遺産分割協議書の提出先

1遺産分割協議とは

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。

電話でもメールでも差し支えありません。

一度に全員合意する必要もありません。

一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。

最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。

全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。

一部の財産についてだけ合意をすることもできます。

2遺産分割協議書の提出先は主に5つ

①相続登記をするとき法務局へ提出

被相続人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更が必要になります。

不動産の名義変更のことを相続登記と言います。

不動産を共有することはデメリットが大きいので、おすすめできません。

複数の相続人がいる場合、話し合いによる合意をして単独所有にするといいでしょう。

相続人全員で話し合いによる合意をした場合、合意内容を取りまとめます。

合意内容を取りまとめた文書が遺産分割協議書です。

相続人全員による合意内容に基づいて相続登記をする場合、遺産分割協議書が必要です。

遺産分割協議書には、それぞれの相続人が記名し実印を押印します。

遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

②預貯金の解約をするとき銀行など金融機関へ提出

銀行などの金融機関は、口座の持ち主が死亡したことを知ったら口座を凍結します。

口座を凍結したら、預貯金の引出し、口座の解約ができなくなります。

預貯金の引出し、口座の解約をするために、口座の凍結解除をしてもらわなければなりません。

金融機関によっては、専用の相続届を用意している場合があります。

相続届に合意内容を記載し、相続人全員が記名し実印で押印します。

相続届の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書を作成した場合、口座を引き継ぐ人だけが相続届を記載します。

遺産分割協議書を作成した方が手続がラクになるでしょう。

③自動車の名義変更をするとき運輸支局へ提出

被相続人が自動車を保有していた場合、自動車の名義変更が必要になります。

自動車の名義変更をする場合、原則として、遺産分割協議書の提出を求められます。

査定額が100万円以下の普通自動車は、遺産分割協議書の提出までは求められません。

遺産分割協議書の代わりに、遺産分割協議成立申立書を提出すれば済みます。

遺産分割協議成立申立書は、自動車を引き継ぐ相続人だけが記名し実印で押印します。

相続人全員の記名や実印での押印が不要になりますから、手続がカンタンになります。

書類の作成がカンタンになるだけで、相続人全員の合意が不要になるわけではありません。

相続人全員の合意は不可欠です。

④株の名義変更をするとき証券会社へ提出

被相続人が証券会社に口座を持っていた場合、相続手続が必要になります。

遺産分割協議書を作成している場合、提出を求められるでしょう。

証券会社も金融機関同様、専用の相続届を用意している場合があります。

相続届に合意内容を記載し、相続人全員が記名し実印で押印します。

相続届の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書を作成した場合、口座を引き継ぐ人だけが相続届を記載します。

遺産分割協議書を作成した方が手続がラクになるでしょう。

株式の相続手続をする場合、株式を相続する人が口座を開設している必要があります。

株式を相続する相続人が株取引に詳しくない場合、売却して現金にしたいと思うかもしれません。

株式を売却するのであれば、相続人が自分で手続をしなければなりません。

相続手続をすれば、証券会社が売却してくれるわけではありません。

⑤相続税申告をするとき税務署へ提出

相続が発生しても、相続税申告が必要ない場合がほとんどです。

相続税申告が必要になる人は、全体の10%にも満たないわずかな人だからです。

相続税には、基礎控除があります。

基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数

基礎控除は、上記の計算式で求められます。

相続財産が基礎控除以下の場合、相続税はかかりません。

相続税申告すら不要です。

基礎控除を超す場合、相続税申告が必要になります。

遺産分割協議書などの書類とともに相続税申告書を税務署に提出します。

3遺産分割協議書のコピーは使えない

①遺産分割協議書は原本が必要

相続手続をする場合、遺産分割協議書や印鑑証明書は原本を提出しなければなりません。

遺産分割協議書や印鑑証明書のコピーを提出しても受け付けてもらえません。

②遺産分割協議書の原本は返してもらえる

遺産分割協議書や印鑑証明書を提出した場合、原本は返してもらえます。

返してもらうための手続は、提出先によって違います。

法務局などではコピーを取って原本に相違ありませんと記載したうえ、記名押印を求められます。

銀行などの金融機関では、提出先でコピーを取るのでコピーの提出不要と言われる場合があります。

コピーを提出するだけで、原本に相違ありませんなどの記載をしない場合があります。

スムーズに手続をするために原本還付してもらう方法についても、手続先によく確認して対応しましょう。

③遺産分割協議書は相続人全員が原本を持つべき

相続手続をするだけのためであれば、遺産分割協議書は1通あれば充分です。

遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

後から合意内容について相続人間で争いになるかもしれません。

遺産分割協議書が手元にあれば、合意内容を確認することができます。

遺産分割協議書に記名して実印で押印してある場合、合意したことを証明することができます。

遺産分割協議書のコピーでは、高い証明力はありません。

相続人間の争いにならないように、遺産分割協議書を作成します。

相続人各自が原本を持つことができるように、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成します。

4提出先ごとに遺産分割協議書を作ることができる

遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

1通の遺産分割協議書で相続財産すべてを記載する必要はありません。

相続財産の分け方は、一部の財産だけ合意しても有効だからです。

相続財産に不動産と銀行の預貯金がある場合、不動産だけ記載した遺産分割協議書と銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書を作ることができます。

不動産だけ記載した遺産分割協議書も銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書も、どちらも有効です。

不動産だけ記載した遺産分割協議書を法務局に提出して相続登記を進めることができます。

相続登記の手続中に、銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書を銀行に提出して銀行口座の凍結解除を進めることができます。

さらに銀行ごとに遺産分割協議書を作ることもできます。

相続手続は、時間がかかります。

銀行の預貯金の解約などで1か月程度かかることも少なくありません。

相続手続を同時進行で進めると、すみやかに手続が完了します。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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