。

相続人の人数が多く全国各地に住んでいて集まりにくい場合、相続人全員が連名で記名押印する形式では不便です。

各相続人が遺産分割証明書に記名押印して相続人全員の分が集まったら、相続人全員の合意を証明できます。

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は、同じ効力を持つものとして相続登記で提出することができます。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄した人がいる遺産分割協議

2022-12-09

1相続放棄と相続分の放棄はまったく別物

①相続放棄とは

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。

相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。

②相続分の放棄とは

プラスの財産は受け取りませんと申し入れをすることを、相続放棄すると表現する場合があります。

家庭裁判所で手続をしないで、相続放棄をすることはできません。

相続放棄をすると表現していますが、内容は相続分の放棄のことです。

相続分の放棄と相続放棄はまったく別物です。

相続分の放棄は、家庭裁判所で手続をする必要はありません。

他の相続人にプラスの財産は受け取りませんと申し入れをして、文書に取りまとめれば済みます。

手続がカンタンである点を過度に強調して、相続分の放棄をすすめる自称専門家が散見されます。

相続分の放棄と相続放棄のメリットデメリットを充分に理解して、適切に対処しましょう。

2相続放棄をした人は相続人でなくなる

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。

相続人でなくなるから、相続財産の分け方の話し合いに参加する必要はありません。

相続財産の分け方の話し合いに参加しないから、相続人全員の合意をすることもありません。

相続人全員の合意をしていないから、遺産分割協議書に押印することはありません。

相続手続に関与することがなくなります。

相続放棄をした人がいる場合、相続手続に相続放棄をしたことの証明書が必要になります。

相続放棄をした場合、戸籍謄本などには記載されないからです。

遺産分割協議書に押印してもらうことがないから、ハンコ代が支払われることもほとんどありません。

ハンコ代とは、遺産分割協議書に押印をしてもらうための贈与のことです。

3相続分の放棄をした人は遺産分割協議

他の相続人にプラスの財産は受け取りませんと申し入れをした人は、依然として相続人です。

相続人だから、相続財産の分け方の話し合いに参加する必要はあります。

相続財産の分け方の話し合いに参加するから、相続人全員の合意をする必要があります。

相続人全員の合意をしているから、遺産分割協議書に実印で押印しなければなりません。

遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を用意しなければなりません。

相続分の放棄をした人は、相続人です。

相続人として、相続手続に関与しなければなりません。

相続人として、マイナスの財産を受け継がなければなりません。

プラスの財産は受け取りませんと申し入れをする人の気持ちとしては、納得がいかないかもしれません。

プラスの財産を受け継がないのにマイナスの財産も受け継ぐことになるからです。

実際、マイナスの財産はプラスの財産を受け継ぐ相続人が引き受ける約束をしている場合があります。

遺産分割協議書に「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」と記載して相続人全員が実印を押しているかもしれません。

このような合意であっても、無効になるわけではありません。

「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」合意は、相続人内部の合意事項です。

債権者には関係のない話です。

債権者には無関係の合意事項だから、債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。

債権者が借金の請求をしたときに「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」合意があるからということはできません。

債権者の請求を拒むことはできません。

4相続分の放棄をした人がいるときの遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

相続財産の分け方について相続人全員の合意があったことが明らかになっていなければなりません。

次の方法をとるのが一般的です。

①具体的に「財産〇〇は相続人〇〇が相続する」などと1枚の紙に取りまとめ、相続人全員が記名のうえ実印で押印します。

実印であることの証明として印鑑証明書を添付します。

②同じ内容の遺産分割協議書を相続人の人数分用意して、各相続人が記名のうえ実印で押印する方法をとることができます。

各相続人が記名押印するので、日付は別々で差し支えありません。

相続分の放棄をした人が「私は何も相続しません」と書いた文書を差し入れても意味はありません。

相続分の放棄をした人は相続人なので、相続財産の分け方について相続人全員の合意が必要だからです。

「私は何も相続しません」では、相続財産の分け方について合意があったとは言えません。

家庭裁判所で遺産分割調停をする場合、相続放棄書(相続分放棄届出書兼相続分放棄書)という書類が使われる場合があります。

相続人が遺産分割調停に関与したくない場合、家庭裁判所に対して提出する書類です。

相続放棄書を家庭裁判所に提出した場合、遺産分割調停から外れることができます。

相続放棄書を提出した相続人の相続分は、他の相続人の相続分を考慮して遺産分割調停が行われます。

5遺産分割協議をしたら相続放棄はできない

家庭裁判所で相続放棄を認めてもらった場合、被相続人のマイナスの財産は引き継ぎません。

相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったとみなされるためです。

相続放棄をしたら相続人でなくなるから、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがありません。

遺産分割協議をした場合、債権者は相続人全員に対して法定相続分で債務の支払を請求することができます。

債権者が借金の請求をしたときに「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」合意があるからということはできません。

プラスの財産を引き継がないのだからマイナスの財産も引き継ぎたくないと思うと、相続放棄をしたいと考えるかもしれません。

遺産分割協議をした場合、相続放棄をすることはできません。

遺産分割協議は、相続を単純承認することを前提とした行為だからです。

遺産分割協議は、相続分があることを認識し相続分を処分する行為です。

単純承認した後は、相続放棄をすることはできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できません。

遺産分割協議をした後であっても相続放棄が認める大阪高裁の判例がないわけではありません。

遺産分割協議が無効と言えるようなケースで、ごく例外的な事例です。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

相続放棄は取消できないと言われますが、これは撤回できないの意味で使われています。

日常使う言葉が法律上異なる意味で使われると分かりにくくなります。

相続放棄は撤回できませんが、条件を満たせば取消できるし、無効になることもあります。

相続手続は、何度も経験するものではありません。

だれもが不慣れでだれもがスムーズに手続することはできません。

相続手続は法律の知識が不可欠なので、司法書士などの専門家にサポートを受けるといいでしょう。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

法定相続人以外の人が遺産分割協議

2022-11-30

1相続財産の分け方は相続人全員の合意で決める

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。

2合意が必要になる「相続人全員」とは

相続財産の分け方は、原則として、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議には、法定相続人でない人が参加する場合があります。

遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。

法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。

3法定相続人の代理人が遺産分割協議に参加する

相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。

相続人本人が遺産分割協議に参加できない場合があります。

相続人本人が参加できない場合、相続人の代わりの人が参加します。

①親権者

相続人の中に赤ちゃんなどの未成年が含まれている場合があります。

未成年は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

未成年者が契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに行います。

例えば、被相続人の子どもが被相続人より先に死亡している場合があります。

死亡した子どもに子どもがいた場合、子どもの子どもは代襲相続人になります。

子どもの子どもが赤ちゃんなどの未成年であることがあります。

死亡した子どもの配偶者は、代襲相続人の親権者です。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、親権者が参加します。

②成年後見人

相続人の中に認知症の人が含まれている場合があります。

認知症の人は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

認知症の人が契約などの法律行為をする場合、成年後見人が代わりに行います。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、成年後見人が参加します。

③後見監督人

認知症の人が相続人になった場合、通常は、成年後見人が代わりに遺産分割協議に参加します。

成年後見人が本人に代わって法律行為をすると、不適切な場合があります。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合です。

本人と成年後見人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

このような一方がトクをすると、他方がソンをする関係のことを利益相反と言います。

利益相反する場合、法定代理人なのに成年後見人は本人を代理できません。

利益相反の場合で、かつ、成年後見監督人がいる場合、成年後見監督人が遺産分割協議に参加します。

④特別代理人

成年後見では、成年後見監督人が選任されている場合と選任されていない場合があります。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合、成年後見人は本人を代理できません。

成年後見人が本人を代理できない場合に、本人を代理するのが特別代理人です。

利益相反の場合で、かつ、成年後見監督人がいない場合、特別代理人が遺産分割協議に参加します。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合は、本人と成年後見人だけに限りません。

未成年者と親権者が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合、親権者は未成年者を代理できません。

親権者が未成年者を代理できない場合に、特別代理人が未成年者を代理します。

利益相反の場合、特別代理人が遺産分割協議に参加します。

⑤保佐人と補助人

相続人の中に判断力が多少充分でない人が含まれている場合があります。

判断力が多少充分でない人に対して、サポートする人を付けています。

判断力の度合いに応じて、保佐人や補助人を付けてサポートします。

サポートをしてもらう人は、保佐人や補助人の同意を得れば自分で遺産分割協議をすることができます。

保佐人や補助人に遺産分割協議に関する代理権が付与されている場合、保佐人や補助人が遺産分割協議に参加します。

⑥保佐監督人と補助監督人、臨時保佐人と臨時補助人

サポートをしてもらう人と保佐人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

サポートをしてもらう人と補助人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

利益相反の場合、保佐人と補助人は遺産分割協議に関する同意をすることができません。

利益相反の場合で、かつ、保佐人や補助人に遺産分割協議に関する代理権が付与されている場合、本人を代理することはできません。

利益相反の場合で、かつ、保佐監督人や補助監督人が選任されている場合、保佐監督人や補助監督人が本人を代理します。

利益相反の場合で、かつ、保佐監督人や補助監督人が選任されていない場合、臨時保佐人や臨時補助人を選任してもらいます。

臨時保佐人や臨時補助人が本人を代理します。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、保佐監督人や補助監督人、臨時保佐人や臨時補助人が参加します。

⑦不在者財産管理人

相続人の中に行方不明の人が含まれている場合があります。

行方不明の人は居場所が分からないから、遺産分割協議に参加することができません。

行方不明の人が契約などの法律行為をする場合、不在者財産管理人が代わりに行います。

不在者財産管理人は、本来、行方不明の人の財産管理をする人です。

相続財産の話し合いをするのは、財産管理の範囲を越す行為です。

不在者財産管理人が行方不明の人に代わって遺産分割協議をする場合、家庭裁判所から特別に許可をもらう必要があります。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、不在者財産管理人が参加します。

⑧破産管財人

相続人の中に自己破産の申立てをした人が含まれている場合があります。

自己破産とは、破産者のプラスの財産を債権者に公平に分配して、借金の支払を免除してもらう手続のことです。

破産手続き開始決定がされた時点で、破産者のプラスの財産は債権者に公平に分配されます。

自己破産では、自己破産の申立ての後に破産手続き開始決定がされます。

相続が発生した後、破産手続き開始決定がされる場合があります。

相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。

債権者に公平に分配される財産は、破産手続き開始決定がされた時点の破産者の固有の財産と相続人全員で共有している相続財産です。

相続人全員で共有している相続財産の共有持分は、債権者に公平に分配される財産です。

自己破産した相続人が相続人同士で話し合いをして、処分することは許されません。

相続財産の共有持分は、債権者に公平に分配される財産だからです。

破産管財人は、本来、破産財団の財産管理をする人です。

相続財産の話し合いをするのは、破産財団の財産管理の範囲を越す行為です。

破産管財人が遺産分割協議をするためには、裁判所から特別に許可をもらう必要があります。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、破産管財人が参加します。

⑨任意代理人

相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。

他の相続人と話し合いができない場合、弁護士などの専門家に委任することができます。

弁護士は依頼人の利益最大化のために働く人なので、他の相続人は強硬な態度になることが多いです。

相続手続が終わった後には、絶縁することも少なくありません。

もともと絶縁しているのであれば、弁護士などの専門家に委任することが有効な場合もあるでしょう。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、弁護士などの専門家が参加します。

4包括受遺者が遺産分割協議に参加する

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈で財産を譲ってあげる人のことを遺贈者、譲ってもらう人を受遺者と言います。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

包括遺贈を受けた場合、財産の分け方について話し合いによる合意が必要です。

包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、包括受遺者が参加します。

5相続分の譲受人が遺産分割協議に参加する

相続人全員による話し合いによる合意がされる前であれば、相続人が自分の法定相続分を譲渡することができます。

相続分を譲渡するのは、他の相続人のうちだれかでも構いませんし、それ以外の第三者でも構いません。

譲渡するのは、有償でも無償でも構いません。

自分の法定相続分の全部を譲渡することができるし、自分の法定相続分の一部を譲渡することができます。

相続分を譲渡すると、相続分を譲渡した相続人は相続権を失います。

相続分の譲渡を受けた人は、他の相続人以外の第三者であっても、相続分を譲った人に代わって相続人全員の話し合いに参加する必要があります。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、相続分の譲受人が参加します。

6特別寄与者が遺産分割協議に参加する

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

特別な貢献をした人が相続人の場合、寄与分を主張することができます。

特別な貢献をした人が相続人でないけど親族である場合、特別の寄与分を請求することができます。

特別の寄与分を請求する人は、遺産分割協議で特別の寄与に応じた金銭を請求します。

被相続人の財産の分け方の話し合いに、特別寄与者が参加します。

7死亡した相続人の相続人が遺産分割協議に参加する

相続が発生したときには元気だった相続人が遺産分割協議中に死亡することがあります。

相続人が死亡した場合、相続人の地位が相続されます。

当初の被相続人の相続人でない人に相続されることがあります。

当初の相続人が死亡した場合、死亡した相続人の相続人が遺産分割協議に参加しなければならない人です。

遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。

当初の相続の法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。

8遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、参加すべき人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

銀行などの金融機関から遺産分割協議書を提出するように言われて、とにかく書きたいという方もいます。

遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、参加すべき人全員の合意があり、合意を取りまとめているからです。

有効な合意を文書にしているから、後々のトラブルを防止できるのです。

参加すべき人全員が有効な合意をしていない場合、かえってトラブルになってしまいます。

参加すべき人は簡単そうに見えて、間違いやすいものです。

参加すべき人を間違えると、せっかくの合意が無効になりかねません。

司法書士はこのような複雑な相続においても対応しています。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

包括受遺者がいるときの遺産分割協議

2022-11-02

1包括受遺者とは

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈で財産を譲り渡す人を遺贈者、譲り受ける人を受遺者と言います。

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

2種類を組み合わせることもできます。

2特定遺贈も包括遺贈も放棄することができる

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺言書は相続人らの関与なしに作ることができます。

遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。

遺贈は、特定遺贈であっても、包括遺贈であっても、放棄することができます。

包括遺贈の放棄は、家庭裁判所へ手続をします。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務があります。

相続財産にマイナスの財産がある場合は、マイナスの財産も受け継ぎます。

包括遺贈の放棄は、包括遺贈すべてを放棄することになります。

包括遺贈の放棄で一部の財産だけ放棄することはできません。

包括遺贈を放棄する場合、相続を放棄する場合と同じ手続をします。

家庭裁判所に対して、包括遺贈放棄の申立をします。

自己のために包括遺贈があることを知ってから、3か月以内に手続きしなければなりません。

包括遺贈放棄の申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄はホームページで調べることができます。

3包括受遺者が遺産分割協議をするケース

①相続人と包括受遺者で遺産分割協議をする

遺言書に「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いてあることがあります。

具体的にどの財産を受け取るのかは、相続人全員と合意をしなければなりません。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられます。

包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員の合意だけで包括受遺者の合意がない場合、遺産分割協議は無効です。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。

相続人でない人が包括遺贈を受けた場合、相続人全員と包括遺贈を受けた人全員の合意が必要になります。

②複数の包括受遺者で遺産分割協議をする

複数の人に対して、包括遺贈をすることができます。

複数の包括受遺者がいる場合、具体的にどの財産を受け取るのか包括受遺者全員で合意をしなければなりません。

一部の包括受遺者が参加しない遺産分割協議は無効です。

4包括受遺者が遺産分割協議不要になるケース

①全部包括遺贈は遺産分割協議不要

遺産分割協議は、相続財産を共有する相続人全員で具体的にどの財産を受け取るのか決めるものです。

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産を他の相続人と共有することはありません。

すべての財産を包括受遺者が受け取るから、財産の分け方を決める必要がありません。

全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

②特定財産を除く包括遺贈は遺産分割協議不要

包括受遺者は相続人と同一の権利義務があります。

相続財産にマイナスの財産がある場合は、マイナスの財産も受け継ぎます。

特定財産を除く財産について遺贈がされた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継がせる趣旨でしょう。

相続分に対応する割合が明示されていなくても、包括遺贈になると考えられます。

特定財産を除く財産すべてを受け継ぐから、財産の分け方を決める必要がありません。

特定財産を除く包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

5全部包括受遺者が相続人に財産を譲る方法

①全部包括受遺者は相続人と遺産分割協議はできない

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産を他の相続人と共有することはありません。

相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。

遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。

全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。

②遺贈された財産を贈与する

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は包括受遺者のものになります。

相続人が相続財産の一部を引き継ぐことを望むことがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、一部の財産を相続人に引き継いでもらおうと考えるかもしれません。

相続人が相続したいと望んでも相続することはできません。

相続財産は、包括受遺者のものだからです。

包括遺贈の放棄で一部の財産だけ放棄することはできません。

包括受遺者が包括遺贈の放棄をした場合、すべての財産を受け継ぐことができなくなります。

相続人が相続できなくても、財産を引き継ぐことはできます。

だれでも自分の財産を自由に贈与することができるからです。

包括受遺者は、包括遺贈を受けた後、相続人に財産を贈与することができます。

財産を贈与した場合、金額によっては贈与税の対象になります。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

③相続人は遺留分侵害額請求をすることができる

遺留分とは、相続財産に対して認められる最低限の権利のことです。

兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

相続人が被相続人の兄弟姉妹以外である場合、全部包括遺贈によって遺留分が侵害されています。

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求は、金銭で支払いを受ける権利です。

相続財産を直接相続する権利ではありません。

4合意したら遺産分割協議書にとりまとめる

2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。

相続人全員で話し合いのことを遺産分割協議といいます。

話し合いの合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書といいます。

合意したことの証明として、遺産分割協議書は相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書があれば合意内容が書いてあります。

後になって、合意していなかったなどとトラブルになることを防ぐことができます。

包括受遺者がいる場合であっても、遺産分割協議書に合意内容を取りまとめます。

包括受遺者がいない場合の遺産分割協議書と比べて、大筋は同じです。

包括受遺者は、多くの場合、相続人ではありません。

戸籍謄本を見ても、現れてきません。

包括遺贈を受けたから遺産分割協議に参加していることを明示するといいでしょう。

相続財産の分け方は、相続人や包括受遺者全員で合意する必要があります。

相続人や包括受遺者全員でない場合は、無効になります。

相続人や包括受遺者以外の人を含めて合意をした場合も無効になります。

相続人や包括受遺者全員で、かつ、余計な人を含めずに合意をしなければなりません。

何も書いてない場合、相続手続を受ける銀行などが勘違いをしてしまいかねません。

相続手続をする相続人に何も非はなくても、相続手続が長引くおそれがあります。

合意内容を簡潔にまとめて、相続人と同様に包括受遺者が署名し実印で押印します。

遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

包括遺贈を受けた人がいる場合、相続人の他に包括遺贈を受けた人も遺産分割協議に参加します。

相続財産の分け方は、相続人や包括遺贈を受けた人全員で合意する必要があります。

相続人や包括遺贈を受けた人全員でない場合は、無効になります。

相続人や包括遺贈を受けた人以外の人を含めて合意をした場合も無効になります。

遺言書の書き方によっては、法律知識がない人が読むと包括遺贈なのか特定遺贈なのか判断しにくい場合があります。

遺言者が専門家のサポートなしで遺言書を書いた場合、あいまいな記載が起こりがちです。

単なる、相続財産の分け方の話し合いですらまとまりにくいものです。

包括遺贈を受けた人がいる場合、多くは、家族以外の人でしょう。

家族以外の関係性が薄い人がいる場合、相続財産の分け方はいっそう合意が難しくなります。

このような場合、専門家のサポートが必要になるでしょう。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議-寄与分が認められるケース

2022-09-05

1寄与分が認められるのはハードルが非常に高い

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、特別な貢献をした人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらうことで、相続人間の実質的な公平を図ろうとするものです。

寄与分が認められるためには次の条件を満たす必要があります。

①特別の寄与があること

②財産が実質的に増加したこと

③特別の寄与と財産増加に因果関係があること

①~③の条件のうち、①を満たすハードルが非常に高いのが実情です。

①が認められるためには、通常の寄与でなく特別の寄与が条件になります。

特別の寄与とは、被相続人との身分関係から考えて、通常期待される程度を超える貢献のことです。

通常、家業や療養看護で苦労してきた人は相続で報われたいと考えます。

寄与分の制度は、苦労してきた人に報いて実質的公平を図る制度です。

多くの場合、被相続人との身分関係から考えて、寄与が特別であると認められるのは非常に高いハードルがあります。

2寄与分が認められるケース

寄与の内容について、「相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法」と民法は定めています。

①相続人の事業に関する労務の提供のケース

典型的には、被相続人が農業や個人事業をしていたケースで、相続人が一緒に協力してきた場合です。

通常であれば従業員を雇用してやる程度の仕事を無償で、かつ、長期間継続していたことがポイントになります。

無償とは、完全に無償でない場合も含みます。

報酬名目ではあるが、無償と同視できるような低額の小遣いである場合などです。

会社のお休みの日に手伝っていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

帰宅してから短時間手伝っていた場合、①特別の寄与があったと判断されないでしょう。

特別な寄与があったと認められる場合でも、財産の維持増加に貢献したというためには、数か月では足りません。

明確な基準はありませんが、少なくとも1年以上は継続して従事していたことが必要でしょう。

労務の提供は被相続人個人に対してしたものである必要があります。

被相続人の事業が会社組織になっている場合があります。

被相続人が代表者の会社に労務を提供した場合、被相続人に対して寄与があったとは認められません。

会社と会社の代表者は別の人格だからです。

無償で、被相続人の事業に従事していた場合、相続人の生活費は被相続人が負担していたことでしょう。

寄与分が認められる場合でも、相続人の生活費分は減額されます。

②財産上の給付のケース

具体的には、被相続人が事業を始める際に、開業資金を援助した場合や借金の肩代わりをした場合です。

通常の生活費を援助していた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

日常の小遣いを渡していた場合、①特別の寄与があったとは言えないでしょう。

被相続人の経済状況を踏まえて、ある程度まとまった金額を渡したことがポイントです。

相続人による援助によって財産が実質的に増加し、かつ、相続発生時に増加の効果が残っていることが必要です。

相続発生時に増加の効果が失われている場合、寄与分が認められません。

被相続人にある程度まとまった額を貸し付けた場合、通常、相続人に返済を求めることができるはずです。

相続人に返済を求めることができる場合、①特別の寄与があったと認められるのは稀です。

労務の提供と同様に、給付の対象は被相続人でなければなりません。

被相続人が代表者を務める会社に対して資金を給付した場合、被相続人に対して寄与があったとは認められません。

会社と会社の代表者は別の人格だからです。

③被相続人の療養看護のケース

寝たきりや身体が不自由な被相続人のため、療養看護や介護をした場合です。

会社のお休みの日に自宅へ行って介護をしていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

仕事帰りに短時間介護をしていた場合、①特別の寄与があったとは言えないでしょう。

介護ヘルパーを利用していたケースであっても、ヘルパー代金を相続人が負担していた場合は財産の減少を阻止したと言える場合があります。

被相続人の収入や資産で生活していた相続人については、①特別の寄与があったとは認められにくいものです。

寄与分が認められるためには、①特別の寄与によって財産が実質的に増加したことが必要です。一生懸命介護したとか、心を込めてお世話をしたなどは、財産増加とは無関係です。

財産の実質的増加と無関係な事実は、寄与分になりません。

被相続人が完全看護の病院に入院していた場合、①特別の寄与があったとはほとんど認められません。

完全看護の病院なのに、相続人がつきっきりでお世話をしなければならないような事情があるような特殊なケースでは、①特別の寄与があったと認められる余地があります。

④被相続人と同居のケース

被相続人と同居して面倒を見ていた場合が考えられます。

単に、被相続人と同居して面倒を見ていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

夫婦であれば相互扶助義務がありますし、親族であれば扶養義務があるからです。

被相続人と同居して面倒を見ていた点は、通常の寄与と判断されることが多いです。

同居して苦労したなどは、財産増加と無関係な事実です。

財産の実質的増加と無関係な事実は、寄与分になりません。

⑤財産管理のケース

典型的には、被相続人が収益不動産などを所有していたケースで、相続人が財産管理をしていた場合です。

具体的には、被相続人に代わって、賃貸借契約を締結、家賃の回収、賃借人の立ち退き交渉など収益不動産の管理をしている場合です。

賃貸アパートの管理を管理会社に委託している場合、仕事がお休みの日に清掃や除草をしている程度では特別の寄与と認められないでしょう。

収益不動産を運用管理して、財産が増加したように見えるかもしれません。

実際に財産が増加していても、①特別の寄与があったとは認められにくいものです。

一般的に言って、資産運用にはリスクがあるからです。

資産運用のリスクは被相続人が負担しています。

資産運用が偶然うまくいったことを理由に寄与分を認めるのは、不公平だからです。

このことは不動産だけでなく、株式などのリスクのある資産運用全般に対して同じことが言えます。

相続人が被相続人の成年後見人に就任している場合があります。

成年後見人が報酬を得ていない場合は寄与分があるように見えるかもしれません。

成年後見人は公的な職務で本人の財産管理をするものです。

公的な職務でやるべきことをしただけだから、寄与分が認められるべき特別の寄与にあたるというのは難しいでしょう。

3生前対策を司法書士に依頼するメリット

通常、家業や療養看護で苦労してきた人は相続で報われたいと考えます。

わざわざ報われない苦労をする人はいません。

寄与分は被相続人のために貢献した人に対して、相続分以上の財産を受け取ってもらうことで報いようとする制度です。

相続人の貢献に報いることで実質的な公平を図ろうとする制度です。

寄与分が認められるためには、非常に高いハードルを超えなければなりません。

家業や療養看護で苦労してきた人はだれなのか、どれだけ苦労をしてくれたのか被相続人は分かっているはずです。

被相続人は、家業や療養看護で苦労してきた人対して、報いてあげることができます。

トラブルにならない形で、家業や療養看護で苦労してきた人対して、報いてあげることができるのは、被相続人だけです。

被相続人が生前に対策しておけば、家族のトラブルを確実に減らすことができます。

家族がトラブルにならず相続を経験すると、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議-寄与分

2022-08-26

1寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、特別な貢献をした人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらうことで、相続人間の実質的な公平を図ろうとするものです。

具体的には、被相続人の事業に従事して財産増加に貢献した人、被相続人が重度の介護が必要になった場合にお世話をして財産減少を防いだ人が挙げられます。

これらの人の特別な貢献によって、財産が増加した場合や財産が維持されたと認められる場合、寄与分が認められます。

2寄与分がある人は相続人、特別寄与者は親族

①寄与分があるのは相続人だけ

民法上、寄与分があるのは相続人と定めています。

事実婚や内縁の配偶者は、相続人ではありません。

同性パートナーは、相続人ではありません。

長男の妻は、相続人でありません。

子どもが単純承認をした場合、親などの直系尊属は、相続人でありません。

相続人でない人は、寄与分がありません。

相続人本人は貢献していないが相続人ではない人が貢献している場合、相続人自身の貢献と判断できるケースがあります。

相続人自身の貢献として、寄与分を主張することができます。

具体的には、長男の妻の貢献を長男の貢献として長男が寄与分を主張する場合です。

②特別寄与者は親族であること

特別な貢献をした人が相続人でなくても親族である場合、特別寄与者になることができます。

親族にあたるのは次の人です。

(1)6親等内の血族

(2)配偶者

(3)3親等内の姻族

具体的には、配偶者の連れ子や甥姪、甥姪の子や孫、いとこ、はとこなどです。

事実婚や内縁の配偶者は、親族ではありません。

同性パートナーは、親族ではありません。

長男の妻は、親族です。

おじ、おばも、親族です。

いとこは親族ですが、いとこの配偶者は親族ではありません。

いとこは4親等の血族で、いとこの配偶者は4親等の姻族だからです。

だれが親族なのかは、法律で決められています。

法律で決められた範囲の人だけが親族です。

親戚は、範囲があいまいで法律の定めがありません。

③代襲相続人は寄与分がある

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

代襲相続人は、寄与分があります。

代襲相続人の寄与分には、代襲相続人自身が特別な貢献をした場合と被代襲相続人が特別な貢献をした場合があります。

代襲相続人は、自分の貢献分と被代襲者の貢献分を両方主張することができます。

代襲相続人は、被代襲者の貢献も相続しているからです。

④包括受遺者は寄与分がある

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。

包括遺贈で財産を受け継いでもらう人を包括受遺者と言います。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務がありますから、寄与分があります。

もっとも包括遺贈がされること自体が、被相続人の財産の維持、増加に貢献した人に対する評価といえますから、寄与分は考慮済みと考えられることが多いです。

包括遺贈を受けた人の貢献の度合いと受け取る財産の全体的なバランスを考えて、包括遺贈の他に寄与分を認めるべきか判断することになります。

⑤放棄、廃除、欠格の相続人は寄与分がない

相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続廃除された人と相続欠格の人は、相続資格が奪われます。

相続放棄をした人、相続廃除された人と相続欠格の人は、相続人ではありません。

相続人でない人は、寄与分がありません。

3寄与分が認められる条件はとても厳しい

①特別の寄与があること

寄与分が認められるのは特別の寄与がある場合のみです。

特別の寄与とは、被相続人との身分関係から考えて、通常期待される程度を超える貢献のことです。

具体的には、被相続人が家事を全く行わず、配偶者が家事労働をしていた場合、通常の貢献と評価されます。

夫婦間の協力扶助義務があるからです。

子どもが高齢の被相続人と同居して家事援助を行っている場合、通常の貢献と評価されます。

親族間の扶養義務や互助義務があるからです。

次のような条件を満たした場合、通常期待される程度を超える貢献と評価されることが多いです。

(1)対価を得ていないこと

完全に無償である場合や無償に近い不釣り合いな低い報酬であった場合です。

(2)一定程度の長期間であること

数か月程度のものではなく、少なくとも1年以上程度継続されていた場合です。

(3)片手間ではなく、つきっきりであること

日常生活の合間に看護介護していたのではなく、つきっきりで看護介護に専念していた場合です。

②財産が実質的に増加したこと

寄与分が認められるのは、実質的に財産の増加した場合のみです。

財産の減少や負債の増加が免れたこと、財産の増加や負債の減少が必要です。

財産の経済的価値の実質的増加が必要ですから、精神的援助は寄与分の対象にはなりません。

具体的には、頻繁にお見舞いに行ったことや話し相手になったことは寄与分の対象になりません。

お見舞いや話し相手で財産が実質的に増加することはないからです。

精神的援助は金銭的評価が困難です。

③特別の寄与と財産増加に因果関係があること

寄与分が認められるのは、特別の寄与が財産の実質的増加につながった行為のみです。

4寄与分の決め方

①寄与分は遺産分割協議で合意する

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。

相続財産の分け方を決める話し合いの前提として、相続人全員で寄与分を決めます。

被相続人が遺言書で寄与分を指定している場合があります。

遺言書で定めた寄与分に法的な意味はありません。

相続人は話し合いをするときに、参考にすることができます。

寄与分を決めること自体は、目的ではありません。

最終的に相続人全員が相続財産の分け方について、合意をすればよいのです。

合意をしたら、合意内容を文書に取りまとめます。

遺産分割協議書に、寄与分を明示することもできます。

多くの場合、寄与分を明示せず、寄与分を考慮した後の具体的な分け方だけを記載します。

②寄与分の請求に時効はない

相続人が寄与分を主張する場合、時効はありません。

相続財産の分け方を決める話し合いの前提なので、相続財産の分け方の合意がされた場合、寄与分の主張はできなくなります。

時効の定めはありませんが、長期間経過すると主張を裏付ける証拠が集められなくなります。

主張を裏付ける証拠が集められない場合、寄与分が認められるのは困難です。

特別寄与について、権利行使期間があります。

特別寄与者が相続発生と相続人を知ってから、6か月です。

特別寄与者が相続発生を知らなかった場合、相続発生から1年経過すると権利行使ができなくなります。

6か月と1年は時効ではなく、除斥期間です。

時効ではないから、時効の更新のように進行を止めることはできません。

③寄与分の上限は相続財産マイナス遺贈

被相続人が遺言書で遺贈をしているケースがあります。

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

相続財産の行方は、遺言者の意思が優先されます。

寄与分は、遺贈を侵害することはできません。

遺言者の意思に反して、寄与分を主張することはできません。

相続財産から遺贈を支払った後、残った財産が寄与分の上限になります。

④遺言書と寄与分では遺言書が優先する

遺言書ですべての財産について相続させる人や遺贈を受ける人が決まっている場合、寄与分を請求する余地はありません。

⑤寄与分は原則遺留分より優先する

相続財産から遺贈を支払った後、残った財産が寄与分の上限になります。

原則として、遺留分より寄与分が優先します。

遺留分を大きく侵害するような寄与分は、寄与分の決め方が適切でないことがあります。

寄与分を決める場合に、遺留分についても一定の配慮が求められます。

5生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。

相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。

被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。

寄与分は、一部の相続人の苦労に報いるための制度ですが、認められるためのハードルは非常に高いものです。

高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。

法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。

だから、相続財産を分けるのはトラブルになるのです。

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。

生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。

相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。

相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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