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不在者財産管理人による不動産売却は許可が前提

2026-03-30

1不在者財産管理人が行方不明者の財産を管理する

①不在者財産管理人は行方不明者の財産を守る人

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理する人です。

行方不明者の財産を守るため、家庭裁判所が選任します。

不在者財産管理人は、行方不明者に不利益な財産管理をすることはできません。

家庭裁判所は、行方不明者に不利益な財産管理を許可しません。

不在者財産管理人制度は、行方不明者の財産を守る制度だからです。

②行方不明者の財産は家族が処分できない

行方不明者の財産は、家族が日常的に管理しているでしょう。

行方不明者の財産を家族が管理しているから、生活上は特に支障がないかもしれません。

生活は維持できているから、法的手続の必要を感じにくいでしょう。

生活の現状を維持する限り、家族が困ることはありません。

財産を処分するときになって、行方不明者本人による手続が必要になります。

家族による手続ができないから、初めて困ることになります。

③不在者財産管理人は家庭裁判所が選任する

不在者財産管理人は、申立てによって家庭裁判所が選任します。

不在者財産管理人選任の申立てをする際に、候補者を立てることができます。

候補者を立てても、家庭裁判所は自由に不在者財産管理人を選任することができます。

行方不明者の家族を選任することも、家族以外の専門家を選任することもあります。

家庭裁判所の人選に、異議を述べることはできません。

2不在者財産管理人による不動産売却は許可が前提

①不動産売却は管理行為ではない

不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理する人です。

不在者財産管理人の任務は、財産を管理して減らさないことです。

不在者財産管理人は、本来、不動産を売却する権限は与えられていません。

不動産の売却は、管理行為を超す処分行為だからです。

不在者財産管理人に権限が与えられていないから、特別に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

②不在者財産管理人は不利益な財産管理はできない

不在者財産管理人は、行方不明者のために財産管理をする人です。

行方不明者のためにとは、行方不明者に不利益な財産管理ができないという意味です。

不在者財産管理人は、家族の希望どおりに財産を動かすことができません。

不在者財産管理人には、善管注意義務があるからです。

たとえ家族が望んでも、行方不明者に不利益な財産管理は許されません。

③家族が不在者財産管理人に選任されても許可が必要

不在者財産管理人は、公的な立場です。

たとえ家族が不在者財産管理人に選任されても、不利益な不利益な財産管理はできません。

不在者財産管理人は、適切な財産管理を行っているか家庭裁判所の監督を受けます。

たとえ家族が希望しても、家庭裁判所は厳格に慎重に審査します。

不在者財産管理人は、家族の希望をかなえる人ではありません。

④家庭裁判所の許可なしで不動産売却はできない

不在者財産管理人は、与えられた権限の範囲内で行方不明者の代理ができます。

不動産売却をする場合、家庭裁判所の許可を得て行方不明者の代理ができます。

家庭裁判所の許可なしで、不動産売却はできません。

家庭裁判所の許可なしで不動産を売却しても、無効です。

不動産を売却したら、不動産の名義変更を行います。

所有権移転登記を申請したら、法務局は不在者財産管理人の権限を確認します。

家庭裁判所による権限外行為の許可の審判書がないと、登記を受理しません。

不在者財産管理人による不動産売却は、家庭裁判所による許可が前提です。

⑤家庭裁判所が売却を許可するポイント

重要ポイント(1)行方不明者の利益になるか

家庭裁判所は、売却が行方不明者の利益になるかを重視します。

不在者財産管理人は、行方不明者の利益のために財産管理をする義務があるからです。

たとえ家族が望んでも、行方不明者に不利益な売却は許可されません。

たとえ買主が望んでも、行方不明者に不利益な売却は許可されません。

不在者財産管理人制度は、家族や買主の希望を叶える制度ではないからです。

家族や買主の利益ではなく行方不明者の利益であるのか、家庭裁判所が厳しくチェックします。

重要ポイント(2)価格の妥当性

家庭裁判所は、価格の妥当性を重視します。

多くの場合、価格の妥当性を説明するため次の書類を準備します。

・不動産会社による査定書

・不動産鑑定士による不動産鑑定評価書

親族間売買などで相場より安い場合、行方不明者に不利益な売却と判断されます。

相場より安い親族間売買は、家庭裁判所が厳しくチェックします。

行方不明者に不利益な売却には、家庭裁判所が許可しません。

重要ポイント(3)売却の必要性

家庭裁判所は、売却の必要性を重視します。

不在者財産管理人の任務は、財産を管理して減らさないことです。

行方不明者の財産を管理するだけでなく、わざわざ売却する必要性がチェックされます。

単に家族が売却したいと望むだけでは、売却の必要性がないと判断されるでしょう。

不在者財産管理人は財産管理をする人だから、実際に管理を担う人がいると言えます。

あえて、売却する必要性は認められにくいでしょう。

たとえば次の場合、売却の必要性が認められる可能性があります。

・共有関係で紛争化して売却する以外に解決できないケース

・固定資産税などの費用が過大で維持することが不合理であるケース

・老朽化しているケース

上記のケースでも、客観的資料で家庭裁判所を説得する必要があります。

単に家族が主張するだけでは、売却の必要性がないと判断されるでしょう。

売却の必要性がない場合、家庭裁判所が許可しません。

評価ポイント(4)買主が決まっていること

家庭裁判所は、買主が決まっていることを重視しません。

買主が決まっていることは、プラス材料ですが決定打ではありません。

不在者財産管理人制度は、家族や買主の希望を叶える制度ではないからです。

たとえ買主が決まっていても、行方不明者の利益を重視します。

行方不明者に不利益な売却は、買主が決まっていても許可されません。

⑥家庭裁判所が許可しない典型的ケース

ケース(1)不在者財産管理人の親族や知人が買主

典型的に、利益誘導のリスクが非常に高いケースです。

公正な価格形成に強い疑いがあると判断されます。

不動産鑑定士による不動産鑑定評価書をつけても、不許可になりやすいケースです。

ケース(2)空き家になっているが維持費が軽微

売却の必要性に疑問があると、売却は許可されません。

不動産を保有し続ける方が行方不明者の利益にかなうと判断されます。

ケース(3)修繕せずに売却希望

老朽化した不動産であっても、修繕で済むことは多いものです。

売却前提で他の方法を検討していないと、合理的理由がないと判断されます。

ケース(4)老朽化の理由が抽象的

不動産の老朽化は、客観的資料で家庭裁判所を説得する必要があります。

何となく危ないから、古いし倒壊の危険があると主張するだけでは、リスクが立証されていないと判断されます。

ケース(5)手続の公正性に疑問

不動産業者の査定書が1社のみの場合、価格操作の疑いが濃いと判断されます。

特定の買主に売りたいなどの理由は、市場による公正な価格ではないと判断されがちです。

ケース(6)相続税対策で売却

行方不明者に相続が発生したときに備えて、不動産を売却したいことがあります。

相続税を納付する家族のための売却は、行方不明者の利益とは無関係です。

行方不明者の利益を損なうと判断されるでしょう。

⑦権限外行為の許可の申立てに売買契約書案を提出

不在者財産管理人が不動産の売却をするためには、家庭裁判所の許可が前提です。

権限外行為の許可の申立てとは、家庭裁判所に対して許可を求めることです。

権限外行為の許可の申立ては、不在者財産管理人が行います。

家族は、権限外行為の許可の申立てに関与しません。

権限外行為の許可の申立てには、売買契約書案を提出します。

家庭裁判所は、提出された売買契約書案の内容を厳しくチェックします。

権限外行為の許可の審判書には、売買契約書案が添付されます。

提出した売買契約書の内容と異なる契約をする権限はありません。

権限外行為の許可の審判書を見れば、権限の有無が一目で分かります。

売買契約書の内容を変更したい場合、あらためて権限外行為の許可の申立てをする必要があります。

3買主候補者は不在者財産管理人選任の申立てができない

①申立人は法律上の利害関係が必要

不在者財産管理人選任の申立人は、法律上の利害関係がある人に限定されています。

法律上の利害関係がある人とは、行方不明者の財産管理に直接関係がある人です。

たとえば、次の人は不在者財産管理人選任の申立てができます。

・遺産分割協議のために他の相続人が申立て

・不動産売却で推定相続人が申立て

・共有物の処分のため他の共有者が申立て

・債権債務の実現のため債権者と債務者が申立て

②買主候補者に利害関係は認められない

行方不明者の不動産は、家庭裁判所の許可がないと売却できません。

単なる買主希望者は、まだ法律上の利害関係があるとは認められません。

買主候補者には、まだ法律上の利害関係が発生していないからです。

単なる買主希望者は、不在者財産管理人選任の申立てができません。

不動産の売却が行方不明者の利益であるのか、家庭裁判所が厳しくチェックします。

不動産の価格は、ある程度幅があるのが通常です。

売却条件や売却時期によっては、大きな差が発生します。

相場の範囲内であっても、有利不利があるでしょう。

買主候補者に利害関係を認めると、行方不明者の利益が損なわれるリスクが大きくなります。

不動産の売却が必要であるのか、家庭裁判所が厳しくチェックします。

売却が必要ないのに、買主候補者の利益のために誘導されている可能性があります。

買主候補者に利害関係を認めると、必要がない売却がされるリスクが大きくなります。

行方不明者の利益を守るため、家庭裁判所は利益誘導リスクを警戒します。

結果として利益が守られたのではなく、プロセス全体で利益が守られたことが重視されます。

プロセス全体における公正性と透明性を確保することで、行方不明者に利益が守られるからです。

③売買契約後に行方不明になったら買主が申立て

売買契約を締結すると、買主には代金を支払う義務や不動産を引き渡してもらう権利が発生します。

売買契約後に行方不明になった場合、買主には法律上の利害関係が認められます。

不在者財産管理人選任を通して、買主は債権債務の実現をする必要があるからです。

4不動産売却後も任務は継続

①行方不明のままなら管理を継続

行方不明者の不動産を売却したいから、不在者財産管理人選任の申立てをすることがあります。

行方不明者の不動産を売却した後も、不在者財産管理人の任務は継続します。

不在者財産管理人の任務は、行方不明者の財産を管理することだからです。

行方不明者が帰ってくるまで、または死亡が確認されるまで、不在者財産管理人の任務は継続します。

不在者財産管理人の任務は継続するから、報酬がかかり続けます。

②売却代金は家族に渡されない

行方不明者の不動産を売却したら、売却代金を取得します。

売却代金は、行方不明者の財産です。

不在者財産管理人は、売却代金を家族に渡すことはできません。

家族は、売却代金を自由に使うことはできません。

③金銭のみなら供託できる

不在者財産管理人が管理する財産が金銭のみの場合、管理する金銭を供託することができます。

金銭を供託したら、不在者財産管理人の任務は終了します。

不在者財産管理人が管理すべき財産がなくなったからです。

行方不明者は、供託された金銭を受け取ることができます。

供託された金銭は、家族が受け取ることはできません。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

任意後見人による不動産売却の注意点

2026-01-22

1任意後見契約でサポートを依頼する

①将来に備えてサポートを依頼する契約

成年後見には、2種類あります。

任意後見と法定後見です。

任意後見とは、将来に備えてサポートを依頼する契約です。

法定後見とは、判断能力が低下した後で家庭裁判所がサポートする人を決める制度です。

②任意後見人は自分で決める

任意後見は、財産管理や身上監護を依頼する契約です。

信頼する人を自分で決めて、任意後見契約をします。

任意後見では、サポートする人を自分で選ぶことができます。

多くの場合、本人の子どもなど近い関係の家族でしょう。

任意後見人を自分で決めることができるから、安心です。

③サポート内容は自分で決める

サポートしてもらいたいことは、任意後見契約書にはっきり書いておきます。

任意後見では、サポート内容をひとつひとつ具体的に契約書に書いておきます。

例えば、自宅を売却して施設に入りたい場合、自宅を売却する権限や施設入所契約をする権限を与えておくことができます。

自宅を売却して欲しくない場合、自宅を売却する権限を与えないでおくことができます。

④任意後見契約の内容は登記される

任意後見契約を締結したら、契約内容は登記簿に記録されます。

登記事項証明書を取得すると、任意後見契約の内容を証明することができます。

登記事項証明書とは、法務局が発行する公的証明書です。

任意後見人ができるのは、本人がサポートしてもらいたいことだけです。

サポートしてもらいたいことは、任意後見契約書に書いてあるはずです。

任意後見人が本人をサポートする場合、登記事項証明書で権限を証明することができます。

⑤任意後見人には善管注意義務がある

任意後見人になると、たとえ家族であっても公的な立場になると考えられます。

任意後見人には、善管注意義務があります。

本人の利益のために、後見事務を行う義務があるという意味です。

任意後見人が家族であっても、家族の希望をかなえる人ではありません。

本人の利益を損なうような財産管理をすることはできません。

不適切な財産管理をした場合、家庭裁判所から解任されることがあります。

2 任意後見人による不動産売却の注意点

①任意後見契約を結んだだけで売却はできない

任意後見契約を締結できるのは、本人が元気な間だけです。

契約締結には、判断能力が必要だからです。

任意後見契約を結んだ時点では、本人は充分な判断能力があるはずです。

任意後見契約を結んだだけで不動産を売却できるは、誤解です。

任意後見契約を結んだだけで、家族が不動産を売却することはできません。

本人は家族のサポートがなくても、自分で判断ができるはずだからです。

自分で判断ができるから、家庭裁判所も任意後見監督人も関与しません。

任意後見契約は、判断能力が低下したときの備えです。

本人が元気なうちに不動産を売却する場合、本人が自分で判断します。

家族には、何の権限もありません。

たとえ任意後見契約を締結しても、任意後見人になる予定の人に権限はありません。

②判断能力が低下したらサポート開始

本人の判断能力が低下したら、任意後見人によるサポートが必要になります。

任意後見契約に効力が発生するのは、次の条件を満たしたときです。

・本人の判断能力の低下

・家庭裁判所が任意後見監督人を選任

本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをします。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任したら、任意後見契約に効力が発生します。

任意後見契約に効力が発生したら、任意後見人がサポートを開始します。

③任意後見人が不動産を売却できるのは権限を与えられたときだけ

サポートしてもらいたいことは、本人が自分で決めることができます。

サポートしてもらいたいことは、任意後見契約書にはっきり書いてあります。

任意後見人ができるサポートは、本人がサポートしてもらいたい内容のみです。

任意後見契約で不動産売却権限が定められていない場合、不動産を売却することはできません。

任意後見契約を締結する時点で不動産売却を予定していないと、権限を与えないことが多いでしょう。

たとえ家族が望んでも、任意後見人が勝手に不動産を売却することはできません。

④任意後見人の権限は後見登記事項証明書で確認

任意後見人の権限は、後見登記事項証明書で確認することができます。

任意後見契約の内容は、法務局で登記されています。

法務局で後見登記事項証明書を取得すると、任意後見契約の内容を確認することができます。

任意後見契約をすると、公証人が自動で登記を嘱託するからです。

不動産の売買契約をするときも、後見登記事項証明書を提出します。

売買契約の当事者も、任意後見人の権限を確認する必要があるからです。

⑤任意後見契約で任意後見監督人の同意特約

不動産の売却は、多くの場合、高額な財産の処分です。

本人の生活基盤に直結するから、慎重に対応すべきでしょう。

任意後見契約において、任意後見監督人の同意特約を定めることができます。

任意後見契約で同意特約を定めた場合、任意後見監督人の同意が必要です。

任意後見監督人の同意を受けたうえで、不動産を売却します。

⑥同意特約がなくても相談は欠かせない

任意後見人が不動産を売却する場合、任意後見監督人の同意は必須条件ではありません。

任意後見監督人に、同意権は付与されていません。

同意は必須条件でなくても、実務上、相談は欠かせません。

任意後見監督人は、任意後見人を監督する人だからです。

家族が任意後見人になれば自由に不動産を売却できるは、誤解です。

定期的な報告や日常的な相談を受けて、適切な後見事務を行えるように任意後見人をサポートします。

⑦家族の都合で不動産売却はできない

家族が任意後見人になっても、本人の不動産を自由に処分することはできません。

任意後見人は、本人の代理人に過ぎないからです。

任意後見人は、本人の利益のためだけに権限を行使できます。

任意後見人は、本人から与えられた範囲のみで権限を行使できます。

不動産を売却するためには、本人の生活保障のために合理的である理由が必要です。

家族の都合だけで、不動産売却はできません。

家族の都合は、本人の利益と無関係だからです。

例えば、次の事情がある場合、本人の利益になると判断されやすいでしょう。

・施設入居費用の確保

・医療費の支払い

・維持費が過大

本人の現在と将来の生活保障の観点から、合理的であるか判断されます。

施設入居費用の確保のためであっても、施設入居する可能性があるだけなら本人の利益を損なうと判断されるでしょう。

医療費の支払いのためであっても、預貯金が充分にあるなら本人の利益にならないと判断されるでしょう。

例えば、次の事情がある場合、本人の利益にならないと判断されやすいでしょう。

・不動産が遠方で、管理に手間がかかりすぎる

・固定資産税を払いたくない

・本人が死亡したときの相続税対策をしたい

たとえ家族であっても、任意後見人は本人の利益を損なう財産管理をすることはできません。

⑧居住用不動産の売却は特に慎重

売却予定の不動産が本人の居住用不動産である場合、特に慎重な判断がされます。

本人の居住用不動産は、他の財産と違って生活基盤の側面があるからです。

居住用の不動産を売却すると、次のような重大な影響があるからです。

・地域との関係の喪失

・心理的安定性の喪失

売却権限を与えたとしても、重大な生活変化にそのまま適用していいか判断する必要があります。

権限を与えることと権限を自由に行使することは、意味が違うからです。

居住用不動産を売却する場合、法定後見では家庭裁判所による許可の審判が必要です。

任意後見では、家庭裁判所による許可の審判は必要とされていません。

許可の審判が必要ないだけで、法定後見と同様の慎重さが求められます。

任意後見でも法定後見でも、生活基盤を失う重大な財産処分だからです。

特に任意後見人が家族である場合、外形的には家族の利益が絡む構造です。

本人の利益を犠牲にして、家族の利益を優先する疑いがあります。

相続税対策のために不動産を売却したい希望は、典型的ケースです。

任意後見でも法定後見でも、本人の利益を犠牲にすることは許されません。

居住用不動産の売却は、特に慎重になります。

⑨売却代金は家族が自由に使えない

任意後見人が不動産を売却しても、家族が自由に使うことはできません。

売却代金は、本人の財産だからです。

本人の財産だから、本人名義の口座に入金します。

任意後見人が本人の利益のために管理します。

たとえ家族が任意後見人であっても、自由に使うことはできません。

任意後見人になると、公的な立場になるからです。

次の用途は、不適切な財産管理と判断されます。

・孫など家族への援助

・家族の借金返済

・家族の住宅購入資金

・相続税対策目的の贈与

不適切な財産管理と判断されたら、任意後見人を解任されるでしょう。

業務上横領など、刑事事件に発展するおそれがあります。

⑩相続する予定でも家族は使えない

本人が死亡したら、家族が相続人になるでしょう。

どうせ相続するのだから財産を使ってもいいと、感じるかもしれません。

相続するのは、本人が死亡した後です。

本人が生きている間は、完全に本人の財産です。

相続する予定でも、家族が自由に使うことは許されません。

3任意後見監督人の存在が公平性と透明性を確保する

①任意後見監督人は不要にできない

任意後見でサポートを受けるときに、任意後見監督人は欠かせません。

任意後見監督人は、任意後見人を監督する人です。

任意後見監督人が監督するから、任意後見の公平性と透明性を確保することができます。

家族が任意後見人であっても、任意後見監督人を不要にできません。

任意後見監督人選任の申立てがされないと、任意後見監督人は選任されません。

家庭裁判所は、本人の判断能力の低下を知ることができないからです。

契約締結だけで、任意後見契約に効力ありません。

任意後見がスタートするのは、任意後見監督人が選任された後です。

任意後見監督人が選任されないと、任意後見契約に効力が発生しません。

任意後見監督人選任の申立てがされないと、任意後見によるサポートを受けることができません。

②任意後見監督人は任意後見人の相談相手

任意後見人のほとんどは、本人の子どもなど近い関係の家族です。

法律の専門家であることは、ほとんどないでしょう。

不適切であることに気づかずに、不適切な財産管理を行ってしまうことがあります。

不適切な財産管理かもしれないと、不安になりながら財産管理をすることもあるでしょう。

任意後見監督人は任意後見人を監視する人ではなく、任意後見人の相談相手です。

任意後見監督人は、定期的な報告や日常的な相談を受けています。

どのような支出が本人の利益になるのか、相談をすることができます。

どのような支出が合理的な支出なのか、サポートを受けることができます。

家庭裁判所は、あまり身近な存在ではありません。

制度に詳しくない任意後見人が家庭裁判所に直接相談するのは、心理的負担が大きいでしょう。

家庭裁判所に直接相談するのは、任意後見監督人が担ってくれます。

③任意後見監督人と家庭裁判所は家族のトラブルの盾になる

不動産は、本人だけでなく家族にとっても重要な財産です。

不動産を売却すると、他の家族から不満が出ることがあります。

一部の家族が勝手に、不動産を売却したように見えるからです。

任意後見では、任意後見人が独断で不動産を売却することはできません。

任意後見人、任意後見監督人、家庭裁判所が確認しながら、売却手続を進めます。

任意後見監督人と家庭裁判所は、任意後見の公平性と透明性を確保しています。

任意後見人は、家族間トラブルの矢面に立たなくて済みます。

任意後見監督人と家庭裁判所は、家族のトラブルから任意後見人を守る役目があります。

4任意後見契約を司法書士に依頼するメリット

任意後見は、あらかじめ「必要になったら後見人になってください」とお願いしておく契約です。

認知症が進んでから、任意後見契約をすることはできません。

重度の認知症になった後は、成年後見(法定後見)をするしかなくなります。

成年後見(法定後見)では、家庭裁判所が成年後見人を決めます。

80%のケースで、家族以外の専門家が選ばれます。

任意後見契約では、本人の選んだ人に後見人になってもらうことができます。

家族以外の人が成年後見人になることが不安である人にとって、任意後見制度は有力な選択肢になるでしょう。

本人が自分らしく生きるために、みんなでサポートする制度です。

任意後見制度の活用を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言書が原因で相続した不動産が売却できない

2025-12-26

1相続した不動産は売却できる

①相続人が売却手続

相続した不動産は、相続人が自由に処分できます。

遺言書の存在が相続した不動産の売却を妨げることはありません。

遺言書の内容や手続の進め方によって、不動産の売却手続が進まなくなります。

②売却するまで固定資産税はかかり続ける

固定資産税とは、不動産を保有していると課される税金です。

相続した不動産に、固定資産税は課されます。

遺産分割協議中は、相続人全員が連帯して固定資産税全額を納付する義務があります。

売却できない状態が長引くと、固定資産税が嵩みます。

不動産を売却するまで、固定資産税はかかり続けます。

③遺言書があっても遺産分割協議ができる

遺言書を作成して、財産の分け方を指定することができます。

遺言書で相続財産の分け方が指定されている場合、遺産分割協議は不要です。

遺産分割協議とは、相続人全員による相続財産の分け方についての話合いです。

ときには、遺言書の内容が大きく偏っていることがあります。

内容が極端に偏った遺言書をそのまま執行すると、相続人間で深刻なトラブルになります。

相続人間でトラブルになるおそれがあるのに、わざわざ執行してトラブルにする必要はありません。

相続人全員で話し合って、相続財産の分け方を決める方が合理的です。

遺言書があっても、相続人全員の合意で遺産分割協議をすることができます。

④売却する前提で遺言書を作成できる

遺言書を作成すると言うと、財産の分け方を真っ先にイメージするでしょう。

相続財産に不動産が含まれる場合、分け方に困ることがあります。

不動産をそのまま分ける方法の他に、売却して金銭で分けることができます。

売却する前提で、遺言書を作成することができます。

2遺言書が原因で相続した不動産が売却できない

ケース①自宅保管の自筆証書遺言

(1)売却できない理由

遺言書を作成する場合、公正証書遺言か自筆証書遺言を作成することがほとんどです。

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。

遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。

公正証書遺言は、遺言者が死亡した後すぐに執行することができます。

自宅などで保管していた自筆証書遺言は、遺言者が死亡した後すぐに執行することができません。

家庭裁判所で、検認手続をする必要があるからです。

検認手続とは、自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して開封してもらう手続です。

検認手続が必要なのに検認手続をしないと、相続手続を進めることができません。

相続手続を進められないと、不動産の売却手続を進めることができません。

(2)売却するための対策

自筆証書遺言を見つけた人や預かっていた人は、家庭裁判所に対して自筆証書遺言検認の申立てをします。

自筆証書遺言検認の申立てを受付けたら、相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

検認期日では、遺言書を開封し遺言書の内容や形状を確認します。

検認が終わったら、検認済証明書を発行してもらいます。

自筆証書遺言と検認済証明書を添えて、相続手続をします。

相続登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

ケース②内容が不明瞭な遺言書

(1)売却できない理由

自筆証書遺言は、専門家のサポートなしで作られることがほとんどです。

専門家のサポートがないと、適切な記載をすることは難しいでしょう。

「自宅は、お兄ちゃんに任せる。」

上記の記載は、内容が不明瞭な遺言書の代表例です。

自宅とは、どこに所在するどの不動産なのか分かりません。

お兄ちゃんとは、だれなのか分かりません。

任せるとは、相続させるのか管理させるのか分かりません。

内容が不明瞭な遺言書があっても、相続手続を進めることができません。

相続手続を進められないと、不動産の売却手続を進めることができません。

(2)売却するための対策

遺言書があっても、相続人全員の合意で遺産分割協議をすることができます。

相続人全員で適切な合意をした後、合意内容を書面に取りまとめます。

合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。

適切な内容の遺産分割協議書を添えて、相続手続をします。

相続登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

ケース③書き方ルール違反の遺言書

(1)売却できない理由

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

公正証書遺言は、公証人が書面に取りまとめます。

公証人は、法律の専門家です。

公証人が関与したのに、書き方ルールに違反することは考えられません。

自筆証書遺言は、ひとりで作成されることがほとんどです。

書き方ルールに違反すると、遺言書が無効になります。

例えば、次の遺言書は書き方ルールの違反で無効になります。

・遺言書の本文がPCなどで作成

・遺言者以外の人が代筆

・〇月吉日など日付と特定できない

・日付スタンプが押してあって、自書していない

・押印がない

無効の遺言書があっても、相続手続を進めることができません。

相続手続を進められないと、不動産の売却手続を進めることができません。

(2)売却するための対策

遺言書が無効の場合、遺言書による相続手続はできません。

遺言書が無効になると、遺言書がなかった扱いになるからです。

遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議が成立したら、相続手続を進めることができます。

相続登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

ケース④共有で相続させる遺言書

(1)売却できない理由

遺言書で相続財産の分け方が指定されている場合、遺言書の内容どおりに遺産分割をすることができます。

遺言書の内容が共有で相続させる場合、不動産は共有になります。

不動産が共有になると、一部の相続人だけで不動産を売却することはできません。

共有する不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要だからです。

(2)売却するための対策

遺言書の内容が共有で相続させる場合、共有で相続登記をすることができます。

共有者全員の協力があれば、不動産を売却することができます。

共有者全員の協力が難しい場合、家庭裁判所に共有物分割調停を申し立てることができます。

共有物分割調停とは、家庭裁判所の助力を得て共有者全員による合意を目指す制度です。

共有物分割調停で合意ができないときは、共有物分割請求訴訟をすることができます。

ケース⑤遺言執行者がいる

(1)売却できない理由

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書で、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者の妨害行為はできません。

相続人が不動産を売却したいと思っても、遺言書の実現が優先されるからです。

(2)売却するための対策

遺言執行者には、遺言書の内容を実現する義務があります。

相続人は、遺言執行者を無視して勝手に不動産の売却行為はできません。

相続人は、遺言執行者の妨害行為はできないからです。

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人で、相続人の希望をかなえる人ではありません。

不動産の売却行為が必要で合理的であれば、遺言執行者の協力が得られるでしょう。

遺言執行者の協力が得れば、不動産を売却することができます。

例外的なケースでは、家庭裁判所に解任の申立てをすることができます。

例えば、遺言執行者が長期間職務を放置するケースや横領など違法行為をしたケースです。

遺言書に書いていないのに不動産売却に協力してもらえないだけでは、解任事由にあたらないでしょう。

遺言執行が完了したら、財産は相続人のものになります。

相続人は、相続した不動産を自由に処分することができます。

ケース⑥遺言書で遺贈

(1)売却できない理由

遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

相続人に対して不動産を遺贈した場合、遺贈を受けた相続人は他の人の協力なしで所有権移転登記をすることができます。

相続人以外の人に対して不動産を遺贈した場合、遺贈義務者の協力がないと所有権移転登記をすることができません。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者がいない場合、遺贈義務者は相続人全員です。

遺言書の内容に不満がある相続人がいると、相続手続を進められなくなります。

(2)売却するための対策

遺言執行者には、遺言書の内容を実現する義務があります。

遺言執行者が協力しないことは、あまり考えられません。

遺言書で遺言執行者が指名されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所が選任した遺言執行者と協力して、所有権移転登記をすることができます。

所有権移転登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

3売却予定でも相続登記は省略できない

①権利変動の過程を公示する

相続した不動産をすぐに売却する予定の場合、相続登記の手間と費用がもったいないと考えるかもしれません。

相続登記を省略することはできません。

登記制度は、現在の所有者を公示しているだけではないからです。

登記制度で、権利変動の過程も公示しています。

相続登記の省略を認めると、適切な権利変動の過程が公示されなくなります。

登記制度への信頼が大きく損なわれます。

登記制度への信頼を維持するため、相続登記は省略できません。

②すみやかな相続登記で売却手続がスムーズ

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になるのが一般的です。

相続登記をしないと、だれが相続するのか客観的に分からないと言えるでしょう。

だれが所有者なのか分からないと、トラブルに巻き込まれるおそれがあります。

トラブルに巻き込まれるおそれがある不動産は、購入を諦めるでしょう。

相続登記をしないと、売却手続が進まなくなります。

相続登記をすると、所有者が客観的に明らかになります。

すみやかな相続登記で、売却手続がスムーズになります。

4不動産を売却しやすい遺言書を作成する

①売却して金銭で分割を明記

遺言書を作成して、不動産を売却し金銭で分けることを明記することができます。

遺言書に明記してあると、相続人間の調整が容易になります。

②遺言執行者を指名

遺言執行者がいると、遺言者にとって安心です。

遺言書の内容を確実に、実現してくれるからです。

遺言執行者がいると、相続人にとって安心です。

手間と時間がかかる相続手続をおまかせすることができるからです。

不動産を売却する場合、相続手続をしたうえ売却手続が必要です。

遺言執行者におまかせできると、相続人間のトラブルを回避することができます。

③公正証書遺言がおすすめ

公正証書遺言は、公証人が関与しています。

書き方ルールの違反などで、遺言書が無効になることは考えられません。

司法書士などの専門家にサポートしてもらうと、相続人間でトラブルになりにくい遺言書を作成することができます。

遺言書を作成するなら、公正証書遺言がおすすめです。

5相続後の不動産売却を司法書士に依頼するメリット

相続した不動産を売却したいという方は、少なからずいます。

相続も不動産の売却も、一生のうちに何度も経験するものではありません。

だれにとっても慣れない相続手続と売却手続を並行して進めるのは大変なことです。

平日は仕事や家事をしながら、さらに大切な家族を失った悲しみを抱えながら、これらを手続するのは想像以上に大変です。

土地を売却するためには、相続登記が必須です。

司法書士は、余計な費用や余計な手間をかけないように手続をします。

相続後の不動産売却を確実に進たい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺言執行者による不動産売却

2025-11-23

1遺言執行者が遺言書の内容を実現する

①遺言執行者は独立した地位がある

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するため必要な権限と義務が与えられます。

遺言執行者は、相続人の代理人ではありません。

相続人の意思に関わらず独立して、遺言書の内容を実現することができます。

遺言執行者には、独立した地位が認められています。

②遺言執行者は遺言書で指名できる

遺言書を作成するとき、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者になるために、特別な資格は不要です。

次の人は、遺言執行者になることができません。

・未成年者

・破産者

遺言書の内容を実現する人だから、信頼できる人を指名するといいでしょう。

相続人や受遺者を遺言執行者に指名することができます。

受遺者とは、遺贈を受ける人です。

③遺言執行者は辞退できる

遺言書は、遺言者がひとりで作成することができます。

言うなれば、一方的に遺言執行者に指名することができます。

遺言執行者に指名されても、自信がないことがあるでしょう。

遺言執行者に就任する義務は、ありません。

理由を明らかにすることなく、遺言執行者就任を辞退することができます。

④遺言執行者の辞任は正当理由と家庭裁判所の許可

遺言執行者に就任した後は、公益的側面を持つ準公的な立場と考えられています。

遺言執行者は、軽々しく辞任することはできません。

遺言執行者の辞任には、正当理由と家庭裁判所の許可が必要です。

例えば、次の理由は正当理由に認めらます。

・重病で病気療養に専念する必要がある。

・認知症などで判断能力が低下した。

・相続人から執拗な妨害行為や誹謗中傷が継続的にある。

・遺言執行が著しく困難なレベルで相続人との対立がある。

正当理由があるか、家庭裁判所が判断します。

⑤遺言執行者は専門家に委任できる

遺言執行者には、遺言書の内容を実現するため必要な権限と義務があります。

遺言執行者が、自分で行わなければならない義務はありません。

例えば、相続登記は相続手続の中でも難しい手続です。

遺言執行者は、相続登記を司法書士に依頼することができます。

遺言書の内容を実現するため、必要に応じて専門家を利用することができます。

2遺言執行者による不動産売却

①相続人は遺言執行者の妨害行為ができない

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続人であれば、自由に相続財産を売却できると感じるかもしれません。

遺言書がある場合、遺言執行が優先されます。

相続財産は、遺言執行者が管理します。

相続人は、勝手に売却できません。

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者の妨害行為をすることはできません。

親切心からしたことであっても、妨害行為になることがあります。

例えば、次の行為は妨害行為にあたるでしょう。

・相続人が懇意の不動産業者と勝手に媒介契約を締結

→不動産業者候補を提案し遺言執行者の判断に任せる

・相続人が売主と主張して勝手に売買交渉

→売買交渉は遺言執行者に任せ、進捗確認のみ

・相続人が熱心なアドバイスを執拗に繰り返す

→相続人で意見共有し、遺言執行者の決定を尊重

親切は素晴らしいですが、遺言執行者主導で協力すると円滑な遺言執行が実現します。

②遺言書の内容の実現は遺言執行者の義務

相続人を遺言執行者に指名することができます。

遺言執行者に就任したら、相続人とは別の遺言執行者としての立場になります。

遺言書の内容の実現は、遺言執行者の義務です。

遺言書に不動産の売却が定められている場合、遺言執行者は売却しなければなりません。

不動産売却は、相続人による自由処分ではないからです。

一部の相続人が勝手に処分したのではなく、遺言執行者が遺言書の内容を実現したと言えます。

遺言執行者の義務だから、相続人全員の合意は不要です。

③遺言執行者が相続登記

相続した不動産を売却する場合、相続登記は省略できません。

登記制度は、現在の所有者だけでなく権利変動の過程も公示しているからです。

適切な権利変動の過程を公示していない場合、登記制度への信頼を大きく損ねます。

遺言執行者は、相続登記をすることができます。

遺言執行者は、登記名義人になりません。

登記名義人になるのは、相続人です。

相続登記は難しい手続だから、知識がないと手に余るでしょう。

遺言執行者から、司法書士などの専門家に相続登記を依頼することができます。

④遺言執行者が売買契約

遺言書に不動産の売却が定められている場合、遺言執行者が売買契約を締結します。

遺言執行者は、自ら売主になります。

遺言書に不動産の売却が定められている場合、不動産売却は遺言執行そのものだからです。

相続人の同意がなくても、遺言執行の一環として売買契約を締結します。

相続人の協力がなくても、単独で売買契約を締結します。

売買契約には、相続人ではなく遺言執行者〇〇〇〇で署名します。

⑤遺言執行者が売買による所有権移転登記

遺言執行者は、相続登記をすることができます。

相続登記をすると、所有権の登記名義人は相続人です。

売買契約を締結したら、売買による所有権移転登記をします。

売買による所有権移転登記は、登記権利者と登記義務者による共同申請です。

登記権利者は、不動産の買主です。

登記義務者は、遺言執行者です。

不動産の登記名義人である相続人は、関与する必要がありません。

相続人の押印は、不要です。

相続人の印鑑証明書は、不要です。

売買による所有権移転登記は、遺言書の内容の実現に必要な行為だからです。

遺言執行者の押印と遺言執行者の印鑑証明書を準備します。

売買による所有権移転登記は、買主と遺言執行者で共同申請します。

⑥売却代金は遺言執行者名義の遺産管理用口座に入金

不動産を売却すると、遺言執行者が売却代金を受け取ります。

売却代金は、相続財産です。

遺言執行者が勝手に使うことはできません。

売却代金は、遺言執行者名義の遺産管理用口座に入金するのがおすすめです。

遺言執行者の固有の財産と相続財産は、分別管理を徹底する必要があります。

分別管理をしないと、他の相続人から疑いの目を向けられるからです。

⑦売却代金は相続財産

不動産を売却すると、売却代金を受け取ります。

売却代金は、相続財産です。

売却代金をどのように使うのか、遺言書に定めてあることが多いでしょう。

例えば、次のような記載です。

・売却代金を〇〇〇〇に遺贈する。

・売却代金は、相続人〇〇〇〇に相続させる。

・売却代金で、借金を返済せよ。

遺言執行者は遺言書の内容を実現するため、売却代金を処理します。

遺言執行者名義の遺産管理用口座から、遺言書の内容に従って振込します。

⑧売却代金の使途を定めてないときは遺産分割協議

遺言書を確認しても、売却代金の使途を定めていないことがあります。

売却代金の使途を定めてあっても、その条項が無効になることがあります。

例えば、「売却代金を〇〇〇〇に遺贈する。」と定めてあるのに、〇〇〇〇が先に死亡したケースです。

「売却代金を〇〇〇〇に遺贈する。」条項が無効になるから、売却代金の使途を定めていない扱いです。

売却代金の使途が定められていない場合、売却代金は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

売却代金の分け方の決定には、遺言執行者の関与が不要です。

⑨遺言執行者が売却に応じないと解任請求

遺言書に不動産の売却が定めてある場合、遺言執行者には売却の義務があります。

遺言執行者が義務を怠る場合、家庭裁判所に遺言執行者解任を請求することができます。

家庭裁判所に解任請求をする前に、執行状況や売却予定を確認するといいでしょう。

遺言執行者と協調した方が結果的にスムーズな遺言執行ができるからです。

遺言執行者が義務を怠る事実があるのか、客観的証拠に基づいて家庭裁判所が判断します。

遺言執行者の解任には、高いハードルがあります。

義務を怠る事実があると認められた場合、家庭裁判所が解任します。

3遺言執行者に指名された相続人が取るべき現実的対応

①就任の可否をすみやかに返答

遺言執行者に指名されても、遺言執行者に就任する義務はありません。

遺言執行者になる前であれば、どのような理由でも辞退することができます。

遺言執行者に指名されたのに就任するか就任を辞退するのか分からないと、相続人が困ります。

遺言執行者に指名されたら、就任の可否をすみやかに返答します。

②専門家に適切に活用

遺言執行者には、遺言書の内容を実現する責任があります。

遺言執行者は、自分で手続をする義務はありません。

適切に専門家を活用するのがおすすめです。

登記手続は、司法書士に依頼することができます。

不動産の売却は、不動産業者に依頼することができます。

何らかの紛争に巻き込まれたときは、弁護士に依頼することができます。

専門家に適切に活用すると、スムーズに遺言執行をすることができます。

③相続人とのコミュニケーションを透明化

遺言執行者は、相続人の同意なく遺言書の内容を実現することができます。

相続人の納得を置き去りにすると、相続人の反発を招きます。

遺言書の内容を適切に開示し、相続人と情報共有をします。

相続人と情報共有内容は、議事録で共有します。

遺言執行者が丁寧な説明をして説明責任を果たすと、相続人も納得するでしょう。

妨害には毅然と対応しつつ、相続人とのコミュニケーションを透明化がおすすめです。

4遺言執行者による不動産売却を司法書士に依頼するメリット

相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合はさらにタイヘンです。

相続人がいないから、国に持っていかれるより、お世話になった人に受け取ってもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる人に使ってもらいたいという方もいるでしょう。

不動産は、価値が高いものの、人によっては使いにくかったり不便であることがあります。

不動産は管理の手間もありますから、かえって、持て余すこともあるでしょう。

このような場合に、不動産を売却してお金で受け取ってもらうことは有効です。

不動産を売却してお金で受け取ってもらうためには、遺言書は欠かせません。

遺言書は自筆証書遺言でも、公正証書遺言でも効力に変わりはありませんが、形式の不備などがない確実な公正証書遺言をおすすめします。

遺言執行者を指名しておけば、余計な事務負担をかけることになくなりますから、安心です。

遺言執行は手間と時間がかかるだけでなく、法律の知識が不可欠です。

司法書士などの法律の知識がある専門家に依頼するのがいいでしょう。

遺言書作成に併せて、遺言執行を依頼すれば、登記までスムーズに手続してもらえます。

清算型遺言を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続登記前に不動産売却

2022-10-26

1相続が発生したら相続財産は相続人全員の共有財産

相続が発生した場合、被相続人のものは原則として相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産は、相続人全員で所有しています。

相続登記をしたから、所有権が移転するのではありません。

相続登記をしても相続登記をしていなくても、相続人全員に所有権は移転しています。

相続が発生した後、相続登記をするまでの間は、所有者と登記名義が異なります。

登記名義を変更していない場合でも、所有権が移転した事実は変わりません。

2相続発生後に不動産を売却したいケース

①住む予定のない実家

相続人がマイホームを持っている場合、実家を相続しても持て余すことになるでしょう。

相続人が遠方に住んで椅子場合、実家は使う予定がないかもしれません。

使い予定がなくても維持管理の手間や固定資産税の負担があります。

②換価分割で相続財産を分ける

相続財産が自宅不動産だけという場合、相続人間で分け方を決められなくなることがあります。

法定相続分で共有にすることも選択肢のひとつですが、デメリットが大きくおすすめできません。

換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。

実際に売れてからお金で分けるので、不動産の値段をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。

③清算型遺言がある

遺言書で相続財産を売却して、得られた金銭を分けるように決めておくことができます。

このような遺言を、清算型遺言と言います。

清算型遺言をする場合、遺言執行者を指名しておくと手続がスムーズです。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が不動産を売却してお金に換えた後、お金を分けてくれます。

3所有権移転を第三者に主張するためには登記が必要

相続人全員が所有者だから相続人全員が協力すれば、売却することもできないとは言い切れません。

相続人全員が協力すれば売却することができるのであれば、相続登記を省略したいと考えるかもしれません。

相続登記をする場合、登録免許税を納める必要があります。

登録免許税は不動産の評価額によって決められますから、評価額の高い不動産の場合はなおさら相続登記を省略したいでしょう。

不動産を買い受けた場合、買主は所有権移転登記を備えたいはずです。

登記を備えていない場合、第三者に対して所有者であることを主張することができないからです。

所有権登記を備えた見知らぬ人から明け渡し請求をされるかもしれません。

不動産を買い受けたのに代金を支払ったのに、明け渡しに応じなければならなくなります。

多くの場合、不動産は高額です。

高額な代金をきちんと支払ったのに明け渡しに応じなければならなくなることは容認できないでしょう。

所有権移転登記を備えておけば、このようなことは防ぐことができます。

このため、売買契約書には所有権移転登記を備えることが記載されています。

4買主に所有権移転登記をする前提として相続登記は必須

実態として、被相続人→相続人→買主と所有権が移転します。

登記は、権利変動の実態を示すものです。

所有権移転の実態を表していない場合、登記制度への信頼が失墜します。

このようなことが許されるはずがありません。

買主に所有権移転登記をする前提として、相続登記は省略することはできません。

所有者であることを第三者に主張するためには、登記が必要です。

売主名義の登記がされていない場合、一般的には、売買契約を締結することが困難でしょう。

買主から見ると、だれが相続したのか登記から分からないからです。

法律上、売買ができないわけではありませんが、事実上、売買契約をする買主は見つけられないと言えます。

買主が安心して売買契約を締結するために、相続登記は不可欠です。

不動産を売却する予定がない場合、相続手続きは先延ばししがちです。

相続が発生してすぐに相続手続きをすれば、手続きがカンタンで、費用も時間も手間も少なく済みます。

相続が発生してから長い期間、放置すると、余計な費用、時間、手間がかかります。

相続人に相続が発生して関係者が増えると、話し合いがまとまりにくくなります。

相続手続きには戸籍謄本などの書類が必要になりますが、役所は保存年限を越した古い戸籍を廃棄してしまいますから、必要な書類が集められなくなるかもしれません。

売却を予定する人も、売却を予定しない人も、相続が発生したら、相続登記はすみやかに済ませましょう。

5不動産売却後に相続発生した場合は相続登記不要

不動産の名義人が有効に不動産の売買契約を締結した後、相続が発生した場合、原則として、相続登記は不要です。

所有権は、被相続人→買主と移動しているからです。

相続人は不動産の所有権を得ていないので、相続登記も必要ありません。

ただし、売買契約書のなかで、売買代金を完済したときに所有権が移転するなどの条項がある場合があります。

このような条項がある場合であって、かつ、生前に売買代金を受け取っている場合は、相続登記は必要ありません。

所有権は、売買代金を受け取ったときに買主に移転しているからです。

このような条項がある場合であって、かつ、売買代金が未払いの場合は、必ず、相続登記が必要です。

売買代金を受け取っていない以上、所有権は名義人のものだからです。

所有権は、名義人が死亡すると相続人に相続されます。

一方、不動産を相続した後に売却する場合、必ず、相続登記が必要です。

所有権は、被相続人→相続人→買主と移動しているからです。

不動産を相続した後に売却する場合、不動産売却の手続をスムーズにするためにも、相続手続は早めに済ませましょう。

6相続登記前に建物を取り壊した場合は相続登記不要

建物を取り壊すと、建物について登記簿は不要になります。

法務局に対して、建物は取り壊しました、登記簿をなくしてくださいと申請をする必要があります。

建物は取り壊しましたという登記申請を、建物滅失登記と言います。

相続した後、建物の取り壊しをした場合、建物の相続登記は省略することができます。

相続した後、土地を売却した場合、土地の相続登記は省略することができません。

土地でも建物でも、相続した後、売却する場合は必ず相続登記が必要です。

被相続人が生前に建物を取り壊していたが建物滅失登記をしていない場合もあります。

建物を取り壊しているので、相続人は建物を相続していません。

だから、建物の相続登記は不要です。

相続人は被相続人がするべきであった建物滅失登記を申請する義務を引き継いでいます。

建物滅失登記を申請する義務は、相続人のひとりが単独ですることができます。

相続人がたくさんいても同意は必要ありません。

建物はすでに取り壊されているので、建物滅失登記を申請しても、他の相続人に不利益は発生しないからです。

相続登記の費用も無視できませんから、勘違いしないようにしましょう。

7相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続した不動産を売却したいという方は少なからずいます。

相続も不動産の売却も、一生のうちに何度も経験するものではありません。

だれにとっても慣れない相続手続と売却手続を並行して進めるのは大変なことです。

平日は仕事や家事をしながら、さらに大切な家族を失った悲しみを抱えながら、これらを実行するのは相続以上に大変です。

確実に手続を進めて、日常を取り戻したい方は、手続を丸投げできます。

ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。

相続後の不動産売却を確実に進めたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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