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法定相続人以外の人が遺産分割協議

2022-11-30

1相続財産の分け方は相続人全員の合意で決める

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。

2合意が必要になる「相続人全員」とは

相続財産の分け方は、原則として、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議には、法定相続人でない人が参加する場合があります。

遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。

法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。

3法定相続人の代理人が遺産分割協議に参加する

相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。

相続人本人が遺産分割協議に参加できない場合があります。

相続人本人が参加できない場合、相続人の代わりの人が参加します。

①親権者

相続人の中に赤ちゃんなどの未成年が含まれている場合があります。

未成年は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

未成年者が契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに行います。

例えば、被相続人の子どもが被相続人より先に死亡している場合があります。

死亡した子どもに子どもがいた場合、子どもの子どもは代襲相続人になります。

子どもの子どもが赤ちゃんなどの未成年であることがあります。

死亡した子どもの配偶者は、代襲相続人の親権者です。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、親権者が参加します。

②成年後見人

相続人の中に認知症の人が含まれている場合があります。

認知症の人は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

認知症の人が契約などの法律行為をする場合、成年後見人が代わりに行います。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、成年後見人が参加します。

③後見監督人

認知症の人が相続人になった場合、通常は、成年後見人が代わりに遺産分割協議に参加します。

成年後見人が本人に代わって法律行為をすると、不適切な場合があります。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合です。

本人と成年後見人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

このような一方がトクをすると、他方がソンをする関係のことを利益相反と言います。

利益相反する場合、法定代理人なのに成年後見人は本人を代理できません。

利益相反の場合で、かつ、成年後見監督人がいる場合、成年後見監督人が遺産分割協議に参加します。

④特別代理人

成年後見では、成年後見監督人が選任されている場合と選任されていない場合があります。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合、成年後見人は本人を代理できません。

成年後見人が本人を代理できない場合に、本人を代理するのが特別代理人です。

利益相反の場合で、かつ、成年後見監督人がいない場合、特別代理人が遺産分割協議に参加します。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合は、本人と成年後見人だけに限りません。

未成年者と親権者が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合、親権者は未成年者を代理できません。

親権者が未成年者を代理できない場合に、特別代理人が未成年者を代理します。

利益相反の場合、特別代理人が遺産分割協議に参加します。

⑤保佐人と補助人

相続人の中に判断力が多少充分でない人が含まれている場合があります。

判断力が多少充分でない人に対して、サポートする人を付けています。

判断力の度合いに応じて、保佐人や補助人を付けてサポートします。

サポートをしてもらう人は、保佐人や補助人の同意を得れば自分で遺産分割協議をすることができます。

保佐人や補助人に遺産分割協議に関する代理権が付与されている場合、保佐人や補助人が遺産分割協議に参加します。

⑥保佐監督人と補助監督人、臨時保佐人と臨時補助人

サポートをしてもらう人と保佐人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

サポートをしてもらう人と補助人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。

利益相反の場合、保佐人と補助人は遺産分割協議に関する同意をすることができません。

利益相反の場合で、かつ、保佐人や補助人に遺産分割協議に関する代理権が付与されている場合、本人を代理することはできません。

利益相反の場合で、かつ、保佐監督人や補助監督人が選任されている場合、保佐監督人や補助監督人が本人を代理します。

利益相反の場合で、かつ、保佐監督人や補助監督人が選任されていない場合、臨時保佐人や臨時補助人を選任してもらいます。

臨時保佐人や臨時補助人が本人を代理します。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、保佐監督人や補助監督人、臨時保佐人や臨時補助人が参加します。

⑦不在者財産管理人

相続人の中に行方不明の人が含まれている場合があります。

行方不明の人は居場所が分からないから、遺産分割協議に参加することができません。

行方不明の人が契約などの法律行為をする場合、不在者財産管理人が代わりに行います。

不在者財産管理人は、本来、行方不明の人の財産管理をする人です。

相続財産の話し合いをするのは、財産管理の範囲を越す行為です。

不在者財産管理人が行方不明の人に代わって遺産分割協議をする場合、家庭裁判所から特別に許可をもらう必要があります。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、不在者財産管理人が参加します。

⑧破産管財人

相続人の中に自己破産の申立てをした人が含まれている場合があります。

自己破産とは、破産者のプラスの財産を債権者に公平に分配して、借金の支払を免除してもらう手続のことです。

破産手続き開始決定がされた時点で、破産者のプラスの財産は債権者に公平に分配されます。

自己破産では、自己破産の申立ての後に破産手続き開始決定がされます。

相続が発生した後、破産手続き開始決定がされる場合があります。

相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。

債権者に公平に分配される財産は、破産手続き開始決定がされた時点の破産者の固有の財産と相続人全員で共有している相続財産です。

相続人全員で共有している相続財産の共有持分は、債権者に公平に分配される財産です。

自己破産した相続人が相続人同士で話し合いをして、処分することは許されません。

相続財産の共有持分は、債権者に公平に分配される財産だからです。

破産管財人は、本来、破産財団の財産管理をする人です。

相続財産の話し合いをするのは、破産財団の財産管理の範囲を越す行為です。

破産管財人が遺産分割協議をするためには、裁判所から特別に許可をもらう必要があります。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、破産管財人が参加します。

⑨任意代理人

相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。

他の相続人と話し合いができない場合、弁護士などの専門家に委任することができます。

弁護士は依頼人の利益最大化のために働く人なので、他の相続人は強硬な態度になることが多いです。

相続手続が終わった後には、絶縁することも少なくありません。

もともと絶縁しているのであれば、弁護士などの専門家に委任することが有効な場合もあるでしょう。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、弁護士などの専門家が参加します。

4包括受遺者が遺産分割協議に参加する

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈で財産を譲ってあげる人のことを遺贈者、譲ってもらう人を受遺者と言います。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

包括遺贈を受けた場合、財産の分け方について話し合いによる合意が必要です。

包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、包括受遺者が参加します。

5相続分の譲受人が遺産分割協議に参加する

相続人全員による話し合いによる合意がされる前であれば、相続人が自分の法定相続分を譲渡することができます。

相続分を譲渡するのは、他の相続人のうちだれかでも構いませんし、それ以外の第三者でも構いません。

譲渡するのは、有償でも無償でも構いません。

自分の法定相続分の全部を譲渡することができるし、自分の法定相続分の一部を譲渡することができます。

相続分を譲渡すると、相続分を譲渡した相続人は相続権を失います。

相続分の譲渡を受けた人は、他の相続人以外の第三者であっても、相続分を譲った人に代わって相続人全員の話し合いに参加する必要があります。

被相続人の財産の分け方の話し合いは、相続分の譲受人が参加します。

6特別寄与者が遺産分割協議に参加する

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

特別な貢献をした人が相続人の場合、寄与分を主張することができます。

特別な貢献をした人が相続人でないけど親族である場合、特別の寄与分を請求することができます。

特別の寄与分を請求する人は、遺産分割協議で特別の寄与に応じた金銭を請求します。

被相続人の財産の分け方の話し合いに、特別寄与者が参加します。

7死亡した相続人の相続人が遺産分割協議に参加する

相続が発生したときには元気だった相続人が遺産分割協議中に死亡することがあります。

相続人が死亡した場合、相続人の地位が相続されます。

当初の被相続人の相続人でない人に相続されることがあります。

当初の相続人が死亡した場合、死亡した相続人の相続人が遺産分割協議に参加しなければならない人です。

遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。

当初の相続の法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。

8遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、参加すべき人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

銀行などの金融機関から遺産分割協議書を提出するように言われて、とにかく書きたいという方もいます。

遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、参加すべき人全員の合意があり、合意を取りまとめているからです。

有効な合意を文書にしているから、後々のトラブルを防止できるのです。

参加すべき人全員が有効な合意をしていない場合、かえってトラブルになってしまいます。

参加すべき人は簡単そうに見えて、間違いやすいものです。

参加すべき人を間違えると、せっかくの合意が無効になりかねません。

司法書士はこのような複雑な相続においても対応しています。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

包括受遺者がいるときの遺産分割協議

2022-11-02

1包括受遺者とは

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈で財産を譲り渡す人を遺贈者、譲り受ける人を受遺者と言います。

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

2種類を組み合わせることもできます。

2特定遺贈も包括遺贈も放棄することができる

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺言書は相続人らの関与なしに作ることができます。

遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。

遺贈は、特定遺贈であっても、包括遺贈であっても、放棄することができます。

包括遺贈の放棄は、家庭裁判所へ手続をします。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務があります。

相続財産にマイナスの財産がある場合は、マイナスの財産も受け継ぎます。

包括遺贈の放棄は、包括遺贈すべてを放棄することになります。

包括遺贈の放棄で一部の財産だけ放棄することはできません。

包括遺贈を放棄する場合、相続を放棄する場合と同じ手続をします。

家庭裁判所に対して、包括遺贈放棄の申立をします。

自己のために包括遺贈があることを知ってから、3か月以内に手続きしなければなりません。

包括遺贈放棄の申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄はホームページで調べることができます。

3包括受遺者が遺産分割協議をするケース

①相続人と包括受遺者で遺産分割協議をする

遺言書に「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いてあることがあります。

具体的にどの財産を受け取るのかは、相続人全員と合意をしなければなりません。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられます。

包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員の合意だけで包括受遺者の合意がない場合、遺産分割協議は無効です。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。

相続人でない人が包括遺贈を受けた場合、相続人全員と包括遺贈を受けた人全員の合意が必要になります。

②複数の包括受遺者で遺産分割協議をする

複数の人に対して、包括遺贈をすることができます。

複数の包括受遺者がいる場合、具体的にどの財産を受け取るのか包括受遺者全員で合意をしなければなりません。

一部の包括受遺者が参加しない遺産分割協議は無効です。

4包括受遺者が遺産分割協議不要になるケース

①全部包括遺贈は遺産分割協議不要

遺産分割協議は、相続財産を共有する相続人全員で具体的にどの財産を受け取るのか決めるものです。

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産を他の相続人と共有することはありません。

すべての財産を包括受遺者が受け取るから、財産の分け方を決める必要がありません。

全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

②特定財産を除く包括遺贈は遺産分割協議不要

包括受遺者は相続人と同一の権利義務があります。

相続財産にマイナスの財産がある場合は、マイナスの財産も受け継ぎます。

特定財産を除く財産について遺贈がされた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継がせる趣旨でしょう。

相続分に対応する割合が明示されていなくても、包括遺贈になると考えられます。

特定財産を除く財産すべてを受け継ぐから、財産の分け方を決める必要がありません。

特定財産を除く包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

5全部包括受遺者が相続人に財産を譲る方法

①全部包括受遺者は相続人と遺産分割協議はできない

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産を他の相続人と共有することはありません。

相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。

遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。

全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。

②遺贈された財産を贈与する

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は包括受遺者のものになります。

相続人が相続財産の一部を引き継ぐことを望むことがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、一部の財産を相続人に引き継いでもらおうと考えるかもしれません。

相続人が相続したいと望んでも相続することはできません。

相続財産は、包括受遺者のものだからです。

包括遺贈の放棄で一部の財産だけ放棄することはできません。

包括受遺者が包括遺贈の放棄をした場合、すべての財産を受け継ぐことができなくなります。

相続人が相続できなくても、財産を引き継ぐことはできます。

だれでも自分の財産を自由に贈与することができるからです。

包括受遺者は、包括遺贈を受けた後、相続人に財産を贈与することができます。

財産を贈与した場合、金額によっては贈与税の対象になります。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

③相続人は遺留分侵害額請求をすることができる

遺留分とは、相続財産に対して認められる最低限の権利のことです。

兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

相続人が被相続人の兄弟姉妹以外である場合、全部包括遺贈によって遺留分が侵害されています。

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求は、金銭で支払いを受ける権利です。

相続財産を直接相続する権利ではありません。

4合意したら遺産分割協議書にとりまとめる

2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。

相続人全員で話し合いのことを遺産分割協議といいます。

話し合いの合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書といいます。

合意したことの証明として、遺産分割協議書は相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書があれば合意内容が書いてあります。

後になって、合意していなかったなどとトラブルになることを防ぐことができます。

包括受遺者がいる場合であっても、遺産分割協議書に合意内容を取りまとめます。

包括受遺者がいない場合の遺産分割協議書と比べて、大筋は同じです。

包括受遺者は、多くの場合、相続人ではありません。

戸籍謄本を見ても、現れてきません。

包括遺贈を受けたから遺産分割協議に参加していることを明示するといいでしょう。

相続財産の分け方は、相続人や包括受遺者全員で合意する必要があります。

相続人や包括受遺者全員でない場合は、無効になります。

相続人や包括受遺者以外の人を含めて合意をした場合も無効になります。

相続人や包括受遺者全員で、かつ、余計な人を含めずに合意をしなければなりません。

何も書いてない場合、相続手続を受ける銀行などが勘違いをしてしまいかねません。

相続手続をする相続人に何も非はなくても、相続手続が長引くおそれがあります。

合意内容を簡潔にまとめて、相続人と同様に包括受遺者が署名し実印で押印します。

遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

包括遺贈を受けた人がいる場合、相続人の他に包括遺贈を受けた人も遺産分割協議に参加します。

相続財産の分け方は、相続人や包括遺贈を受けた人全員で合意する必要があります。

相続人や包括遺贈を受けた人全員でない場合は、無効になります。

相続人や包括遺贈を受けた人以外の人を含めて合意をした場合も無効になります。

遺言書の書き方によっては、法律知識がない人が読むと包括遺贈なのか特定遺贈なのか判断しにくい場合があります。

遺言者が専門家のサポートなしで遺言書を書いた場合、あいまいな記載が起こりがちです。

単なる、相続財産の分け方の話し合いですらまとまりにくいものです。

包括遺贈を受けた人がいる場合、多くは、家族以外の人でしょう。

家族以外の関係性が薄い人がいる場合、相続財産の分け方はいっそう合意が難しくなります。

このような場合、専門家のサポートが必要になるでしょう。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議-寄与分が認められるケース

2022-09-05

1寄与分が認められるのはハードルが非常に高い

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、特別な貢献をした人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらうことで、相続人間の実質的な公平を図ろうとするものです。

寄与分が認められるためには次の条件を満たす必要があります。

①特別の寄与があること

②財産が実質的に増加したこと

③特別の寄与と財産増加に因果関係があること

①~③の条件のうち、①を満たすハードルが非常に高いのが実情です。

①が認められるためには、通常の寄与でなく特別の寄与が条件になります。

特別の寄与とは、被相続人との身分関係から考えて、通常期待される程度を超える貢献のことです。

通常、家業や療養看護で苦労してきた人は相続で報われたいと考えます。

寄与分の制度は、苦労してきた人に報いて実質的公平を図る制度です。

多くの場合、被相続人との身分関係から考えて、寄与が特別であると認められるのは非常に高いハードルがあります。

2寄与分が認められるケース

寄与の内容について、「相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法」と民法は定めています。

①相続人の事業に関する労務の提供のケース

典型的には、被相続人が農業や個人事業をしていたケースで、相続人が一緒に協力してきた場合です。

通常であれば従業員を雇用してやる程度の仕事を無償で、かつ、長期間継続していたことがポイントになります。

無償とは、完全に無償でない場合も含みます。

報酬名目ではあるが、無償と同視できるような低額の小遣いである場合などです。

会社のお休みの日に手伝っていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

帰宅してから短時間手伝っていた場合、①特別の寄与があったと判断されないでしょう。

特別な寄与があったと認められる場合でも、財産の維持増加に貢献したというためには、数か月では足りません。

明確な基準はありませんが、少なくとも1年以上は継続して従事していたことが必要でしょう。

労務の提供は被相続人個人に対してしたものである必要があります。

被相続人の事業が会社組織になっている場合があります。

被相続人が代表者の会社に労務を提供した場合、被相続人に対して寄与があったとは認められません。

会社と会社の代表者は別の人格だからです。

無償で、被相続人の事業に従事していた場合、相続人の生活費は被相続人が負担していたことでしょう。

寄与分が認められる場合でも、相続人の生活費分は減額されます。

②財産上の給付のケース

具体的には、被相続人が事業を始める際に、開業資金を援助した場合や借金の肩代わりをした場合です。

通常の生活費を援助していた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

日常の小遣いを渡していた場合、①特別の寄与があったとは言えないでしょう。

被相続人の経済状況を踏まえて、ある程度まとまった金額を渡したことがポイントです。

相続人による援助によって財産が実質的に増加し、かつ、相続発生時に増加の効果が残っていることが必要です。

相続発生時に増加の効果が失われている場合、寄与分が認められません。

被相続人にある程度まとまった額を貸し付けた場合、通常、相続人に返済を求めることができるはずです。

相続人に返済を求めることができる場合、①特別の寄与があったと認められるのは稀です。

労務の提供と同様に、給付の対象は被相続人でなければなりません。

被相続人が代表者を務める会社に対して資金を給付した場合、被相続人に対して寄与があったとは認められません。

会社と会社の代表者は別の人格だからです。

③被相続人の療養看護のケース

寝たきりや身体が不自由な被相続人のため、療養看護や介護をした場合です。

会社のお休みの日に自宅へ行って介護をしていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

仕事帰りに短時間介護をしていた場合、①特別の寄与があったとは言えないでしょう。

介護ヘルパーを利用していたケースであっても、ヘルパー代金を相続人が負担していた場合は財産の減少を阻止したと言える場合があります。

被相続人の収入や資産で生活していた相続人については、①特別の寄与があったとは認められにくいものです。

寄与分が認められるためには、①特別の寄与によって財産が実質的に増加したことが必要です。一生懸命介護したとか、心を込めてお世話をしたなどは、財産増加とは無関係です。

財産の実質的増加と無関係な事実は、寄与分になりません。

被相続人が完全看護の病院に入院していた場合、①特別の寄与があったとはほとんど認められません。

完全看護の病院なのに、相続人がつきっきりでお世話をしなければならないような事情があるような特殊なケースでは、①特別の寄与があったと認められる余地があります。

④被相続人と同居のケース

被相続人と同居して面倒を見ていた場合が考えられます。

単に、被相続人と同居して面倒を見ていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

夫婦であれば相互扶助義務がありますし、親族であれば扶養義務があるからです。

被相続人と同居して面倒を見ていた点は、通常の寄与と判断されることが多いです。

同居して苦労したなどは、財産増加と無関係な事実です。

財産の実質的増加と無関係な事実は、寄与分になりません。

⑤財産管理のケース

典型的には、被相続人が収益不動産などを所有していたケースで、相続人が財産管理をしていた場合です。

具体的には、被相続人に代わって、賃貸借契約を締結、家賃の回収、賃借人の立ち退き交渉など収益不動産の管理をしている場合です。

賃貸アパートの管理を管理会社に委託している場合、仕事がお休みの日に清掃や除草をしている程度では特別の寄与と認められないでしょう。

収益不動産を運用管理して、財産が増加したように見えるかもしれません。

実際に財産が増加していても、①特別の寄与があったとは認められにくいものです。

一般的に言って、資産運用にはリスクがあるからです。

資産運用のリスクは被相続人が負担しています。

資産運用が偶然うまくいったことを理由に寄与分を認めるのは、不公平だからです。

このことは不動産だけでなく、株式などのリスクのある資産運用全般に対して同じことが言えます。

相続人が被相続人の成年後見人に就任している場合があります。

成年後見人が報酬を得ていない場合は寄与分があるように見えるかもしれません。

成年後見人は公的な職務で本人の財産管理をするものです。

公的な職務でやるべきことをしただけだから、寄与分が認められるべき特別の寄与にあたるというのは難しいでしょう。

3生前対策を司法書士に依頼するメリット

通常、家業や療養看護で苦労してきた人は相続で報われたいと考えます。

わざわざ報われない苦労をする人はいません。

寄与分は被相続人のために貢献した人に対して、相続分以上の財産を受け取ってもらうことで報いようとする制度です。

相続人の貢献に報いることで実質的な公平を図ろうとする制度です。

寄与分が認められるためには、非常に高いハードルを超えなければなりません。

家業や療養看護で苦労してきた人はだれなのか、どれだけ苦労をしてくれたのか被相続人は分かっているはずです。

被相続人は、家業や療養看護で苦労してきた人対して、報いてあげることができます。

トラブルにならない形で、家業や療養看護で苦労してきた人対して、報いてあげることができるのは、被相続人だけです。

被相続人が生前に対策しておけば、家族のトラブルを確実に減らすことができます。

家族がトラブルにならず相続を経験すると、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議-寄与分

2022-08-26

1寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、特別な貢献をした人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらうことで、相続人間の実質的な公平を図ろうとするものです。

具体的には、被相続人の事業に従事して財産増加に貢献した人、被相続人が重度の介護が必要になった場合にお世話をして財産減少を防いだ人が挙げられます。

これらの人の特別な貢献によって、財産が増加した場合や財産が維持されたと認められる場合、寄与分が認められます。

2寄与分がある人は相続人、特別寄与者は親族

①寄与分があるのは相続人だけ

民法上、寄与分があるのは相続人と定めています。

事実婚や内縁の配偶者は、相続人ではありません。

同性パートナーは、相続人ではありません。

長男の妻は、相続人でありません。

子どもが単純承認をした場合、親などの直系尊属は、相続人でありません。

相続人でない人は、寄与分がありません。

相続人本人は貢献していないが相続人ではない人が貢献している場合、相続人自身の貢献と判断できるケースがあります。

相続人自身の貢献として、寄与分を主張することができます。

具体的には、長男の妻の貢献を長男の貢献として長男が寄与分を主張する場合です。

②特別寄与者は親族であること

特別な貢献をした人が相続人でなくても親族である場合、特別寄与者になることができます。

親族にあたるのは次の人です。

(1)6親等内の血族

(2)配偶者

(3)3親等内の姻族

具体的には、配偶者の連れ子や甥姪、甥姪の子や孫、いとこ、はとこなどです。

事実婚や内縁の配偶者は、親族ではありません。

同性パートナーは、親族ではありません。

長男の妻は、親族です。

おじ、おばも、親族です。

いとこは親族ですが、いとこの配偶者は親族ではありません。

いとこは4親等の血族で、いとこの配偶者は4親等の姻族だからです。

だれが親族なのかは、法律で決められています。

法律で決められた範囲の人だけが親族です。

親戚は、範囲があいまいで法律の定めがありません。

③代襲相続人は寄与分がある

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

代襲相続人は、寄与分があります。

代襲相続人の寄与分には、代襲相続人自身が特別な貢献をした場合と被代襲相続人が特別な貢献をした場合があります。

代襲相続人は、自分の貢献分と被代襲者の貢献分を両方主張することができます。

代襲相続人は、被代襲者の貢献も相続しているからです。

④包括受遺者は寄与分がある

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。

包括遺贈で財産を受け継いでもらう人を包括受遺者と言います。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務がありますから、寄与分があります。

もっとも包括遺贈がされること自体が、被相続人の財産の維持、増加に貢献した人に対する評価といえますから、寄与分は考慮済みと考えられることが多いです。

包括遺贈を受けた人の貢献の度合いと受け取る財産の全体的なバランスを考えて、包括遺贈の他に寄与分を認めるべきか判断することになります。

⑤放棄、廃除、欠格の相続人は寄与分がない

相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続廃除された人と相続欠格の人は、相続資格が奪われます。

相続放棄をした人、相続廃除された人と相続欠格の人は、相続人ではありません。

相続人でない人は、寄与分がありません。

3寄与分が認められる条件はとても厳しい

①特別の寄与があること

寄与分が認められるのは特別の寄与がある場合のみです。

特別の寄与とは、被相続人との身分関係から考えて、通常期待される程度を超える貢献のことです。

具体的には、被相続人が家事を全く行わず、配偶者が家事労働をしていた場合、通常の貢献と評価されます。

夫婦間の協力扶助義務があるからです。

子どもが高齢の被相続人と同居して家事援助を行っている場合、通常の貢献と評価されます。

親族間の扶養義務や互助義務があるからです。

次のような条件を満たした場合、通常期待される程度を超える貢献と評価されることが多いです。

(1)対価を得ていないこと

完全に無償である場合や無償に近い不釣り合いな低い報酬であった場合です。

(2)一定程度の長期間であること

数か月程度のものではなく、少なくとも1年以上程度継続されていた場合です。

(3)片手間ではなく、つきっきりであること

日常生活の合間に看護介護していたのではなく、つきっきりで看護介護に専念していた場合です。

②財産が実質的に増加したこと

寄与分が認められるのは、実質的に財産の増加した場合のみです。

財産の減少や負債の増加が免れたこと、財産の増加や負債の減少が必要です。

財産の経済的価値の実質的増加が必要ですから、精神的援助は寄与分の対象にはなりません。

具体的には、頻繁にお見舞いに行ったことや話し相手になったことは寄与分の対象になりません。

お見舞いや話し相手で財産が実質的に増加することはないからです。

精神的援助は金銭的評価が困難です。

③特別の寄与と財産増加に因果関係があること

寄与分が認められるのは、特別の寄与が財産の実質的増加につながった行為のみです。

4寄与分の決め方

①寄与分は遺産分割協議で合意する

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。

相続財産の分け方を決める話し合いの前提として、相続人全員で寄与分を決めます。

被相続人が遺言書で寄与分を指定している場合があります。

遺言書で定めた寄与分に法的な意味はありません。

相続人は話し合いをするときに、参考にすることができます。

寄与分を決めること自体は、目的ではありません。

最終的に相続人全員が相続財産の分け方について、合意をすればよいのです。

合意をしたら、合意内容を文書に取りまとめます。

遺産分割協議書に、寄与分を明示することもできます。

多くの場合、寄与分を明示せず、寄与分を考慮した後の具体的な分け方だけを記載します。

②寄与分の請求に時効はない

相続人が寄与分を主張する場合、時効はありません。

相続財産の分け方を決める話し合いの前提なので、相続財産の分け方の合意がされた場合、寄与分の主張はできなくなります。

時効の定めはありませんが、長期間経過すると主張を裏付ける証拠が集められなくなります。

主張を裏付ける証拠が集められない場合、寄与分が認められるのは困難です。

特別寄与について、権利行使期間があります。

特別寄与者が相続発生と相続人を知ってから、6か月です。

特別寄与者が相続発生を知らなかった場合、相続発生から1年経過すると権利行使ができなくなります。

6か月と1年は時効ではなく、除斥期間です。

時効ではないから、時効の更新のように進行を止めることはできません。

③寄与分の上限は相続財産マイナス遺贈

被相続人が遺言書で遺贈をしているケースがあります。

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

相続財産の行方は、遺言者の意思が優先されます。

寄与分は、遺贈を侵害することはできません。

遺言者の意思に反して、寄与分を主張することはできません。

相続財産から遺贈を支払った後、残った財産が寄与分の上限になります。

④遺言書と寄与分では遺言書が優先する

遺言書ですべての財産について相続させる人や遺贈を受ける人が決まっている場合、寄与分を請求する余地はありません。

⑤寄与分は原則遺留分より優先する

相続財産から遺贈を支払った後、残った財産が寄与分の上限になります。

原則として、遺留分より寄与分が優先します。

遺留分を大きく侵害するような寄与分は、寄与分の決め方が適切でないことがあります。

寄与分を決める場合に、遺留分についても一定の配慮が求められます。

5生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。

相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。

被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。

寄与分は、一部の相続人の苦労に報いるための制度ですが、認められるためのハードルは非常に高いものです。

高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。

法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。

だから、相続財産を分けるのはトラブルになるのです。

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。

生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。

相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。

相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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