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不動産が複数あるときの遺産分割協議

2024-01-10

1相続財産の分け方5つの方法

方法①現物分割

相続財産には、いろいろな財産が含まれていることが一般的です。

不動産は、分けにくい財産の代表例です。

現物分割とは、現物の不動産を相続人の人数で分割する方法です。

現物の不動産を分割することは、広大な土地でないと実現できません

極端に小さな土地は、使い勝手が悪くなります。

価値も下がってしまうでしょう。

あまり現実的ではないかもしれません。

方法②代償分割

代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から代償金を受け取る方法です。

現物の不動産を分割しないので、価値が下がることはありません。

不動産を相続する人は、他の相続人に代償金を支払う必要があります。

相続財産の大部分が不動産であることがあります。

価値の高い不動産である場合、他の相続人に支払う代償金が高額になります。

不動産を相続する人が代償金を準備できないかもしれません。

不動産をいくらと考えるのかについて、基準はいくつかあります。

代償金を支払う人は、不動産の値段が低い基準を採用した方が有利です。

支払う代償金が少なくなるからです。

代償金を受け取る人は、不動産の値段が高い基準を採用した方が有利です。

受け取る代償金が多くなるからです。

代償金を決めるとき、どの基準を採用するのか話し合いがまとまらないことがあります。

方法③換価分割

換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後にお金を分ける方法です。

不動産を実際に売却してお金に換えてから分けるので、不動産の値段をいくらと考えるのかで話し合いをする必要はありません。

被相続人が守ってきた財産を手放すことに、罪悪感があるかもしれません。

合理的な方法であっても相続人の感情面から話し合いがつかなくなるおそれがあります。

不動産を売却するつもりであっても、買い手がつかないかもしれません。

売却できるまで相続手続が長引くおそれがあります。

方法④共有

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意ができない場合、共有が選ばれることもあります。

最も公平に見えるからです。

共有は弊害が多く、安易に共有にする方法はもっとも避けるべきです。

共有にした場合、全員の同意がなければ売却することはできません。

共有の不便を解消するため、後々、共有物分割をしようという話になります。

結局のところ、問題の先送りになるだけです。

相続トラブルが長期化しますから、家族の絆が壊されてしまいます。

方法⑤用益権の設定による分割

用益権とは、不動産を自分で使ったり、人に貸して賃料を得たりする権利のことです。

配偶者居住権は、用益権のひとつです。

一部の相続人に使う権利を設定して、他の相続人が使う権利のない所有権を相続する方法です。

家族が守ってきた不動産を手放すことなく相続ができます。

相続人のうち、だれが使う権利を得るのかで、使う権利のない所有権をだれが相続するのかで話し合いがまとまらないおそれがあります。

2不動産が複数あるときの遺産分割協議

①まず相続人調査

多くの方にとって、相続人がだれなのかは当たり前のことと軽く考えがちです。

家族以外の第三者に対しては、相続人がだれなのか客観的に証明する必要があります。

客観的に証明するとは、具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃えることです。

戸籍にはその人に身分関係がすべて記録されているからです。

結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている人がいるかもしれません。

秘密にしていても、戸籍には記録されています。

戸籍が新しくなったときに、書き写される項目と書き写されない項目があります。

書き写されない項目を確認するために、出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃える必要があるのです。

②財産全部まとめて合意しなくてもよい

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員の合意ができれば、財産すべてをまとめて合意する必要はありません。

不動産が複数ある場合、同じ不動産ではないでしょう。

収益のいい不動産や便利のいい場所にある不動産やそうでない不動産があります。

一部の不動産を売却する合意ができることがあります。

不動産の売却には、時間がかかることが多いでしょう。

合意できる不動産から先に合意をすることができます。

遺産分割協議書は、合意できた不動産についてだけ記載します。

財産全部記載していない遺産分割協議書だから、無効になるといったことはありません。

③相続登記用の遺産分割協議書は不動産のみ記載でよい

不動産を相続した場合、不動産の名義変更をします。

不動産の名義変更を相続登記と言います。

相続登記をする場合、遺産分割協議書を提出します。

遺産分割協議書は、相続人全員が相続財産の分け方を合意した証明書です。

合意の対象となった不動産を特定できるように記載します。

相続登記用の遺産分割協議書は、不動産のみ記載されたもので差し支えありません。

「自宅」などの記載は客観的に特定できるとは言えません。

自宅は、家族にとっては当然のことです。

法務局など第三者にとっては、どこにあるどの不動産なのか分からないからです。

不動産を特定するため、登記簿謄本を取得して書き写すといいでしょう。

不動産の所在は、自宅住所と異なることが多いものです。

自宅住所を記載した場合、不動産を特定できないことがあります。

固定資産税の課税明細書の記載は、内容が省略されていることや登記簿謄本と異なる記載がされていることがあります。

登記簿謄本と異なる表記の場合、相続登記が認められない可能性があります。

登記簿謄本の記載を見て、書き写します。

複数の不動産がある場合、法務局の管轄ごとに遺産分割協議書を作成することができます。

それぞれの遺産分割協議書に添付書類を用意すれば、同時に相続登記を進めることができるからです。

④複数ページの遺産分割協議書に割印・契印

遺産分割協議書は、相続人全員が相続財産の分け方を合意した証明書です。

相続人全員が合意内容に間違いがないことを確認して、記名し実印で押印します。

記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、文書の内容は真正な合意内容ではなくなってしまいます。

遺産分割協議書が抜き取りや差し替えができる状態である場合、文書の内容は真正な内容でないおそれがあります。

遺産分割協議書の内容が真正でないおそれがある場合、相続手続は進めることができなくなります。

複数の不動産について合意内容を取りまとめる場合、遺産分割協議書は複数ページになることが多いです。

複数ページに渡る場合、一般的なのが契印を施すことです。

契印とは、文書が複数ページに渡るときに1通の文書であることを証明するためページの見開きにまたがって押印することです。

契印は、最初のページから最後のページまで施します。

最初のページから最後のページまで契印がある場合、書類の改ざんがないことを証明できます。

遺産分割協議書では、相続人全員が実印で契印を施します。

記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、契印がつながらなくなります。

契印がつながっている場合、改ざんがないと言えます。

⑤遺産分割協議書を袋とじにして割印・契印

何十ページにも及ぶ遺産分割協議書になった場合、相続人全員がすべてのページに契印を施すのは手間がかかります。

遺産分割協議書を袋とじにするといいでしょう。

袋とじにするとき、製本テープを使うと便利です。

袋とじにしてあれば、最初のページから最後のページまで契印を施す必要はありません。

製本テープと文書にまたがるように相続人全員の契印が必要になります。

3不動産を共有するとデメリットが大きい

デメリット①共有物を処分するには共有者全員の合意が必要

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分ができないからです。

相続財産の分け方を「共有する」と決めた後も、同じです。

共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分はできません。

処分するとは、共有物を売却する、第三者に賃貸することなどです。

たくさんの人で共有していると合意がまとまりにくくなります。

売却したい人も賃貸したい人もいるでしょう。

売却するのはいいが時期が良くないと思う人もいるでしょう。

もっと高値で売れるはずだという人もいるでしょう。

賃貸するのはいいが賃貸条件が合意できない人もいるでしょう。

合意できる場合でも、合意するために時間がかかりがちになります。

売却したいという場合でも、合意に時間がかかるとチャンスを逃すことになります。

親族同士であっても共有物の管理方針が違うと、共有者の意見対立が起きやすくなります。

売却する場合も、売却時の重要事項説明や売買契約の締結など共有者全員が手続に参加する必要があります。

遠方に住んでいる共有者には時間と手間がかかります。

共有者がたくさんいると、だれか一人が認知症などになるかもしれません。

認知症などで判断能力が低下する人が現れる確率も上がります。

物事のメリットデメリットを充分に判断できない人は、売却などの合意はできません。

後見人を選んでもらって代わりに判断してもらうことになります。

デメリット②共有者に相続が発生する

共有物を売却するためには、共有者全員の合意が必要になります。

共有者全員の合意がしにくくなると、売却などの判断は先延ばししがちです。

先延ばしにより長期間経過すると、共有者に相続が発生することがあります。

共有者に相続が発生すると、共有者の持分は相続財産になります。

共有者の相続人全員の相続財産になります。

共有者の管理方針が違うことで適切な管理ができない共有物を相続したがらないかもしれません。

このとき、死亡した共有者の共有持分を、複数の相続人が法定相続分で細分化して共有することがあります。

このような相続が何人もの共有者の間で発生すると、共有者がたくさんになり、持分が細分化されます。

適切に相続登記がされないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。

共有者が増えると、共有者同士が顔も見たことない見知らぬ人であることが多くなります。

単純に、たくさんの人で管理や処分の合意をすることは難しいものです。

それが顔も見たことない見知らぬ人である場合、一挙に難易度は上がります。

見知らぬ人何十人もの合意は、現実的には無理でしょう。

共有物の処分は、共有者全員の合意が必要です。

1人でも反対の人がいると、処分はできません。

共有物を売却するには、1人でも反対の人がいると、できないのです。

見知らぬ人何十人で共有すると、共有物の賃貸や売却は、事実上、できなくなります。

デメリット③共有持分を売却するおそれ

共有物全体を売却するためには共有者全員の合意が必要です。

それぞれの共有者が持っている共有持分を売却するためには、他の共有者の合意は不要です。

あまり知られていませんが、共有者が持っている共有持分を買い取る業者がいます。

ひょっとすると、経済的に困っている共有者がいる場合、共有持分を売却してしまうかもしれません。

通常、市場価格よりはるかに低廉な価格でしか売れません。

共有持分を買い取る業者はビジネスですから、遠慮なく共有者としての権利を主張してきます。

共有持分買取請求や共有物分割請求などです。

話し合いで解決できなければ、当然、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。

知識のない一般の人では対応できませんから、弁護士に依頼することになるでしょう。

4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

遺産分割協議書があるとトラブル防止になります。

後々のトラブルが見えていないと、単なる問題の先送りになります。

不動産の共有はその最たるものでしょう。

安易に共有を選ぶと後々トラブルに巻き込まれます。

共有にすることで今後どのような問題が発生するのか、自分達だけではそのリスクは見えにくいかもしれません。

司法書士はこのようなリスクの説明もします。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

遺産分割協議書に金額を書かない

2023-12-13

1遺産分割協議書の基本的な書き方

①遺産分割協議書は手書きで作ってもいい

遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

合意内容が明らかにされればよく、定められた形式はありません。

紙の大きさや厚さなども、制限はありません。

手書きで作ってもパソコン等で作っても差し支えありません。

②遺産分割協議は相続人全員の合意で

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

必ず、相続人全員でなければなりません。

一部の相続人を含めずに、合意をしても無効になります。

疎遠であっても、行方不明であっても、認知症であっても、未成年であっても、相続人全員の同意が必要です。

未成年や認知症などで物事のメリットデメリットを充分判断できない人や行方不明の人がいる場合は家庭裁判所に代わりの人を選んでもらいます。

家庭裁判所に選ばれた人と合意し、記名押印をしてもらいます。

住所と氏名は、印鑑証明書の記載どおり一字一句間違いなく書きます。

遺産分割協議書は、実印で押印します。

印鑑証明書と異なる印影の場合、相続手続が進まなくなります。

実印を持っていない相続人は市町村役場で印鑑登録をして、その印章で押印します。

③不動産と預貯金は別々に遺産分割協議書を作ってもいい

遺産分割協議書は、すべての財産についてまとめて作成してもいいし、一部の財産について作成しても構いません。

まとめて作成した遺産分割協議書も、一部の財産についてだけ作成した遺産分割協議書も有効です。

不動産だけ記載した遺産分割協議書の他に、銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書があることがあります。

相続登記用の遺産分割協議書の場合、不動産だけ記載した遺産分割協議書を作るのが通例です。

一部の不動産を売却する場合、売却する不動産についてだけ先に合意するでしょう。

売却する不動産だけ記載した遺産分割協議書を作ることはよくあります。

相続財産すべてについて合意したと相続人全員が考えて遺産分割協議書を作成した後で、新たに財産が見つかることがあります。

新たな財産について、あらためて相続人全員で合意します。

新たな財産だけ記載した遺産分割協議書を作成します。

新たな財産が重要財産であって、かつ、新たな財産の存在を知っていたら当初の遺産分割の合意をしなかったと言えるような場合、当初の遺産分割協議は無効になります。

④遺産分割協議書が複数枚に渡る場合は割印・契印

遺産分割協議書を作成する場合、1枚に書き切れないケースがあります。

1枚に書き切れない場合、相続人全員の実印で契印を施します。

袋とじにして、相続人全員の実印で割印・契印をしても構いません。

⑤遺産分割協議書に生命保険の死亡保険金は記載不要

生命保険の死亡保険金は、受取人が相続人になっているでしょう。

生命保険の死亡保険金は、保険契約に基づいて相続人が受け取るものです。

被相続人が生前に、自分の死亡保険金を受け取る権利を取得することはありません。

死亡保険金を受け取る権利は、被相続人から受け継ぐものではありません。

生命保険の死亡保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。

相続財産ではないから、相続人で分け方を決めるものではありません。

遺産分割協議書に生命保険の死亡保険金について記載する必要はありません。

2遺産分割協議書に金額を書かない

①遺産分割協議書で相続人全員の合意内容を証明する

遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

相続財産の分け方とは、どの財産をどの相続人が相続するかです。

遺産分割協議書には、財産を特定して記載することが重要です。

財産が特定できれば、金額を記載することは重要ではありません。

〇〇銀行〇〇支店の普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇

例えば、上記のような記載があれば充分に財産を特定することができます。

金額を記載しても金額を記載しなくても、問題はありません。

②少額の現金は遺産分割協議書に書かないことが多い

自宅などに被相続人が手元現金を置いていることがあります。

被相続人の手元現金であれば相続財産だから、分け方の合意が必要です。

少額の現金であれば、わざわざ遺産分割協議書に記載しないことが多いものです。

遺産分割協議書にすべての財産が記載されていなくても、遺産分割協議書が無効になることはありません。

自宅や金庫から大量の現金が見つかった場合、遺産分割協議書に記載した方がいいでしょう。

③遺産分割協議書に金額を書かないときの記載例

相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  普通預金

口座番号  ○○○○○○○

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  定期預金

口座番号  ○○○○○○○

金融機関名 ゆうちょ銀行

通常貯金

記号   ○○○○○

番号   ○○○○○○○○

④遺産分割協議書に金額を書くときの記載例

相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  普通預金

口座番号  ○○○○○○○

令和〇年〇月〇日現在残高〇〇〇〇〇〇円及び相続開始後に生じた利息その他の果実

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  定期預金

口座番号  ○○○○○○○

令和〇年〇月〇日現在残高〇〇〇〇〇〇円及び相続開始後に生じた利息その他の果実

金融機関名 ゆうちょ銀行

通常貯金

記号   ○○○○○

番号   ○○○○○○○○

令和〇年〇月〇日現在残高〇〇〇〇〇〇円及び相続開始後に生じた利息その他の果実

⑤ひとつの預金を複数の相続人が分割して相続するときの記載例

相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が3分の2、相続人◇◇◇◇が3分の1の割合で相続する。

1円未満の端数があるときは、相続人○○○○が相続する。

相続人○○○○が代表して、預金の解約払戻の手続をする。

相続人○○○○は、相続人◇◇◇◇の相続分を相続人◇◇◇◇が指定する口座に振込の方法により引渡す。

振込手数料は、相続人◇◇◇◇が負担する。

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  普通預金

口座番号  ○○○○○○○

⑥遺産分割協議書に金額を書くときのメリット

遺産分割協議書に金額を記載すると、いくらの財産を受け取ったのか明確になります。

分かりやすくなるのがメリットと言えるでしょう。

相続財産は、現金や預貯金のみではありません。

評価の難しい財産が相続財産に含まれる場合があります。

例えば、不動産をいくらと考えるのか評価方法は何通りもあります。

どの評価方法で不動産を評価するのが適切なのかは、一概に言えません。

例えば、株式など評価額が変動する財産が相続財産に含まれる場合があります。

いつの評価額が適切なのかは、一概に言えません。

相続財産が預貯金や現金のみであれば、分かりやすい遺産分割協議書になります。

現金や預貯金を相続した場合だけ、明確にしてもあまり意味はないでしょう。

⑦遺産分割協議書に金額を書くときのデメリット

遺産分割協議書を作成した後、相続手続をすることになります。

遺産分割協議書を作成した時点と相続手続をする時点で、金額が変動することがあります。

口座凍結がされていなければ、振込や引き落としがあるかもしれません。

利息が付く場合があります。

金額が違う場合、金融機関によっては相続手続ができなくなる場合があります。

そのままで相続手続ができない場合、訂正する手間と時間がかかります。

4 預貯金を代償分割することができる

①代償分割とは

代償分割は、相続財産の分け方のひとつです。

一部の相続人が財産を相続し、残りの相続人は相続した人から、その分のお金をもらう方法

です。

不動産などで代償分割することが多いです。

預貯金などの口座がたくさんある場合、ひとつひとつ分割すると手数がかかります。

代償分割をすると、代表相続人の手間を軽減することができます。

②代償分割であることをはっきり記載する

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議書にはっきり書くことで、紛争を防止することができます。

代償分割の場合、次のことを明示するといいでしょう。

(1)代償分割でどの相続人が財産を相続するか

(2)代償分割でだれからだれに代償が支払われるか

遺産分割協議書に代償分割をすることをはっきり書くことが大切です。

遺産分割の一環であることを示すことができるからです。

遺産分割協議書に代償分割をすることが書いてない場合、単なる贈与であると判断されかねません。

単なる贈与と判断された場合、金額によっては贈与税が課されることになります。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

③代償分割するときの記載例

第〇条

相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  普通預金

口座番号  ○○○○○○○

第□条

相続人○○○○は第○条に記載された財産を取得する代償として、相続人□□□□に対して金○○万円を令和□年□月□日限り、相続人□□□□が指定する口座に振込の方法により引渡す。

振込手数料は、相続人□□□□が負担する。

④遺産分割協議書を公正証書にすれば強制執行ができる

代償分割とは、一部の相続人が財産を相続し、残りの相続人は相続した人から、その分のお金をもらう方法です。

相続人同士の関係性が良くない場合、代償金を払うのが惜しくなるかもしれません。

売買契約などで買主が売買代金を支払わない場合、売主は売買契約を解除することができます。

遺産分割協議では、代償金を支払わない場合でも遺産分割協議を解除することはできません。

代償分割をする場合、代償金をきちんと支払ってもらうことが重要になります。

遺産分割協議書を公正証書にした場合、強制執行をすることができます。

代償金の支払いがない場合、裁判で勝訴判決などの債務名義を得なくても強制執行をすることができます。

代償金を支払ってもらう人にとっては、公正証書にすることは心強いものと言えるでしょう。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそ、トラブルが防止できるといえます。

書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明

2023-12-04

1新たな財産が見つかっても遺産分割協議はやり直さなくていい

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

一部の相続人が勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

相続人が被相続人と同居していない場合など、被相続人の財産の全容を知っていることは少ないでしょう。

相続人が知っている財産について分け方の合意をした後、新たな財産が見つかることがあります。

銀行や証券会社などから手紙が届き財産が判明するケースや自宅内に多額の現金が保管されていたケースなどです。

相続財産の分け方について相続人全員で合意した後に新たな財産が見つかった場合、原則として、当初の合意は有効です。

あらためて、相続財産の分け方についての合意をやり直す必要はありません。

すべての財産について、まとめて合意しなければならないといったルールはありません。

合意できる財産から順次合意しても、問題がありません。

不動産について合意し遺産分割協議書を作成した後、銀行預貯金について合意し遺産分割協議書を作っても差し支えありません。

相続財産全部についてまとめて合意しても一部の財産だけ合意しても、相続人全員の合意であれば有効な合意です。

新たな財産が見つかった場合、見つかった新たな財産について相続人全員で合意ができれば何も問題はありません。

先の遺産分割協議が無効になることはないから、やり直しをする必要はありません。

2遺産分割協議がやり直しになる例外

①新たな財産があったら遺産分割協議で合意をしなかった場合

相続財産の分け方について相続人全員で合意した後に新たな財産が見つかった場合、原則として、当初の合意は有効です。

あらためて相続財産の分け方についての合意をやり直す必要はありません。

やり直しをしなければならないのは、例外です。

新たに見つかった財産が非常に価値の高い財産であることがあります。

その財産の存在を知っていたら、遺産分割協議で合意をしなかったと言える場合です。

非常に価値の高い財産である場合、遺産分割協議の前提が大きく変わると言えます。

過去の遺産分割協議を無効にしないと不公平になる場合、やり直しをした方がいいでしょう。

もちろん新たに見つかった財産が非常に価値が高い財産である場合であっても、相続人全員の合意で新たに見つかった財産だけ合意することもできます。

②財産を隠していた場合

一部の相続人が財産を独り占めしようと考えて、財産を隠していることがあります。

遺産分割協議後に隠していた財産が見つかった場合、他の相続人は納得がいかないでしょう。

遺産分割協議を無効にしてやり直しをするように主張することができます。

③遺産分割協議のやり直しはハードルが高い

相続人全員で合意した遺産分割協議は、原則として、やり直しはできません。

相続人の1人が気が変わったからと言って、やり直しをしなければならなくなると、いつまでたっても遺産分割協議は終わりません。

相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。

相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定したら、その後、相続人が死亡しても協議のやり直しはできません。

④相続人全員がやり直しの合意がある

当事者全員が別の分け方の方が良かったと納得できることがあります。

相続人全員が納得している場合、遺産分割協議のやり直しができます。

単に新たな財産が見つかっただけの場合、やり直しをすることはできないでしょう。

新たな財産が見つかったことで相続人全員が別の分け方の方が良かったと納得している場合、遺産分割協議のやり直しができます。

遺産分割協議のやり直しは、多数決ではありません。

相続人全員の合意が必要です。

相続人のうち1人でもやり直しに反対の人がいた場合、遺産分割協議のやり直しはできません。

遺産分割協議は、相続人全員で合意解除をすることができます。

3遺産分割協議をやり直しても財産は取り返せない可能性がある

遺産分割協議ができた場合、財産を相続する人は相続手続をします。

相続手続をしたら、相続財産を処分することがあるでしょう。

不動産を相続した相続人は、すぐに売却することがあります。

不動産を売買したら、所有権移転登記をします。

売却した後になって、新たな財産が見つかることがあります。

非常に価値の高い財産の場合、遺産分割協議のやり直しを請求するかもしれません。

遺産分割協議をやり直しても、不動産の売買は無効になりません。

不動産の買主に不動産を返して欲しいということはできません。

遺産分割協議のことを何も知らない買主は、急に返してくれと言われても困るからです。

遺産分割協議の内容に問題があることをあらかじめ知っていたなどの事情があるときは、不動産を返して欲しいと言えます。

第三者に財産が渡ってしまった場合は、基本的に取り返すことはできません。

4遺産分割協議後に借金が見つかったら

①原則として相続放棄はできない

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。

相続人が知っている財産について分け方の合意をした後、新たな財産が見つかることがあります。

ときには消費者金融などからの多額の借金であることがあります。

被相続人が多額の借金を残していた場合、相続放棄をすることが考えられます。

相続財産を処分していた場合、単純承認になります

遺産分割協議は、相続財産について相続分があることを認識していることを前提とした行為です。

遺産分割協議は、相続財産に対する相続分を処分する行為です。

相続財産を処分する行為だから、単純承認をしたと言えます。

単純承認をした場合、撤回することはできません。

単純承認をした後、撤回して相続放棄をしたいと言っても原則として認められません。

②遺産分割協議が無効であれば相続放棄が認められる余地がある

相続債務が存在しないか相続放棄をするに足りないほどの少額に過ぎないものと誤信した場合があります。

被相続人と相続人の生活状況や他の相続人の協議内容によっては遺産分割協議が無効とすることが妥当な場合があります。

遺産分割協議が無効であれば、遺産分割協議をしたことで単純承認があったと見ることはできません。

債務の全容を認識したときから3か月以内であれば相続放棄をすることができます。

上記は大阪高裁の決定ですが、事例によっては相続放棄が認められることも認められないこともあります。

遺産分割協議が無効になる場合は、相続放棄が認められる余地があると考えられます。

③債権者は法定相続分で相続人全員に借金を請求することができる

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。

相続財産だから相続人全員で分け方を決めることができます。

相続人全員で借金をだれが負担するのか決めても、合意内容は相続人内部の合意事項に過ぎません。

相続人内部の合意事項だから、債権者には関係ない話です。

相続人内部の合意事項に関係なく、債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金を請求することができます。

遺産分割協議書に「相続人○○が借金を引き継ぐ」と記載して相続人全員が署名して実印押印しても債権者には関係ありません。

5新たな財産が見つかった後のトラブル防止のためにできること

①財産調査をしっかりやる

まずは遺産分割協議をする前にしっかりとした財産調査をすることが大切です。

②記載のない財産の分け方について合意しておく

(1)記載のない財産が見つかった場合に取得者をあらかじめ決めておくことができる

相続財産の分け方は相続人全員で話し合いによる合意をして決める必要があります。

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合、あらためて合意するのが原則です。

相続発生後に長期間経過してから、あらたに記載がない財産が見つかることがあります。

あらためて合意することが煩わしいかもしれません。

相続人全員の合意がないと、相続手続を進めることができません。

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合に備えて、財産の取得者を決めておくことができます。

遺産分割協議書には次のように記載するといいでしょう。

記載例

本遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明した場合、相続人○○○○が取得する。

(2)記載のない財産が見つかった場合に取得割合を決めておくことができる

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合に備えて、財産の取得者を決めておくことができます。

遺産分割協議書に記載がない財産が莫大なプラスの財産であった場合、他の相続人は穏やかな気持ちでいられないでしょう。

財産の取得者は、複数にすることができます。

複数の相続人が取得する場合、取得割合を決めておくことができます。

遺産分割協議書には、次のように記載するといいでしょう。

記載例

本遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明した場合、相続人○○○○と相続人□□□□が各2分の1の割合で取得する。

(3)記載のない財産が見つかった場合あらためて協議をすると決めておくことができる

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合、あらためて合意するのが原則です。

原則どおり、相続人全員で合意することができます。

遺産分割協議書には、次のように記載するといいでしょう。

記載例

本遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明した場合、相続人全員であらためて協議する。

遺産分割協議の際に、新たな財産が見つかったときに備えて話し合いをしておくことは重要です。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は、遺産の分け方について相続人全員による合意内容を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそ、トラブルが防止できるといえます。

書き方に不備があると、トラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかく話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書に割印・契印

2023-09-25

1遺産分割協議書で相続人全員の合意を証明する

①相続財産は相続人全員の合意で分け方を決める

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いをします。

相続人全員による合意をして、相続財産の分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要があります。

相続人全員が一つの場所に集まる必要はありません。

電話でもメールでも差し支えありません。

一度に相続人全員合意する必要はありません。

一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。

最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。

全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。

一部の財産についてだけ合意をすることもできます。

②遺産分割協議書は合意内容の証明書

相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めなければなりません。

相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。

口頭の合意であっても、合意は有効です。

相続財産の分け方について相続人全員で合意した後は、相続手続をします。

口頭の合意をしたと言っても、相続手続先には信用してもらえません。

相続手続先には信用してもらうために、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。

合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。

③遺産分割協議書に記名して実印で押印

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を証明する書面です。

遺産分割協議書には、相続人全員が記名して実印で押印します。

実印は、大切な場面で使われる印章です。

本人が大切に保管しているはずです。

実印で押印してあるということは、遺産分割協議書の内容を本人自身が確認したと言えます。

相続人全員について本人自身が確認した証拠として実印で押印してもらいます。

④遺産分割協議書に印鑑証明書を添付

実印は、市区町村役場で登録してある印章です。

市区町村役場で印鑑証明書を発行してもらうことができます。

遺産分割協議書に実印で押印したうえで、印鑑証明書を添付します。

印鑑証明書を添付することで、実印であることを証明することができるからです。

相続人全員が実印で押印した遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を提出することで、相続人全員が合意したことを信用してもらえます。

⑤相続登記の印鑑証明書は古いものでいい

相続登記を申請するときに、多くの場合、遺産分割協議書と印鑑証明書を提出します。

相続登記で提出する印鑑証明書は、期限はありません。

古い印鑑証明書を提出しても、問題なく受け付けてもらえます。

遺産分割協議書の日付より、古い印鑑証明書でも問題ありません。

相続が発生した日付より、古い印鑑証明書でも問題ありません。

相続手続先によっては、独自ルールで印鑑証明書の日付の期限を決めていることがあります。

2遺産分割協議書に割印・契印

①割印・契印はなくても遺産分割協議書は有効

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容をとりまとめた書面です。

割印・契印はなくても、遺産分割協議書は有効です。

相続財産の分け方についての相続人全員の合意は、口頭の合意であっても有効だからです。

口頭の合意では相続手続先に信用してもらえないから、文書が必要になるだけです。

相続手続先に信用してもらうために、割印・契印をします。

②ページの抜き取りや差し替えができる状態では相続手続を進められない

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

合意内容を文書に取りまとめた後、間違いないことを確認して相続人全員が記名し実印で押印します。

記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、文書の内容は真正な合意内容ではなくなってしまいます。

遺産分割協議書が抜き取りや差し替えができる状態である場合、文書の内容は真正な内容でないおそれがあります。

遺産分割協議書の内容が真正でないおそれがある場合、相続手続先は相続人全員の合意があると信用することはできないでしょう。

相続手続を進めることができなくなります。

遺産分割協議書をクリップなどで簡単に綴じただけの場合、相続手続を進めることは難しいでしょう。

③相続人全員で割印・契印を施す

遺産分割協議書の内容が多い場合、複数ページに渡ることがあります。

複数ページに渡る場合、一般的なのが契印を施すことです。

契印とは、文書が複数ページに渡るときに1通の文書であることを証明するためページの見開きにまたがって押印することです。

見開きにまたがって押印することを割印と呼ぶ人もいます。

契印は、最初のページから最後のページまで施します。

最初のページから最後のページまで契印がある場合、書類の改ざんがないことを証明できます。

遺産分割協議書では、相続人全員が実印で契印を施します。

記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、契印がつながらなくなります。

契印がつながっている場合、改ざんがないと言えます。

④袋とじにして相続人全員で割印・契印を施す

財産内容が複雑であったり、相続財産の分け方の合意内容が複雑である場合、遺産分割協議書は長文になります。

ときには何十ページにも及ぶことがあります。

最初のページから最後のページまで契印を施すのは、手間がかかります。

遺産分割協議書を袋とじにするといいでしょう。

袋とじにするとき、製本テープを使うと便利です。

袋とじにしてあれば、最初のページから最後のページまで契印を施す必要はありません。

製本テープと文書にまたがるように相続人全員の契印が必要になります。

⑤割印・契印がないと相続手続ができない可能性

相続手続先に信用してもらうために、割印・契印をします。

契印がつながっていることで、一部のページの抜き取りや差し替えがされていないことを証明できるからです。

割印・契印がない場合、相続手続先によっては抜き取りや差し替えがされたかもしれないと考えます。

抜き取りや差し替えがされた場合、相続人全員の合意がないおそれがあります。

相続人全員合意がない場合、相続手続を進めることはできません。

割印・契印がない場合、相続手続を進めることはできなくなる可能性があります。

3遺産分割協議書に割印・契印をなしにする方法

①遺産分割協議書が1枚なら割印・契印は不要

一部のページの抜き取りや差し替えがされていないことを証明するため、割印・契印をします。

遺産分割協議書が1枚の場合、抜き取りや差し替えはできません。

遺産分割協議書が1枚なら、割印・契印は不要です。

②両面印刷する

遺産分割協議書の内容が2ページ以内の場合、紙の両面に印刷することができます。

2ページ以内の制約はあるものの、両面印刷は手軽にすることができるのでおすすめです。

遺産分割協議書を両面印刷した場合、抜き取りや差し替えはできません。

遺産分割協議書を両面印刷した場合、割印・契印は不要です。

③A3に見開きで印刷する

一般的な家庭用プリンターではA4の紙しか印刷ができない場合が多いでしょう。

A4の紙を2枚並べて、A3の紙にコピーすることができます。

コピーした紙に相続人全員が記名し実印で押印をすることができます。

A3の紙にコピーするのであれば、コンビニエンスストアのコピー機で作ることができます。

A3に見開きで印刷した場合、抜き取りや差し替えはできません。

A3に見開きで印刷した場合、割印・契印は不要です。

④財産ごとに複数の遺産分割協議書を作る

遺産分割協議書は、すべての財産についてまとめて作成してもいいし、一部の財産について作成しても構いません。

まとめて作成した遺産分割協議書も、一部の財産についてだけ作成した遺産分割協議書も有効です。

相続登記用の遺産分割協議書の場合、不動産だけについて合意した遺産分割協議書を作るのが通例です。

財産ごとに遺産分割協議書を作った場合、1枚で収まることが多いでしょう。

遺産分割協議書が1枚なら、割印・契印は不要です。

4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

代償分割をするときの遺産分割協議書

2023-09-04

1代償分割で公平な遺産分割協議が期待できる

①代償分割とは

相続財産にはいろいろな財産が含まれています。

不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。

相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。

相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができる場合があります。

代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。

②代償分割のメリット

(1)共有のトラブルを防ぐことができる

不動産のような分けにくい財産を平等に分けたい場合、共有にする方法が思い浮かぶかもしれません。

不動産を共有にした場合、活用方法や処分方法について共有者間で合意ができなくなるおそれがあります。

代償分割をする場合、不動産を単独所有にすることができますから、共有のトラブルにはなりません。

(2)不動産を処分しなくてよい

換価分割の場合、不動産を手放してお金に換えた後、お金で分けます。

不動産に相続人の思い入れのある場合、手放すことに罪悪感を感じてしまうかもしれません。

代償分割では、不動産自体を処分することはありません。

(3)不動産の利活用がしやすい

現物分割の場合、現物の不動産を分割します。

極端に小さな土地になると利活用が難しくなるでしょう。

利活用できない不動産は価値が下がる心配があります。

③代償分割のデメリット

(1)不動産の評価額を決めるのが難しい

代償分割をする場合、換価分割と違って実際に不動産を処分するわけではありません。

不動産の評価に対する考え方は、いくつもあります。

不動産をいくらと考えて代償分割をするのか相続人間の合意がまとまらないおそれがあります。

代償金を払う人から見れば不動産の価値は低い方が有利です。

代償金を受け取る人から見れば不動産の価値は高い方が有利です。

(2)代償金を準備する必要がある

代償分割をする場合、不動産を相続する人が代償金を払わなければなりません。

もともと住んでいた自宅の名義書き換えのために、代償金を払うことに納得できなくなるかもしれません。

2遺産分割協議で代償分割をするときの注意点

①代償分割であることをはっきり記載する

相続財産の分け方は相続人全員の合意が不可欠です。

相続人全員の合意ができたら文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議書にはっきり書くことで、紛争を防止することができます。

代償分割の場合、次のことを明示するといいでしょう。

(1)代償分割でどの相続人が財産を相続するか

(2)代償分割でだれからだれに代償が支払われるか

遺産分割協議書に代償分割をすることをはっきり書くことで、遺産分割の一環であることを示すことができます。

遺産分割協議書に代償分割をすることが書いてない場合、単なる贈与であると判断されかねません。

単なる贈与と判断された場合、金額によっては贈与税が課されることになります。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

②代償金の決め方

遺産分割協議書に代償分割をすることをはっきり書くことで、原則として、単なる贈与ではないと示すことができます。

代償分割をすると書いて金銭を支払う場合でも、実質的に代償金でないことがあります。

代償分割は、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を払う分割方法です。

分けにくい財産の評価額を大幅に超える代償金を払う合意をした場合、実質的に代償金とは認められないでしょう。

代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。

例えば、相続財産が自宅1000万円のみで、相続人が長男と次男の2人の場合があります。

自宅を長男が相続した場合、長男が固有の財産から500万円程度の代償金を支払うのであれば問題はありません。

長男が固有の財産から2000万円の代償金を支払う場合、代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。

例えば、自宅1000万円を長男が相続した場合で、かつ、次男が生命保険の死亡保険金3000万円を受け取っている場合があります。

次男から長男へ1000万円支払うのが平等に見えるかもしれません。

次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払った場合、代償金とは認められないでしょう。

生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産であって相続財産ではないからです。

相続による遺産分割とは無関係に贈与があったと言えます。

遺産分割協議書に代償金と明記しても、実質的に代償金とは認められません。

次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払うこと自体はできないことではありません。

自分の固有の財産は、自由に贈与をすることができるからです。

自分の固有の財産を贈与した場合、金額によっては贈与税が課されます。

3代償分割をするときの遺産分割協議書の書き方と注意点

①代償分割であることを明示する

記載例

相続人○○○○は第○条に記載された財産を取得する代償として、相続人□□□□に対して金○○万円を令和□年□□月□□日限り振込みの方法により支払う。

代償であることを明示していない場合、単なる贈与と判断されるおそれがあります。

単なる贈与と判断された場合、金額によっては贈与税が課されることになります。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

②代償が金銭である場合の書き方

記載例

相続人○○○○は第○条に記載された財産を取得する代償として、相続人□□□□に対して金○○万円を令和□年□月□日限り、以下の口座に振込みの方法により支払う。

振込手数料は、相続人○○○○が負担する。

□□銀行□□支店

普通預金

口座番号□□□□□□□

口座名義人 □□□□

振込口座を明記し、振込手数料の負担についても記載しておくといいでしょう。

③代償が金銭以外である場合の書き方

記載例

相続人○○○○は第○条に記載された財産を取得する代償として、相続人□□□□に対して相続人○○○○所有の下記不動産を譲渡する。

所有権移転登記手続は、令和□年□月□日までにする。

登録免許税、司法書士報酬等所有権移転のための費用は、相続人○○○○の負担とする。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○○番

地目 宅地

地積 ○○平方メートル

代償分割をする場合、代償は金銭以外でも差し支えありません。

固有の財産である不動産を代償として贈与することができます。

不動産を特定するために、登記簿の内容を一字一句間違いなく書き写します。

④代償を受け取る相続人が複数いる場合の書き方

記載例

相続人○○○○は第○条に記載された財産を取得する代償として、下記のとおり代償金を支払う。

いずれも、振込手数料は、相続人○○○○が負担する。

相続人□□□□に対して

代償金額 金□□万円

支払期限 令和□年□□月□□日限り

□□銀行□□支店

普通預金

口座番号□□□□□□□

口座名義人 □□□□

振込みの方法により支払う。

相続人◇◇◇◇に対して

代償金額 金◇◇万円

支払期限 令和◇年◇◇月◇◇日限り

◇◇銀行◇◇支店

普通預金

口座番号◇◇◇◇◇◇◇

口座名義人 ◇◇◇◇

振込みの方法により支払う。

4代償金を払ってもらえなくても一方的な解除はできない

代償分割は、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を払う分割方法です。

代償金を払うと合意したのに、代償金の支払いが惜しくなる場合があります。

代償金の支払いがない場合、遺産分割協議をやり直したいと考えるかもしれません。

一般的な売買契約において、代金を支払わない場合、契約を解除することができます。

相続財産においては、このような解除制度はありません。

いったん相続財産の分け方を相続人全員で合意した場合、遺産分割協議は終了します。

遺産分割協議が終了した後は、代償金を支払う人と受け取る人の問題になります。

金銭を支払う人と受け取る人の話し合いで解決を図ります。

代償金を支払うと約束した人が支払ってくれなくても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。

相続財産の分け方の合意において、代償金の支払が重要な要素であっても債務不履行を理由として解除することはできません。

5遺産分割協議書を公正証書にすると強制執行ができる

遺産分割協議書は、私文書で作られることが大部分です。

私文書で作られた遺産分割協議書であっても、法的に有効な遺産分割協議書です。

代償分割をする場合、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償を払う必要があります。

代償を支払う必要があるのに支払いをしてくれない場合、そのままでは強制執行をすることはできません。

強制執行をするためには、裁判所に訴えて勝訴判決などの債務名義が必要です。

遺産分割の代償金支払いのために、裁判所に訴えるとなると一般の人にはハードルが高いものです。

遺産分割協議書は、公証役場で公正証書にすることができます。

公証人が関与して、代償の支払いを約束してもらうことができます。

相続人が支払う代償が金銭である場合、支払いをしなかったら強制執行に服することを約束してもらうことができます。

相続人○○が上記金銭の支払いをしなかったときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した。

上記のような文言がある場合、公正証書で強制執行をすることができます。

お金を払ってもらう人にとっては、心強いものと言えます。

公正証書でない遺産分割協議書では、強制執行ができません。

代償が金銭でない場合、公正証書で遺産分割協議書を作っても強制執行ができません。

遺産分割協議書を公正証書にした場合で、かつ、代償が金銭の場合、裁判をすることなく直ちに強制執行することができます。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

もともとトラブルの火種があるのなら、いっそう慎重になる必要があります。

遺産分割協議書は公正証書にしなくても済むことが多いものですが、慎重を期して公正証書にした方がいい場合があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、その後にトラブルになるのは残念なことだからです。

公正証書にするためには、手間と費用がかかります。

公正証書にする手間と費用を惜しむと、裁判をするなど大きな手間と高額な費用を負担することになります。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を公正証書にしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

共有持分があるときの遺産分割協議書

2023-08-23

1被相続人が共有者であるとき共有持分は相続財産

①共有持分とは

被相続人が不動産などを第三者と共有している場合があります。

被相続人が不動産などを第三者と共有していた場合、被相続人が持っていた共有持分は相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。

相続財産は、相続人全員で話し合いによる合意ができれば、どのように分けても構いません。

被相続人と不動産を共有していた共有者が、相続人である場合があります。

被相続人の共有持分は、共有者である相続人が相続すると合意することができます。

共有者でない相続人が相続すると合意することができます。

話し合いによる合意ができれば、どちらでも構いません。

どのような合意をするかについて、他の共有者に承諾を得る必要はありません。

被相続人の共有持分をだれが相続するかについて、他の共有者は不服を言うことはできません。

一般的に、共有はデメリットが多いものです。

合意できるのなら、被相続人と不動産を共有していた共有者である相続人が相続するといいでしょう。

②被相続人が私道を共有している場合がある

普段、道路を使っていろいろな所へ出かけます。

一般の交通の用に用いるのが道路です。

行政が設置管理をする道路が公道です。

一般私人が設置管理する道路が私道です。

私道は、ひとりで所有していることも、近隣住民とみんなで所有していることもあります。

私道をみんなで共有している場合、分割した割合で道路を所有しています。

被相続人が自宅を所有している場合、自宅の土地と建物を所有しています。

土地建物の他に、自宅に至る私道を近隣住民とみんなで所有している場合があります。

現実には、私道であっても公道と同じように地域の人が通行しているでしょう。

所有者本人も私道を近隣住民とみんなで所有していることを忘れているかもしれません。

所有者本人が忘れている場合、家族はなおさら認識すらしていないでしょう。

土地や建物を所有している場合、固定資産税がかかります。

条件を満たした場合、私道には固定資産税が課されません。

固定資産税が課されないから、固定資産税の課税明細書に記載されません。

土地を購入したときの売買契約書や自宅の権利証を確認すると、判明することがあります。

2共有持分があるときの遺産分割協議書

①共有持分があるときの遺産分割協議書の記載例

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

持分 ○分の○

所在 ○○市○○町○丁目

家屋番号 ○番○

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡

持分 ○分の○

②共有持分があるときの遺産分割協議書の注意点

相続財産は、相続人全員の話し合いによる合意で分け方を決めます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書が遺産分割協議書です。

遺産分割協議書には、相続財産の分け方についてのみ記載します。

被相続人が共有者の一人であったとしても、他の共有者について記載する必要はありません。

被相続人の共有持分は、共有者である相続人が相続すると合意することができます。

遺産分割協議書には、被相続人の共有持分についてのみ記載します。

共有者である相続人がもともと持っていた分については、何も書きません。

共有者である相続人がもともと持っていた分は、相続財産ではないからです。

被相続人の共有持分は、共有者でない相続人が相続すると合意することができます。

どのような合意をするかについて、他の共有者に承諾を得る必要はありません。

遺産分割協議書に他の共有者が記名押印することはありません。

他の共有者から、別途書類を書いてもらう必要はありません。

被相続人の共有持分をだれが相続するかについて、他の共有者は不服を言うことはできないからです。

③相続登記用の遺産分割協議書は不動産のみ記載でよい

合意の対象となった不動産を特定できるように記載します。

「自宅」などの記載は客観的に特定できるとは言えません。

家族にとっては自宅は当然のことですが、法務局など第三者にとっては自宅はどこにあるどの不動産なのか分からないからです。

不動産の所在は自宅住所と異なることが多いので、登記簿謄本を書き写しましょう。

固定資産税の課税明細書は、登記簿謄本と異なる表記がされていることや内容が省略されている場合があります。

登記簿謄本と異なる表記の場合、相続登記が認められない可能性があります。

登記簿謄本の記載を見て、書き写します。

財産すべてを1通の遺産分割協議書で作成することが多いですが、財産ごとに分けて作っても差し支えありません。

相続登記用の遺産分割協議書は、不動産だけ書いて預貯金などは別に作ることも多いものです。

たくさんの不動産がある場合、法務局の管轄ごとに別に作成することもあります。

それぞれの遺産分割協議書に添付書類を用意すれば、同時に相続登記を進めることができるからです。

3後から共有持分が見つかったら

自宅の土地や建物は相続財産と認識していても、私道持分は見落としがちです。

被相続人のものは、原則として、相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

自宅の土地や建物のみ分け方の合意をして遺産分割協議書を作成した場合、原則として、自宅の土地や建物のみの合意として有効です。

私道については、相続人全員の共有財産のままです。

自動的に、自宅の土地や建物を相続する相続人のものになることはありません。

私道持分について合意がない場合であっても、相続財産全体について合意をやり直す必要はありません。

私道持分を見落としていた場合、あらためて、私道部分について相続人全員で合意をすることができます。

相続財産を分け方は、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意ができるのであれば、相続財産全部についてまとめて合意をする必要はありません。

合意できる財産から、順次合意した方が合理的なこともあるでしょう。

一部の相続財産だけ合意した遺産分割協議書も問題はありません。

私道持分は相続財産であることを見落とされがちです。

自宅の土地や建物について分け方の合意をしてから長期間経過した後、私道持分があることに気づくケースが少なくありません。

相続が発生した後に長期間経過した場合、相続人全員による合意が難しくなりがちです。

当初の相続人が行方不明になっているかもしれません。

当初の相続人が認知症になっているかもしれません。

当初の相続人が死亡しているかもしれません。

時間が経過すれば、相続人の事情が変わることがあります。

相続財産の分け方の合意は、できる限り早く済ませましょう。

4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

話し合いによる合意を適切に文書にする必要があります。

自宅や収益不動産を家族と共有している場合、被相続人も家族も共有していることをよく認識しているでしょう。

私道持分などを近隣住民とみんなで所有している場合、被相続人も家族も共有していることを見落としがちです。

私道持分がないと私道を使う権利がありません。

宅地を使うために、ガスや水道などの引き込み工事が必要になります。

私道持分がないと、引き込み工事ができなくなります。

他人の土地を勝手に掘り起こすことはできないからです。

宅地だけでは資産価値が著しく低下します。

自宅の土地と建物の分け方について合意しても、自宅の土地と建物の分け方についてのみの合意です。

自動で私道について合意があったとされることはありません。

相続人全員で合意をして、合意内容を文書にすることが重要です。

相続手続では、このようなトラブルに知らず知らずに巻き込まれてしまいます。

相続手続で不安になったら、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言書を無視して遺産分割協議

2023-08-14

1遺言書があれば遺産分割協議は不要

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

被相続人の財産は、原則として、被相続人の意思が最大限尊重されるべきものでしょう。

相続人としても、被相続人の意思を尊重し、遺言書の内容を実現させてあげたいと思うでしょう。

遺言書がない場合、相続財産は相続人全員の共有になります。

相続人全員の共有になった相続財産は、相続人全員で、分け方の合意をしなければなりません。

相続人だけで話し合いをしても合意できない場合、家庭裁判所で調停や審判をします。

関係性の薄い相続人がいる場合、相続人全員による話し合いでの分け方の合意はまとまりにくくなります。

遺言者は、相続財産の分け方を指定することができます。

遺言書がある場合、相続人全員で相続財産の分け方について話し合う必要はありません。

遺言書の内容どおりに相続財産を分ければいいからです。

2遺言書があっても遺産分割協議が必要になるケース

①遺言書に記載のない財産がある場合

遺言書がある場合、遺言書のとおりに相続手続をします。

遺言書を作成する場合、全ての財産について分け方を記載する必要はありません。

財産の一部だけ遺言書に記載されている場合があります。

遺言書に記載のない財産が見つかった場合、記載のない財産は原則どおり相続人全員の共有財産になります。

相続人全員の共有財産になるから、相続人全員で分け方の合意をしなければなりません。

②遺言書が無効の場合

遺言書は厳格な書き方のルールがあります。

この書き方ルールに添わない遺言書が見つかることがあります。

せっかくの遺言書ですが、書き方ルールに添わないと、遺言書は無効になります。

遺言書が無効になる場合、遺言書はなかったものとして扱われます。

遺言書がない場合、被相続人の財産は原則として相続人全員の共有財産になります。

相続人全員の共有財産になるから、相続人全員で分け方の合意をしなければなりません。

③特定遺贈の放棄があった場合

遺贈とは、被相続人が遺言によって法定相続人や法定相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

遺言書は相続人らの関与なしに作ることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。

遺贈は、ご辞退することができます。

特定遺贈をご辞退した場合、相続人全員の共有財産になります。

相続人全員の共有財産になるから、相続人全員で分け方の合意をしなければなりません。

④受遺者が遺言者より先に死亡した場合

受遺者とは、遺贈によって財産を受け取る人のことです。

遺言書を作成したときには元気だったのに、遺言者より先に受遺者が死亡することがあります。

遺贈によって財産を受け取る人がいなくなった場合、その財産は、相続人全員の共有財産になります。

受遺者の子どもなどが、代わりに受け取るのではありません。

相続人全員の共有財産になるから、相続人全員で分け方の合意をしなければなりません。

「遺言者より先に受遺者が死亡した場合、受遺者の子どもに遺贈する」遺言を作ることができます。

遺言者がこのような遺言をしたいのであれば、遺言書に明記しておく必要があります。

遺言書に書いてないのに、自動的に先に死亡した受遺者の子どもが代わりに受け取ることはできません。

⑤包括遺贈があった場合

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

包括遺贈を受けた場合、財産の分け方について相続人全員と合意する必要があります。

遺言書の記載は2分の1などの割合だけで、具体的財産の記載がないからです。

包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。

3遺言書を無視して遺産分割協議ができる

①相続人全員の合意で遺産分割協議ができる

遺言書の内容は遺言者の意思を示すものですから、最大限尊重するべきです。

遺言書の内容があまりに偏ったものである場合、そのまま執行するとトラブルになる気がかりがあります。

トラブルを起こすおそれのある遺言書なのに、あえて執行してトラブルを起こす必要はないでしょう。

相続財産の分け方について、相続人全員で合意した方が合理的です。

相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる内容で遺産分割協議をすることができます。

②遺贈がある場合は受遺者の同意が必要

遺言を確認したところ、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることが記載されている場合があります。

遺言書の内容どおりにしないで相続人の話し合いで遺産分割をしたい場合、あらかじめ受遺者の同意を受けておく必要があります。

遺言書で財産を受け取れるはずだったのに、一方的に受け取る権利を奪うことはできないからです。

③遺言執行者がいる場合は遺言執行者の同意が必要

遺言書で遺言執行者が指名されている場合があります。

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言書の記載にかかる相続財産を処分することはできなくなります。

遺言書に記載されているとおりに遺言執行者が財産を分配する義務があるからです。

遺言書の内容を無視して相続人全員の合意で遺産分割協議をしたい場合、あらかじめ遺言執行者の同意を受けておく必要があります。

4遺産分割禁止の定めは無視できない

遺言書で遺産分割が禁止されている場合があります。

遺産分割禁止の対象は、相続財産の全部でも一部でも構いません。

遺言書で5年を超えない期間について、遺産分割を禁止することができます。

遺産分割禁止の定めは、遺言書以外の方法で生前に定めることはできません。

遺言書で遺産分割が禁止されている場合、相続人全員の合意があっても遺産分割ができません。

相続人全員の合意で遺産分割協議をした場合、遺産分割協議が無効になります。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

換価分割をするときの遺産分割協議書

2023-08-02

1換価分割は事前の合意がポイント

①換価分割とは

相続財産にはいろいろな財産が含まれています。

不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。

相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。

相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、換価分割をすることで合意ができる場合があります。

換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。

実際に売れてからお金で分けるので、不動産の値段をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。

せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられて、話し合いがまとまらないおそれがあります。

売却しようとしたのに買い手がつかないと相続手続きが長引くおそれがあります。

②相続財産を手放すことを合意しておく

換価分割では、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分割します。

せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられると、換価分割が失敗します。

不動産を手放すことついて相続人全員が充分に納得して合意することが重要です。

②売却経費の範囲や支払方法を合意しておく

換価分割では、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分割します。

不動産を売却するためには、多くの経費が掛かります。

不動産の売買を日常的にすることはあまりありません。

不動産の売買価格自体に注目しすぎて、経費は見落としがちです。

経費が掛かること自体にあまり意識が向かない相続人がいます。

どのような経費がどれくらいかかるのか、どのような経費を経費の範囲とするのか相続人全員が共有しておきましょう。

例えば、不動産売却の経費には次のようなものがあります。

(1)相続登記

(2)相続登記の登録免許税

(3)売買仲介手数料

(4)売買契約書の印紙代

(5)残置物の撤去費用

(6)測量費用

(7)建物解体費用

(8)建物滅失登記

(9)譲渡所得税

(10)交通費、郵便費などの実費

上記の中でも発生しない経費があるかもしれません。

建物を解体しなくても売却できるかもしれません。

建物を解体する場合、建物の構造や大きさにもよっても違いますが100万円単位で費用がかかることも少なくありません。

残置物の撤去費用や測量費用は、多くの場合、売却代金を受け取る前に支払います。

各相続人が一々清算する方法は、平等ですが煩雑です。

代表相続人が立て替える方法は、事務がカンタンになる一方で代表相続人の負担が大きいかもしれません。

代表相続人の事務負担が大きいのに相続分が同じ場合、事務負担を不満に思うかもしれません。

相続人全員で売却経費の範囲や支払方法を合意しておくことが重要です。

③売却金額と売却時期を合意しておく

不動産は、いくつもの評価方法があります。

相続人としては不動産を高く売却したいと思うでしょう。

強気の価格設定では、思うように売れないかもしれません。

いつまでたっても売却できないことも充分にあり得ます。

早く売却しようとすれば、思うような値がつかないかもしれません。

相続人全員が売却条件に納得できることが重要です。

④売却までの維持管理費の支払方法を合意しておく

売却するまで、維持管理が必要です。

不動産であれば、固定資産税がかかり続けます。

売却に時間がかかる場合、固定資産税の支払は無視できない金額になります。

人が住まない建物は劣化が早いものです。

定期的な管理が欠かせません。

建物の管理をだれが負担するのか、固定資産税の支払方法をどうするのか相続人全員で合意しておくことが重要です。

2換価分割をするときの遺産分割協議書の書き方

①共有名義にする方法

記載例

第1条

次の不動産は換価分割を行うため相続人〇〇〇〇2分の1、相続人◇◇◇◇4分の1、相続人□□□□4分の1の割合で共有取得する。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

第2条

相続人〇〇〇〇、相続人◇◇◇◇、相続人□□□□は共同して、前条の不動産を売却する。

売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を各相続人の共有持分割合に従って取得する。

共有名義にすると売却手続の代表相続人を決める必要がありません。

固定資産税の納税通知書は、代表者のもとに届きます。

だれが代表者になって固定資産税の納税通知を受け取るか決めて役所に届け出る必要があります。

納税通知を受け取らない相続人が固定資産税を負担しないなどとトラブルになります。

登記が実態に合うので贈与税のトラブルになるリスクを減らすことができます。

共有名義にした場合、不動産の売却手続きに相続人全員が関与しなければなりません。

不動産会社と媒介契約、重要事項説明、売買契約など手続が煩雑になります。

相続人が遠方に住んでいる場合、日程調整だけでも時間がかかりがちになります。

②代表相続人にする方法

記載例

第1条

次の不動産は換価分割を行うことを目的として相続人〇〇〇〇が取得する。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

第2条

相続人〇〇〇〇は、前条の不動産をすみやかに売却する。

売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を次の割合に従って分配する。

相続人〇〇〇〇 2分の1

相続人◇◇◇◇ 4分の1

相続人□□□□ 4分の1

代表相続人を決めておくと、売却手続に関与するのは代表相続人だけになります。

相続人間で合意が不充分の場合、売却条件をめぐってトラブルになりやすくなります。

代表相続人が売却代金をなかなか払ってくれない、売却代金を使い込んだなどのリスクがあります。

登記名義が代表相続人になるので、固定資産税が代表相続人あてに届きます。

相続人間で合意が不充分の場合、負担をめぐって相続人間でトラブルになりがちです。

長期間に渡って売却ができない場合、売却代金の分配に対して贈与税が課されるおそれがあります。

贈与税は、一般的に想像以上に高額になります。

③売却代金を受け取らない相続人名義にする方法

記載例

第1条

次の不動産は換価分割を行うことを目的として相続人〇〇〇〇が取得する。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

第2条

相続人〇〇〇〇は、前条の不動産をすみやかに売却する。

売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を相続人◇◇◇◇が取得する。

多くの場合、売却代金を取得する相続人が売却手続をします。

例えば、高齢や病気などで売却手続をすることが困難な場合があるでしょう。

他の相続人が売却手続に関与した方がスムーズです。

3換価分割で遺産分割協議書を書くときの注意点

①相続登記ができるように記載

相続が発生した後に売却する場合、相続登記が必要です。

相続登記を省略して、買主に所有権移転登記をすることができないからです。

遺産分割協議書は、法務局で相続登記を認めてもらえるように記載する必要があります。

だれが取得するのか明記します。

取得する不動産は、第三者が見て特定できるように記載します。

②売却代金が贈与と判断されないように記載

売却手続に相続人全員が関与するのは、難しいことが多いでしょう。

デメリットも多いものですが代表相続人名義にするケースが多いです。

代表相続人に名義を取得させるのは、換価分割のためであることを明確にします。

そのうえで売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を分配することを明記します。

このような記載があれば、原則として、贈与税の課税はされません。

③長期間売却できないと贈与税が課されるおそれ

遺産分割協議書に「換価分割のため」「売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を分配する」とあれば、原則として、問題になることはありません。

不動産が長期間売却できない場合、売却金の分配が何年も後になることがあります。

売却できなければ、このようなことも止むを得ないことです。

一方で登記名義を得た後、長期間経過してから売却金を分配した場合、実態としては贈与として課税されるおそれがあります。

法律上、換価分割による売却金の分配であって、かつ、遺産分割協議書に記載があっても、課税されるリスクがあります。

このようなリスクを考慮に入れて、代表者名義にすることや売却条件の合意をする必要があります。

4換価分割をするメリット

①相続人に公平に分割することができる

換価分割が選択されるのは、分けにくい財産がある場合です。

相続財産の大部分が自宅不動産の場合、相続人に公平に分けるのが困難です。

いったん売却してお金で分けるのであれば公平に分けることができます。

②代償金を用意しなくてもいい

相続財産の大部分が自宅不動産の場合、相続人に公平に分けるのが困難です。

一部の相続人が自宅不動産を取得して、取得しなかった相続人に代償金を払う場合があります。

このような分割方法を代償分割と言います。

代償分割の場合、財産を取得した相続人が固有の財産から代償金を支払わなければなりません。

代償金が支払えない場合、代償分割はできなくなります。

換価分割では売却代金を分割するから、代償金を準備しなくて済みます。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺産分割協議書の日付

2023-07-24

1遺産分割協議とは

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いをします。

相続人全員による合意をして、相続財産の分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方について、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要があります。

相続人全員が一つの場所に集まる必要はありません。

電話でもメールでも差し支えありません。

一度に相続人全員合意する必要はありません。

一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。

最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。

全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。

一部の財産についてだけ合意をすることもできます。

2遺産分割協議書の日付は相続人全員の合意の日付

①相続発生前の日付は無効

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方を決めるための話し合いが遺産分割協議です。

被相続人の生前に、遺産分割協議をしても無効です。

被相続人の生前は、被相続人の財産だからです。

財産をどのように処分するか被相続人が自分で決めます。

被相続人が認知症などで財産を処分することができなくても、家族が勝手に決めることはできません。

財産の持ち主でない人があれこれ言えるものではないからです。

相続が発生する前の日付が記載された場合、遺産分割協議書は無効になります。

相続が発生する前の遺産分割協議が無効だからです。

②相続発生後に相続人全員であらためて合意

被相続人の生前に、相続財産の分け方について相続人全員で合意をしても無効です。

遺産分割協議は、相続が発生してからする手続だからです。

相続が発生する前に何も話し合いをしていない場合、相続人間でトラブルになりがちです。

将来発生する相続に備えて、相続人になる予定の人が話し合いをすることがあります。

相続人になる予定の人が相続財産になる予定の財産について分け方の合意をしても無効です。

無効の合意だから相続発生後に意見を変更しても、法的にはまったく問題がありません。

推定相続人全員で合意をした時から財産の内容に変更がなく、かつ、相続人に変更がなくても、無効です。

相続が発生した後に、あらためて相続人全員で合意をすることができます。

あらためて合意をしたら、あらためて遺産分割協議書を作成します。

相続が発生した後の合意だから、有効な合意です。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を書面にしたものです。

遺産分割協議書の日付は、相続人全員があらためて合意した日付です。

相続が発生した後の合意を書面にしたから、相続が発生した後に日付になるはずです。

相続が発生した後の日付が記載された遺産分割協議書は有効な遺産分割協議書です。

③日付なしの遺産分割協議書は相続手続に使えない

遺産分割協議書に日付が記載されていない場合、相続人全員による分け方の合意は有効です。

遺産分割協議は、書面にしていなくても有効だからです。

相続手続をする場合、相続人全員で合意をしたことを証明する必要があります。

遺産分割協議が有効であっても、客観的には分かりません。

相続の手続先の人に納得してもらうために遺産分割協議書が必要になります。

遺産分割協議書に日付が記載されていない場合、いつ合意をしたのか客観的には分かりません。

相続発生前の合意は、無効になります。

相続発生後の合意は、有効です。

客観的に有効な遺産分割協議書なのか無効な遺産分割協議書なのか分かりません。

有効なのか無効なのか分からない遺産分割協議書で相続手続を進めることはできません。

④遺産分割協議書の日付がバラバラでも有効

通常、相続財産にはさまざまな財産が含まれます。

相続財産の分け方は、すべての財産をまとめて合意する必要はありません。

相続人全員で合意できる財産から順次合意することができます。

合意できた財産についてだけの遺産分割協議書を作成することができます。

財産ごとに複数の遺産分割協議書がある場合、日付はバラバラになるでしょう。

日付がバラバラである場合、有効な遺産分割協議書です。

⑤遺産分割協議証明書の日付がバラバラでも有効

相続財産の分け方について相続人全員で合意ができた場合、合意内容を書面に取りまとめます。

遺産分割協議書は、相続人全員の氏名を連記する形式です。

遺産分割協議証明書は、合意内容を記載した書面を相続人の人数分準備して各相続人が記名する形式です。

各相続人に一斉発送して一斉に返送してもらうことができます。

遺産分割協議証明書は各相続人がバラバラに作成するから、日付はバラバラになります。

日付がバラバラである場合、有効な遺産分割協議証明書です。

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。

日付がバラバラの遺産分割協議証明書は、最後の日付の日に相続人全員の合意があったを扱われます。

3遺産分割協議書と印鑑証明書の日付

①相続登記では古い印鑑証明書を使うことができる

相続財産の分け方について相続人全員で合意ができた場合、遺産分割協議書に取りまとめます。

相続人全員の合意であることを証明するために、遺産分割協議書は実印で押印します。

遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書で相続登記をする場合、印鑑証明書の日付は問題になりません。

古い印鑑証明書を提出した場合、相続登記をしてもらえないといったことはありません。

遺産分割協議書の日付より古い日付の印鑑証明書を相続登記に使うことができます。

相続が発生する前の日付の印鑑証明書を相続登記に使うことができます。

相続が発生する日より何年も前の日付の印鑑証明書を相続登記に使うことができます。

印鑑証明書は、単に実印であることの証明に過ぎません。

古い印鑑証明書を使う場合、現在の住所や氏名と異なることがあります。

現在の住所や氏名と異なる場合、住所や氏名の移り変わりを別途証明する必要があります。

現在の住所や氏名と異なる場合、客観的には別の人と判断されてしまうからです。

あらためて印鑑証明書を取り直す方が簡単かもしれません。

②銀行などは独自ルールを決めている

相続登記をする場合、古い印鑑証明書を提出しても支障なく手続をすることができます。

銀行預金の相続手続する場合、〇か月以内の印鑑証明書を言われることがあります。

銀行などは独自ルールを決めているからです。

4相続登記後に遺産分割協議をしたときの遺産分割協議書の日付

①相続登記後に遺産分割協議ができる

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意で決めることがほとんどです。

相続人全員の話し合いによる合意が難しい場合に、とりあえず法定相続で相続登記することがあります。

法定相続分で相続登記をした後に、相続財産の分け方について相続人全員の合意が得られることがあります。

法定相続分で相続登記をした後でも、遺産分割協議はできます。

相続人全員の合意した相続財産の分け方は、法定相続分とは異なる分け方でしょう。

相続人全員の合意した分け方に登記をやり直さなければなりません。

一般的に、法定相続分で相続登記をした後、遺産分割協議をすることはあまりありません。

遺言書に家族で仲良く分けなさいとあった場合などがよくあるケースです。

安易に法定相続分による相続登記をするのはおすすめできません。

②相続登記の更正登記はできない

相続登記の時点で間違っている内容だった場合、更正登記をすることができます。

相続登記の時点で正しい内容であったが、後から内容が変更になった場合、更正登記はできません。

法定相続分の相続登記は、その時点では有効な内容の正しい登記です。

後から、相続人全員で話し合いによる合意をして、分け方を決めただけです。

相続登記の時点で正しい登記だったから、更正登記はできません。

③遺産分割協議書の日付で持分移転登記

相続登記の時点で正しい内容であったが、後から内容が変更になった場合、持分移転登記で内容を正しくします。

遺産分割協議の効力は、相続開始のときにさかのぼるとされていますが、遺産分割協議による持分の移転登記を申請します。

持分が移転したと考える方が、権利が移った過程を正確に登記簿上に示すことができるからです。

権利が移った過程を正確に示すため、遺産分割を原因として登記をします。

登記原因日付は、遺産分割協議書の日付です。

遺産分割協議書の日付は、相続人全員の合意があった日付だからです。

法定相続分で共有する相続登記をする場合、登記名義を取得する相続人全員で申請するのが原則です。

相続人全員が申請人にならずに、代表相続人が相続人全員のために相続登記をすることができます。

相続人全員が、登記名義と共有持分を取得します。

申請人にならなかった相続人は、登記名義と共有持分を取得するのに権利証が発行されません。

権利証は、登記名義を取得した人で、かつ、申請人になった人に対してだけ発行されるからです。

遺産分割協議の内容どおりに変更する場合、持分移転登記で内容を正しくします。

持分移転登記では、権利が増える相続人を権利者、権利が減る相続人を義務者として共同で申請します。

権利が減る相続人は、原則として権利証が必要になります。

権利証が発行されていない場合、余計な手間と費用がかかります。

5遺産分割協議書の作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、後々のトラブルが見えていないと、単なる問題の先送りになります。

不動産の共有はその最たるものでしょう。

安易に共有を選ぶと後々トラブルに巻き込まれます。

共有にすることで今後どのような問題が発生するのか、自分達だけではそのリスクは見えにくいかもしれません。

司法書士はこのようなリスクの説明もします。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

数次相続があるときの相続分の譲渡

2023-07-19

1数次相続とは

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

相続財産の分け方について、話し合いがまとまらないうちに相続人が死亡してしまうことがあります。

数次相続とは、話し合いがまとまらないうちに相続人が死亡して相続が発生することです。

死亡した相続人に相続が発生した場合、相続人の地位が相続されます。

最初の相続で話し合いをする地位が、死亡した相続人の相続人に相続されます。

数次相続は、どこまででも続きます。

法律上の制限は設けられていません。

2相続分の譲渡とは

2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。

相続人全員による話し合いのことを遺産分割協議といいます。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人の折り合いがよくない場合、相続人全員の話し合いは大きな負担になります。

相続人全員による合意がされる前であれば、相続人が自分の法定相続分を譲渡することができます。

相続分を譲り渡す相手は、他の相続人のうちだれかでも構わないし、相続人以外の第三者でも構いません。

有償で譲渡することも無償で譲渡することもできます。

自分の法定相続分の全部を譲渡することができるし、自分の法定相続分の一部を譲渡することができます。

自分の法定相続分を譲渡することができるのは、相続人全員の合意をする前だけです。

相続分を譲渡すると、相続分を譲り渡した相続人は相続権を失います。

相続権を失いますから、相続財産の分け方についての、相続人全員の話し合いに参加する必要がありません。

相続分の譲渡を受けた人は、相続財産の分け方を決める話し合いに参加する必要があります。

他の相続人以外の第三者であっても、相続分を譲り渡した人に代わって相続人全員の話し合いに参加します。

相続財産の分け方について合意をするときは、相続分の譲り受けた人が他の相続人以外の第三者であっても、相続人に含めなければなりません。

他の相続人以外の第三者が相続分の譲り受けた場合、相続分の譲り受けた人を除いて、相続財産の分け方の合意をしても、無効になります。

相続分を譲り受けた人を含めて合意をやり直すことになります。

相続人の折り合いがよくない場合、相続財産の分け方の合意は難しくなりがちです。

ときにはトラブルに発展しかねません。

相続人らのもめごとを避けるため、相続分を譲渡することは有効な手段と言えます。

3相続人間の相続分の譲渡はメリットが大きい

相続分を譲渡する相手は、他の相続人のうちだれかでも構わないし、相続人以外の第三者でも構いません。

相続人間で相続分を譲渡する場合、単純に相続財産の分け方について話し合うメンバーが減ります。

人数が減ると話し合いがスムーズになります。

相続人間の相続分の譲渡をした後に遺産分割協議をした場合、被相続人から直接相続登記をすることができます。

相続人間の相続分の譲渡は、相続登記の手間と登録免許税が少なく済みます。

相続人間で相続分を譲渡する場合、贈与税の対象になりません。

相続人間で相続分を譲渡にも注意すべき点はありますが、大きなメリットがあります。

4第三者への相続分の譲渡はデメリットが大きい

①相続人以外の親族は第三者

相続分を譲渡する相手は、他の相続人のうちだれかでも構わないし、相続人以外の第三者でも構いません。

相続分を譲り受ける人が第三者の場合というと、まったくの他人だけをイメージしがちです。

第三者とは、相続人以外の人を指しています。

相続人以外の親族は、第三者です。

相続人は被相続人の配偶者と長男、長女の3人である場合、被相続人の配偶者と長男、長女以外の人は全員第三者にあたります。

被相続人の配偶者が長男に相続分の譲渡をする場合、相続人間の相続分の譲渡です。

被相続人の配偶者が長男の子どもに相続分の譲渡をする場合、第三者への相続分の譲渡です。

②相続人が死亡しても相続人以外の親族は第三者

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員の合意ができないまま長期間経過した場合、一部の相続人が死亡することがあります。

最初の相続における相続人は後に死亡しても、相続人であったことは変わりはありません。

最初の相続における相続人が後に死亡しても、相続人以外の人は第三者であることに変わりはありません。

最初の相続の相続人は被相続人の配偶者と長男、長女の3人である場合、被相続人の配偶者と長男、長女以外の人は全員第三者にあたります。

最初の相続の相続手続中に長男が死亡することがあります。

死亡した長男の子どもは、長男の相続人です。

長男の子どもは長男の相続人であって、最初の相続の相続人ではありません。

最初の相続における被相続人の配偶者が長男の子どもに相続分の譲渡をすることがあります。

長男の子どもに相続分の譲渡する場合、第三者への相続分の譲渡です。

長男の子どもは、最初の相続の相続人ではないからです。

③第三者への相続分の譲渡は相続登記が複雑になる

被相続人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更が必要です。

相続による所有権移転登記ができるのは、相続人に対してだけです。

相続人以外の人に対して、相続登記をすることはできません。

第三者への相続分の譲渡をした場合、相続分を譲り受けた人は相続人ではありません。

相続分を譲り受けた人に対して、相続登記をすることはできません。

被相続人から相続分を譲り受けた人に対して、直接所有権移転登記をすることできません。

被相続人から相続分を譲り受けた人に所有権が移転した事実はないからです。

(1)相続の発生で、相続人全員が法定相続分で共有

(2)一部の相続人が第三者への相続分を譲渡

(3)相続分を譲り受けた人と他の相続人で遺産分割

(1)~(3)の順に事実が発生したのだから、3件の登記申請をします。

相続人が被相続人の配偶者と長男、長女の3人であるケースで、被相続人の配偶者が長男の子どもに相続分の譲渡をすることがあります。

遺産分割協議で最終的に長男の子どもが不動産を取得する場合、次の3件の登記申請をします。

仮に、不動産が5000万円の場合、次の額の登録免許税を納めます。

(1) 相続人全員で法定相続分で相続登記

登録免許税 20万円

(2)相続分の譲渡で〇〇〇〇持分全部移転登記

登録免許税 50万円

(3) 遺産分割で〇〇〇〇持分全部移転登記

登録免許税 10万円

(1)~(3)を順に3件の登記申請をする場合、登録免許税は合計80万円です。

相続分の譲渡がある場合、相続登記を自分でやるのは困難です。

相続登記を司法書士などの専門家に依頼する場合、相応の費用がかかります。

④第三者への相続分の譲渡は相続税と贈与税の対象

相続分を譲渡する相手は、他の相続人のうちだれかでも構わないし、相続人以外の第三者でも構いません。

相続分を譲り受ける人が第三者の場合、譲り渡す人には相続税がかかります。

譲り受ける人には、贈与税がかかります。

5死亡した人が相続する遺産分割協議をすることができる

数次相続が発生した後に、最初の相続人の相続人に相続分の譲渡をすることがあります。

最初の相続人の相続人への相続分の譲渡は、相続人間の相続分の譲渡ではありません。

第三者への相続分の譲渡です。

第三者への相続分の譲渡した場合、はるかに大きな手間と高額の費用がかかります。

最初の相続人の相続人に相続財産を取得させたい場合、別の方法で大きな手間と高額の費用を節約することができます。

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

相続財産の分け方の話し合い中に一部の相続人が死亡した場合、相続人の相続人が話し合いに参加します。

死亡した相続人の相続人と他の相続人全員で、死亡した相続人が相続する合意をすることができます。

死亡した相続人が相続する合意をした後、死亡した相続人の相続人全員で相続財産の分け方を話し合います。

最初の相続人の相続人に相続財産を取得させることができます。

相続人全員の話し合いによる場合、第三者への相続分の譲渡をしていません。

第三者への相続分の譲渡のような大きな手間と高額の費用をかける必要がありません。

6相続人間で相続分の譲渡をした後に死亡したら相続人が証明書

①相続分の譲渡は口頭の合意も有効

相続分の譲渡は、相続分の譲り渡す人と譲り受ける人の合意で成立します。

相続分の譲り渡す人と譲り受ける人が合意していた場合、口頭の合意であっても有効です。

②相続分の譲渡をしたら相続分譲渡証明書で手続

相続分の譲渡をした場合、相続分を譲り渡した人は遺産分割協議に参加しません。

相続財産の分け方について合意しないから、遺産分割協議書に記名押印をしません。

相続人全員の合意がない遺産分割協議は、無効です。

一部の相続人が含まれていない場合、遺産分割協議書は無効であると誤解してしまうでしょう。

相続分の譲渡は、口頭の合意であっても有効です。

口頭で合意したと主張しても、相続手続先は信用してくれません。

相続分の譲り渡した人と譲り受けた人で、相続分譲渡証明書を作成します。

相続分譲渡証明書に実印で押印して印鑑証明書を添付します。

③相続分譲渡証明書を相続人が作成できる

相続分の譲渡は、口頭の合意であっても有効です。

相続分の譲渡が有効に成立した後、相続分譲渡証明書を作成する前に当事者が死亡することがあります。

相続分の譲渡が有効に成立した後に当事者が死亡した場合、相続分の譲渡が無効になることはありません。

相続分譲渡証明書を作成していない場合、相続手続先は口頭の合意を信用してくれません。

相続分の譲渡が有効に成立した事実を当事者の相続人が証明することができます。

死亡した当事者の相続人全員で証明書を作成します。

死亡した当事者の相続人全員が記名し実印で押印して印鑑証明書を添付します。

④相続人による譲渡証明書の記載例

相続分譲渡証明書

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人の氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 昭和 〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 令和 〇〇年〇〇月〇〇日

私は上記被相続人の相続につき、下記譲渡人が下記譲渡人の相続分全部を下記譲受人に無償で譲渡したことを証明します。

令和 〇〇年〇〇月〇〇日

相続分譲渡人 

相続分譲渡人の最後の本籍 △△県△△市△△町△丁目△番地

相続分譲渡人の最後の住所 △△県△△市△△町△丁目△番△号

相続分譲渡人の氏名   △△ △△

相続分譲渡人の生年月日 昭和 △△年△△月△△日

相続分譲渡人の死亡日 令和 △△年△△月△△日

相続分譲受人

相続分譲受人の最後の本籍 ◇◇県◇◇市◇◇町◇丁目◇番地

相続分譲受人の最後の住所 ◇◇県◇◇市◇◇町◇丁目◇番◇号

相続分譲受人の氏名   ◇◇ ◇◇

相続分譲受人の生年月日 昭和 ◇◇年◇◇月◇◇日

相続分譲受人の死亡日 令和 ◇◇年◇◇月◇◇日

証明者

□□県□□市□□町□丁目□番□号

□□ □□(実印)

7不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

相続手続は一生のうち何度も経験するものではないため、だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。

不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。

相続分の譲渡など、難しい言葉ではないがよく分からないものもあります。

数次相続が発生しているような事例では手に負えなくなるでしょう。

日常のお仕事や家事をこなしたうえに、相続手続きをするのは思う以上に精神的に負担が大きいことです。

司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、多くの方は疲労困憊になってしまうものです。

相続手続に疲れてイライラすると普段は温厚な人でも、トラブルを引き起こしかねません。

司法書士などの専門家はこのような方をサポートします。

疲労困憊になる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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