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相続放棄より消滅時効の援用

2024-05-24

1相続放棄をするとプラスの財産もマイナスの財産も相続しない

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄と言います。

相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に手続をする必要があります。

一般的に、相続人同士の話し合いにおいて相続財産を受け取らない申出をしたことを相続放棄と表現することがあります。

家庭裁判所で手続をしない場合、相続放棄の効果はありません。

相続人同士で話し合いをしただけでは、相続放棄と認められません。

2相続財産を処分したら相続放棄が無効になる

相続放棄はできないのに家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。

単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。

相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。

単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。

引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。

銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。

被相続人が払い過ぎた税金などの還付金の支払を受けた場合、「処分した」と判断されます。

相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。

相続財産に株式がある場合、株式に基づく株主権の行使が「処分した」になることがあります。

被相続人が会社役員かつ株主の場合、安易に株主総会を開催して、役員変更すると相続放棄が無効になるおそれがあります。

3長期間権利行使をしないと消滅時効で権利行使ができなくなる

①消滅時効とは

消滅時効とは、長期間権利行使をしない場合に権利が行使できなくなる制度です。

債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。

債務者の事情を察して、借金を請求せずに長期間経過することがあります。

借金を請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。

②消滅時効が存在する理由

(1)長期間継続した事実の尊重

長期間に渡り権利行使をしない場合、継続した事実を前提として法律関係が積み重なっていきます。

継続した事実を覆すと混乱するでしょう。

継続した事実を尊重して混乱を回避するため、権利行使が許されなくなります。

(2)立証困難の救済

金を借りた場合、きちんとお金を返さなければなりません。

お金を返して欲しいと言われないまま長期間経過した場合、お金を返した証拠を用意できないことがあります。

お金を返したら、お金を返して欲しいと言われることはないはずです。

長期間お金を返して欲しいと言われていない場合、すでにお金を返している可能性が高いでしょう。

お金を返した証拠を用意できない場合、再度お金を返さなければならなくなります。

長期間経過による立証困難を救済するため、権利行使が許されなくなります。

(3)権利の上に眠る者は保護されない

権利を主張する人は、権利行使をしなければなりません。

長期間権利行使をしていない人は、権利の上に眠る者と言えます。

権利行使を怠った人に対して、法の助力は得られません。

③消滅時効の期間と除斥期間

消滅時効も除斥期間も、権利行使ができなくなる期間です。

権利が行使できなくなる期間は、債権の種類によって異なります。

一般的な債権は、権利行使ができると知ってから5年、権利行使ができるときから10年です。

不法行為損害賠償請求権は、権利行使ができると知ってから3年、権利行使ができるときから20年です。

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利行使ができると知ってから5年、権利行使ができるときから20年です。

④消滅時効は更新されることがある

長期間権利行使をしない場合、権利が行使できなくなります。

債務者が途中で借金を返済することがあります。

借金の返済を受けた場合、権利行使したと言えます。

途中で権利行使をしたから、長期間権利行使をしない場合とは言えません。

途中で権利行使をした場合、消滅時効は更新されます。

時効が更新された場合、今まで経過した期間が無効になります。

あらためてゼロから再スタートします。

消滅時効が更新されるのは、次の場合です。

(1)時効の承認

(2)裁判上の請求

(3)催告

⑤消滅時効の利益を受けるためには意思表示が必要

長期間経過しても、自動的に借金がなくなるわけではありません。

消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。

借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあります。

お金を借りたのだからきちんとお金を返すべきだと考えている債務者に対して、消滅時効を押し付けるべきではありません。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。

時効の利益を受ける意思表示を時効の援用と言います。

時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。

4消滅時効を援用すると相続放棄は無効になる

①消滅時効を援用したらプラスの財産を相続できる

被相続人に莫大なマイナスの財産が見つかることがあります。

莫大なマイナスの財産を引き継がないために、相続人は相続放棄を検討するでしょう。

莫大な借金ではあるものの古い借金である場合、消滅時効が完成していることがあります。

相続の放棄が認められた場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことはできません。

借金が時効消滅している場合、相続人は消滅時効を援用することができます。

マイナスの財産について消滅時効を援用した場合、マイナスの財産を引き継ぐことなくプラスの財産を引き継ぐことができます。

②消滅時効を援用することは単純承認になる

相続財産を処分した場合、相続放棄が無効になります。

相続放棄はできないのに家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。

被相続人にマイナスの財産がある場合、相続人は消滅時効を援用することができます。

消滅時効を援用することは、相続財産の処分行為です。

相続財産を処分した場合、相続を単純承認したと判断されます。

単純承認をしたのに、相続放棄が認められても相続放棄は無効です。

③消滅時効の援用に失敗することがある

債権者が長期間権利行使をしない場合、債務者は消滅時効を援用することができます。

長期間権利行使をしないまま消滅時効が完成する条件が揃った後で債権者が借金を払ってくださいと請求することがあります。

債務者が消滅時効を援用するか分からないからです。

被相続人が借金をしていた場合、相続人は借金の状況を詳しく知っていることは少ないでしょう。

借金の支払いを猶予して欲しい、分割支払いをして欲しいなどと不用意に言ってしまうかもしれません。

借金を承認した場合、消滅時効は更新されます。

消滅時効が完成する条件が揃った後で消滅時効を援用する前に、借金を承認しても更新されます。

借金の支払いを猶予して欲しい、分割支払いをして欲しいなどの発言は、被相続人の借金の存在を前提にしています。

借金の存在を承認したと言えるから、消滅時効は更新されます。

消滅時効が更新されたら、あらためてゼロから再スタートします。

④債権者が複数存在するおそれ

相続を単純承認した場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぎます。

被相続人が複数から借金をしていることがあります。

一部の借金が消滅時効を援用できたとしても、他の借金の消滅時効は完成していないことがあります。

被相続人のマイナスの財産の全容が明らかでない状態で、消滅時効を援用するのは危険です。

消滅時効を援用すると、相続を単純承認したと判断されるからです。

5相続放棄の期間3か月は延長してもらえる

相続人は相続放棄をするか消滅時効を援用するか判断することができます。

相続放棄をするか消滅時効を援用するか判断するため、被相続人の財産の全容と取引状況を明らかにしなければなりません。

長期間請求などがないまま放置されているけど消滅時効が完成しているのか分からない場合、取引状況を詳細に確認する必要があるからです。

多くの場合、取引状況を照会してもすぐに返事をしてもらうことができません。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して申立てをする必要があります。

相続放棄の申立ての期限は、相続が発生したことを知ってから3か月以内です。

被相続人の財産と取引状況を調査する場合、3か月では調査しきれないことがあります。

相続放棄をすべき単純承認すべきか判断するため、家庭裁判所に3か月の期限を延長をしてもらうことができます。

相続放棄の期間3か月を延長してもらうことを相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てと言います。

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを受け付けた場合、家庭裁判所が期間延長を認めるか判断します。

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには、期間内に相続放棄をすべきか単純承認すべきが判断ができない具体的理由や延長が必要な期間を記載します。

判断ができない具体的理由を根拠づける資料を添付して、説得力を持たせるといいでしょう。

期間延長の必要性や理由が妥当なものであると家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。

家庭裁判所で期間延長が認められた場合、原則として3か月延長されます。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍謄本や住民票が必要になります。

仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍謄本や住民票は郵便による取り寄せもできます。

書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。

やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍謄本や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

農地があるときの遺言書で農地法の許可

2024-05-22

1農地の名義変更に農地法の許可が必要

①農地の権利移動で農地法3条の許可が必要

農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。

勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。

農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。

許可が必要になる権利移動は、売買、贈与、賃貸などです。

農地法第3条の許可の要件は、次のとおりです。

(1) 全部効率利用要件

全部効率利用要件とは、農地の全部をつかって効率よく農業をすることです。

農地を耕作するのに充分な労働力が確保されているか技術があるか審査されます。

労働力が不足する場合、充分な能力がある機械があるか審査されます。

(2)農作業常時従事要件

農作業常時従事要件とは、農作業に常時従事することです。

常時とは、年間150日以上とされています。

住居と生計を同一する家族が満たせば認められます。

権利者本人だけでなく家族で助け合えば、要件を満たすことができます。

(3)下限面積要件

下限面積要件とは、農地を取得する人の耕作する面積の要件です。

下限面積は、5000平方メートルです。

すでに耕作している土地がある場合、合算して審査されます。

地域によっては、下限面積要件を緩和しています。

新規の就農者を増やしたいことがあるからです。

(4)地域調和要件

地域調和要件とは、地域の取組に協力的であることです。

地域の活動に支障がある場合、許可されにくくなります。

例えば、地域全体で無農薬栽培に取り組んでいる場合、協力しない人には許可されにくいでしょう。

②農地の転用で農地法4条の許可が必要

農地の転用とは、農地を農地以外の土地にすることです。

例えば、農地を宅地にして家を建てる場合、農地の転用に該当します。

農地の転用には、農地法第4条の許可が必要です。

③農地の転用と権利移動で農地法5条の許可が必要

農地の転用と権利移動をする場合があります。

例えば、農地を売却したうえで宅地にして家を建てる場合です。

農地の転用と権利移動をするには、農地法第5条の許可が必要です。

④許可がないと権利取得ができない

農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。

農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。

農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。

農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。

2農地を相続させる遺言書

①農地を相続させる遺言書の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第1条

次の財産を、相続人○○に、相続させる。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 畑

地積 200㎡

②相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

③相続で農地を取得するときは3条の許可不要

相続人になる人は、法律で決まっています。

法律で決められた人だけが相続人になります。

相続できるのは、相続人だけです。

相続人が農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもが農業をしないことがあります。

子どもは農業をしないけど、子どもの子どもが農業をすることがあります。

孫に農地を相続させたいと考えることがあります。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。

孫に相続させることはできません。

孫に農地を受け継いでもらいたい場合、別の方法を考える必要があります。

相続で農地を取得するときは、農地法第3条の許可は不要です。

④3条の許可なしで農地を取得したときは届出が必要

農地を取得する場合、原則として、農地法第3条の許可が必要です。

相続で農地を取得した場合、例外として、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可を得ずに農地を取得した場合、農地法第3条の3の定めにより届出が必要です。

農地法第3条の3の定めによる届出は、農業委員会に対して提出します。

提出期限は、相続があったことをしてから10か月以内です。

3農地を特定遺贈する遺言書

①農地を特定遺贈する遺言書の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第2条

次の財産を、◇◇に、遺贈する。

所在 ◇◇市◇◇町◇丁目

地番 ◇番◇

地目 畑

地積 300㎡

②特定遺贈は指定した財産を譲る

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産◇◇◇◇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。

遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。

③相続人以外の人に特定遺贈するときは3条の許可が必要

遺贈は、遺言書で財産を受け継ぐことです。

遺贈は、相続ではありません。

相続人以外の人が特定遺贈で財産を受け継ぐことができます。

相続人以外の人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。

相続人以外の人に特定遺贈をしたい場合、許可されるのか農業委員会に確認しておくといいでしょう。

農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。

孫に相続させることはできません。

孫に遺贈することができます。

孫が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。

孫は、相続人以外の人だからです。

④相続人に特定遺贈するときは3条の許可が不要

相続人や相続人以外の人に、遺贈することができます。

相続人に対して、農地を相続させることができます。

相続人に対して、農地を特定遺贈することができます。

相続人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

4農地を全部包括遺贈する遺言書

①全部包括遺贈する遺言書の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第3条

全財産を、◇◇に、遺贈する。

②全部包括遺贈は全財産を譲る

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

包括遺贈とは、遺言書に割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

全部包括遺贈は、「財産すべてを包括遺贈する」と記載してある場合です。

全部包括遺贈をする場合、法定相続人や法定相続人以外の人に全財産を譲ってあげることができます。

③全部包括遺贈は遺産分割協議不要

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は相続人と共有することがありません。

相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。

遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。

全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。

④相続人以外の人に包括遺贈するときは3条の許可が不要

包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。

包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

5農地を一部包括遺贈する遺言書

①一部包括遺贈をする記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第3条

全財産の10分の1を、◇◇に、遺贈する。

②一部包括遺贈は指定した割合で譲る

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

包括遺贈とは、遺言書に割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

一部包括遺贈は、「財産の2分の1を包括遺贈する」と記載してある場合です。

包括遺贈では、何を遺贈するのか具体的財産は記載されていません。

③一部包括遺贈を受けたら遺産分割協議

一部包括遺贈は、指定した割合で財産を譲るものです。

一部包括遺贈を受けた場合、遺産分割協議に参加します。

包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。

遺言書は割合だけ書いてあるだけで、具体的な財産は記載されていないからです。

相続財産は、包括遺贈を受けた人と相続人全員で共有しています。

相続財産の分け方について、包括遺贈を受けた人と相続人全員で合意する必要があります。

包括受遺者がいるのに、相続人全員だけで遺産分割協議をしても無効です。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。

遺産分割協議の結果次第では、農地を受け取ることができないかもしれません。

一部包括遺贈を受けただけでは、何を受け取るのか決められていないからです。

一部包括遺贈を受けたら、遺産分割協議が必要です。

④相続人以外の人に包括遺贈するときは3条の許可が不要

包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。

包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

遺言書を作成して、孫に一部包括遺贈をすることができます。

孫が包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。

⑤包括遺贈は負債も受け継ぐ

特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。

遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。

特定遺贈では、負債を受け継ぐことはありません。

包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。

相続財産に負債がある場合、指定された割合で負債を引き継ぎます。

農業を営んでいる場合、多額の負債があることがあります。

包括遺贈を受ける場合、農地だけでなく多額の負債を引き継ぐことになります。

6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。

死期が迫ってから、書くものではありません。

遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。

遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。

受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。

遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。

遺言執行には、法的な知識が必要になります。

遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。

遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。

不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。

せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。

遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

普通失踪は生死不明7年で死亡

2024-05-17

1普通失踪と特別失踪(危難失踪)のちがい

行方不明になってから長期間経過している場合、死亡している可能性が高いことがあります。

死亡した可能性が高い行方不明者を法律上死亡した取り扱いにする手続が失踪宣告です。

失踪宣告には、2種類あります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪の失踪期間は、7年です。

特別失踪(危難失踪)は、行方不明の人が大災害や大事故にあっている場合の失踪宣告です。

大災害や大事故に巻き込まれた場合、死亡の可能性が非常に高いものです。

死亡の可能性が非常に高いから、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)の失踪期間は、7年です。

2普通失踪は生死不明7年満了で死亡

①失踪宣告で死亡と見なされる

行方不明の人は、法律上生きている人です。

長期間行方不明になっていても、法律上生きている人のままです。

生きている人だから、行方不明の人の財産を家族が処分することはできません。

財産を処分することができるのは、持ち主本人だけだからです。

生きている人だから、行方不明の人の配偶者は再婚することができません。

失踪宣告は、行方不明のまま相当長期間経過した人に対して死亡と扱うための手続です。

失踪宣告を受けた人は、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いがされます。

死亡と確認されていないのに、死亡と扱うから強い効果があります。

行方不明になってから長期間経過している場合、死亡している可能性が高いことがあります。

法律上死亡の扱いをすることで、家族は気持ちの整理をつけることができます。

失踪宣告は、家族が気持ちの整理をつけて前に向かって進むための制度です。

失踪宣告で死亡と見なされます。

②失踪宣告は申立てが必要

相当長期間行方不明になって死亡の可能性が高い場合、家庭裁判所は失踪宣告をします。

相当長期間行方不明になって死亡の可能性が高い場合であっても、勝手に失踪宣告がされることはありません。

相当長期間行方不明であっても、家族は帰ってくると信じて待っていることがあります。

気持ちの整理をつけていないのに、死亡と扱われるのは家族にとって酷だからです。

申立てがあってから、家庭裁判所が失踪宣告をします。

失踪宣告の申立てができるのは、法律上の利害関係人のみです。

主な申立人は、次のとおりです。

(1)配偶者

(2)推定相続人

(3)受遺者

失踪宣告は、家庭裁判所が職権ですることはできません。

失踪宣告は、市区町村長や検察官が申立てをすることはできません。

失踪宣告は、家族が気持ちの整理をつけて前に向かって進むための制度だからです。

家庭裁判所が失踪宣告をするためには、利害関係人から申立てが必要です。

③死亡日は生死不明7年満了の日

普通失踪の失踪期間は、7年です。

行方不明になってから7年以上経過している場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

家庭裁判所が失踪宣告をするためには、申立てが必要です。

家族が気持ちに整理がつかない場合、7年を大幅に超しても申立てをする気になれないでしょう。

行方不明になってから何十年も経過してから、失踪宣告の申立てをすることがあります。

失踪宣告の申立てをした日は、死亡と見なされる日とは無関係です。

何十年も経過してから失踪宣告の申立てをした場合であっても、死亡と見なされる日は行方不明になってから7年満了した日です。

失踪宣告による死亡日は、死亡と見なされる日です。

最後に生存が確認された日から、7年満了した日に死亡と見なされます。

失踪宣告の申立てをした日より大幅に前の日に死亡と見なされることがあります。

失踪宣告で死亡と見なされるのは、生死不明7年満了の日です。

④死亡届でなく失踪届で戸籍に反映

家庭裁判所が失踪宣告をした場合、失踪宣告を受けた人は死亡と見なされます。

家庭裁判所が失踪宣告をしても、市区町村役場に通知されません。

失踪宣告の申立てをした人は、市区町村役場に届出をする必要があります。

失踪宣告を受けた人について、死亡届ではなく失踪届を提出します。

失踪届が受理されると、戸籍に記載されます。

失踪宣告が戸籍に記録されることで、死亡と見なされたことを戸籍謄本で証明することができます。

死亡届でなく失踪届で、戸籍に反映します。

⑤失踪届と行方不明者届(捜索願)のちがい

家庭裁判所で失踪宣告を受けた場合、申立てをした人は市区町村役場に失踪届を提出します。

失踪届は、家庭裁判所で失踪宣告を受けたことを戸籍に記録してもらうための届出です。

失踪届を受け付けても、市区町村役場は生死不明の人を探しません。

失踪届を提出しても、警察が捜査することはありません。

生死不明の人が事件や事故などに巻き込まれているおそれが高いので探して欲しい場合、警察に行方不明者届を提出します。

行方不明者届は、以前は捜索願と呼んでいました。

生死不明の人や他の人の生命や身体に危険を及ぼすおそれが大きい場合、警察の捜査の対象になります。

3失踪宣告で相続が開始する

①相続開始日は死亡と見なされる日

家庭裁判所で失踪宣告を受けた場合、失踪宣告を受けた人は死亡と見なされます。

たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。

死亡と見なされる日に、相続が発生します。

失踪宣告による死亡日は、死亡と見なされる日です。

失踪宣告の申立てをした日は、死亡と見なされる日とは無関係です。

死亡と見なされる日を基準にして、相続手続をします。

②死亡と見なされる日で相続人を確認

行方不明になってから何十年も経過してから、失踪宣告の申立てをすることがあります。

失踪宣告の申立てをしてから、裁判所が失踪宣告をするまで長期間かかります。

相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。

死亡と見なされる日に、相続が発生します。

被相続人は、死亡と見なされる日に死亡したと扱われます。

死亡と見なされる日を基準にして、相続人を確認します。

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

相続が発生したときに元気だった相続人が被相続人より後に死亡した場合、代襲相続が発生しません。

相続が発生したときに元気だった相続人が後に死亡した場合、数次相続が発生します。

数次相続は、相続人の地位が相続されます。

失踪宣告の前後で家族が死亡した場合、相続人の確認が重要になります。

代襲相続も数次相続も、相続が複雑になります。

だれが相続人でだれが相続人でないか、日付をよく確認しましょう。

相続人を間違えると、相続手続がすべてやり直しになります。

相続開始日は、死亡と見なされる日です。

③失踪宣告後に相続放棄ができる

莫大な借金をしたまま、音信不通になる人がいます。

いつか自分に借金が降りかかってくるのではないかと不安になることでしょう。

被相続人の生前に、相続放棄をすることはできません。

行方不明の人は、生きていると判断されます。

相続放棄ができるのは、相続人だけだからです。

行方不明なだけで生きているのだから、相続放棄を受け付けてもらえません。

失踪宣告は、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされた場合、相続が発生します。

相続放棄の申立てをする場合、被相続人の戸籍謄本を提出します。

被相続人の戸籍に失踪宣告の記載がされている必要があります。

相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

失踪宣告後に、相続放棄ができます。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに行方不明の相続人や長期間行方不明で死亡の可能性の高い相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立などは、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

夫婦共有名義で片方死亡したときの相続

2024-05-15

1共有者でも優先されない

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについて、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。

相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。

②共有者が自動的に相続するわけではない

被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。

被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。

共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。

共有者であっても、優先権はないからです。

共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。

③共有者が取得するのは相続人不存在のとき

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。

被相続人の共有持分は、相続人が相続します。

共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。

共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。

被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。

法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。

被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。

相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。

被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。

被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。

被相続人に特別縁故者がいることがあります。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。

受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。

国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。

被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。

共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。

④ローンの有無を確認

夫婦で不動産を共有している場合、夫婦でお金を出し合って不動産を購入したケースでしょう。

不動産を購入するときに、夫婦それぞれがローンを組んでいることがあります。

被相続人にローンがある場合、ローンは相続財産です。

被相続人のローンは、原則として相続人が相続します。

多くの場合、被相続人がローンを組む際に団体信用生命保険に加入します。

ローン返済中に死亡した場合、保険金でローンは完済になります。

ローンを組む際に団体信用生命保険に加入することは義務ではありません。

ローン契約者の健康状態によっては、団体信用生命保険に加入できないことがあります。

団体信用生命保険に加入していない場合、そのままローンの返済義務が残ります。

ローンの返済義務は、相続人に相続されます。

2夫婦共有名義の建物で配偶者居住権

①配偶者短期居住権は夫婦共有名義の建物で認められる

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。

配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。

(1)法律上の配偶者であること

(2)被相続人の所有していた建物であること

(3)相続開始時に居住していたこと

配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。

配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。

被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。

被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。

配偶者短期居住権は、夫婦共有名義の建物で認められます。

②配偶者居住権は夫婦共有名義の建物で認められる

配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。

(1)法律上の配偶者であること

(2)被相続人の所有していた建物であること

(3)相続開始時に居住していたこと

(4)配偶者居住権を設定

配偶者居住権は、自動で発生しません。

配偶者居住権を設定する必要があります。

配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。

被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。

配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。

配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。

配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。

他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。

配偶者居住権は、夫婦共有名義の建物で認められます。

3夫婦共有名義の片方死亡したときの相続で注意すること

①前婚の子どもは相続人

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもは、夫婦の子どもだけではありません。

被相続人に再婚歴がある場合、前婚配偶者との間に子どもがいることがあります。

前婚配偶者は、離婚した元配偶者は相続人になりません。

被相続人が離婚しても、子どもは被相続人の子どものままです。

離婚した元配偶者が引き取っても、被相続人の子どもです。

離婚した元配偶者の氏を名乗っていても、被相続人の子どもです。

相続が発生したら、被相続人の財産は相続財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続財産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議と言います。

被相続人に前婚の子どもがいる場合、子どもは相続人です。

前婚の子どもを含めて、分け方の合意をしなければなりません。

一部の相続人を含めないで合意をしても、有効な合意ではありません。

前婚の子どもは、相続人になります。

②未成年の子どもに特別代理人

被相続人の子どもが赤ちゃんなどの未成年であることがあります。

未成年者は、物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。

未成年者が契約などの法律行為をする場合、原則として親などの親権者が代わりに行います。

未成年者が相続人になる場合、親などの親権者は被相続人の配偶者でしょう。

被相続人の配偶者は、常に相続人になります。

未成年者と親などの親権者が同時に相続人である場合、親などの親権者は未成年者を代理することはできません。

親などの親権者の行為は、利益相反になるからです。

利益相反とは、一方がソンすると他方がトクをする関係です。

未成年者がソンをすると親などの親権者がトクする関係になるから、代理することはできません。

未成年にソンさせる意思はないなどの主張は、意味がありません。

親などの親権者の主観は、関係ありません。

客観的に利益相反と判断される場合、代理をすることができません。

親などの親権者が利益相反で代理ができない場合、家庭裁判所で代わりに人を選任してもらう必要があります。

代わりの人は、特別代理人と言います。

特別代理人は、未成年者の代わりに遺産分割協議に参加します。

未成年の子どもが相続人になる場合、特別代理人の選任が必要になります。

③自分のローンは残る

不動産を購入するときに、夫婦それぞれがローンを組んでいることがあります。

債務者がローン返済中に死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンは完済になります。

ローンが完済になるのは、被相続人の債務だけです。

生存配偶者のローンは、今までどおり返済が必要です。

④抵当権抹消登記は申請が必要

ローンの返済が滞ったときに備えて、銀行は不動産を担保にします。

返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。

ローンを組んだときに、不動産には抵当権設定登記がされています。

債務者がローン返済中に死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンは完済になります。

ローンが完済になると、抵当権はなくなります。

抵当権がなくなっても、抵当権の登記は自動でなくなりません。

金融機関が自動で消してくれることはありません。

抵当権抹消登記は、当事者からの申請が必要です。

4相続前にできること

①遺言書作成

被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。

被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。

遺言書で財産の行き先が決めてある場合、遺言書のとおりに分けることができます。

相続人全員で分け方の話し合いをする必要はありません。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。

遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

遺言書を作成すると、家族がラクになります。

②おしどり贈与を活用して共有持分を生前贈与

被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。

自分の持っている共有持分を生前贈与することができます。

共有持分全部を一度に贈与することもできるし、共有持分を分割して複数回に分けて贈与することもできます。

贈与する財産によっては、贈与税が課せられるかもしれません。

おしどり贈与とは、贈与税の配偶者控除の特例です。

婚姻期間が20年以上の夫婦で居住用不動産を贈与したときに適用されます。

おしどり贈与の適用を受ければ、基礎控除とは別に2,000万円の控除が受けられます。

一般的に言って、贈与税は想像以上に高額になりがちです。

高額な贈与をする場合、税務署や税理士に相談するといいでしょう。

③子どもには遺留分がある

被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。

被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。

財産は被相続人がひとりで築いたものではないでしょう。

家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。

今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。

被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。

配偶者は、必ず相続人になります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

配偶者と子どもは、遺留分が認められています。

遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。

遺留分を侵害するような遺言書であっても、作成することはできます。

公正証書遺言であっても、遺言書作成だけで遺留分を奪うことはできません。

遺留分を侵害するような生前贈与であっても、することはできます。

遺留分を侵害した場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をするでしょう。

相続人間の大きなトラブルに発展します。

遺言書作成や生前贈与をする場合、遺留分に注意しましょう。

5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。

共有者の片方に相続が発生した場合、共有者が相続人であることが多いでしょう。

共有者だから当然に相続できると誤解していることがあります。

他の相続人から見ると一方的に相続すると言われているのだからいい気持ちはしません。

相続人間のトラブルに発展しがちです。

相続手続は、タイヘンです。

単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。

不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。

相続人全員が合意できるのであれば、共有者が被相続人の共有持分を相続するのがおすすめです。

相続人全員の合意ができれば、です。

相続人全員が正しい知識があれば、防げるトラブルと言えます。

司法書士は、相続人をサポートすることができます。

適切な遺産分割協議をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

養子に行っても実親を相続

2024-05-13

1養子には2種類ある

①単に「養子」と言ったら普通養子

養子には2種類あります。

特別養子と普通養子です。

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

普通養子では、養子縁組をする当事者が合意が重視されます。

当事者が合意をして、役所に届出をするだけで手続ができます。

特別養子は、子どもの福祉が重視されます。

子どもの福祉のために家庭裁判所が慎重に判断して決定します。

②特別養子になると実親との親子関係はなくなる

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

親子の縁を切る重大な決定なので、厳格な要件が満たされたときだけ特別養子が認められます。

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときです。

特別養子になると、実親との親子関係がなくなります。

特別養子は、養親を相続しますが、実親は相続しません。

特別養子になると実親との親子関係がなくなりますから、父から認知を受けないまま特別養子になった場合、実の父はもはや認知をすることができなくなります。

配偶者の嫡出子である実子と特別養子縁組をする場合、特別養子は実親である養親の配偶者との親子関係が存続します。

実親である養親の配偶者が死亡した場合、特別養子は相続人になります。

実親である養親の配偶者が死亡した後、実親である養親の配偶者の親が死亡した場合、代襲相続人になります。

③普通養子になっても実親との親子関係は続く

普通養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係は続きます。

子どもが第三者の養子になる養子縁組をした後も、実親の子どもです。

養子から見ると、養子縁組をした養親も実親も親です。

2養子に行っても実親を相続

①養子が実親を相続

相続が発生した場合、被相続人の家族が相続人になります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

被相続人の実子は、被相続人の子どもだから相続人になります。

被相続人の子どもが第三者の養子になる養子縁組をすることがあります。

普通養子による養子縁組である場合、子どもと実親の親子関係は続きます。

被相続人の子どもが第三者の養子になる養子縁組をした場合、普通養子であれば被相続人の子どものままです。

被相続人の子どもだから、養子に行っても相続人になります。

②養子は養親を相続

養子縁組は、法律上の親子関係を作る制度です。

被相続人が第三者と養親になる養子縁組をすることがあります。

養子縁組をしたことで、養子は養親の子どもになります。

養子が実親の子どもであっても実親の子どもでなくなっても、養親の子どもになります。

養親が被相続人に場合、養子は被相続人の子どもです。

被相続人の子どもは、相続人になります。

③複数の養親と養子縁組

養子縁組は、法律上の親子関係を作る制度です。

養子縁組の回数に制限はありません。

養親に複数の養子がいることがあります。

養子に複数の養親がいることがあります。

養子が他の第三者の養子になる養子縁組をすることができます。

被相続人の子どもが第三者の養子になる養子縁組をした場合、実親との親子関係は続きます。

養子が他の第三者の養子になる養子縁組ををした場合、最初の養親との親子関係は続きます。

他の第三者の養子になる養子縁組ををしたことを理由として、自動的に親子関係がなくなることはありません。

最初の養親との親子関係を終了したいのであれば、離縁をする必要があります。

離縁をしない場合、最初の養親と次の養親の間で親子関係があります。

実親にとっても最初の養親にとっても次の養親にとっても、子どもです。

被相続人の子どもだから、相続人になります。

④死後離縁をしても養親を相続

養子縁組を解消することを離縁と言います。

養親と養子の両当事者が生きている場合、当事者の話し合いで離縁をすることができます。

両当事者の一方が死亡した場合、親子関係は終了しません。

養親が死亡しても、養親の親族と養子の親族関係は続きます。

両当事者の一方が死亡した場合、当事者の話し合いで離縁をすることができません。

両当事者の一方が死亡した後は、家庭裁判所の許可を得て離縁をすることができます。

養子縁組の当事者の一方が死亡した後、家庭裁判所の許可を得て離縁することを死後離縁と言います。

養子が死後離縁をした場合、養親を相続します。

養親が死亡したとき、養子は養親の子どもだったからです。

死後離縁は、養子縁組の当事者の一方が死亡した後の手続です。

養親が死亡した後に相続を受けてからの話です。

養子が死後離縁をしても、養親の相続人になります。

⑤特別養子は実親を相続しない

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

親子の縁を切る重大な決定なので、厳格な要件が満たされたときだけ特別養子が認められます。

養子縁組が特別養子による養子縁組だった場合、実親の子どもでなくなります。

特別養子は、実親の相続人になりません。

3養子に行っても実方の兄弟姉妹を相続

①父母の両方が同じ兄弟姉妹を相続

相続が発生した場合、被相続人の家族が相続人になります。

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

父母が同じ兄弟姉妹が死亡した場合、当然、相続人になります。

②父母の一方が同じ兄弟姉妹を相続

兄弟姉妹というと父母が同じ兄弟姉妹だけをイメージしがちです。

父母に再婚歴がある場合、異父兄弟や異母兄弟がいることがあります。

異父兄弟や異母兄弟は、疎遠であることが多いかもしれません。

疎遠であっても会ったことがなくても、兄弟姉妹です。

父母の一方が同じ兄弟姉妹が死亡した場合、相続人になります。

③父が認知した子どもを相続

認知とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子どもを自分の子どもと認めることです。

母と子どもは、分娩の事実によって親子関係を確認できるから認知は不要です。

父が認知した子どもに対して、兄弟姉妹という気持ちを持ちにくいことがあるかもしれません。

父が認知した子どもは、兄弟姉妹です。

父が認知した子どもが死亡した場合、相続人になります。

④父母の養子を相続

父母が第三者と養親になる養子縁組をしていることがあります。

養子縁組をしたことで、養子は養親の子どもになります。

父母の養子は、兄弟姉妹です。

父母の養子が死亡した場合、相続人になります。

⑤父母の一方の養子を相続

父母の一方だけが養親になる養子縁組をすることがあります。

父母の一方だけが養親になる養子縁組をした場合、父母の一方の子どもです。

異父兄弟や異母兄弟と同様に、養子縁組においても兄弟姉妹になります。

父母の一方だけが養親になる養子縁組をした養子が死亡した場合、相続人になります。

4遺産分割協議は相続人全員で

被相続人と連絡を取り合っていても、他の相続人とは絶縁状態になっているケースがあります。

被相続人が遺言書を残していなければ、相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

絶縁状態の他の相続人に関わりたくなければ、相続放棄をすることも一案です。

相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったとされるからです。

相続人でなくなれば、相続財産の分け方について、相続人全員の話し合いにも参加する必要がなくなります。

相続人が相続を希望する場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

関係性の薄い相続人がいる場合、話し合いは難航しがちです。

だれか一人でも合意しない相続人がいると、相続財産を分けることはできません。

相続財産の分け方は、多数決で決めることはできないのです。

5遺言書作成がおすすめ

相続が発生した場合、だれが相続人になるかは法律で決まっています。

相続人を調査すると、思いがけない相続人が見つかることがあります。

思いがけない相続人は、相続人同士の気心が知れていることはありません。

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が不可欠です。

受け継いでもらう立場であれば、相続人らの関係に気づいているでしょう。

疎遠な相続人がいると話し合いはまとまりにくいものです。

遺言書を書いてあげて、相続手続をスムーズにしてあげるのがいいでしょう。

6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書を書くというと真っ先に思い浮かぶのが、財産に関することでしょう。

「揉めるほど財産はないから」などと言って、遺言書を書き渋る人は多くいます。

実際は家族でトラブルになって、家庭裁判所の助力が必要になるケースは年々増えています。

その3分の1は資産総額1000万円以下です。

疎遠な相続人がいると話し合いはまとまりにくくなります。

遺言書があれば、家族のトラブルは確実に減ります。

遺言書があれば、相続手続は格段にラクになります。

高齢になると判断能力が心配になる方が多くなります。

判断能力が心配になった時点では、遺言書は作れません。

家族をトラブルから守りたい方は早めに司法書士などの専門家に遺言書作成を依頼することをおすすめします。

現金を相続するときの注意点

2024-05-10

1現金は相続財産

①現金は遺産分割の対象

相続が発生したら、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

被相続人が手元に現金を残したまま死亡した場合、現金は相続財産です。

相続人全員の共有財産になるから、一部の相続人が勝手に取得することはできません。

現金は、遺産分割の対象です。

②相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

現金は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

不動産や預貯金などと同様に、現金の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。

③遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明

相続財産の分け方を決めるための相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議で相続財産の分け方について合意ができた場合、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

相続人全員に内容を確認してもらって記名し実印で押印してもらいます。

遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

相続人全員の記名押印は、遺産分割協議書に間違いがないことの証明です。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。

遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書で、相続人全員の合意内容を客観的に証明することができます。

④現金を黙っていると使い込みトラブル

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

一部の相続人が勝手に取得することはできません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があるからです。

自宅などに現金が保管されていた場合、相続人で情報共有することが大切です。

他の相続人に何も言わないと、使い込みトラブルになるおそれがあります。

現金は、存在や金額が客観的に分かりにくいと言えます。

預貯金は、入出金履歴を金融機関に照会することができます。

現金の存在を他の相続人が知らなかったら、遺産分割の対象から外すことができてしまいます。

もちろん、相続財産は相続人全員の共有財産です。

現金を隠したり勝手に取得する行為は、刑法上の横領や窃盗になるおそれがあります。

使い込みをしていなくても、相続人が疑心暗鬼になるとトラブルになります。

被相続人の現金を見つけた場合、相続人間で情報共有することが重要です。

2現金を相続するメリット

①現金の相続は名義変更が不要

現金の相続では、名義変更手続は不要です。

銀行などの預貯金は、現金ではありません。

預貯金の相続では、相続手続が必要です。

銀行などの預貯金は、銀行から預貯金を引き出す権利だからです。

銀行から預貯金を引き出す権利をだれが相続するのか、相続人全員で合意する必要があります。

現金を相続する場合も、現金をだれが相続するのか相続人全員で合意する必要があります。

現金であっても銀行の預貯金であっても、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。

相続人全員の合意ができれば、すぐに現金を取得することができます。

相続人全員の合意ができるまで、一部の相続人が勝手に使うことはできません。

現金は名義変更手続が不要である点がメリットです。

②現金はすぐに使うことができる

現金の相続では、名義変更手続は不要です。

遺産分割協議ができれば、すぐに取得することができます。

例えば、不動産を相続した場合、相続登記をする必要があります。

売却してお金で分けたいと合意しても、思うようにいかないことが多いでしょう。

相続人全員が納得するような値が付かないことがあります。

売却することに納得できても、時期がよくないと考えるかもしれません。

現金はすぐに使うことができる点がメリットです。

③公平に分けやすい

相続財産には、いろいろな種類の財産があることが通常です。

現金や預貯金は、分けやすい財産です。

不動産は、分けにくい財産の代表です。

相続財産の大部分が不動産であることがあります。

相続財産の分け方について、相続人全員の合意は難航しがちです。

不動産は、分けにくい財産だからです。

相続財産の分け方は、次の方法があります。

(1)現物分割

(2)換価分割

(3)代償分割

(4)共有

(5)用益権設定による分割

どの方法にも、メリットデメリットがあります。

不動産は、公平に分けることが難しいものです。

現金や預貯金は、1円単位まで簡単に分けることができます。

現金は公平に分けることができる点がメリットです。

④遺留分侵害額請求などに対応しやすい

被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。

財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。

家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。

今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。

被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。

分配を受けた財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分を侵害した人は、遺留分侵害額請求を拒否することはできません。

遺留分侵害額請求は、遺留分に相当する金銭を請求します。

原則として、すぐに現金で支払いをしなければなりません。

現金を相続した場合、遺留分侵害額請求に対応しやすいでしょう。

現金は遺留分侵害額請求などに対応しやすい点がメリットです。

3現金を相続したときの相続税

①相続税がかかるのは基礎控除額を超えたとき

資産家や有名人が死亡した後に、多額の相続税を納付した話を聞くことがあります。

高額な相続税を想像して、不安になるかもしれません。

相続税がかかるのは、相続財産が基礎控除額を超えたときのみです。

基礎控除額は、次の計算式で求められます。

基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数

相続財産が基礎控除額に収まっていれば、相続税はかかりません。

相続税の申告をしなければならない人は、実際のところ10%にも満たないわずかな人です。

相続税の申告が必要なだけで、納税は必要ない人もたくさんいます。

相続税がかかるのは、基礎控除額を超えたときのみです。

②配偶者には相続税がほとんどかからない

相続税には、配偶者控除があります。

相続税の配偶者控除は、次のうちいずれか大きい方です。

・1億6000万円

・法定相続分

相続人が配偶者のみである場合、配偶者はすべての財産を相続します。

すべての財産が配偶者控除の対象です。

配偶者は、手厚く保護されています。

配偶者控除を適用すると、配偶者が相続税を納めることは稀です。

配偶者には、相続税がほとんどかかりません。

③現金は相続税対策がしにくい

相続税の対象額は、対象となる相続財産を評価して計算します。

現金を相続する場合、額面そのままの評価額です。

不動産を相続する場合、購入額より低い評価額になることが多いでしょう。

土地の相続税評価額は、時価の80%程度が多いです。

建物の相続税評価額は、時価の70%程度が多いです。

不動産には、相続税を少なくする特例や控除が複数設けられています。

不動産を相続する場合、相続税対策がしやすいと言えます。

現金には、相続税を少なくする特例や控除がありません。

現金を相続する場合、相続税対策がしにくいと言えます。

④自宅で現金が見つかったら

遺品整理をしていると、金庫や家具などから手許現金が見つかることがあります。

被相続人の現金であれば、相続財産です。

相続税の申告が必要な財産規模である場合、手許現金は申告する必要があります。

手許現金は、有無が分かりにくい財産です。

相続税申告をした後に、多額の現金が見つかることがあります。

申告すべき財産を見つけた場合、すぐに修正申告をする必要があります。

自主的に修正申告をした場合、加算税が免除されます。

税務調査などで指摘された後に修正申告をする場合、延滞税や過少申告加算税が課されます。

意図的な財産隠しと認められる場合、さらに重加算税が課されます。

自宅で現金が見つかったら、ただちに修正申告が必要です。

4遺産分割協議証明書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

話し合いによる合意を適切に文書にする必要があります。

書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続人が生死不明なら失踪宣告

2024-05-09

1遺産分割協議は相続人全員で

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産を分けるためには、相続人全員の合意が必要になります。

相続人調査をすると、ときには思いもよらない相続人が判明することがあります。

相続人であることを知っていても、連絡を取ったことがない人が現れることがあります。

相当長期間、行方不明で親族のだれとも連絡を取れていない場合など、死亡の可能性が高い場合があります。

このような場合であっても、相続財産の分け方は、相続人全員での合意しなければなりません。

連絡が取れないからと言って、一部の相続人を含めないで遺産分割協議をしても無効です。

銀行などの金融機関は口座の解約や名義変更に応じてくれないし、法務局も不動産の名義変更に応じてくれません。

被相続人と音信不通だったからとか、お葬式にも来ていないのにという気持ちは分かりますが、相続財産の分け方は相続人全員で合意する必要があるのです。

2失踪宣告とは

①失踪宣告がされると行方不明の人は死亡と見なされる

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡した取り扱いをしますから、失踪宣告がされた人に相続が発生します。

失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。

②普通失踪とは

普通失踪とは、行方不明の人について7年間生死不明の場合、申立てができるものです。

普通失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ3か月以上かかります。

家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、1年ほどかかる場合もあります。

生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

③特別失踪(危難失踪)

特別失踪とは、「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」について、危難が去ってから1年間生死不明の場合、申立てができるものです。

特別失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ1か月以上かかります。

危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

④失踪宣告後生きていることが分かったら失踪宣告の取消

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ生きていても死亡した取り扱いがされます。

行方不明の人に失踪宣告がされた後、本人が帰ってくることがあります。

失踪宣告がされた後、生きていることが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが判明する場合があります。

失踪宣告がされた後、失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告をするときも失踪宣告を取り消すときも、家庭裁判所の関与が必要です。

失踪宣告は、死亡したと扱う重大な手続だからです。

3失踪宣告の申立ての手続方法

①失踪宣告の申立てができる人

(1)行方不明の人の配偶者

(2)相続人にあたる人

(3)債権者などの利害関係人

不在者財産管理人選任の申立ては、検察官が申立てをすることができます。

失踪宣告の申立ては、検察官は申立てすることができません。

失踪宣告は、死亡した取り扱いをするという強力な効果があります。

行方不明の人の帰りを待つ家族の心情に配慮したためです。

②失踪宣告の申立先

失踪宣告の申立先は、行方不明の人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

③失踪宣告の申立ての添付書類

失踪宣告の申立書に添付する書類は以下のとおりです。

(1)行方不明の人の戸籍謄本

(2)行方不明の人の戸籍の附票

(3)行方不明であることが分かる資料

(4)利害関係の分かる資料

4失踪宣告の手続の流れ

①家庭裁判所が失踪の調査をする

家庭裁判所は、申立書を受け付けた後、独自で調査をします。

申立人にいろいろな書類の提出を求めたり、文書で照会したりします。

ときには、家庭裁判所から呼出がある場合もあります。

②公示催告をする

家庭裁判所は、官報と裁判所の掲示板にお知らせを出します。

お知らせは、以下の内容です。

・失踪宣告の申立てが出されています。

・本人は生きていますと届出を出してください。

・本人の生死を知っている人はその旨届出をしてください。

官報と裁判所の掲示板に出すお知らせの期間は、普通失踪の場合で3か月以上です。

特別失踪の場合で1か月以上です。

③審判

官報と裁判所の掲示板に出すお知らせの期間中に、だれからも届出がなければ家庭裁判所は失踪宣告の審判をします。

④審判の確定

家庭裁判所が審判をした後に、不服を言う人がいなければ失踪宣告の審判は確定します。

家庭裁判所が審判をした後に不服を言うことができる期間は、2週間です。

失踪宣告の審判がされた後、なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。

失踪宣告が確定した場合、家庭裁判所はあらためて官報にお知らせを出します。

このお知らせは「失踪宣告がされました」という意味です。

⑤審判の確定証明書の取得

失踪宣告の審判がされたら、家庭裁判所から審判書謄本が送付されます。

審判書が届いても、審判が確定するわけではありません。

失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。

なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。

確定しても何も連絡はありません。

2週間経過後に家庭裁判所に申請をして、確定証明書を取得します。

確定証明書の請求は、家庭裁判所に出向いて手続をすることもできるし、郵送で手続をすることもできます。

⑥失踪届を提出する

失踪宣告の審判が確定した後でも、家庭裁判所から市区町村役場に連絡がされることはありません。

審判が確定した後、審判書謄本と確定証明書を添えて10日以内に市区町村役場に届出が必要です。

⑦戸籍に失踪宣告が記載される

市区町村役場に届出をして、はじめて戸籍に記載がされます。

相続手続では、失踪宣告の記載のある戸籍が必要になりますから、届出をしないと相続手続が進まなくなります。

戸籍には次のように記載されます。

【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日

【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日

【届出日】令和〇年〇月〇日

【届出人】親族 ○○○○

5失踪宣告されたら相続が開始する

失踪宣告されたら、行方不明の人は死亡した取り扱いをします。

失踪宣告された人は、死亡した取り扱いなので相続が開始します。

失踪宣告された人を被相続人として相続手続をします。

相続が発生する日は、死亡とみなされる日です。

失踪宣告の申立てをした日ではありません。

だれが相続人になるのかよく確認して手続を進めましょう。

6行方不明の相続人に失踪宣告がされたら

①被相続人の死亡日より前に死亡と見なされたら代襲相続

失踪宣告により死亡と見なされる日は、失踪宣告の申立日ではありません。

普通失踪であれば、生死不明になってから7年間経過したときです。

特別失踪であれば、危難が去ったときです。

相当長期間、行方不明になっていた後に失踪宣告がされる場合があります。

行方不明の相続人に失踪宣告がされた場合、被相続人の死亡日より前に死亡と見なされることがあります。

失踪宣告により死亡と見なされる日は、失踪宣告の申立日ではないからです。

被相続人の死亡日より前に死亡と見なされる場合、代襲相続が発生します。

相続手続に参加するのは、失踪宣告がされた人の子どもなど代襲相続人です。

②被相続人の死亡日より後に死亡と見なされたら数次相続

行方不明の相続人に失踪宣告がされた場合、被相続人の死亡日より後に死亡と見なされることがあります。

被相続人の死亡日より後に死亡と見なされる場合、代襲相続が発生しません。

被相続人の死亡日より後に死亡と見なされる場合、数次相続になります。

数次相続が発生した場合、失踪宣告された人の相続人が相続します。

代襲相続ではないから、直系卑属に限られません。

死亡と見なされる日が被相続人の死亡日の前になるのか後になるのかよく確認しましょう。

失踪宣告がされた人の相続人を確定するために、死亡とみなされた日は重要です。

相続手続に参加する人を間違えると手続が無効になりかねません。

7遺言書があれば遺産分割協議は不要

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

何も対策していなかったら、相続人全員で相続財産の分け方についての合意が不可欠です。

相続人の中に、疎遠な人や行方不明の人がいる場合、残されたれた相続人は大変な負担を負うことになります。

遺産分割協議はそうでなくても、トラブルになりやすい手続です。

対策しておけば、遺産分割協議を不要にすることができます。

この対策は、遺言書を書いておくことです。

遺言書があれば、相続財産の分け方について、相続人全員の合意は不要になります。

相続人に行方不明の人がいても、いなくても、遺言書のとおり分ければいいからです。

遺言書は隠匿や改ざんのおそれのない公正証書遺言がおすすめです。

8生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続した不動産を共有名義にするデメリット

2024-05-06

1相続した不動産を分割する方法

方法①現物分割

相続財産には、いろいろな財産が含まれていることが一般的です。

不動産は、分けにくい財産の代表例です。

現物分割とは、現物の不動産を相続人の人数で分割する方法です。

現物の不動産を分割することは、広大な土地でないと実現できません

極端に小さな土地は、使い勝手が悪くなります。

価値も下がってしまうでしょう。

あまり現実的ではないかもしれません。

方法②代償分割

代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から代償金を受け取る方法です。

現物の不動産を分割しないので、価値が下がることはありません。

不動産を相続する人は、他の相続人に代償金を支払う必要があります。

相続財産の大部分が不動産であることがあります。

価値の高い不動産である場合、他の相続人に支払う代償金が高額になります。

不動産を相続する人が代償金を準備できないかもしれません。

不動産をいくらと考えるのかについて、基準はいくつかあります。

代償金を支払う人は、不動産の値段が低い基準を採用した方が有利です。

支払う代償金が少なくなるからです。

代償金を受け取る人は、不動産の値段が高い基準を採用した方が有利です。

受け取る代償金が多くなるからです。

代償金を決めるとき、どの基準を採用するのか話し合いがまとまらないことがあります。

方法③換価分割

換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後にお金を分ける方法です。

不動産を実際に売却してお金に換えてから分けるので、不動産の値段をいくらと考えるのかで話し合いをする必要はありません。

被相続人が守ってきた財産を手放すことに、罪悪感があるかもしれません。

合理的な方法であっても相続人の感情面から話し合いがつかなくなるおそれがあります。

不動産を売却するつもりであっても、買い手がつかないかもしれません。

売却できるまで相続手続が長引くおそれがあります。

方法④共有

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意ができない場合、共有が選ばれることもあります。

最も公平に見えるからです。

共有は弊害が多く、安易に共有にする方法はもっとも避けるべきです。

共有にした場合、全員の同意がなければ売却することはできません。

共有の不便を解消するため、後々、共有物分割をしようという話になります。

結局のところ、問題の先送りになるだけです。

相続トラブルが長期化しますから、家族の絆が壊されてしまいます。

方法⑤用益権の設定による分割

用益権とは、不動産を自分で使ったり、人に貸して賃料を得たりする権利のことです。

配偶者居住権は、用益権のひとつです。

一部の相続人に使う権利を設定して、他の相続人が使う権利のない所有権を相続する方法です。

家族が守ってきた不動産を手放すことなく相続ができます。

相続人のうち、だれが使う権利を得るのかで、使う権利のない所有権をだれが相続するのかで話し合いがまとまらないおそれがあります。

2相続した不動産を共有名義にするデメリット

デメリット①共有物を処分するには共有者全員の合意が必要

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分ができないからです。

相続財産の分け方を「共有する」と決めた後も、同じです。

共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分はできません。

処分するとは、共有物を売却する、第三者に賃貸することなどです。

たくさんの人で共有していると合意がまとまりにくくなります。

売却したい人も賃貸したい人もいるでしょう。

売却するのはいいが時期が良くないと思う人もいるでしょう。

もっと高値で売れるはずだという人もいるでしょう。

賃貸するのはいいが賃貸条件が合意できない人もいるでしょう。

合意できる場合でも、合意するために時間がかかりがちになります。

売却したいという場合でも、合意に時間がかかるとチャンスを逃すことになります。

親族同士であっても共有物の管理方針が違うと、共有者の意見対立が起きやすくなります。

売却する場合も、売却時の重要事項説明や売買契約の締結など共有者全員が手続に参加する必要があります。

遠方に住んでいる共有者には時間と手間がかかります。

共有者がたくさんいると、だれか一人が認知症などになるかもしれません。

認知症などで判断能力が低下する人が現れる確率も上がります。

物事のメリットデメリットを充分に判断できない人は、売却などの合意はできません。

後見人を選んでもらって代わりに判断してもらうことになります。

デメリット②共有者に相続が発生する

共有物を売却するためには、共有者全員の合意が必要になります。

共有者全員の合意がしにくくなると、売却などの判断は先延ばししがちです。

先延ばしにより長期間経過すると、共有者に相続が発生することがあります。

共有者に相続が発生すると、共有者の持分は相続財産になります。

共有者の相続人全員の相続財産になります。

共有者の管理方針が違うことで適切な管理ができない共有物を相続したがらないかもしれません。

このとき、死亡した共有者の共有持分を、複数の相続人が法定相続分で細分化して共有することがあります。

このような相続が何人もの共有者の間で発生すると、共有者がたくさんになり、持分が細分化されます。

適切に相続登記がされないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。

共有者が増えると、共有者同士が顔も見たことない見知らぬ人であることが多くなります。

単純に、たくさんの人で管理や処分の合意をすることは難しいものです。

それが顔も見たことない見知らぬ人である場合、一挙に難易度は上がります。

見知らぬ人何十人もの合意は、現実的には無理でしょう。

共有物の処分は、共有者全員の合意が必要です。

1人でも反対の人がいると、処分はできません。

共有物を売却するには、1人でも反対の人がいると、できないのです。

見知らぬ人何十人で共有すると、共有物の賃貸や売却は、事実上、できなくなります。

デメリット③共有持分を売却するおそれ

共有物全体を売却するためには共有者全員の合意が必要です。

それぞれの共有者が持っている共有持分を売却するためには、他の共有者の合意は不要です。

あまり知られていませんが、共有者が持っている共有持分を買い取る業者がいます。

ひょっとすると、経済的に困っている共有者がいる場合、共有持分を売却してしまうかもしれません。

通常、市場価格よりはるかに低廉な価格でしか売れません。

共有持分を買い取る業者はビジネスですから、遠慮なく共有者としての権利を主張してきます。

共有持分買取請求や共有物分割請求などです。

話し合いで解決できなければ、当然、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。

知識のない一般の人では対応できません。

弁護士に依頼することになるでしょう。

3共有を避ける方法

相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続をすることになります。

相続は、何度も経験するものではありません。

どの手続も不慣れで、スムーズに行かないものばかりです。

相続財産の分け方について、相続人全員による話し合いで合意をしなければなりません。

不慣れな手続で疲れが出ていると、丁寧な話し合いは面倒になります。

共有名義にする方法は、とりあえず平等に見えます。

安易に法定相続分で共有するという選択をしてしまうケースが目立ちます。

いったん名義変更をしてしまうと、さらに変更するのは手間も時間も余計にかかります。

共有は、デメリットが大きいのものです。

被相続人が健在なら、家族で今後不動産をどうしていきたいか全員で明確にしましょう。

どの不動産をだれに相続させるか遺言を書くといいでしょう。

共有名義にしてしまってから対策するより、共有名義にしないように対策する方がはるかに簡単ではるかに有効です。

税金の専門家からは、売却する場合に売却益にかかる3000万円の特別控除を共有者の数だけ受けられるから非常に有利などと安易な共有をすすめられます。

相続税の申告までに遺産分割協議を終わらせられる点を大きなメリットとして強調して、共有を強くすすめられるでしょう。

解決を先延ばしすること以外にメリットはわずかしかありません。

デメリットは、家族が引き受けることになります。

デメリットの大きさを十分理解して相続人全員が今後どうしていきたいか明確にしておくことが重要です。

何も決まっていない状態で、とりあえず法定相続で共有は避けるべきです。

小さなメリットに惑わされて、面倒を先延ばしする必要はありません。

相続財産の分け方について相続人全員が合意をする場合、名義変更をした後さらに変更するのは難しいこと、共有にはデメリットが多いことを相続人全員が理解しておく必要があります。

4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、後々のトラブルが見えていないと、単なる問題の先送りになります。

不動産の共有はその最たるものでしょう。

安易に共有を選ぶと後々トラブルに巻き込まれます。

共有にすることで今後どのような問題が発生するのか、自分達だけではそのリスクは見えにくいかもしれません。

司法書士はこのようなリスクの説明もします。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

法律で決まっているから法定相続の共有にすればよい。

家族が仲がいいから、好きなように分ければいい。

言い訳をして、遺言書作成を先延ばししている方も多いものです。

遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。

遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。

遺言書1枚あれば、相続手続は格段にラクになります。

家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。

実際、家族の絆のためには遺言書が必要だと納得した方は遺言書を作成します。

家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。

家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

墓地の相続登記

2024-05-01

1相続財産にならない財産がある

①一身専属権は相続財産ではない

相続が発生すると、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

被相続人のものでも、相続人が相続しない財産があります。

一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。

権利行使をするかしないか、本来の権利者個人の意思次第とするのが適当とされる権利です。

一身専属権は、相続人が相続しません。

一身専属権は、相続財産ではありません。

②祭祀用財産は相続財産ではない

祭祀用財産とは、墓地、墓石、仏壇、家系図などの先祖祭祀のための財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めます。

墓地、墓石、仏壇、家系図などの財産は、通常の財産と同様にすることはできません。

相続人全員の合意で分け方を決めることは、適切ではないでしょう。

祭祀用財産は、祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。

祭祀を主宰すべき人を、祭祀承継者と言います。

祭祀用財産は、相続財産ではありません。

③相続人固有の財産は相続財産ではない

被相続人の死亡をきっかけに、相続が発生します。

被相続人の死亡をきっかけに、財産を受け取ることがあります。

被相続人の死亡をきっかけに受け取る財産には、相続で受け取る財産以外の財産があります。

例えば、被相続人に生命保険がかけてある場合、死亡保険金が支払われます。

生命保険の死亡保険金は、保険契約で支払われる財産です。

被相続人の生前に死亡保険金を受け取る権利はなかったはずです。

被相続人から相続する財産ではありません。

生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産です。

受取人が「相続人」であっても、相続財産ではありません。

相続人固有の財産は、相続財産ではありません。

2墓地を所有していたら相続登記が必要

①登記簿謄本で所有者を確認する

被相続人がお墓を購入していることがあります。

被相続人が寺院の檀家になっていて、お墓を引き継いでいることがあるでしょう。

墓地を所有していた場合、相続登記が必要です。

墓地を所有しているのは、寺院や地方自治体であることがあります。

寺院や地方自治体が墓地を所有している場合、墓地を利用する契約をしているでしょう。

墓地を所有していない場合、相続登記は不要です。

墓地の登記簿謄本を取得すると、所有者が判明します。

登記簿謄本を取得して所有者を確認すると、相続登記が必要であるか確認することができます。

②墓地が祭祀用財産なら祭祀承継者が受け継ぐ

祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。

祭祀承継者は、相続人であることも相続人以外の人であることもあります。

祭祀用財産は、相続人以外の人が受け継ぐことができます。

祭祀用財産は、相続によって受け継ぐものではないからです。

墓地が祭祀用財産の場合、祭祀承継者が受け継ぎます。

③墓地が相続財産なら相続人が相続する

墓地には、祭祀用財産である墓地と相続財産である墓地があります。

祭祀用財産は、先祖祭祀のための財産です。

墓地には、先祖以外の人や神が祀られていることがあります。

先祖以外の人や神が祀られている場合、祭祀用財産とは言えません。

先祖祭祀とは、無関係だからです。

祭祀用財産以外の財産だから、相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

墓地が相続財産の場合、相続人が相続します。

④永代使用権は相続登記不要

お墓を購入した場合、墓地の所有権を得たと思うかもしれません。

通常、霊園には管理規約があります。

お墓を購入するとは、霊園と使用契約を結ぶことです。

霊園の区画を使う権利を得て、使用料や管理料を支払います。

霊園の区画を使う権利のことを永代使用権とか墓地利用権と言います。

永代使用権や墓地利用権は、墓地を利用する権利に過ぎません。

永代使用権や墓地利用権は、登記不要です。

永代使用権や墓地利用権は、霊園の管理規約に基づいて家族が引き継ぎます。

霊園の管理規約によっては、一定の範囲の親族のみが受け継ぐことができると決められています。

墓地の永代使用権は、相続登記不要です。

3墓地が祭祀用財産のときの相続登記

①登記原因は「年月日民法第897条による承継」

祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。

祭祀承継者が引き継ぐことは、民法第897条によって定められています。

祭祀承継者が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日民法第897条による承継」です。

年月日は、祭祀用財産を引き継ぐ日です。

②相続人全員と祭祀承継者で共同申請

墓地を祭祀承継者に引き継ぐ場合、相続人全員と祭祀承継者の共同申請です。

祭祀承継者を登記権利者、相続人全員を登記義務者として共同で申請します。

祭祀承継者は、遺言書で指名されることがあります。

遺言書で遺言執行者が選任されている場合、遺言執行者が義務者になります。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人だからです。

相続人全員と祭祀承継者が共同申請をする場合、登記申請書に押印をします。

登記申請書の押印は、祭祀承継者は認印による押印で差し支えありません。

相続人全員の押印は、実印による押印が必要です。

相続人全員の押印は、登記義務者の押印だからです。

③必要書類

祭祀用財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。

(1)登記原因証明情報

(2)被相続人の権利証

(3)相続人全員の印鑑証明書

(4)祭祀承継者の住民票

登記原因証明情報は、祭祀用財産の承継があったことの証明書です。

祭祀承継者の決定方法によって、次のような書類を提出します。

(1)被相続人が指定したとき

遺言書、相続人全員による指定内容の証明書

(2)慣習で決まったとき

相続人全員による祭祀承継者を確認した証明書

(3)家庭裁判所が指定したとき

調停調書、審判書と確定証明書

墓地が祭祀用財産である場合、祭祀用財産であることを証明する書類は不要です。

登記官の審査は、形式的審査にとどまるからです。

④登録免許税は非課税

墓地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。

地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。

所有権移転登記だけでなく、登記名義人住所変更登記も非課税です。

登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。

「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。

登記地目が墓地であっても、評価証明書などで現況が雑種地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」である場合、登録免許税が課されません。

逆に、登記地目が雑種地であっても、評価証明書などで現況が墓地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」でない場合、登録免許税が課されます。

4墓地が相続財産のときの相続登記

①登記原因は相続

相続財産は、相続人が相続します。

対象の財産が墓地であっても墓地以外の財産であっても、ちがいはありません。

相続人が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日相続」です。

年月日は、被相続人が死亡した日です。

②相続人が単独申請

墓地を相続人が引き継ぐ場合、相続人の単独申請です。

多くの場合、複数の相続人がいるものの遺産分割協議で相続人のひとりが相続するでしょう。

相続登記は、その不動産を相続する相続人が単独で申請することができます。

財産を相続しない相続人は、申請人になる必要がありません。

相続財産の相続登記する場合、登記申請書に押印をします。

登記申請書の押印は、認印による押印で差し支えありません。

③必要書類

相続財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。

(1)被相続人の住民票の除票

(2)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(3)相続人全員の現在戸籍

(4)遺産分割協議書

(5)相続人全員の印鑑証明書

(6)相続する人の住民票

(7)評価証明書

④登録免許税は非課税

墓地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。

地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。

所有権移転登記だけでなく、登記名義人住所変更登記も非課税です。

登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。

「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。

登記地目が墓地であっても、評価証明書などで現況が雑種地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」である場合、登録免許税が課されません。

逆に、登記地目が雑種地であっても、評価証明書などで現況が墓地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」でない場合、登録免許税が課されます。

5相続放棄をしても祭祀承継者

①祭祀承継者の主な役割

祭祀承継者は、先祖祭祀を主宰する人です。

先祖祭祀を主宰する人として、お墓や仏壇などの管理が主な役割です。

定期的なお墓参りの他に、霊園への管理料や使用料の支払を負担します。

お墓にだれの遺骨を納めるか、お墓を移転するかなども単独で判断することができます。

祭祀承継者になった場合、一周忌などの法要を主宰して、お布施などの支払をすることになるでしょう。

祭祀承継者になった場合であっても、祭祀を行う法的義務を負うものではありません。

②祭祀承継者は相続のルールが適用されない

相続人のうちのひとりが祭祀承継者になるのが一般的です。

お墓が複数ある場合、それぞれに祭祀承継者がいる場合もあります。

祭祀を主宰すべき人になる資格は、特にありません。

相続人であっても相続人以外の人であっても、祭祀承継者になることができます。

親族であっても親族以外の人であっても、祭祀承継者になることができます。

氏が同じ人であっても氏がちがう人であっても、祭祀承継者になることができます。

相続のルールが適用されるものではありません。

先祖祭祀は、親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないからです。

③祭祀承継者の決め方

祭祀承継者は、次のように決められます。

(1)被相続人の指定に従う

被相続人が祭祀を主宰すべき人として指定する場合、一方的に指定することができます。

トラブル防止のために、本人の同意をもらっておく方がいいでしょう。

(2)慣習に従って決める

(3)家庭裁判所で決定する

被相続人が指定しておらず慣習も明らかでない場合、家庭裁判所が指名します。

被相続人の意思、相続人の身分関係、過去の生活感情、祭祀を主宰する意欲や能力、他の相続人や周りの人の意見を聞いて総合的に判断します。

家庭裁判所は、総合的に考えて最もふさわしい人を祭祀承継者に指名します。

④祭祀承継者は拒否できない

祭祀承継者に選ばれた場合、祭祀承継者になることを拒否することはできません。

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

祭祀承継者には、放棄する制度がありません。

祭祀承継者は、相続のルールが適用されません。

相続放棄をした人が祭祀継承者に指名されることがあります。

祭祀承継者は指名された場合、拒否することはできません。

6墓地の相続登記を司法書士に依頼するメリット

お墓の分譲とかお墓の販売と聞くと、お墓を所有している気持ちになるかもしれません。

現代では、お墓を買うことは永代使用契約をすることです。

単に永代使用契約をして永代使用権を得るだけであれば、登記は無関係です。

墓地埋葬法ができる前から使用している墓地は、現在も各地に存在に存在しています。

新しく墓地を作ることは難しくても、すでにある墓地は使い続けることができます。

墓地を所有している場合、相続登記が必要です。

多くの場合、墓地に固定資産税がかかりません。

墓地を所有している認識がうすいでしょう。

遠方の墓地が不便な場合、お墓のお引越しをしようとすることがあります。

墓じまいをしようとしたときに、登記が必要であることに気がつきます。

ときには、祖父やそれ以前の先祖の名義のままになっていることがあります。

相続登記がされないままになっている場合、難易度は高くなります。

墓地を相続する場合は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続手続の期限一覧

2024-04-26

1 【7日以内】死亡届

①死亡診断書(死体検案書)の受取

家族が死亡した後に、最初にすることは死亡診断書(死体検案書)の受取です。

死亡診断書(死体検案書)は、医師が作成します。

死亡診断書と死体検案書は、人の死亡を医学的・法律的に証明する文書です。

死亡診断書は、医師が診療していた傷病に関連して死亡したときに作成されます。

死体検案書は、医師が診療していた傷病に関連して死亡したとき以外に作成されます。

死亡診断書と死体検案書の効力に、ちがいはありません。

②死亡届の提出

死亡届は、戸籍法の定めにより行う届出です。

人が死亡したら、7日以内に死亡届の提出が義務付けられています。

死亡届と死亡診断書(死体検案書)は、1枚の用紙に印刷されています。

左半分が死亡届で、右半分が死亡診断書(死体検案書)です。

死亡届の届出人は、次のとおりです。

(1)同居の親族

(2)その他の同居人

(3)家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

上記の人は順序に関わらず、届出人になることができます。

死亡診断書(死体検案書)の受取ったら、届出人が死亡届を記入します。

市区町村役場に持って行くのは、届出人以外の人でも差し支えありません。

③埋火葬許可申請

死亡届の提出と一緒に、埋火葬許可証の発行申請をします。

埋火葬許可証とは、死亡した人を埋火葬する許可を証明する書類です。

死亡してから24時間経過した後、火葬します。

埋火葬許可証がないと、火葬を執行することができません。

2【10日以内】年金の死亡届

厚生年金の受給権者が死亡した場合、10日以内に年金受給権者死亡届を提出します。

日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、年金受給権者死亡届を省略することができます。

マイナンバーが登録されているから死亡届の提出を省略する場合でも、未支給年金の請求は必要です。

3【14日以内】健康保険の資格喪失

①健康保険・介護保険の資格喪失

健康保険・介護保険の被保険者が死亡した場合、14日以内に資格喪失手続が必要です。

保険証は、資格喪失届をするときに一緒に返却します。

②年金の死亡届

国民年金の受給権者が死亡した場合、14日以内に年金受給権者死亡届を提出します。

日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、年金受給権者死亡届を省略することができます。

③世帯主変更届

被相続人が世帯主であった場合、原則として、14日以内に世帯主変更届が必要です。

世帯主が死亡したことで世帯に属する人が1人になった場合、世帯主変更届は不要です。

世帯主変更届は、同一世帯の人か新しく世帯主になる人が届出します。

別世帯の人が届出をする場合、委任状が必要になります。

4【3か月以内】相続放棄

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

単純承認とは、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を引き継ぐものです。

相続放棄とは、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を引き継がないものです。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。

相続放棄の申立ての期限は、3か月です。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

相続が発生した後、相続財産を利用・処分した場合、単純承認を見なされます。

単純承認をした後に家庭裁判所から相続放棄が認められても、相続放棄は無効です。

5【4か月以内】準確定申告

準確定申告とは、所得税の申告のひとつです。

所得税は毎年1月1日から12月31日までの所得を計算して、翌年3月15日までに申告と納税をします。

この申告を、確定申告と言います。

1年の途中で死亡した場合、1月1日から死亡した日までの所得を計算して、申告と納税をします。

通常の確定申告と死亡した人の申告を区別するため、準確定申告と言います。

準確定申告は、死亡した被相続人本人に代わって、相続人と包括受遺者が申告と納税をします。

申告と納税をするのは、相続が発生したことを知ってから4か月以内です。

家庭裁判所から相続放棄が認められた場合、準確定申告をする義務はありません。

はじめから相続人でなくなるからです。

それでも税務署から準確定申告をするように通知が来る場合があります。

税務署から通知が来た場合、あわてて準確定申告をする必要はありません。

準確定申告をした場合、相続放棄が無効になります。

準確定申告は、相続人がするものだからです。

自分は相続人であると認めたから、準確定申告をしたと判断されることになります。

6【10か月以内】相続税申告

相続税は、相続した財産の額に応じて課される税金です。

相続税が課される場合、10か月以内に申告納税をします。

相続税申告が必要になるのは、10%未満のわずかな人です。

相続税には、基礎控除があるからです。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数

相続財産が基礎控除以下である場合、相続税申告は不要です。

7【1年以内】遺留分侵害額請求

遺留分は、相続人に認められた最低限の権利です。

兄弟姉妹以外の相続人に、認められます。

被相続人は自分の死後、財産をだれに引き継がせるか自由に決めることができます。

被相続人の名義になっているとはいえ、無制約の自由を認めることはできません。

財産は家族の協力があってこそ、築くことができたはずだからです。

遺留分に満たない財産の分配しか受けられなかった場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求権を長期間行使しない場合、権利が消滅します。

遺留分侵害額請求権は、最短1年で時効消滅します。

8【2年以内】給付金の請求

①高額療養費の請求

高額療養費とは、健康保険の被保険者が高額な医療費を負担したときに支給される給付金です。

自己負担限度額を超えた場合、超えた分が給付されます。

高額療養費を受け取るためには、2年以内に申請が必要です。

高額な医療を受ける場合、事前に予定されていることが多いでしょう。

医療を受ける前に、限度額適用認定証を取得しておくと便利です。

限度額認定証を病院の窓口に提示した場合、病院は自己負担限度額だけ請求します。

病院への支払いが少なくなるうえに、原則として、高額療養費支給申請が不要になります。

②埋葬料・葬祭費の請求

埋葬料・葬祭費とは、健康保険の被保険者が死亡したときに支給される給付金です。

埋葬を行った人に給付されます。

埋葬料・葬祭費を受け取るためには、2年以内に申請が必要です。

③死亡一時金の請求

死亡一時金とは、国民年金保険料を3年以上納めた人が死亡したときに遺族に給付される給付金です。

年金ではなく、文字どおり一回だけ支給されます。

死亡一時金を受け取るためには、2年以内に申請が必要です。

9【3年以内】相続登記と生命保険の請求

①相続登記

被相続人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更をします。

相続登記とは、不動産の名義変更です。

3年以内に相続登記をしなければなりません。

相続登記を怠ると、ペナルティーが課されます。

相続登記が義務化されるのは、2024年4月からです。

2024年4月以前に発生した相続と2024年4月以降に発生した相続の両方が対象です。

②生命保険の死亡保険金

被相続人が生命保険をかけていた場合、受取人は死亡保険金を受け取ることができます。

生命保険の死亡保険金を長期間請求しない場合、権利が消滅します。

生命保険の死亡保険金の請求権は、3年で時効消滅します。

被保険者が生命保険をかけていたか分からない場合、生命保険協会に照会することができます。

10【5年以内】未支給年金の請求

年金は、死亡の月まで支給されます。

例えば、5月10日に死亡した場合、5月分の年金まで支給されます。

年金は、前2か月分まとめて偶数月15日に支給されます。

例えば、2月分と3月分の年金は、4月15日に支給されます。

金融機関は口座の持ち主が死亡したことを知った場合、口座を凍結します。

口座の凍結とは、口座の取引をできなくすることです。

口座が凍結されたら、年金が振り込まれても受け取ることはできません。

5月分までの年金を受け取れるはずなのに、受け取れなくなります。

これが未支給年金です。

未支給年金は、一定の範囲の家族が受け取ることができます。

未支給年金は、5年以内に請求する必要があります。

一定の範囲の家族は、法律で決められています。

未支給年金を請求することができる人は、相続人とは別の扱いです。

相続放棄をして相続人でなくなった人であっても、未支給年金を請求することができます。

未支給年金は、相続財産ではないからです。

11【5年10か月以内】相続税の更正請求

相続税申告をした後に、申告内容に誤りがあったことに気づくことがあります。

相続税申告のやり直しをして、納め過ぎの税金を返してもらうことができます。

相続税申告のやり直しを更正請求と言います。

更正請求の期限は、相続税の申告期限から5年以内です。

相続税の申告期限は10か月以内だから、更正請求の期限は5年10か月以内です。

12期限はないけど早めに着手した方がいいこと

①相続人調査

相続人になる人は、法律で決まっています。

家族にとって、だれが相続人になるかは当然知っていることでしょう。

家族以外の第三者に対しては、客観的に証明する必要があります。

相続人であることを客観的に証明するとは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を用意することです。

相続人調査自体に期限はありません。

相続人調査は、期限がある手続の前提として必要になります。

相続人調査は、早めに着手することがおすすめです。

②相続財産調査

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産の両方があります。

被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合、連帯保証人の義務も相続します。

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

どのような財産が相続財産であるのか分からないと、相続人は判断できないでしょう。

相続財産調査自体に期限はありません。

相続財産調査は、期限がある手続の前提として必要になります。

相続財産調査は、早めに着手することがおすすめです。

③遺産分割協議

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

一部の相続人が勝手に、相続手続をすることはできません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があるからです。

相続財産の分け方について相続人全員の合意ができたら、文書に取りまとめます。

相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議書の作成自体に期限はありません。

遺産分割協議書の作成を先延ばしすると、合意があいまいになります。

早めに遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

13相続手続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。

相続手続するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。

負担の大きい相続手続を司法書士などの専門家に依頼すれば、遺族の疲れも軽減されるでしょう。

被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。

悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。

調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍等の提出が求められます。

戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。

仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。

家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。

相続手続でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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