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司法書士に遺言書作成を依頼する

2023-09-22

1遺言書の種類

①自筆証書遺言と公正証書遺言がほとんど

遺言書の種類は民法という法律で決められています。

大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。

普通方式の遺言は、次の3つです。

(1)自筆証書遺言

(2)公正証書遺言

(3)秘密証書遺言

特別方式の遺言は、次の4つです。

(1)死亡の危急に迫った者の遺言

(2)伝染病隔離者の遺言

(3)在船者の遺言

(4)船舶遭難者の遺言

特別方式の遺言は、生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言ですから、ごく稀な遺言と言えるでしょう。

多くの方にとって、遺言というと普通方式の遺言です。

なかでも、(1)自筆証書遺言(2)公正証書遺言のいずれかを作成される方がほとんどです。

②自筆証書遺言は手軽

自筆証書遺言は遺言者が自分で書いて作った遺言書のことです。

筆記用具や紙に制約はありません。

封筒に入れなければならないといった決まりもありません。

ひとりで作ることができるので、作るだけであれば、費用はかかりません。

専門家の手を借りることなく手軽に作れるので、世の中の大半は自筆証書遺言です。

専門家の手を借りずに作られることが多いので、法律上効力のない遺言書になってしまうかもしれません。

③公正証書遺言は安心確実

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。

遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。

原則として、公証役場に出向く必要があります。

公正証書遺言は公証人が書面に取りまとめます。

法律上の不備があって遺言書が無効になるリスクが最も少ないものです。

遺言書の内容を伝えておけば、適切な表現で文書にしてもらえます。

作った遺言書の原本は、公証役場で保管されます。

紛失するおそれがありません。

遺言書が作られていることが分かっていれば、容易に探してもらえます。

公正証書遺言は、安心確実です。

④おすすめは公正証書遺言

公証役場に手数料を払う必要があります。

公証人に出張してもらう場合、さらに出張分加算があります。

遺言内容を確認してもらう証人が2人必要です。

費用がかかってしまうものの、公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言にする主なメリットは、次のとおりです。

・公証人が文書に取りまとめてくれる

・無効になりにくい

・検認不要

・トラブルになりにくい

2司法書士に遺言書作成を依頼する

①遺言書の内容を相談できる

遺言書を作成しておきたいと思っていながら、どうしていいか分からない人はたくさんいます。

どうやって書いたらいいか分からない、何を書いたらいいか分からないなどです。

司法書士とお話ししながら、形にしていくことができます。

家族には、話しにくいことがあるかもしれません。

司法書士には、守秘義務があります。

職務上知り得たことを他に漏らすことはありません。

財産状況や家族のプライベートな話も、安心して相談することができます。

②有効な遺言書を作成できる

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

せっかく遺言書を作成したのに、書き方ルール違反で無効になることがあります。

法律の知識がない人は遺言書の書き方ルールを知らないことがほとんどでしょう。

専門家がまったく関与していない遺言書の多くは、無効な遺言書です。

司法書士に遺言書の書き方を相談することができます。

③必要書類を取り寄せてもらえる

遺言書は、書いたら終わりではありません。

遺言書の内容を実現する必要があるからです。

遺言書は、実現できるように記載する必要があります。

例えば、「自宅」などの記載は適切ではありません。

遺言者や家族にとって自宅は当然のことと考えがちですが、第三者にとっては分からないからです。

どこの土地なのかどの建物なのか客観的に分かるように記載することが重要です。

客観的に分かるように記載するため、登記簿謄本の記載を書き写します。

遺言書を作成するため、登記簿謄本などの書類を準備しなければなりません。

公正証書遺言を作成するためには、固定資産税評価証明書を準備しなければなりません。

これらの書類を準備するのは、仕事や家事で忙しい人にとっては負担です。

遺言書の内容や家族の状況によって、どのような書類が必要になるか異なります。

遺言書を作成する準備で困ってしまうことが多いでしょう。

わずらわしい必要書類の取り寄せを司法書士に依頼することができます。

④公証人との打ち合わせをまかせることができる

遺言書作成する場合、安心確実な公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言は、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。

あらかじめ公証人と遺言内容について打ち合わせをします。

何の準備もなく、ふらっと公証人役場に出向いても何もすることができないでしょう。

名古屋市内には、公証役場が3か所あります。

都市部の公証役場は忙しいから、公証人の予約がなかなか取れません。

自宅近くに公証役場があっても、打ち合わせのために何度も公証役場に出向くのは面倒です。

遺言内容について公証人に適切に伝えることができないと、希望するように遺言書を作成することができません。

遺言書を作成するまでに、長期間かかってしまいます。

司法書士は、日常的に公証役場とコミュニケーションをとっています。

遺言書を作成する場合、全体的な手続をスムーズに進めることができます。

⑤証人を依頼できる

公正証書遺言を作成する場合、証人を2人用意する必要があります。

次の人は証人になれません。

(1)未成年者

(2)相続人になる予定の人

(3)遺贈を受ける予定の人

(4)相続人になる予定の人の配偶者や直系血族

(5)遺贈を受ける予定の人の配偶者や直系血族

遺言書の証人は、遺言書作成の時に立会う人です。

遺言書の内容を遺言者と一緒に聞いて確認してもらいます。

単なる友達や知り合いに遺言書の内容を聞かれたくないでしょう。

司法書士などの専門家に相談した場合、証人は用意できなければその司法書士などに証人を担当してもらうことができます。

⑥コストを抑えることができる

自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作った遺言書です。

ひとりで作ることができるので、作るだけであれば、費用はかかりません。

司法書士などの専門家に遺言書作成を依頼した場合、報酬を支払うことになります。

コストがかかることから、不安な気持ちになるかもしれません。

信託銀行などの金融機関は、非常に高額な費用で遺言書作成などの商品を販売しています。

非常に高額な商品と較べると、安心確実な公正証書遺言を作成できるメリットは大きいでしょう。

いくらかの費用はかかりますが、メリットの大きさに目を向けると司法書士に依頼することがおすすめです。

⑦遺言書作成後のフォローをしてもらえる

遺言書を作成してから、相続が発生するまでに間があります。

遺言者が元気なときに遺言書を作るから、相続が発生するまでに長期間かかることがあります。

遺言書を書いてから、相続人の状況や財産の状況が変わることがあります。

遺言書の内容が不適切になった場合、書き直しをすることができます。

何度でも遺言書の書き直しをしても構いません。

最初に遺言書を作成した司法書士に書き直しの相談をすることができます。

⑧遺言執行を依頼できる

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は自動的に実現するわけではないからです。

遺言書の内容を実現する人が遺言執行者です。

遺言執行者を指定しなくても、遺言書自体は有効です。

遺言執行者がいる場合、相続手続をおまかせすることができます。

遺言書を作成して、司法書士に遺言執行を依頼することができます。

相続手続は、何度も経験するものではありません。

だれにとってもはじめてで、だれにとっても不慣れなものです。

司法書士に遺言執行を依頼した場合、遺言者は遺言書の内容を実現してもらえるから安心できます。

相続人などの家族にとっても、わずらわしい相続手続から解放されるから安心できます。

3司法書士に遺言書作成を依頼するときのポイント

①相続に注力している

司法書士であっても専門分野があります。

不動産売買などの登記を専門的に行っている事務所は少なくありません。

相続手続を積極的に行っていない事務所に依頼するのは考えた方がいいでしょう。

日常的に相続手続を行っている司法書士であれば、遺言書作成についても有益なアドバイスが得られやすいでしょう。

②隣接士業と連携している

争いがない相続手続は、預貯金や不動産の名義変更がメインです。

相続人間で争いがある場合、司法書士は関与することができません。

はじめから相続人間の争いが予想される場合、弁護士に依頼するといいでしょう。

被相続人が資産家である場合、相続税の申告が必要になります。

相続税は、基礎控除を超えた分について課税されます。

基礎控除は、次の計算式で求めることができます。

相続税の基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数

相続税申告を代理できるのは、税理士のみです。

相続税申告が必要になる場合、税理士と連携している司法書士に依頼するといいでしょう。

4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。

遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。

遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。

そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続は格段にラクになります。

家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。

実際、家族の絆のためには遺言書が必要だと納得した方は遺言書を作成します。

家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。

家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言書作成して子どもを認知

2023-07-17

1遺言書で子どもの認知できる

遺言書の書き方は、民法で決まっています。

法律的に有効な遺言をするには民法の定めに従わなくてはなりません。

遺言者が死亡した後に効力が発生するものだから、厳格に決まっています。

法律の定めに従った遺言であれば、何を書いてもいいというわけではありません。

遺言書に書いておくことで、意味があること、効力があることも法律で決まっています。

①財産に関すること②身分に関すること③遺言執行に関すること④それ以外のことです。

子どもを認知することは、身分に関することです。

遺言書で子どもの認知をすることができます。

15歳以上であれば未成年であっても、遺言書を作ることができます。

父が未成年であっても、子どもを認知することができます。

未成年者が契約をする場合、親権者の同意が必要です。

未成年の父が子どもを認知する場合、父の親権者の同意は必要ありません。

親権者の同意を受けずに未成年者が契約をした場合、親権者は契約を取り消すことができます。

未成年である父の親権者が、認知を取り消すことはできません。

認知された子どもの法定相続分は、以前は嫡出子の半分でした。

この取り扱いは平成25年9月4日最高裁判所決定で違憲であるとされました。

現在は嫡出子と非嫡出子は同じ相続分です。

認知された子どもが現れると、他の相続人の相続分に大きな影響を与えます。

できることなら、生前に家族に打ち明けておくことをおすすめします。

2子どもを認知するときの遺言書の書き方

①子どもを認知するときの遺言書の記載例

第〇条 遺言者と〇〇〇〇(平成〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)との間に生まれた下記の子どもを認知する。

氏名 〇〇〇〇

住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

生年月日 令和〇年〇月〇日

本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

戸籍筆頭者 〇〇〇〇

遺言書に書く場合は、具体的に書く必要があります。

遺言を書いた人にとって、子どもや子どもの母を当然のことと思いがちです。

何も知らない人が見ても分かるように、具体的に書きます。

生前に子どもを認知する場合、認知届を役所に提出します。

遺言書で子どもを認知する場合であっても、生前に認知届を提出する場合であっても、認知の効力は同じです。

②胎児を認知する場合の遺言書の記載例

第〇条 遺言者は下記の者が現に懐胎している子どもを認知する。

氏名 〇〇〇〇

住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

生年月日 平成〇年〇月〇日

本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

戸籍筆頭者 〇〇〇〇

誕生する前の胎児を認知することができます。

③遺言書で死亡した子どもを認知することができる

死亡した子どもに直系卑属がいる場合、死亡した子どもを認知することができます。

認知した人と死亡した子どもに親子関係が発生させることができます。

死亡した子どもの子どもと認知した人が直系血族になることができます。

直系血族であれば、相続や扶養を受けることができるからです。

④遺言執行者を指名する場合の遺言書の記載例

第〇条 遺言者は遺言執行者として下記の者を指名する。

氏名 〇〇〇〇

事務所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

生年月日 昭和〇年〇月〇日

職業 司法書士

遺言書で子どもを認知する場合、遺言執行者が認知届をします。

遺言執行者を指名していない場合、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう必要があります。

死亡後に家族に負担をかけないために、遺言書で遺言執行者を指名しておくことをおすすめします。

3遺言書で子どもを認知するときの注意点

①成人した子どもを認知するときは子どもの承諾が必要

成人した子どもを認知する場合、子どもの承諾が必要です。

死亡した子どもに直系卑属がいる場合、死亡した子どもを認知することができます。

直系卑属が成人している場合、成人した直系卑属の承諾が必要です。

遺言書を書くときに、子どもや直系卑属の承諾はなくても差し支えありません。

遺言書が効力を発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。

遺言者が死亡した後、子どもや直系卑属が承諾すれば認知届を提出することができます。

遺言書に認知すると書いても、子どもや直系卑属からお断りをされることがあります。

②胎児を認知するときは母の承諾が必要

胎児を認知する場合、母の承諾が必要です。

遺言書を書くときに、母が承諾している必要はありません。

遺言書が効力を発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。

遺言者が死亡した後、母が承諾するのでも構いません。

遺言者が死亡したときに、子どもが誕生していたら母の承諾は不要です。

③子どもを認知するときは財産の分け方も書く

子どもを認知すると、認知された子どもは相続人になります。

遺言書に何も書いてなければ、相続財産の分け方について相続人全員と話し合いをしなければなりません。

相続財産は、相続人全員の共有財産だからです。

認知された子どもと他の相続人の関係性がいいことはあまりないでしょう。

お互い気まずい思いをします。

相続財産の分け方で家族が苦労することのないように遺言書に記載することをおすすめします。

④遺言書が有効でないと認知も有効でない

遺言書を作成する場合、自分ひとりで作る自筆証書遺言と法律の専門家である公証人が関与して作る公正証書遺言があります。

自分ひとりで作ることができる自筆証書遺言は、法律の専門家が関与しないことがほとんどでしょう。

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

遺言書の書き方ルールに合わない遺言書は無効になります。

法律の知識がない人がひとりで遺言書を作った場合、無効になることが多いものです。

公正証書遺言は法律の専門家である公証人が作ります。

書き方ルールに合わないことは考えられません。

遺言書の書き方ルールに合う遺言書であったとしても、無理矢理書かされた遺言書ではないかと他の相続人から疑われるおそれがあります。

無理矢理書かされた遺言書は遺言者の意思ではありません。

遺言者の意思でない遺言書は無効になります。

公正証書遺言は公証人が遺言者の意思を確認して作りますから、このような争いも避けられます。

高齢の遺言者の場合、認知症などで物事のメリットデメリットを充分に判断できなかったのではないかと争いになることがあります。

遺言者が認知症などで物事のメリットデメリットを充分に判断できない場合、遺言書は無効になります。

公正証書遺言は公証人が遺言者の意思を確認して作ります。

認知症などであれば意思確認ができないでしょう。

公証人が意思確認している点に、一定の信頼ができます。

念のため、医師の診断書やカルテの写しを準備しておくと、争いを避けるのに役立つでしょう。

遺言書が無効になると、遺言書の内容はすべて無効になります。

子どもを認知してあげたい気持ちがあっても、遺言書が無効になった場合、認知は無効になります。

公正証書遺言は公証人が関与しますから、無効になりにくい遺言書を作ることができます。

⑤遺言書を見つけてもらえない

自分ひとりで作ることができる自筆証書遺言は、多くの場合、自分で保管しています。

遺言書の内容を家族に知られないようにするために、人目につかないところに保管しているでしょう。

そのまま、遺言書を紛失してしまうかもしれません。

誤って処分してしまうおそれがあります。

相続が発生した後に、遺言書を見つけてもらえない場合、遺言書の内容は意味がなくなります。

公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。

遺言書の紛失の心配はありません。

相続発生後であれば、法律上の利害関係がある人は公証役場に対して遺言書の有無を調べてもらうことができます。

4認知届を出すと戸籍に記載される

①父の戸籍に認知事項が記載される

遺言書で子どもを認知した場合、遺言執行者が認知届をします。

父と子どもに親子関係が発生しますから、父の戸籍に認知事項が記載がされます。

記載されるのは次の事項です。

身分事項 認知

認知日 令和〇年〇月〇日

認知した子の氏名 〇〇〇〇

認知した子の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号  〇〇〇〇

②子どもの戸籍に認知事項が記載される

役所に認知届を提出した場合、子どもの戸籍の父の欄に、父の氏名が記載されます。

父と子どもに親子関係が発生しますから、子どもの戸籍に認知事項が記載がされます。

記載されるのは次の事項です。

身分事項 認知

認知日 令和〇年〇月〇日

認知者の氏名 〇〇〇〇

認知者の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号  〇〇〇〇

送付を受けた日 令和〇年〇月〇日

受理者 〇〇県〇〇市長

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書を書くというと真っ先に思い浮かぶのが、財産に関することでしょう。

財産のこと以外にも、遺言書に書くと有効になることがあります。

法律上の配偶者以外の間で生まれた子どもを家族に内緒にしている人がいます。

さまざまな家族の事情で、どうしても生前に認知届を出せないケースです。

遺言書で子どもを認知することができます。

認知された子どもは相続人になることができます。

認知するだけでなく、その後のことも配慮する必要があるでしょう。

遺言書があれば、家族のトラブルは確実に減ります。

高齢になると判断能力が心配になる方が多くなります。

判断能力が心配になった時点では、遺言書は作れません。

今、まだまだ元気だ!と言えるのならば、遺言書を作成できるときと言えるでしょう。

家族がもめ事を起こすと取り返しがつかなくなります。

家族をトラブルから守りたい方は司法書士などの専門家に遺言書作成を依頼することをおすすめします。

特定財産承継遺言

2023-04-10

1特定財産承継遺言とは

遺言書に書く内容は、財産の分け方に関することがまず思い浮かぶでしょう。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と財産を具体的に書いてある場合、この遺言書のことを特定財産承継遺言と言います。

特定の相続人に特定の財産を受け継いで欲しい場合、特定財産承継遺言が適切でしょう。

遺言書の書き方は、これ以外にも「財産の3分の1を相続人〇〇に相続させる」のように、財産を具体的に書かない場合があります。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてある場合、相続が発生した後に相続財産の分け方の話し合いは不要です。

相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになるからです。

2特定財産承継遺言の効力

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてある場合、相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになります。

相続が発生した後、遺言書があることや遺言書の内容について、家族の中で情報共有をするでしょう。

家族の中では、遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあるから、「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができます。

家族の中で主張するために特段の手続は必要ありません。

家族の中では周知の事実になっていても、家族以外の人には分かりません。

一部の相続人から遺言書は無かったと聞かされた場合、家族以外の人は疑いようがないでしょう。

遺言書は無いと信じた第三者が土地などの相続財産を買うケースがあります。

遺言書は無いと信じた第三者の人に対して、「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張する場合、対抗要件を備えなければなりません。

土地などの不動産の対抗要件は、相続登記をすることです。

相続登記をしなければ、法定相続分以上について家族以外の人に主張できません。

遺言書は無いと信じた第三者に対して、遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあるから、「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができません。

相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになりますから、相続登記をしておく必要があります。

相続登記をしないまま放置した場合、家族以外の人に対して「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができなくなります。

土地などの財産を買った人は、通常、すぐに所有権移転登記をします。

所有権移転登記をしないまま放置している間に、売主は別の人にその土地を売るかもしれないからです。

所有権移転登記をしない場合、登記簿は売主の名義のままだから、事情を知らない人は売主の土地だと信じてしまうでしょう。

後から買った別の人が所有権移転登記をした場合、「私が買った土地だから私のものだ」と主張することができます。

私が先に買った土地だから私のものだと文句を言うことはできません。

土地は、先に登記をした人のものになります。

このようなトラブルになるのは困るから、土地などの財産を買った人はすぐに所有権移転登記をします。

このようなトラブルになった場合、先に登記をした人のものになるのが登記の効果です。

土地などの財産を買った人が先に登記をした場合、土地は買った人のものになります。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあっても、私が買った土地だから私のものだと主張することができます。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあるから私のものだと主張するためには、相続登記をしておかなければなりません。

相続登記をしないまま放置した場合、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものにならなくなります。

「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができなくなるとは、私が買った土地だから私のものだと主張することができるという意味です。

私が買った土地だから私のものだと主張することができるから、土地は買った人のものになります。

相続登記をしておくことは、とても重要です。

3特定財産承継遺言は遺言執行者におまかせできる

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてある場合、相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになります。

財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものであることを第三者に主張するためには、登記などの対抗要件が必要です。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者に対抗要件を備えるところまでおまかせすることができます。

通常、マイホームを購入したときなど不動産が自分のものになった場合、すぐに登記をします。

所有権移転登記をしないまま放置している間に、他の人がその不動産を購入して自分のものだと主張するかもしれないからです。

相続で不動産が自分のものになった場合、家族以外の人が自分のものだと主張するかもしれないと心配することはあまりないかもしれません。

相続登記は相続手続の中でも手間がかかる難易度が高い手続です。

不動産が自分のものになったと安心して、相続登記を先延ばししたくなるかもしれません。

遺言執行者がいれば、相続登記をするところまで依頼することができます。

2019年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

遺言執行者に指名されたのが2019年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

止むを得ない理由がなくても、専門家に任せることができるように変更になりました。

4特定遺贈とのちがい

①特定財産承継遺言は相続人に対してだけ

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

遺贈は、相続人に対して財産を譲ってあげることができるし、相続人以外の人に対して財産を譲ってあげることができます。

相続させることができるのは、相続人に対してだけです。

相続人以外の人に対して財産を受け継いでもらう場合、遺贈することになります。

遺言書に相続人以外の人に対して相続させると書いてあった場合、遺贈の意思と考えられます。

②特定財産承継遺言は単独で相続手続ができる

遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。

遺贈で相続手続をする場合、遺言執行者がいなければ相続人全員の協力が必要です。

一部の相続人が相続手続に協力しない場合、手続が進まなくなってしまいます。

③特定遺贈の放棄は手続がカンタン

特定財産承継遺言の内容をご辞退したい場合があるでしょう。

特定財産承継遺言の内容をご辞退したい場合、3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続が必要です。

家庭裁判所で相続放棄をする場合、はじめから相続人でない取り扱いがされます。

相続人でなくなりますから、他の財産も受け継ぐことができなくなります。

特定遺贈をご辞退したい場合、家庭裁判所の手続は不要です。

遺贈された財産のうち、全部の財産をご辞退することもできるし一部の財産だけご辞退することもできます。

3か月以内という制限もありません。

④特定財産承継遺言は農地でも許可が不要

相続財産に農地が含まれている場合があります。

農地を相続する場合、農業委員会の許可は必要ありません。

特定遺贈の場合、農業委員会の許可を受けなければなりません。

⑤特定財産承継遺言は賃借権の相続でも同意が不要

被相続人が賃貸マンションに住んでいる場合があります。

賃貸マンションを借りる権利が賃借権の代表例です。

賃貸マンションを借りる権利は相続財産になります。

賃借権を相続する場合、大家の同意は必要ありません。

賃借権は包括遺贈の場合も特定遺贈の場合も、大家の同意を受ける必要があります。

⑥配偶者居住権設定は遺贈で

相続が発生した時、一定の条件を満たしていれば配偶者居住権を得ることができます。

配偶者居住権は、(1)遺産分割協議(2)遺言による遺贈(3)死因贈与契約のどれかで得ることができます。

配偶者居住権を相続させることはできません。

遺言書に「配偶者居住権を相続させる」と記載された場合、配偶者居住権を遺贈すると解釈されることになるでしょう。

配偶者居住権を第三者に主張するためには、登記が必要です。

「配偶者居住権を相続させる」と書かれた遺言書を提出して登記申請があった場合、配偶者居住権を遺贈すると解釈して登記が認められます。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

いろいろ言い訳を考えて先延ばしします。

先延ばしした結果、認知症などで遺言書を作れなくなって、その先には家族のもめごとが待っています。

家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。

死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠ですから、まず遺言書を書くことをおすすめします。

遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。

遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。

そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続きは格段にラクになります。

状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。

家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。

遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。

家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。

家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄後の共有持分

2022-12-07

1共有者は共有持分を放棄することができる

①共有者の一方的意思だけで共有持分の放棄ができる

共有者は自分の持分を放棄することができます。

持分を放棄した場合、放棄した共有持分は他の共有者のものになります。

他の共有者の持分割合に応じて、分割されます。

共有者の一方的な意思表示だけで、共有持分の放棄ができます。

他の共有者の承諾は必要ありません。

共有物を放棄するのに、決まった文書が必要といったことはありません。

口頭の意思表示であっても効果が発生します。

口頭で通知するより、文書で通知することをおすすめします。

後でトラブルになることを防止するため、内容証明郵便で通知するといいでしょう。

②持分移転登記は共同申請

共有者が持分を放棄した場合、他の共有者に持分が移転します。

他の共有者に持分が移転した場合、持分移転登記の申請が必要です。

持分の放棄は、一方的な意思表示で効果が発生しますが、登記は単独で申請することができません。

持分の放棄をする人を登記義務者、他の共有者全員を登記権利者として共同申請をします。

持分の放棄は、口頭の意思表示であっても効果が発生しますが、登記申請においては持分の放棄があったことを証明する書類が必要になります。

③共有持分が高額である場合、税金に注意

共有者の一方的な意思表示で、共有持分の放棄をすることができます。

財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人の契約である贈与とは別物です。

法律においては贈与ではないにもかかわらず、税金においては贈与税が課されます。

共有持分が移転するという意味では、贈与と実質的に同じ効果だからです。

贈与税の免脱行為として、持分の放棄を使うことを防ぐためです。

共有持分の評価額が高額である場合、他の共有者に贈与税が課される場合があります。

固定資産税は、1月1日現在の登記名義人が課税対象者になります。

年内に持分の放棄の意思表示をした場合、年内に他の共有者に権利が移転します。

持分移転の登記が年を越した場合、所有権がないのに固定資産税の納税義務者のままになります。

2相続人全員が相続放棄してもいい

相続放棄は、多くの場合、被相続人のマイナスの遺産を引き継がないために行われます。

相続人が全員相続放棄をしたら、被相続人の借金なのに、相続人のだれも責任をとらないことになります。

相続人がだれも責任をとらないことに対して、後ろめたく思う人もいるかもしれません。

相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。

結果として、相続人全員が相続放棄を選択することになっても、法律上、やむを得ないことです。

配偶者と子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人はいません。

相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在になります。

相続人が全員相続放棄をしたとしても、やむを得ません。

3共有者である被相続人に相続人がいない場合の共有持分の行方

被相続人が天涯孤独で親族がいないこともあります。

相続人がいても相続放棄をして相続人でなくなっている場合があります。

①相続債権者がいる場合

家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらいます。

通常、相続財産清算人を選んでもらうためには家庭裁判所に予納金を納めます。

予納金は管理する財産の状況によって違いますが、100万円程度かかる場合があります。

相続財産清算人によって相続財産は売却されて、相続債権者への支払にあてられます。

通常、共有持分は売却しようとしても、買い手が見つかりません。

買い手が見つかったとしても、著しく価格が低くなってしまいます。

共有持分を買い取る業者がいますが、買い取り額はおおむね時価の1~3割程度です。

多くの場合、被相続人と共有していた人に買取をお願いすることになります。

被相続人と不動産を共有していた人が対価を支払って、被相続人の共有持分を買い取ることになります。

②特別縁故者がいる場合

特別縁故者とは、内縁の配偶者や事実上の養子など被相続人と生計を同じくしていた者や被相続人の療養看護に努めた者など特別な縁故のあった人のことです。

家庭裁判所に認められれば、特別縁故者は被相続人の財産を受け取ることができます。

受け取る財産は、家庭裁判所が決めます。

被相続人の財産の全部のこともあるし、一部だけのこともあります。

被相続人がたくさんの財産を残しても、特別縁故者が受け継ぐ財産はほんの少ししか認められないこともあります。

③相続債権者も特別縁故者もいない場合

被相続人と不動産を共有していた人が共有持分を取得します。

共有持分を持つ人が死亡した場合、まずは相続人、次に相続債権者、その次に特別縁故者、特別縁故者もいなかったら他の共有者が受け継ぎます。

そのためには、手続が複雑で、費用も時間もかかります。

共有者が特別縁故者と話し合いをしたり、財産を勝手に分けたりすることはできません。

被相続人が死亡してから、共有者が受け継ぐまで1年以上の時間がかかります。

4マンションは共有者が取得できない

マンションは、建物部分と敷地権の共有部分があります。

建物部分は単独所有、敷地権は共有です。

建物部分と敷地権の共有部分は、所有者を一致させるルールになっています。

所有者を一致させないと、売却のとき混乱するからです。

相続債権者も特別縁故者もいない場合、相続財産は国庫に帰属します。

建物部分は単独所有なので、国庫に帰属します。

所有者を一致させるルールがあるから、敷地権が共有になっていても、他の共有者が取得することはできません。

所有者を一致させるルールを守れなくなるからです。

建物部分が国庫に帰属しますから、所有者を一致させるルールによって、敷地権も国庫に帰属します。

5生前対策がしてあると手続がラク

相続人がいないおひとりさまは、遺言書を書いて財産の行き先を指定しましょう。

共有持分は、遺言書で共有者に遺贈することや死因贈与をすることができます。

相続財産清算人と家庭裁判所の手を借りて、1年以上の時間をかけて手続するよりはるかにラクです。

遺贈は、相続人や相続人以外の人に、財産を受け取ってもらう制度です。

だれに受け取ってもらうかは遺言者本人が決めることができます

共有持分を特別縁故者に遺贈することや死因贈与をできます。

家庭裁判所は特別縁故者と認めてくれることも、認めてくれないこともあります。

被相続人がたくさんの財産を残しても、特別縁故者が受け継ぐ財産はほんの少ししか認められないこともあります。

6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合もタイヘンです。

相続人がいないから、財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。

実際は、被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。

国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、事情を知っている共有者に受け継いでもらいたい人もいるでしょう。

お世話になった人に受け継いでもらいたい、事情を知っている共有者に受け継いでもらいたいという意思は、遺言書で実現できます。

家庭裁判所の手続は一般の人にはハードルが高いものです。

遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。

お世話になった人は待っているだけで済みます。

遺言書は書き方に細かいルールがあります。

適切な遺言書作成と遺言執行者選任は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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