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遺言書は検認しなくても無効にならない

2024-07-08

1自筆証書遺言は家庭裁判所で開封

①遺言書の種類

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作るケースがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分ひとりで書いて作った遺言書です。

自筆証書遺言を作成した後は、原則として、自分で保管します。

作成した自筆証書遺言を法務局に提出して、保管してもらうことができます。

公正証書遺言は、公証人が文書に取りまとめて作る遺言書です。

証人2人に確認してもらって作ります。

公正証書遺言を作成した後は、公正証書遺言原本は公証役場で保管されます。

②自筆証書遺言を見つけたら家庭裁判所で検認

相続が発生した後、遺言書を見つけることがあります。

遺言者の生前に遺言書を預かっておいて欲しいと依頼されるかもしれません。

自筆証書遺言を見つけた人や預かっている人は、家庭裁判所へ届け出る必要があります。

遺言書を届け出る手続を遺言書検認の申立てと言います。

自筆証書遺言を見つけたら、家庭裁判所で検認手続をします。

③検認前に開封するとペナルティー

相続人であれば、遺言書の内容が気になるかもしれません。

封がされている遺言書は、検認期日に家庭裁判所で開封してもらいます。

勝手に開封すると、ペナルティーになるおそれがあります。

封筒に入っていない遺言書であっても、検認は必要です。

封筒に入っているだけで封がされていない遺言書であっても、検認は必要です。

封筒の表書きに遺言書と書いてあれば、中身は遺言書であると気がつくことができます。

表書きに何も書いていない場合、気がつかずに開封してしまうことがあります。

誤って開封してしまったら、そのまま家庭裁判所へ提出します。

元に戻そうとして糊付けなどをすると、かえって他の相続人から怪しまれます。

正直に打ち明けた方がいいでしょう。

検認前に開封すると、ペナルティーになるおそれがあります。

④検認では形状・内容を確認する

遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

相続人に立会いをしてもらって、遺言書を開封します。

遺言書を開封した後、遺言書の形状、加除の状態、日付や署名を確認します。

確認した内容は、調書に取りまとめます。

調書を見れば、検認期日時点の遺言書の形状・内容が分かります。

検認期日以降に改ざんや変造をした場合、調書と照らし合わせることで分かってしまいます。

検認期日以降、改ざんや変造を防止することができます。

検認手続は、遺言書の改ざんや変造を防止するための手続です。

検認手続では、遺言書の形状・内容を確認します。

⑤公正証書遺言は検認不要

公正証書遺言を作成した後は、公証役場で厳重に保管されます。

公正証書遺言原本は公証役場で大切に保管されているから、改ざんや変造はあり得ません。

検認手続は、遺言書の改ざんや変造を防止するための手続です。

公正証書遺言は、改ざんや変造を防止するための手続は不要です。

公正証書遺言は、検認不要です。

⑥法務局保管の自筆証書遺言は検認不要

自筆証書遺言を作成した後に法務局に提出して、保管してもらうことができます。

自筆証書遺言の提出を受け付けたら、法務局は厳重に保管します。

提出された自筆証書遺言は法務局で大切に保管されているから、改ざんや変造はあり得ません。

検認手続は、遺言書の改ざんや変造を防止するための手続です。

法務局保管の自筆証書遺言は、改ざんや変造を防止するための手続は不要です。

法務局保管の自筆証書遺言は、検認不要です。

2遺言書は検認しなくても無効にならない

①検認前に開封しても無効にならない

封がされている遺言書は、検認期日に家庭裁判所で開封してもらいます。

勝手に開封すると、ペナルティーになるおそれがあります。

勝手に開封しても、遺言書が無効になることはありません。

遺言書であることに気づかず、開封してしまうことがあります。

家庭裁判所で開封してもらうルールがあることを知らないかもしれません。

うっかり開封してしまっても、遺言書の有効無効に影響はありません。

検認前に開封しても、遺言書は無効になりません。

②検認期日に欠席しても相続できる

遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

遺言書があることを知らせて、検認期日に立会いをしてもらうためです。

家庭裁判所に呼び出されても、欠席しても差し支えありません。

遺言書検認の申立てをした人は、検認期日に出席しなければなりません。

遺言書検認の申立てをした人は、検認期日に遺言書を持って行かなければならないからです。

検認期日に欠席しても、遺言書が無効になることはありません。

検認期日に欠席しても、相続人でなくなることもありません。

検認手続は、遺言書の改ざんや変造を防止するための手続だからです。

検認期日に欠席しても、相続することができます。

③検認しないと相続人間でトラブルのおそれ

自筆証書遺言を見つけた人や預かっている人は、遅滞なく家庭裁判所へ届け出る必要があります。

遺言書検認の申立てには、厳格な期限があるわけではありません。

遅くなり過ぎない程度であれば、問題にならないでしょう。

相続が発生すると、家族は忙しくなります。

日常の仕事や家事に加えて、たくさんの相続手続をしなければならなくなるからです。

裁判所に対する手続は、よく分からないことが多いでしょう。

よく分からないから、先延ばししがちになります。

単に、忙しい、分からないと思って先延ばししているだけなのに、他の相続人にはそう見えないことがあります。

他の相続人からは、遺言書を隠匿しているように見えることがあるからです

不当な利益を得る目的で遺言書を隠匿した場合、相続欠格になります。

相続欠格は、相続人にふさわしくない人の相続権を奪うことです。

欠格になると相続できなくなるし、遺留分も失われます。

遺言書を隠匿した場合、刑事責任を問われることがあります。

遺言書は、権利義務に関する書面です。

権利義務に関する書面を隠匿した場合、私用文書毀棄罪に問われます。

私用文書毀棄罪は、懲役刑のみが定められている重い犯罪です。

検認しないと、相続人間でトラブルになるおそれがあります。

④検認手続で遺言書の有効無効を判断しない

検認手続は、遺言書の改ざんや変造を防止するための手続です。

検認手続は、遺言書の有効無効を確認する手続ではありません。

検認手続と遺言書の効力には、何の関係もありません。

検認手続をしても、無効の遺言書は無効です。

検認手続をしなくても、有効の遺言書は有効です。

無効の遺言書は、検認手続をしても有効になりません。

有効の遺言書は、検認手続をしなくても無効になりません。

検認手続をした後に、遺言書は無効であると争うことができます。

検認期日に欠席した相続人が遺言書は無効であると争うことができます。

検認手続と遺言書の効力には、何の関係もないからです。

検認手続では、遺言書の有効無効を判断されません。

3検認をしないと相続手続ができない

①相続手続先に受付をしてもらえない

検認手続と遺言書の効力には、何の関係もありません。

検認手続は、遺言書の改ざんや変造を防止するための手続だからです。

検認手続をしなくても、有効の遺言書は有効です。

検認手続が必要なのに検認をしていない場合、遺言書を使って相続手続をすることはできません。

相続手続先に、受付をしてもらえないからです。

不動産について相続登記をする場合、法務局が認めてくれません。

預貯金について解約手続をする場合、金融機関が認めてくれません。

検認をしないと、相続手続先に受付をしてもらえません。

②検認証明書は申請が必要

遺言書の検認手続が終わった場合、家庭裁判所で検認証明書を発行してもらうことができます。

遺言執行をする場合、検認証明書が必要になります。

検認証明書を発行してもらうためには、申請が必要です。

検認証明書の手数料は、150円です。

収入印紙を申請書に貼付して納入します。

収入印紙は、貼り付けるだけで消印をしません。

裁判所の人が消印をするからです。

検認証明書は、申請が必要です。

4遺言書の検認をしても遺産分割協議

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

被相続人の財産は、原則として、被相続人の意思が最大限尊重されるべきものでしょう。

相続人としても、被相続人の意思を尊重し、遺言書の内容を実現させてあげたいと思うでしょう。

ときには遺言書の内容があまりに偏ったものであることがあります。

偏った内容の遺言書をそのまま執行すると、大きなトラブルになるおそれがあります。

トラブルになるおそれがある遺言書をわざわざ執行して、相続人間でトラブルにする必要はありません。

相続財産の分け方について、相続人全員で話し合いをして決定した方が合理的でしょう。

相続人全員の合意で、遺産分割協議をすることができます。

遺言書の検認をした後であっても、相続人全員で遺産分割協議をすることができます。

5遺言書検認の申立てを司法書士に依頼するメリット

自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は家庭裁判所に届け出る必要があります。

遺言書を隠したり捨てたりすると、相続人になることができません。

他の相続人から疑いをかけられてトラブルになるのを避けるためにも、すみやかに家庭裁判所に検認の申立てをしましょう。

遺言書検認の申立てを提出するためには、たくさんの書類が必要になります。

仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。

家族にお世話が必要な方がいて、側を離れられない方からのご相談もお受けしております。

裁判所に提出する書類を作成できるのは、弁護士と司法書士のみです。

弁護士と司法書士でない人は作成代行はできませんから、充分注意しましょう。

遺言書の検認を司法書士に依頼した場合、遺言書検認申立書の作成だけでなく、家庭裁判所への提出もおまかせいただけます。

遺言書を預かっている方や見つけた方はトラブルになる前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

失踪宣告で借金を相続

2024-07-03

1失踪宣告で相続が開始する

①失踪宣告で死亡と見なされる

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。

失踪宣告がされた人に、相続が発生します。

相続財産は、相続人全員の共有財産になります。

相続人全員の合意があれば、相続財産を自由に分けることができます。

遺産分割協議によって相続した後は、相続人が自由に処分をすることができます。

②普通失踪は生死不明7年

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。

家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。

生死不明の人の家族や利害関係人は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。

家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。

家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、調査のために1年ほどかかる場合もあります。

生死不明のまま7年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

③特別失踪(危難失踪) は生死不明1年

行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。

生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

④死亡と見なされる日に相続開始

失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

普通失踪では生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

特別失踪(危難失踪)では危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。

死亡と見なされる日が、相続が開始する日です。

失踪宣告の手続は、長期間かかります。

相続が開始する日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。

裁判所が失踪宣告をした日でもありません。

相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。

2行方不明なら家族に取立てができない

①家族に返済義務はない

お金を借りたら、借りたお金を返さなければなりません。

お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。

お金を借りた後、借金を返せなくなることがあります。

借金を返せなくなった場合、お金を借りた人が責任を取ります。

お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務だからです。

借金がきっかけになって、行方不明になることがあります。

借金の返済を滞らせて行方不明になっても、家族に返済義務はありません。

お金を借りた人の責任であって、家族はお金を借りた人ではないからです。

借金を滞らせても、家族が自動で借金を返済する義務を負うことはありません。

②連帯保証人は肩代わりの義務がある

お金を借りるときに、連帯保証人を立てることがあります。

連帯保証人は、借金を返せなくなったときに肩代わりをする人です。

借金を返せなくなった場合でも肩代わりをしてくれるから、安心してお金を貸すことができます。

お金を借りるときに、家族が連帯保証人になることがあります。

お金を借りた人が返済を滞らせた場合、連帯保証人は肩代わりをしなければなりません。

お金を借りた人が返済を滞らせたまま行方不明になった場合、代わりに返済をしなければなりません。

連帯保証人は、借金を返せなくなったときに肩代わりをしますと約束した人だからです。

連帯保証人は、肩代わりの義務があります。

③第三者への取立ては違法行為

お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。

連帯保証人には、肩代わりに義務があります。

家族であっても、お金を返す義務はありません。

連帯保証人になっていないのに、自動で借金を返済する義務を負うことはありません。

債権者は借金を返してもらいたいから、家族に連絡を取ってくるでしょう。

お金を返す義務がない人に対して、みだりに催促する行為は違法です。

貸金業者は、行政から監督を受けています。

執拗な催促をする場合、行政に苦情を申し入れることができます。

違法な取り立てと認められた場合、業務停止などの行政処分が行われます。

第三者への取立ては、違法行為です。

3失踪宣告後は借金は相続財産

①失踪宣告で相続人に返済義務

失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

失踪宣告で、相続が発生します。

相続が発生すると、被相続人のものは相続人が相続します。

被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。

被相続人が借金を抱えたまま死亡した場合、借金は相続人全員に相続されます。

借金は相続されるから、相続人は借金の返済義務を相続します。

失踪宣告がされると、相続人全員に借金の返済義務が引き継がれます。

②失踪宣告後は借金の調査ができる

お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。

借金がいくらあるかなどの信用情報は、重要な個人情報です。

お金を借りた人が生きている間、家族が勝手に借金を調査することはできません。

お金を借りた人に失踪宣告がされた場合、相続人は借金の調査をすることができます。

消費者金融やクレジット会社は、指定信用情報機関に加入しています。

信用情報を確認すると、ローンやクレジットなどの取引内容、返済状況が詳しく分かります。

(1)日本信用情報機構(JICC)

(2)株式会社シー・アイ・シー(CIC)

(3)全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)

相続人は、信用情報機関に対して情報開示を請求することができます。

信用情報機関に開示請求をすることで、被相続人の借金を調べることができます。

③失踪宣告後は相続放棄ができる

失踪宣告がされるまでは、行方不明の人は生きている扱いです。

相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。

被相続人が生きている間は、相続放棄をすることできません。

相当長期間行方不明であっても、失踪宣告されずに行方不明のままなら生きている扱いです。

行方不明のままなのに相続放棄の申立てを提出しても、受け付けてもらえません。

④相続放棄をしても生命保険の死亡保険金

相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

単純承認と見なされる行為は、法律で定められています。

相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。

単純承認をしたのに、家庭裁判所で相続放棄が認められても無効です。

単純承認をしたら、撤回することはできないからです。

失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明になった人に生命保険がかけてあった場合、生命保険の死亡保険金が支払われます。

原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。

受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。

被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。

相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。

相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。

生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。

相続放棄をした場合、消費者金融の借金を引き継ぐことはありません。

相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。

債務者の家族であっても、生命保険の死亡保険金で債務者の借金を返済する義務はありません。

4失踪宣告を受けた人が生きていたら

①失踪宣告の取消は家庭裁判所で手続

失踪宣告がされたけど、実は本人は新天地で元気に生きていたということがあります。

失踪宣告をされた人が生きていると分かっても、自動的に失踪宣告が取り消されるわけではありません。

家庭裁判所は失踪宣告された人が、その後、生きているかどうか分からないからです。

失踪宣告された人が生きていることが分かった場合や失踪宣告されたときと異なる時期に死亡したことが判明した場合、家庭裁判所に失踪宣告の取消の審判の申立てをします。

家庭裁判所が失踪宣告を取消した場合、失踪宣告による死亡の効果がなかったことになります。

失踪宣告の取消をしたときも、官報にお知らせを出します。

②財産は返還しなければならない

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとする手続です。

失踪宣告がされると、相続が開始します。

失踪宣告が取り消されると、行方不明者が死亡したことはなかったことになります。

死亡がなかったことになりますから、相続もなかったことになります。

相続によって財産を得た人は、行方不明者に財産を返さなければなりません。

たとえ、行方不明者が生きているとは思わなかったとしても、財産は返す必要があります。

返す財産は、現に利益を受けている限度とされています。

相続人が遊興費などで使ってしまっている場合は、返す必要がありません。

生活費や自分の借金の返済に充てている場合などは、現に利益を受けていると言えます。

その分は、返還が必要です。

現に利益を受けている限度とは、同じ形で残っている意味ではありません。

形を変えて残っている場合も含みます。

生活費として使ったのであれば、自分のお金をその分使わずに済んでいます。

生活費分の利益を得ていると言えます。

③生命保険も返還しなければならない

死亡により支払われるものとして、生命保険の保険金は高額なものでしょう。

失踪宣告が取り消されると、返還しなければなりません。

住宅ローンを組むときに団体信用生命保険に加入している場合、生命保険金で住宅ローンの残額を支払っているでしょう。

住宅ローンの残額を支払わなくてもよくなったという形で利益が残っていると考えられます。

現に利益を受けていると言えますから、この利益を返還しなければなりません。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

特別縁故者が遺産を受け取る要件

2024-07-01

1特別縁故者に財産が分与される

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②相続人不存在なら国庫帰属

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続人がまったくいない天涯孤独の人がいます。

相続人はいるけど、相続放棄をすることがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。

相続人が不存在の場合、相続財産は国庫に帰属します。

③相続人不存在のとき特別縁故者財産分与の申立て

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。

遺言書がある場合、遺言書の指示どおりに財産を引き継ぐことができます。

遺言書を作成する人は、多くはありません。

遺言書がない場合、相続財産は国庫に帰属するのが原則です。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

相続財産を国庫に帰属させるより、特別な関係にあった人に分与した方が適切なことがあります。

相続人不存在である場合、家庭裁判所に対して特別縁故者財産分与の申立てをすることができます。

家庭裁判所に特別縁故者と認められれば、相続財産を分与されます。

2特別縁故者に認められる要件

①生計を同じくしていた人

相続が発生したら、一定の範囲の家族が相続人になります。

相続人になる人は、法律で決められています。

例えば、被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。

相続人になる配偶者とは、法律上の配偶者です。

事実婚・内縁の配偶者は、相続人ではありません。

事実婚・内縁の配偶者は、被相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていたでしょう。

相続人不存在である場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

例えば、配偶者に連れ子がいることがあります。

法律上の配偶者は、相続人になることができます。

連れ子は、被相続人の子どもではありません。

被相続人と連れ子は、当事者が合意すれば養子縁組をすることができます。

養子縁組をした場合、養子は養親の子どもになります。

養親が死亡したとき、養子は相続人になります。

養子は、養親の子どもだからです。

養子縁組をしていない場合、連れ子には親族関係がありません。

被相続人の相続人になることはできません。

連れ子が相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていることがあります。

相続人不存在である場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

特別縁故者に認められるか家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所は、当事者の主張だけでなく客観的な証拠を重視します。

被相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていた場合、同一の住民票があるでしょう。

事実婚・内縁の配偶者は、住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載してもらえます。

長年同居していたことも、住民票で証明することができます。

長年同居して生計を同じくしている場合、特別な縁故があったと認められやすくなるでしょう。

②被相続人の療養看護につとめた人

療養看護につとめた人とは、被相続人の身の回りの世話を献身的にした人です。

例えば、被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもの配偶者は、相続人ではありません。

被相続人のいとこなども相続人ではありません。

子どもの配偶者やいとこが被相続人の療養看護につとめていることがあります。

親族として助け合いをする以上に献身的に療養看護に努めていた場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

被相続人から相当の対価を得ていた場合、献身的とは言えないでしょう。

看護師やヘルパーとして対価を得ていた場合、特別縁故者に認められるのは難しいでしょう。

対価を得ていたものの対価の程度を大きく超えて献身的に尽くしていた場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

療養看護につとめたことは、次の書類で証明することができます。

(1)医療費や介護費の領収書

(2)療養看護のための交通費の領収書

(3)被相続人と頻繁に交流していたことが分かる手紙、写真、メール、日記

(4)献身的に療養看護につとめていたことが分かる手紙、写真、メール

③その他被相続人と特別な関係にあった人

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

遺言書がなくても、その人に相続財産を受け継がせるのが適当と考えられる特別な関係がある人は特別縁故者と認められる可能性があります。

例えば、被相続人が生前設立し発展に尽力してきた法人があることがあります。

被相続人が心血注いできた法人は、相続財産を受け継がせるのに適切と考えられるでしょう。

被相続人と特別な関係にあったと認められた場合、特別縁故者に認められることがあります。

他にも、被相続人の家族同然に暮らしてきた内弟子がいることがあります。

被相続人がわが子同然に可愛がっていて、事業を引き継がせたいと常々言っていることがあります。

被相続人が後継者にしたいと考えていた人に、相続財産を受け継がせるのに適切と考えられるでしょう。

被相続人と特別な関係にあったと認められた場合、特別縁故者に認められることがあります。

被相続人と特別な関係にあったことは、次の書類で証明することができます。

(1)被相続人と親密な関係にあったことが分かる手紙、写真、メール、日記

(2)被相続人と頻繁に交流していたことが分かる手紙、写真、メール、日記

(3)被相続人が相続財産を引き継がせる意思があったことが分かる書類

④相続人がいたら特別縁故者は認められない

特別縁故者が認められるのは、相続人が不存在のときだけです。

相続人になる人は、法律で決められています。

家族のさまざまな事情から、被相続人と疎遠になっている家族がいることがあります。

音信不通や行方不明の相続人がいることがあります。

音信不通であっても行方不明であっても、法律で決められた人は相続人になります。

相続財産は、相続人が相続します。

相続人がいるのに、特別縁故者が認められることはありません。

⑤死後の縁故は認められない

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

被相続人の生前に特別な関係があったと認められる人が特別縁故者です。

被相続人が死亡した後、被相続人の遺体を引き取ったり葬儀を行ったりする必要があります。

多くの場合、生前にも特別な関係があった人が遺体を引き取ったり葬儀を行ったりするでしょう。

生前にほとんど関与や交流がなかった人が、遺体を引き取ったり葬儀を行ったりすることがあります。

被相続人に身寄りがないため、葬儀や祭祀を行うような事例です。

被相続人の生前に関与や交流がない場合、特別縁故者に認められません。

遺体を引き取ったり葬儀を行ったりすることは、生前にも特別な関係があったことが推察されます。

生前に特別な関係があったことを主張したうえで、遺体を引き取ったり葬儀を行ったりしたことを主張するといいでしょう。

葬儀は、人生最後の儀式として重要なものです。

被相続人の死亡後に葬儀や祭祀のための費用を負担した場合、合理的な金額であれば相続財産から支払われるのが通常です。

3特別縁故者に対する財産分与の申立ての流れ

①相続財産清算人選任の申立て

相続人がまったくいない場合、相続財産は最終的には国庫に帰属します。

相続財産清算人とは、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。

相続人がまったくいない場合、家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらいます。

②債権者受遺者へ申出の公告

家庭裁判所に選任された相続財産清算人から、債権者や受遺者に対して公告が出されます。

債権者は、お金を払ってもらう権利がある人です。

受遺者は、遺言書で財産を受け取る権利がある人です。

債権者は、相続財産から払ってもらいたいと考えるでしょう。

相続財産清算人は、相続財産から支払をして清算します。

債務者は、お金を払う義務がある人です。

相続人がいれば、相続人が受け取ることができるはずです。

相続財産清算人は、きちんと支払をしてもらって清算します。

③相続人不存在が確定

相続人捜索の公告の期間が満了した場合、相続人不存在が確定します。

特別縁故者に対して財産が分与されるのは、相続人がいないときです。

戸籍謄本で確認するだけでなく、相続人捜索の公告をします。

④特別縁故者に対する財産分与の申立て

相続人不存在が確定した場合、特別縁故者に対する財産分与の申立てをすることができます。

特別縁故者に対する財産分与の申立てができるのは、相続人不存在が確定してから3か月以内です。

3か月を過ぎると、申立てができなくなります。

⑤特別縁故者に対する財産分与の審判

家庭裁判所で特別縁故者として認められた場合、相続財産の一部または全部が分与されます。

特別縁故者として認められなかった場合、相続財産は国庫に帰属します。

4特別縁故者に相続税

特別縁故者が多額の財産を受け取る場合、相続するのではありませんが、相続税の対象になります。

相続税がかかるのは、基礎控除を超える場合です。

相続税の基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数

特別縁故者が財産を受け取る場合、法定相続人はいないはずです。

3000万円を超えて財産を受け取ったとき、相続税がかかります。

特別縁故者が相続税を納めるとき、通常時の2割加算がされます。

5遺言書があると手続がラク

被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

相続財産清算人選任の申立てなど裁判所の手続は、時間と労力がかかります。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをしても、家庭裁判所は必ずしも認めてくれません。

相続人がいない人は、遺言書を書いて財産の行き先を指定しましょう。

お世話になった役所や慈善団体に寄付をして、財産を活かしてもらうことができます。

財産を受け取ってもらうのは、相続人でなければならないというルールはありません。

近年は、おひとりさまなどが慈善団体への寄付を望むことが多いです。

田舎の山林など寄付する財産の種類によっては、寄付を受けてもらえないこともあります。

使い道が指定してある寄付は自由に使えないから困ると言って断られることもあります。

財産の行き先を決める場合、相手方の都合を聞いて決めましょう。

遺言書を書く前に相談することが必要です。

遺言書の内容を実行するために、遺言執行者も指定しておくと安心です。

6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合もタイヘンです。

相続人がいないから、財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。

実際は、被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。

国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという気持ちがある人もいるでしょう。

お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという意思は遺言書で実現できます。

お世話になった人に受け継いでもらいたい場合、特別縁故者に対する相続財産分与の申立ができますが、必ずしも認められるとは限りません。

認められても、財産の一部のみの場合もあります。

何より、家庭裁判所に対する手続ですから、一般の人には高いハードルです。

遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。

お世話になった人は待っているだけで済みます。

遺言書は書き方に細かいルールがあります。

細かいルールを守っていないと遺言書は無効になってしまいます。

適切な遺言書作成と遺言執行者選任は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

配偶者居住権設定登記

2024-06-26

1配偶者居住権とは

①配偶者居住権は設定が必要

配偶者居住権は、相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

遺言書や遺産分割協議などで、権利を設定する必要があります。

②建物が被相続人と共有の場合のみ配偶者居住権は成立

建物を被相続人と配偶者以外の人と共有しているケースがあります。

配偶者居住権は、被相続人と配偶者以外の人と共有建物の場合は成立しません。

③配偶者居住権は原則配偶者の終身存続

配偶者居住権は、原則として終身です。

遺言書や遺産分割協議などによって、存続期間を決めることもできます。

④配偶者居住権は建物全体が対象

配偶者居住権では、居住部分だけでなく建物全体が対象になります。

店舗付き住宅などでは、店舗も含めて対象になります。

配偶者居住権では、店舗などから得た収入は配偶者のものにできます。

⑤配偶者居住権は登記できる

要件を満たせば、配偶者居住権は登記をしなくても成立します。

配偶者居住権はせっかく登記できるのに、登記しないと大きな不利益を受けるおそれがあります。

2配偶者居住権は設定する方法

①遺言書で遺贈

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

配偶者居住権を遺言書で遺贈することができます。

②死因贈与契約で取得

自分の財産を無償で譲ってあげることを贈与と言います。

贈与は、譲り渡す人と譲り受ける人の合意がある契約です。

死因贈与は、譲り渡す人が死亡したときに贈与の効果が発生する契約です。

配偶者居住権を死因贈与契約で設定することができます。

後日トラブルになることが予想されるのであれば、死因贈与契約は公正証書にしておくといいでしょう。

死因贈与契約を締結した場合、始期付配偶者居住権設定仮登記をすることができます。

公正証書に仮登記の承諾条項をいれておくといいでしょう。

公正証書に仮登記承諾条項がある場合、始期付配偶者居住権設定仮登記は配偶者が単独申請をすることができます。

仮登記とは、今すぐ本登記をすることができない場合に将来のため登記上の順位を確保するための登記です。

財産を譲ってあげる人が死亡して、契約の効力が発生した場合、本登記を申請します。

③遺産分割協議で合意

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員による話し合いの合意で決めなければなりません。

相続財産の分け方について相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います

被相続人の配偶者は、遺産分割協議で相続人全員の合意ができれば配偶者居住権を取得することができます。

3配偶者居住権設定登記しないと権利主張ができない

配偶者居住権は、設定が必要です。

遺言書、死因贈与契約、遺産分割協議で配偶者居住権を設定することができます。

配偶者居住権を設定しても、事情を知っているのは当事者だけです。

配偶者居住権は、登記しなくても有効です。

建物所有者は、配偶者居住権を設定した後に配偶者を追い出すことはできません。

登記をしていない場合、第三者からは配偶者居住権の存在は分かりません。

配偶者居住権が設定された事実を知らずに、第三者が建物所有者から建物を買い受けることがあります。

建物は重要な財産であることが多いので、買主は直ちに所有権移転登記をします。

買主は建物を使うため、配偶者に立ち退いて欲しいと要求するでしょう。

配偶者居住権があるから、立ち退きたくないと文句を言うことはできません。

配偶者居住権設定登記をしていない場合、権利主張ができないからです。

建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができるのは、登記の重要な効力です。

配偶者が安心して住み続けるためには、配偶者居住権設定登記が不可欠です。

4配偶者居住権設定登記の申請人

①原則権利者と義務者の共同申請

配偶者居住権設定登記は、配偶者が単独で申請することができません。

配偶者を権利者として建物所有者を義務者として共同で申請します。

②建物所有者が協力しないときは裁判所で判決

配偶者居住権設定登記は、建物所有者の協力が必要です。

配偶者居住権を設定したのだから、建物所有者は登記申請に協力する義務があります。

建物所有者が登記申請に協力しない場合、配偶者が勝手に申請することはできません。

配偶者は建物所有者を裁判に訴えて、判決を得る必要があります。

裁判で勝訴判決を得るまでに長期間かかるのが通常です。

裁判中に建物所有者が第三者に建物を売り渡すかもしれません。

建物を買い受けた第三者が所有権移転登記をした場合、配偶者に立ち退いて欲しいと要求することができます。

第三者が所有権移転登記をした後で、勝訴判決を得ても意味はありません。

建物は第三者のものになっているからです。

建物所有者を裁判に訴える前に、処分禁止の仮処分を求める必要があります。

③遺言書で遺贈したときは遺言執行者と申請

遺言書で遺贈した場合、配偶者を権利者として遺贈義務者を義務者として共同で申請します。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺贈登記は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請をします。

遺言執行者は、遺言書で指定することができます。

遺言執行者がいない場合、原則どおり建物所有者の協力が必要になります。

④死因贈与は執行者と申請

死因贈与契約で贈与をした場合、贈与契約で執行者を定めておくことができます。

配偶者を権利者として執行者を義務者として共同で申請します。

死因贈与契約で贈与をする場合、始期付配偶者居住権設定仮登記をすることができます。

建物所有者は、理論上は、第三者に所有権を移転することができます。

登記簿は、だれでも取得することができます。

始期付配偶者居住権設定仮登記がされている場合、配偶者居住権の負担が発生することが分かります。

多くの場合、建物を使いたいから購入するでしょう。

配偶者居住権の負担が発生する建物を買いたいという人は、めったにいません。

事実上、相続発生後に建物所有者が売却することは困難になります。

相続が発生する前に始期付配偶者居住権設定仮登記ができるのは、死因贈与契約で贈与をする場合のみです。

遺贈や遺産分割協議による設定をする場合、相続発生前には何もすることができません。

始期付配偶者居住権設定仮登記だけでは、権利主張をすることはできません。

配偶者居住権を権利主張するためには、仮登記を本登記にする必要があります。

5配偶者居住権設定登記の方法

①建物の相続登記をしてから配偶者居住権設定登記

配偶者居住権設定登記をする場合、建物の相続登記がされていることが前提です。

建物の相続登記を省略して配偶者居住権設定登記をすることはできません。

通常、建物の相続登記を1件目、配偶者居住権設定登記を2件目として同時に申請します。

配偶者居住権設定登記では、権利証が必要になります。

権利証は相続や遺贈による所有権移転登記が完了してはじめて発行されます。

相続や遺贈による所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を同時にする場合、権利証が提供できなくても差し支えありません。

相続や遺贈による所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を同時にする場合、相続登記が完了したら権利証が提供されたものとして配偶者居住権設定登記が処理されるからです。

②登記原因

登記原因は、配偶者居住権を設定した日です。

遺産分割協議による設定の場合、遺産分割協議の成立日です。

「令和○年○月○日遺産分割」です。

遺言書による遺贈や死因贈与による場合、被相続人の死亡日です。

「令和○年○月○日遺贈」「令和○年○月○日死因贈与」です。

③存続期間

配偶者居住権の存続期間は、別段の定めがない限り、配偶者の終身の間です。

別段の定めがない場合「配偶者居住権者の死亡時まで」です。

別段の定めがある場合、次のような記載です。

「令和○年○月○日から令和○年○月○日まで」

「令和○年○月○日から○年間」

「令和○年○月○日から○年間または配偶者居住権者の死亡時までのうち、いずれか短い期間」

存続期間は、原則として、延長や更新をすることはできません。

遺贈で配偶者居住権の存続期間が定められた場合、配偶者は遺贈を放棄することができます。

遺贈を放棄した後であらためて、遺産分割協議をすることができます。

④特約

配偶者居住権を設定する場合、居住建物を第三者に使用させることができることを定めることができます。

第三者が居住建物を使用収益することができる定めは、登記することができます。

「第三者に居住建物の使用または収益をさせることができる」です。

配偶者が第三者に居住建物を貸し出すことがあります。

建物に対して賃借権設定登記をする場合、通常、建物所有者の承諾書が必要になります。

配偶者居住権設定登記で「第三者に居住建物の使用または収益をさせることができる」ことが登記されていた場合、建物所有者の承諾書は不要になります。

⑤登録免許税

配偶者居住権設定登記の登録免許税は、建物の固定資産評価額の1000分の2です。

配偶者居住権設定仮登記の登録免許税は、建物の固定資産評価額の1000分の1です。

⑥配偶者居住権設定登記の必要書類

配偶者居住権設定登記申請書に次の書類を添付します。

(1)登記原因証明情報

(2)登記識別情報

(3)建物所有者の印鑑証明書

(4建物の固定資産税評価証明書

(5)登記委任状

登記原因証明情報は登記所差入方式でも差し支えありません。

配偶者居住権者の住民票は、提出する必要がありません。

配偶者居住権設定登記では、被相続人の住民票は提出不要です。

被相続人の住民票は、一緒に提出する建物の相続登記で提出します。

6配偶者居住権設定登記を司法書士に依頼するメリット

配偶者居住権は、相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

相続財産の大部分が自宅である場合、分け方をめぐって相続人全員の話し合いがつかないケースは少なくありません。

それぞれの相続人が法定相続分を受け取りたいと主張するからです。

配偶者居住権がない場合、長年住み慣れた自宅を相続したいと思ったら、事実上自宅以外の金融資産を受け取ることができなくなります。

配偶者居住権は自宅に居住する権利のみなので、自宅に住み続けて、かつ、金融資産を確保することができます。

自宅を居住権と負担付所有権に分けることで、円満な話し合いによる合意がしやすくなります。

一方で、配偶者居住権を得た配偶者自身が死亡した場合、配偶者居住権は消滅します。

この点に着目して、相続税を減らせることをアピールしている専門家もいます。

制度のメリットデメリットを考えて、適切に選択しましょう。

家族がトラブルにならないように相続手続を完了したいと考える方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

独身者の相続対策で養子縁組

2024-06-24

1養子縁組で親子になる

①独身の人が養子縁組ができる

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

特別養子による養子縁組では、養親は配偶者がいる人であることが条件です。

普通養子による養子縁組には、配偶者の有無は問われません。

独身の人が養親になる養子縁組をすることができます。

独身の人が養子になる養子縁組をすることができます。

独身の人が養子縁組ができます。

②独身の人は特別養子による養子縁組はできない

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

親子の縁を切る重大な決定なので、厳格な要件で家庭裁判所が決定します。

特別養子が認められる条件は、次のとおりです。

(1)実親の同意があること

(2)養親は配偶者がいること

(3)養親の年齢が25歳以上、夫婦の一方は20歳以上

(4)養子の年齢が15歳未満

(5)6か月以上の監護実績

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。

特別養子が認められるのは、家庭裁判所に審判の請求をした時点で養子が15歳未満であることが条件です。

養子が15歳になる前から養親に監護されていた場合、18歳になるまでは審判を請求することができます。

養子が成人になったら、特別養子になることはできません。

独身の人は、特別養子による養子縁組をすることはできません。

③大人同士で養子縁組ができる

養子は、未成年に限るものではありません。

大人同士で、養子縁組をすることができます。

大人同士で養子縁組をする場合、普通養子による養子縁組のみです。

普通養子による養子縁組は、養子縁組後も血縁関係がある実親との親子関係が続きます。

相続対策として養子縁組をする場合、大人同士でしょう。

大人同士で、養子縁組をすることができます。

2養子縁組で相続人になる

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②実子がいても養子は相続人

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

独身の人に実子がいることがあります。

独身の人が認知することがあります。

認知された子どもは、相続人になります。

今は独身でも、結婚歴があることがあります。

離婚した元配偶者が子どもを引き取っていることがあります。

離婚しても、子どもは相続人になります。

被相続人の実子は、被相続人の子どもです。

被相続人の養子は、被相続人の子どもです。

被相続人の子どもに、区別はありません。

被相続人の実子と養子は、相続人になります。

被相続人に実子がいても、養子は相続人です。

③実子と養子は同じ相続分と遺留分

養子縁組をした場合、養子は法律上の親子関係がある子どもです。

子どもに区別はありません。

実子と養子は、同じ相続分です。

被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。

財産は被相続人が自分だけで築いたものではないでしょう。

家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。

今まで協力してきた家族に酷な結果となることがあるからです。

被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利を遺留分と言います。

兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分が認められています。

遺留分が認められている相続人を遺留分権利者と言います。

被相続人の子どもが相続人になる場合、子どもは遺留分権利者です。

子どもに区別はありません。

実子と養子は、同じ遺留分です。

実子と養子は、同じ相続分と遺留分です。

3普通養子による養子縁組の条件

①成人同士の養子縁組は当事者の合意が重要

成人同士で養子縁組をする場合、特別な条件はありません。

成人同士の養子縁組で重要な条件は、次のとおりです。

(1)養親になる人と養子になる人の合意

(2)養子縁組届を提出

(3)養子は尊属や年長者でない

(4) 養子が結婚しているときは配偶者の同意

普通養子による養子縁組の条件は、他にもたくさんあります。

(5)養親は20歳以上

(6)未成年者を養子にするときは家庭裁判所の許可

(7)結婚している人が未成年者を養子にするときは夫婦共同縁組

(8)後見人が被後見人を養子にするときは家庭裁判所の許可

独身者が相続対策で養子縁組をするときは、あまり気にしなくてもいいでしょう。

②養子の人数に法律上の制限はない

養親になる人と養子になる人の合意で、養子縁組することができます。

養親は、複数の養子と養子縁組をすることができます。

養子縁組の数に、法律上の制限はありません。

養子は、養親の子どもです。

養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

被相続人の財産規模によっては、相続税の対象になるでしょう。

相続税を計算する場合、養子の数に制限があります。

被相続人に実子がいる場合、養子は1人までです。

被相続人に実子がいない場合、養子は2人までです。

上記の養子の数の制限は、相続税を計算するときだけの話です。

被相続人に実子がいても、複数の養子がいることがあります。

複数の養子全員が被相続人の子どもです。

被相続人の子ども全員が相続人です。

養子縁組の数に、法律上の制限はないからです。

③養親の人数に法律上の制限はない

養子縁組の数に、法律上の制限はありません。

養子は、複数の養親と養子縁組をすることができます。

養子は、養親の子どもです。

養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

最初の養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

次の養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

最初の養親にとっても次の養親にとっても、養子は子どもだからです。

実親が死亡したときに、普通養子による養子は相続人になります。

実親にとっても、養子は子どもだからです。

子どもは、相続人になります。

養親の人数に法律上の制限は、ありません。

④養子の年齢に制限はない

養親になれるのは、20歳以上の人です。

養子になる人に、年齢制限はありません。

養親より年長者が養子になれないだけです。

高齢者になっても、養子になることができます。

⑤養子縁組に収入要件はない

養子縁組をする場合、収入の基準はありません。

養親になる人も養子になる人も、収入による制限はありません。

4独身者の相続対策で養子縁組をするときの注意点

①養子は相続人になる

独身の人は、子どもがいないことが多いでしょう。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

独身の人が高齢である場合、兄弟姉妹が相続人になることが多いでしょう。

独身の人が養子縁組をした場合、養子は子どもです。

養子は、相続人になります。

子どもが相続人になる場合、兄弟姉妹は相続人になりません。

相続が発生するまで養子の存在を知らなかった場合、大いに戸惑うでしょう。

兄弟姉妹が財産を相続できると期待していた場合、相続トラブルに発展するおそれがあります。

②相続人が変わると税金に影響

相続人が変わると税金に影響

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

被相続人に養子がいる場合、養子は相続人です。

養子は、被相続人の子どもだからです。

被相続人に実子がいる場合、養子縁組をすると実子と養子が相続人になります。

相続人が増えると相続税を減らすことができます。

この点を過度に強調して、養子縁組をすすめられることがあります。

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が相続人になるはずだったのに、養子縁組をすると養子が相続人になります。

例えば、兄弟姉妹4人が相続人になるはずだったのに、養子1人が相続人になることがあります。

養子縁組をした場合、相続税の基礎控除額は少なくなります。

兄弟姉妹4人なら5400万円、養子1人なら3600万円だからです。

相続税の基礎控除額が少なくなると、たくさんの相続税を納める必要があります。

基礎控除額だけでなく、生命保険の非課税額、退職金の非課税枠なども少なくなります。

大人同士の養子縁組で、税金に影響があります。

③養子が先に死亡

独身の人が相続対策で養子縁組をする場合、養子に相続人になってもらうことを期待しているでしょう。

人の生死は、だれにも予想できません。

養子が先に死亡することがあります。

一般的に、相続人になるはずだった子どもが先に死亡した場合、子どもの子どもが相続します。

これを代襲相続と言います。

養子が先に死亡した場合、養子の子どもが代襲相続できるときと代襲相続ができないときがあります。

代襲相続人になるのは、被相続人の卑属のみです。

被相続人の養子は、被相続人の子どもだから被相続人の卑属です。

被相続人の養子の子どもは、被相続人の卑属である場合と被相続人の卑属でない場合があるからです。

養子縁組をしたときすでに誕生していた子どもは、原則として、被相続人の卑属になりません。

養子縁組をした後に誕生した子どもは、被相続人の卑属になります。

被相続人の卑属は、代襲相続をすることができます。

相続が発生したとき、養子が先に死亡している場合、代襲相続ができます。

④養子縁組で養子は養親の氏

養子縁組をすると、養子は養親の氏を名乗ります。

成人同士で養子縁組をしても、養子は養親の氏を名乗ります。

成人同士で養子縁組をした場合、氏が変更される点に注意する必要があります。

氏の変更は、社会生活上の負担が大きいからです。

養子になる人が結婚していても戸籍の筆頭者の場合、養親の氏に変更されます。

戸籍の筆頭者が養親の氏に変わるから、養子の配偶者の氏も自動で変更されます。

養子になる人が戸籍の筆頭者の配偶者である場合、養親の氏でなく婚姻時に決めた氏を名乗ります。

養子に子どもがいる場合、養子の子どもの氏は自動で変更されません。

養子の子どもの氏を変更したい場合、別の手続が必要です。

⑤養子縁組解消には当事者の同意が必要

養子縁組は、養親になる人と養子になる人の合意で親子関係を作る制度です。

離縁は、養親と養子の合意で親子関係を解消する制度です。

原則として、養子縁組を解消するためには、当事者の合意が必要です。

養子縁組をした後で養子縁組を解消したくなることがあります。

当事者が合意できない場合、家庭裁判所の助力が必要になります。

5相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて、読みにくいものです。

手書きの達筆な崩し字で書いてあって、分かりにくいものです。

慣れないと、戸籍謄本集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。

戸籍謄本を集めるだけで、膨大な手間と時間がかかります。

戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。

ときには、家族の方が知らない相続人が明らかになることもあります。

相続が発生した後に、認知を求めて裁判になることもあります。

相続人を確定させるために戸籍謄本を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。

家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。

相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。

戸籍謄本や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺留分を現金で払えない

2024-06-23

1遺留分を渡したくないと拒否できない

①遺留分は最低限の権利

被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。

財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。

家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。

今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。

被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。

②遺留分は現金で支払う

遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。

遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を現金で支払います。

相続で受け取った財産を渡す必要はありません。

遺留分に相当する金額を請求できるだけだからです。

現金で支払うルールは、令和元年7月1日以降に発生した相続に適用されます。

2遺留分侵害額請求がされたら

①遺留分は最短1年で時効消滅

遺留分を請求しないまま長期間経過した場合、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。

遺留分侵害額請求権には、時効があるからです。

遺留分侵害額請求権の時効は、次のとおりです。

(1)侵害の事実を知ってから1年

(2)侵害がされたときから10年

権利が消滅した後に、遺留分侵害額請求があっても拒否することができます。

遺留分侵害額請求権は、最短1年で時効消滅します。

②兄弟姉妹に遺留分はない

遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。

すべての相続人に遺留分が認められているわけではありません。

遺留分が認められるのは、配偶者、子ども、親などの直系尊属です。

被相続人に子どもと親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹には、遺留分が認められていません。

兄弟姉妹は、相続人であっても遺留分はありません。

遺留分が認められていないのに、遺留分を請求して来ることがあります。

遺留分が認められていない相続人からの請求は、拒否することができます。

相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡することがあります。

兄弟姉妹の子どもが相続します。

相続人になるはずだった人の子どもが相続することを代襲相続と言います。

代襲相続があった場合、被代襲者の相続分と遺留分を引き継ぎます。

相続人になるはずだった人が兄弟姉妹である場合、遺留分はありません。

兄弟姉妹の子どもが代襲相続人になる場合、引き継ぐべき遺留分はありません。

兄弟姉妹には、遺留分がありません。

兄弟姉妹の子どもにも、遺留分はありません。

③遺留分侵害額の確認が重要

遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分は、現金で請求します。

相続で受け取った財産を請求することはできません。

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額を計算して請求します。

遺留分権利者が計算した遺留分侵害額が適切な金額でないことがあります。

相続財産が金銭だけであれば、金額を争う余地はないでしょう。

相続財産には、いろいろな種類の財産があるのが通常です。

いろいろな種類の財産をいくらと考えるのか評価方法は複数あります。

被相続人が不動産を所有していることがあります。

不動産をいくらと考えるのか評価方法はいくつかあります。

どの評価方法で不動産を評価するかで、不動産の金額は大きく変わります。

遺留分侵害額請求をする人は、不動産の金額が高く評価されると有利です。

支払われる遺留分侵害額が高くなるからです。

遺留分侵害額請求を受ける人は、不動産の金額が低く評価されると有利です。

支払う遺留分侵害額が少なくなるからです。

評価方法がちがうと、相続財産全体の金額が大きく変わります。

当事者による話し合いで合意ができない場合、家庭裁判所の助力を受けることができます。

当事者は、遺留分侵害額請求の調停を申し立てることができます。

不動産は、重要な財産であることが多いものです。

評価方法で金額が大きく変わるから、適切に評価されているのか確認することが重要です。

④支払方法の合意

遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を現金で支払います。

一括で支払うのが原則です。

当事者の合意があれば、どのような支払方法にするのか決めることができます。

相続で受け取った財産の大部分が不動産であることは少なくありません。

遺留分侵害額請求を受けた人が現金を準備できないでしょう。

遺留分侵害額請求を受けた場合、不動産を売却しなければならなくなります。

不動産を売却するためには、ある程度長期間かかります。

すぐに払ってもらいたいけど、売却期間を譲歩できるのであれば話し合いがまとまりやすくなります。

いつまでに支払うのか話し合いによる合意が大切です。

相続財産の大部分が事業用財産であることがあります。

事業用財産を売却してしまったら、事業を続けることができなくなります。

当事者が譲歩できるのであれば、分割払いの合意をするといいでしょう。

当事者の話し合いによる合意なので、話し合いがまとまらないおそれがあります。

⑤期限の許与を求める裁判

遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を直ちに支払わなければなりません。

現金で一括払いが原則です。

財産の状況から現金で一括払いが難しいことがあります。

当事者で話し合いができれば、支払方法の合意をすることができます。

支払方法の合意ができるかどうかは、相手方次第です。

かたくなに直ちに現金一括払いを主張することが考えられます。

支払方法の合意ができない場合、裁判所に期限の許与を求める方法があります。

裁判所に期限の許与を求める場合、訴訟を提起します。

遺留分侵害額を請求する裁判中で、反訴を提起することもできます。

裁判所は遺留分侵害額の全部に期限を許与することができるし遺留分侵害額の一部だけ期限を許与することができます。

3遺留分侵害額請求を無視すると裁判手続

①調停や訴訟を提起される

遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。

遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

相続した財産を渡したくないという気持ちがあるかもしれません。

遺留分侵害額請求を受けた場合、無視することはおすすめできません。

遺留分侵害額請求は、遺留分権利者の正当な権利だからです。

気に入らない相続人だから渡したくないと言えるものではありません。

遺留分侵害額請求を受けたのに放置した場合、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。

調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。

当事者だけで話し合いをすると、感情的になって話し合いができないことがあります。

家庭裁判所の調停委員が間に入ると、冷静になって話し合いができるかもしれません。

調停では、当事者の話し合いによる合意を目指します。

家庭裁判所が合意を強制することはできません。

当事者が一方的な主張をした場合、調停では解決できません。

調停は、当事者の話し合いで解決を目指す手続だからです。

調停では、強制的に解決方法を決めてしまうことはありません。

家庭裁判所のアドバイスを受けても話し合いがつかない場合、調停は成立しません。

調停が成立しなかった場合、遺留分を請求する訴訟を提起することができます。

話し合いに応じてもらえない場合、調停を申し立てずに直ちに訴訟を提起することができます。

訴訟が提起された場合、裁判所から訴状が届きます。

訴状が届いたら、絶対に放置してはなりません。

訴訟が提起されたのに放置した場合、欠席裁判になります。

欠席裁判では、相手方の言い分を認めた扱いがされます。

たとえ不当に過大な請求であっても、適切に主張立証をする必要があります。

適切に主張立証をしない場合、裁判所は相手方の主張どおりの決定をします。

遺留分侵害額請求を無視すると、裁判手続になります。

②財産差押など強制執行ができる

調停は、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。

調停で当事者の話し合いによる合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。

調停における合意内容を取りまとめた文書を調停調書と言います。

当事者の話し合いによる合意ができたのだから、当事者が合意内容を実現するでしょう。

当事者が任意で合意内容を実現しない場合、調停調書の内容は強制執行ができます。

銀行預金などの財産に差押をして、支払を受けることができます。

調停で合意ができなかった場合、訴訟を提起することができます。

訴訟を提起したものの、和解することがあります。

和解で当事者の話し合いによる合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。

和解における合意内容を取りまとめた文書を和解調書と言います。

当事者が任意で合意内容を実現しない場合、和解調書の内容は強制執行ができます。

和解による合意ができなかった場合、裁判所が判決を出します。

当事者が任意で判決内容を実現しない場合、判決の内容は強制執行ができます。

4公正証書遺言を作成しても遺留分が優先

①遺言書で遺留分は奪えない

さまざまな家族の事情から特定の相続人に相続させたくないことがあります。

相続人が配偶者、子ども、親などの直系尊属である場合、遺留分が認められます。

遺言書で自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。

遺留分を侵害するような遺言書であっても、有効な遺言書です。

有効な遺言書であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利だからです。

遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺言書を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。

②相続人廃除はハードルが高い

相続人廃除は、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。

相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。

相続人廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。

被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。

相続人廃除は、相続人の最低限の権利を奪う重大な決定だからです。

相続人廃除が認められるのは、次の理由です。

(1)相続人が重大な侮辱をした

(2)暴力を振るうなどの虐待をした

(3)重大な非行があった

親の言いなりにならなかったなどの軽い理由では認められません。

家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、廃除の根拠になる客観的証拠が不可欠です。

遺言書で廃除する場合、被相続人は死亡しています。

家庭裁判所で証言することはできません。

廃除の客観的証拠を準備しておく必要があります。

相続人が相続人廃除された場合、代襲相続ができます。

相続人廃除は、非常にハードルが高い手続です。

③付言事項は法的効力がない

さまざまな家族の事情から特定の相続人に相続させたくないことがあります。

相続人が配偶者、子ども、親などの直系尊属である場合、遺留分が認められます。

自称専門家は、遺言書の付言事項を書けばいいと言っています。

付言事項に遺留分侵害額請求をしないようにと書けばトラブルにならないといったアドバイスです。

遺言書の付言事項は、単なるお願いです。

法的法力はありません。

付言事項に書いてあっても、遺留分侵害額請求をすることができます。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

自筆証書遺言の多くは、専門家のサポートなしで一人で作ります。

遺言書の厳格な書き方ルールが守られていないと、無効になってしまいます。

形式的な書き方ルールは守られていても、内容があいまいで遺言書を実現できないことも多々あります。

相続人の遺留分に配慮されておらず、トラブルに発展することあります。

せっかく遺言書を作るのなら確実な公正証書遺言をおすすめします。

司法書士などの専門家は、遺言書文案作成から公正証書遺言作成、遺言執行までトータルでサポートします。

司法書士からトータルでサポートを受けると、確実な遺言を作成できるから安心できます。

相続人は、相続発生後の面倒な相続手続から解放されます。

遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言書で延命治療は拒否できない

2024-06-21

1遺言書で延命治療は拒否できない

①遺言者の死亡時に遺言書の効力発生

病気やけがなどで回復の見込みがなくなった後も、治療が続けられることがあります。

延命治療とは、生命維持を目的に行われる治療です。

具体的には、人工呼吸器による呼吸管理や点滴や胃ろうなどによる栄養管理などの医療行為を指します。

延命治療には、苦痛を伴うことがあります。

意識を失った後も延命治療が続けられることで、自分らしさが失われると感じるかもしれません。

自分らしさを維持するため、延命治療を拒否したいというニーズがあります。

延命治療を拒否するために遺言書を作成するのは、意味がありません。

遺言書で、延命治療を拒否できません。

遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。

遺言者が生きている間は、効力がありません。

延命治療は、生きている間に行われるものです。

遺言書は遺言者が死亡した後に効力が発生するから、延命治療を拒否することができません。

②遺言事項は法律で決められている

遺言書は、厳格な書き方ルールがあります。

遺言書に書くことで法律上意味がある事項は、法律で決められています。

遺言書に書くことで法律上意味がある事項を遺言事項と言います。

遺言事項は、次のとおりです。

(1)財産に関すること

(2)身分に関すること

(3)遺言執行に関すること

(4)それ以外のこと

延命治療は拒否することは、遺言事項にありません。

遺言書には、法律上意味がないことを書くことができます。

例えば、家族への感謝の気持ちや家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどの気持ちです。

家族仲良く幸せに暮らして欲しい気持ちに、法的な拘束力はもちろんありません。

延命治療は拒否することを書いても、法的効力はありません。

③遺言書は死亡後に開封される

遺言書は、プライベートな内容が書かれています。

遺言者本人が積極的に家族に見せることは、あまりありません。

家族にとっても、遠慮して見ないことが多いでしょう。

封筒に入った自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で開封してもらいます。

法務局保管の自筆証書遺言は、相続発生後に遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書の発行請求をすることができます。

公正証書遺言は、相続発生後に相続人が謄本請求をすることができます。

遺言者の生前は、家族が遺言書の内容を知らないことが大部分でしょう。

遺言書に延命治療を拒否すると書いても、生前に家族は気づきません。

家族から延命治療を拒否する希望を伝えてもらうことができません。

2尊厳死宣言公正証書で延命治療拒否を表示する

①尊厳死と安楽死はちがう

延命治療を拒否することを、安楽死や尊厳死と表現することがあります。

安楽死と尊厳死には、さまざまな見解があります。

大きな苦痛を伴いながら過剰な延命治療を受け続けることは、自分らしくないとも考えられます。

尊厳死は、過剰な延命治療を行わずに尊厳を保持しつつ自然な死を迎えるものです。

尊厳死は、死に至るまでの方法と言えます。

尊厳死を直接認める法律はありません。

日本医師会や学会などは、尊厳死を認める意見です。

安楽死は、激しい苦痛から解放されるために薬剤などを使って積極的に死を迎えるものです。

安楽死は、死を選択することと言えます。

尊厳死では、本人の意思と緩和ケアによる生命の質の確保が前提になります。

②延命治療の拒否は意思表示が重要

尊厳死では、本人の意思が重視されます。

多くの場合、延命治療を受けるか受けないか判断する場面において本人が意志表示をすることはできません。

意識がもうろうとしていたり話ができなかったりするためです。

延命治療の拒否を希望する場合、あらかじめ医師や家族に意思を伝えておく必要があります。

終末期における治療に関してする意思表示を一般的にリビングウィルと言います。

医師や家族が本人の希望を知らなかった場合、延命治療を選択するでしょう。

③公正証書は信用がある

公正証書は、公証人が作成する公文書です。

公証人は、法律の専門家です。

公正証書は公証人が関与して作られるから、高い信用力があります。

公証人の前で延命治療を拒否することを宣言し、公正証書にすることができます。

延命治療の拒否は、医師にとっても悩ましい問題です。

延命治療を行わないと、死期を早めることになるでしょう。

延命治療を行わない判断や延命治療を中止する決定について、家族が不満に思う可能性があります。

家族が本人の希望を知らなかった場合、医師に強く抗議するでしょう。

大きなトラブルに発展することをおそれて、延命治療を行うことになるでしょう。

公正証書を作成する場合、公証人が本人確認と本人の意思確認をします。

公正証書を作成した後は、公正証書原本は公証役場で厳重保管されます。

本人が尊厳死を希望する意思があることを公正証書で示すことができます。

公正証書には、高い信用があります。

④治療を続けるか医師が判断

現在の日本では、尊厳死は法制化されていません。

延命治療を拒否する意思表示をしても、治療をする判断は医師に委ねられています。

一部の医師が回復の見込みがなくなったと言っても、他の医師は回復の見込みがあると判断するかもしれません。

同じ治療をしても、救命治療であるか延命治療であるか区別することはできないでしょう。

尊厳死宣言公正証書を見せて意思表示をした場合、医師は本人の強い意志があると判断するでしょう。

日本医師会や学会などは、尊厳死を容認しています。

本人の強い意思を尊重する判断をしやすくなるでしょう。

日本尊厳死協会のアンケート結果によると、尊厳死宣言を示したことによる尊厳死の認容率は9割を超えています。

尊厳死宣言公正証書に法律上の効力はなくても、医師や家族に意思表示をする意味があると言えます。

3尊厳死宣言公正証書を作る方法

①尊厳死宣言公正証書の作成の流れ

尊厳死宣言公正証書の作成の流れは、次のとおりです。

(1)尊厳死宣言公正証書の原案作成

(2)公証役場に提出して打合せ

(3)公証人の面談予約

(4)尊厳死宣言公正証書の作成

(5)尊厳死宣言公正証書の正本と謄本の受領

公証役場の混雑状況によりますが、原案作成から公正証書作成まで1か月程度かかります。

②尊厳死宣言公正証書の必要書類

尊厳死宣言公正証書を作成する場合、次の書類のうちいずれかが必要になります。

(1)印鑑登録証明書と実印

(2)運転免許証と認印

(3)パスポートと認印

(4)マイナンバーカードと認印

(5)その他の顔写真入り公的証明書と認印

③公証役場に手数料がかかる

尊厳死宣言公正証書を作成する場合、公証役場に手数料を支払う必要があります。

手数料は、作成手数料と謄本代で15000円程度です。

公証役場に出向くことができない場合、公証人に出張してもらうことができます。

出張してもらうときは、10000円程度加算されます。

④尊厳死宣言公正証書の文例

4尊厳死宣言公正証書と公正証書遺言の同時作成がおすすめ

尊厳死宣言は、終末期の医療に対する意思決定です。

自分自身の生き方を考えているでしょう。

自分の財産は、生きている間は自分で自由に処分することができます。

自分が死亡した後、だれに引き継がせるか自由に決めることができます。

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

尊厳死宣言公正証書と公正証書遺言は、どちらも公証人の関与で作成します。

尊厳死宣言公正証書を作成するのなら、公正証書遺言を一緒に作成するといいでしょう。

公証役場と打合せをするのも公証役場に出向くのも、まとめて済ませることができるからです。

尊厳死宣言公正証書と公正証書遺言の同時作成がおすすめです。

5尊厳死宣言を司法書士に依頼するメリット

生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策をする人はあまり多くありません。

争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。

尊厳死宣言は、人間としての尊厳を維持したいという希望を文書にしたものです。

家族は元気だったときの姿を知っているから、ベッドに横たわるだけの姿を見ると動揺します。

回復の見込みのない状態だと分かっていても、判断ができません。

大きな苦痛を伴うことを知っていても、どうするかを判断したくない気持ちになるでしょう。

何も判断したくない、判断を先延ばししたいという気持ちから、延命治療が続けられます。

延命治療が続けられれば、苦痛も続きます。

延命治療が続く間、本人も苦痛が続き、見ている家族も苦痛が続くのです。

家族は、後々になっても、本人を苦しめてしまったのではないかと後悔するのです。

尊厳死宣言は、自己決定権を尊重するものです。

自分がどのような治療や措置を受けたいのか、どのような治療や措置を受けたくないのか、どのような最期を迎えたいのか意思を示すものです。

家族は、本人の意思をかなえてあげることができると救われます。

自分自身のためにも、大切な家族のためにも、意思を示してあげましょう。

大切な家族に面倒をかけないために尊厳死宣言書を作成したい方は、すぐに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続した借金の時効援用

2024-06-19

1借金と連帯保証人の地位は相続される

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②債務者が死亡したら借金は相続される

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が引き継ぎます。

被相続人のものには、さまざまなものがあるでしょう。

相続財産というと、プラスの財産だけ想像しがちです。

相続財産には、マイナスの財産が含まれます。

被相続人が借金をしたまま、死亡することがあります。

被相続人の借金は、相続人全員が相続します。

債務者が死亡しても、借金はなくならないからです。

債務者が死亡したら、債務者の相続人全員が借金を相続します。

③連帯保証人が死亡したら保証債務は相続される

被相続人が第三者の借金について、連帯保証人になっていることがあります。

連帯保証人とは、債務者が借金を返せないときに肩代わりをする人です。

連帯保証人には、肩代わりの義務があります。

保証債務とは、連帯保証人が負う肩代わりの義務です。

保証債務は、連帯保証人の相続人全員が相続します。

連帯保証人が死亡しても、肩代わりの義務はなくならないからです。

連帯保証人が死亡したら、連帯保証人の相続人全員が借金を相続します。

2相続した借金の時効援用

①消滅時効で権利行使ができなくなる

消滅時効とは、長期間権利行使をしない場合に権利が行使できなくなる制度です。

債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。

債務者の事情を察して、借金を請求せずに長期間経過することがあります。

借金を請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。

②消滅時効の利益を受けるため時効援用通知

長期間経過しても、自動的に借金がなくなるわけではありません。

消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。

借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあります。

お金を借りたのだからきちんとお金を返すべきだと考えている債務者に対して、消滅時効を押し付けるべきではありません。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。

時効の利益を受ける意思表示を時効の援用と言います。

時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。

③消滅時効援用は各相続人が判断

被相続人の借金は、相続人全員が相続します。

債権者は、各相続人に対して法定相続分で借金を請求することができます。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができます。

借金を払わなくてよくなることを不道徳と思う相続人に対して、消滅時効を押し付けるべきではないからです。

時効を援用する場合、時効援用を通知します。

一部の相続人だけが時効援用通知をした場合、通知した相続人だけ効果があります。

相続人全員が時効援用を希望する場合、相続人全員が連名で時効援用を通知します。

家族のさまざまな事情から、相続人が疎遠になっていることがあります。

相続人全員に連絡が取れないことがあるでしょう。

相続人全員で時効援用通知をする義務はありません。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができるからです。

3連帯保証人が借金の時効援用

①消滅時効で保証債務を免れる

連帯保証人は、債務者が借金を返せないときに肩代わりをする人です。

債権者は、借金を肩代わりして欲しいと請求する権利があります。

債務者の事情を察して、借金の肩代わりを請求せずに長期間経過することがあります。

借金の肩代わりを請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。

②消滅時効の利益を受けるため時効援用通知

消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。

借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなります。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。

債務者の判断とは別に、連帯保証人は独自で判断することができます。

連帯保証人は、主債務と連帯保証債務の消滅時効を援用することができます。

主債務の消滅時効を援用しても連帯保証債務の消滅時効を援用しても、肩代わりの義務はなくなります。

借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなるからです。

時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。

③消滅時効援用は各相続人が判断

被相続人の肩代わりの義務は、相続人全員が相続します。

債権者は、各相続人に対して法定相続分で肩代わりを請求することができます。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができます。

肩代わりをしなくてよくなることを不道徳と思う相続人に対して、消滅時効を押し付けるべきではないからです。

時効を援用する場合、時効援用を通知します。

一部の相続人だけが時効援用通知をした場合、通知した相続人だけ効果があります。

消滅時効援用は、各相続人が判断することができます。

4時効期間が経過しても請求してくる

①時効援用するまで請求してくる

債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。

時効期間が経過しても、債権者には借金を払って欲しいと請求する権利があります。

借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあるからです。

債権者から借金を払って欲しいと請求されたら、借金を払ってくれるかもしれません。

借金を払ってくれるかもしれないと考えるから、消滅時効が完成していることを知っていても請求してきます。

被相続人の借金は、相続人全員が相続します。

被相続人の取引状況について、相続人はよく分からないことが多いでしょう。

債権者から借金を払って欲しいと請求されたら、相続人が払ってくれることが多いでしょう。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。

時効援用するまで、債権者は借金を請求してきます。

②債務承認で時効が更新される

債権者から被相続人の借金を返して欲しいと言われたら、びっくりするでしょう。

被相続人の借金が多額である場合、返済は待って欲しいと言ってしまうかもしれません。

債権者から一括返済が難しいなら分割返済でもいいと言われたら、承諾するかもしれません。

返済は待って欲しいと言った場合、債務を承認したと言えます。

借金の存在を前提にして、返済の猶予を申し出ているからです。

分割返済を承諾した場合、債務を承認したと言えます。

借金の存在を前提にして、分割返済を承諾しているからです。

債務を承認した場合、時効は更新されます。

時効が更新された場合、借金は消滅しません。

③時効期間経過後に主債務者が債務承認

債務を承認した場合、時効は更新されます。

時効期間経過後に、主債務者が債務承認をすることがあります。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、主債務者は判断することができるからです。

債務承認をした主債務者は、借金を払わなければなりません。

債務者の判断とは別に、連帯保証人は独自で判断することができます。

主債務者が債務承認をしても、連帯保証人は消滅時効を援用することができます。

消滅時効を援用した連帯保証人は、借金を肩代わりする義務がなくなります。

④時効期間経過後に連帯保証人が債務承認

時効期間経過後に、連帯保証人が債務承認をすることがあります。

連帯保証人が債務承認をした場合、承認したのは肩代わりの義務です。

連帯保証人には、もともと肩代わりに義務しかないからです。

連帯保証人が債務承認をしても、主債務者は消滅時効を援用することができます。

主債務者には、借金を返す義務があります。

連帯保証人が債務承認をしても、借金を返す義務には影響がないからです。

主債務者は消滅時効を援用した場合、借金がなくなります。

借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなります。

肩代わりの義務を承認しても、借金がなくなれば自動で肩代わりの義務はなくなります。

借金がなくなったのに、肩代わりの義務だけ残ることはありません。

5時効援用で相続放棄が無効になる

①相続放棄をすると一切相続できない

被相続人が借金をしたまま死亡した場合、相続人は相続放棄を検討するでしょう。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。

借金だけでなく、プラスの財産も相続することはできなくなります。

相続放棄をすると、一切相続できません。

②相続放棄や単純承認の撤回はできない

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄を希望する申立てをします。

相続放棄をしたら、相続放棄を撤回することはできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認を撤回することはできません。

相続放棄や単純承認の撤回を認めると、相続手続が混乱するからです。

③相続財産を処分すると単純承認

単純承認をしたら、相続放棄をすることはできません。

相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続がされることがあります。

家庭裁判所は事情を知らないから、相続放棄が認めてしまうでしょう。

事情を知らない家庭裁判所が相続放棄を認めても、無効です。

単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。

相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。

単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。

引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。

銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。

相続財産を処分する場合、単純承認になります。

④時効援用は単純承認になる

被相続人の借金すべてが時効完成していた場合、消滅時効を援用するといいでしょう。

消滅時効を援用した場合、借金を引き継ぐことなくプラスの財産を引き継ぐことができます。

被相続人の借金について消滅時効を援用することは、財産を処分することです。

相続財産を処分した場合、相続を単純承認したと判断されます。

単純承認をしたのに、相続放棄が認められても無効です。

消滅時効は、更新されることがあります。

消滅時効が更新された場合、あらためて時効が進行します。

被相続人が複数の借金をしていることがあります。

一部の借金が消滅時効を援用できたとしても、他の借金の消滅時効は完成していないことがあります。

被相続人のマイナスの財産の全容が明らかでない状態で、消滅時効を援用するのは危険です。

消滅時効を援用すると、相続を単純承認したと判断されるからです。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

通常の相続放棄と同様に戸籍謄本や住民票が必要になります。

仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできます。

書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。

やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍謄本や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

自筆証書遺言書の検認期日に欠席

2024-06-14

1遺言書の検認とは

自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は家庭裁判所に届け出る必要があります。

この届出のことを検認の申立てといいます。

遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態を確認してもらうことです。

遺言書が封筒に入っていて、封がされていることがあります。

封印がしてある遺言書は開封したくなるかもしれませんが、開封してはいけません。

裁判所で、開封してもらいます。

勝手に開封すると、5万円以下のペナルティーになるおそれがあります。

検認は、遺言書の状態や形、書き直しや訂正箇所、日付や署名がどうなっているか裁判所が確認する手続です。

裁判所で遺言書の状態が記録されるから、偽造や変造をすると分かってしまいます。

検認手続は、遺言書の偽造や変造を予防するための手続です。

勝手に開封すると、他の相続人から変造したのではないかなどと言いがかりをつけられるおそれがあります。

トラブルに巻き込まれないようにするため、遺言書の開封は家庭裁判所におまかせしましょう。

うっかり開封してしまっても、遺言書が無効になることはありません。

開封してしまった後、ごまかそうとして、糊付けをしたり余計な小細工をしてはいけません。

そのまま、裁判所に提出しましょう。

ごまかしが明るみに出ると、それこそ他の相続人は開封した人に強い不信感を持ちます。

大きなトラブルに発展してしまうおそれがあります。

正直に事情を説明して、理解を得るようにした方がいいでしょう。

封がしていない遺言書も封筒に入っていない遺言書も、検認は必要です。

相続人全員で検認はしなくていいなどと合意しても、意味がない合意です。

2検認が必要な遺言書とは

①遺言書の種類

遺言書の種類は、民法という法律で決められています。

大きく分けて、普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。

普通方式の遺言は、次の3つです。

(1)自筆証書遺言

(2)公正証書遺言

(3)秘密証書遺言

特別方式の遺言は、次の4つです。

(1)死亡の危急に迫った者の遺言

(2)伝染病隔離者の遺言

(3)在船者の遺言

(4)船舶遭難者の遺言

特別方式の遺言は、ごく稀な遺言です。

生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言だからです。

多くの方にとって遺言というと、普通方式の遺言です。

なかでも①自筆証書遺言②公正証書遺言のいずれかを作成される方がほとんどです。

②自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作った遺言書のことです。

専門家の手を借りることなく手軽に作ることができます。

世の中の大半の遺言書は、自筆証書遺言です。

封筒に入れなければならないといった決まりもありません。

筆記用具や紙に、制約はありません。

書き換えられるおそれが大きいのでおすすめはできませんが、鉛筆で書いても有効です。

ひとりで作ることができるので、作るだけであれば、費用はかかりません。

③法務局保管の自筆証書遺言は検認手続不要

自分で手書きして作った遺言書は、自分で保管するのが原則です。

希望すれば、法務局で預かっておいてもらうことができます。

これが自筆証書遺言保管制度です。

自筆証書遺言は、だれかの手を借りることなく手軽に作ることができます。

遺言書は、大切なものです。

通常は、簡単に人目にさらすようなことはしません。

簡単に人目にさらすことはしませんから、本人が紛失することがあります。

遺言書の保管場所を家族が共有していない場合、遺言書を見つけられなくなるリスクがあります。

自筆証書遺言を家族などが保管する場合、保管している人が廃棄・隠匿・改ざんするリスクがあります。

法務局が保管しているから、廃棄・隠匿・改ざんの心配がなくなります。

法務局は、預かった自筆証書遺言書を厳重に保管しています。

相続人が遺言書原本を受け取ることはできません。

遺言者が預けた遺言書の内容は、遺言書情報証明書で確認することができます。

遺言書情報証明書は、法務局が預かっている自筆証書遺言の内容を証明した書類です。

相続人は遺言書原本を手にすることがないから、偽造や変造はできません。

公正証書遺言は、わざわざ家庭裁判所で検認手続をしてもらう必要がありません。

④公正証書遺言は検認手続不要

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。

遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。

原則として、公証役場に出向く必要があります。

公正証書遺言の原本は、公証役場で厳重に保管されます。

公正証書遺言を作成した場合、渡されるのは正本と謄本です。

遺言書の正本や謄本を偽造しても変造しても、意味はありません。

公正証書遺言の原本が公証役場で厳重に保管されているからです。

相続人などが手にする書面は、原本ではなく正本や謄本です。

公正証書遺言書原本は、公証役場で厳重に保管されているから偽造や変造はできません。

公正証書遺言は、わざわざ家庭裁判所で検認手続をしてもらう必要がありません。

⑤法務局保管でない自筆証書遺言書は検認が必要

検認は、遺言書の状態や形を裁判所が確認して偽造や変造を防止する手続です。

公正証書遺言原本は、公証役場に厳重に保管されています。

法務局保管の自筆証書遺言書は、法務局で厳重に保管されています。

公正証書遺言も法務局保管の自筆証書遺言書も厳重に保管されているから、偽造や変造はできません。

家庭裁判所が検認手続をして、偽造や変造を防止する必要がありません。

法務局保管でない自筆証書遺言書は、検認手続が必要になります。

3検認しても検認しなくても遺言書の効力は変わらない

①家庭裁判所に自筆証書遺言書検認の申立て

自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は、裁判所で検認をしてもらう必要があります。

家庭裁判所は申立てを受け取った後、検認期日を決定します。

相続人全員に対して遺言書が見つかったので検認をしますよというお知らせを出します。

②検認は遺言書の有効無効を判断する手続ではない

検認は、遺言書の状態や形、書き直しや訂正箇所、日付や署名がどうなっているか裁判所が確認する手続です。

封印がしてある遺言書は、検認期日で開封してもらいます。

遺言書の状態や形を確認するだけで、遺言書の有効無効を決める手続ではありません。

検認手続をしても、無効の遺言書が有効になることはありません。

無効の遺言書は、検認手続をしても無効の遺言書です。

③検認をしていないと相続手続ができない

検認手続は、遺言書の有効無効を決める手続ではありません。

遺言書の有効無効と検認手続は、無関係です。

相続手続をする場合、検認が必要な遺言書は検認済証明書が必要になります。

検認済証明書がない場合、相続手続先が相続手続を受け付けてくれません。

4検認期日に欠席してもいい

①自筆証書遺言書検認の申立人は必ず出席

遺言書検認の申立てを受け取った場合、家庭裁判所は検認しますよと相続人全員を呼び出します。

遺言書検認の申立てをする場合、遺言書原本は提出しません。

家庭裁判所が呼出した日に持っていって、検認をしてもらいます。

検認期日は、申立人が遺言書原本を持っていく日です。

申立人は必ず出席して、遺言書原本を持っていく必要があります。

申立人は欠席するわけにいかないから、家庭裁判所がスケジュール調整をしてくれます。

②検認期日に欠席しても不利益はない

申立人以外の人は、遺言書の検認の立会いをするだけです。

仕事や家事で忙しい場合、欠席しても構いません。

検認期日に欠席した場合に、ペナルティーなどの不利益を受けことはありません。

検認しても検認しなくても、遺言書の効力は変わりません。

検認期日に出席しても欠席しても、相続人の権利に影響はありません。

検認期日に出席しても欠席しても、受け取る財産に変わりはありません。

検認期日に出席しても欠席しても、遺言書の有効無効を主張することができます。

5検認の申立てを司法書士に依頼するメリット

自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は家庭裁判所に届け出る必要があります。

遺言書を隠したり捨てたりすると、相続人になることができません。

このような疑いをかけられてトラブルになるのを避けるためにも、すみやかに家庭裁判所に検認の申立てをしましょう。

申立てのためには、たくさんの書類が必要になります。

仕事や家事で忙しい人や高齢、療養中などで手続が難しい人は、手続を丸ごとお任せすることができます。

家族にお世話が必要な人がいて、お側を離れられない人からのご相談もお受けしております。

裁判所に提出する書類を作成できるのは、弁護士と司法書士のみです。

弁護士と司法書士でない人は作成代行はできませんから、充分注意しましょう。

遺言書の検認を司法書士に依頼した場合、遺言書検認申立書の作成だけでなく、家庭裁判所への提出もおまかせいただけます。

遺言書を預かっている方や見つけた方はトラブルになる前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

認知症になったら自宅を売却して施設に入りたい

2024-06-12

1認知症になると自宅を売却できない

①自宅を売却するためには判断能力が必要

高齢になると、身のまわりのことが不自由になることが多くなります。

身のまわりのことが思うようにならなくなると、家族がかかり切りでお世話をすることになります。

子どもらの世話になるより、自宅を売って施設でお世話をしてもらいたいことがあります。

身体が不自由になったから施設に入りたい場合、判断能力は充分にあるでしょう。

自宅を売却する場合、自宅の持ち主の判断能力の有無が重要になります。

物事のメリットデメリットを充分に判断する能力がない場合、売買契約などの法律行為はできません。

自宅を売却するためには、自宅の持ち主の判断能力が必要です。

②認知症になると判断ができなくなる

認知症になると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

記憶があいまいになる人もいます。

物事の良しあしを適切に判断できない場合、売買契約などの法律行為はできません。

認知症になると、自宅の持ち主であっても売却ができなくなります。

自宅を売却するためには、判断能力が必要だからです。

③認知症の人が売買契約をしても無効になる

認知症の人は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

重度の認知症になると、自宅を売却することの意味も分からないでしょう。

意味が分からないまま、売買契約書を作成しても無効です。

自宅を売却するためには、判断能力が必要だからです。

不動産取引には、たくさんの人が関与します。

売買契約が無効になると、たくさんの人に迷惑がかかります。

売買契約が無効になると、損害賠償請求や訴訟に発展するでしょう。

不動産の買主は、不動産を使いたいから購入したはずです。

売買契約が無効になると、不動産が使えなくなります。

不動産の購入のため、金融機関は融資を実行したでしょう。

売買契約が無効になると、融資も不要になります。

不動産の売買には、司法書士が登記を担当するでしょう。

売買契約が無効になると、司法書士は懲戒処分を受けます。

不動産の売買には、不動産業者が仲介をするでしょう。

売買契約が無効になると、不動産業者は行政処分を受けます。

不動産の持ち主が判断能力がないのは、非常に重要な問題です。

不動産取引に関与する人は、不動産の持ち主の判断能力の有無について非常に慎重に判断します。

物事のメリットデメリットを充分に判断できないまま、売買契約をしても無効になるからです。

売買契約書を作成して押印さえすればいいといったものではありません。

認知症の人が売買契約をしても、無効になります。

④施設入所のためでも売却ができない

施設に入所するときには、まとまった金額が必要になります。

自宅を売却する理由が、売却代金を入所費用に充てるためというのは割とよくあります。

本人のためになるから、売却できると思うかもしれません。

物事のメリットデメリットを充分に判断できないまま、売買契約をしても無効になります。

売却しないと施設に入れなくなるなども、理由になりません。

物事のメリットデメリットを充分に判断できないから、自宅を売却できなくなるのです。

⑤子ども等が代わりに判断できない

自宅の持ち主が認知症になった場合、自宅の持ち主であっても売却することができなくなります。

認知症になると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなるからです。

自宅の持ち主が判断できなければ、子どもなどの家族が代わりに判断すればいいと思うかもしれません。

自宅の持ち主の代わりに、家族が代わりに判断することはできません。

赤ちゃんなどが契約などの法律行為をする必要があることがあります。

赤ちゃんは、自分で物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

赤ちゃんが契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに判断します。

親などの親権者が代わりに判断することができるのは、赤ちゃんが未成年者だからです。

認知症の人は、未成年者ではないでしょう。

未成年ではないから、子ども等が代わりに判断できません。

⑥空き家になっても売却できない

自宅を売却しないまま施設に入った場合、自宅が空き家になることがあります。

重度の認知症になった場合、自宅に帰る見込みはほとんどないでしょう。

だれも住むことがなくなった家であっても、管理はしなければなりません。

自宅に帰る見込みがなくなっても、固定資産税などの費用負担は続きます。

管理の手間と費用がかかるから、自宅を売却したいと思うかもしれません。

自宅を売却するためには、自宅の持ち主の判断能力が必要です。

空き家になっても、自宅を売却することはできません。

⑦銀行の預貯金も凍結される

認知症になると、自宅を売却することができなくなります。

凍結される資産は、自宅などの不動産だけではありません。

銀行の預貯金も、凍結されます。

認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。

口座の持ち主が認知症であることを知ると、銀行が口座を凍結します。

口座の凍結とは、引出や解約、引落などの口座取引をできなくすることです。

口座の預貯金を管理することは、できないでしょう。

不必要な取引をしてしまったり不利益になる契約をしてしまうかもしれません。

認知症であることに付け込んでくる悪質業者の被害を受けるおそれがあります。

自分自身がお金を引き出した事実を忘れて、混乱することも考えられます。

本人をトラブルから守るため、銀行は口座を凍結します。

認知症になると、あらゆる資産が凍結されます。

2認知症の人の代わりに成年後見人

①成年後見人が代わりに判断する

認知症になると、自分で物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

成年後見人は、自分で物事の良しあしを適切に判断することができなくなった人をサポートする人です。

契約などの法律行為をする場合、認知症の人に代わってメリットデメリットを判断します。

成年後見人は、認知症の人に代わって判断してくれる人です。

②成年後見人は家庭裁判所が選任する

認知症の人にサポートが必要になった場合、家庭裁判所に申立てをします。

家庭裁判所は、サポートの必要の有無を判断します。

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

申立てをするときに、成年後見人の候補者を立てることができます。

候補者を選任することも候補者以外の人を選任することもあります。

認知症の人の家族が成年後見人に選ばれるのは、20%程度です。

家庭裁判所が家族以外の専門家を選任した場合、不服を述べることはできません。

家族が成年後見人に選ばれなくても、申立てを取り下げることはできません。

いったん申立てを出したら審判がされる前であっても、取下げには家庭裁判所の許可が必要です。

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

③成年後見人は家族の希望をかなえる人ではない

成年後見人は、認知症の人をサポートする人です。

認知症の人に利益のために、働きます。

自宅の売却が認知症の人のために必要ないと判断されたら、売却をしてもらえません。

認知症の人の利益にならないことはできません。

たとえ家族が望んでも、客観的に認知症の人の利益にならないと判断されることはできません。

成年後見人は、家族の希望をかなえる人ではないからです。

預貯金が充分にあるのに、家族が自宅を売却を希望することがあります。

認知症の人が帰るべき自宅を失うことは、認知症の人にとって大きな不利益です。

管理の手間や費用がかかるとしても、圧倒的大きな不利益があると言えます。

成年後見人も家庭裁判所も、自宅の売却は認めてくれないでしょう。

家族の希望をかなえてくれないのは、成年後見人が家族以外の専門家だからではありません。

家族が成年後見人であっても、家族の希望をかなえることできないでしょう。

成年後見人は、家庭裁判所の監督を受けます。

認知症の人に不利益な行為を見逃してはくれません。

認知症の人に不利益な行為を見つけたら、厳重注意になるでしょう。

重大な不利益の場合、財産管理不適切を理由に解任されるおそれがあります。

成年後見人は、家族の希望をかなえる人ではありません。

④自宅売却後も成年後見は続く

成年後見人は、物事のメリットデメリットを充分に判断できない人をサポートする人です。

成年後見人を選任してもらうきっかけが、自宅の売却であったかもしれません。

自宅の売却が完了した後も、成年後見は続きます。

自宅を売却した後も、認知症の人は物事のメリットデメリットを充分に判断できないからです。

自宅を売却した後も、財産管理ができないからです。

物事のメリットデメリットを充分に判断できるようになるまで、成年後見は続きます。

事実上、認知症の人が死亡するまで成年後見は終了しません。

3認知症になる前にできること

①任意後見契約

後見制度には、2種類あります。

任意後見と法定後見です。

任意後見は、認知症になったときに備えて信頼できる人にサポートを依頼する契約です。

任意後見人は、自分で選ぶことができます。

認知症になる前だけ、契約することができます。

法定後見は、認知症になった後に家庭裁判所にサポートする人を選んでもらう制度です。

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

成年後見人には、家族を選任してもらいたいという希望は少なくありません。

法定後見の場合、家族を選任してもらいたいと希望しても認めれらないケースがほとんどです。

任意後見人は、自分で選ぶことができます。

認知症になる前に、任意後見契約をしておくといいでしょう。

②家族信託

所有者はものを自由に売ったり、自由に管理したりして、ものから利益を受け取ることができます。

だから、所有権は、自由にものを売る権利であるし、自由に管理する権利であるし、ものから利益を受け取る権利であるといえます。

所有権はよく見ると、たくさんの権利の集合体といえます。

たくさんの権利の集合体である所有権から、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持っていることができます。

自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持つ仕組みを家族のための信託といいます。

この仕組みを利用すると、信頼できる家族は自由にものを売ることができるし、自由に管理することができます。

家族信託は、信頼できる家族とする契約です。

認知症になる前に、自宅を信託することができます。

信託された家族は、信託契約に基づいて自宅を売却することができます。

自宅の持ち主が何も対策しないまま認知症になったら、自宅を売却することはできません。

認知症になる前に家族信託を契約したら、認知症になった後も、家族が自宅を売却することができます。

信託された家族は、自分の判断で信託契約の範囲内で売却などの処分ができるからです。

認知症になる前に、自宅や預貯金を信託する信託契約をするといいでしょう。

4認知症対策を司法書士に依頼するメリット

高齢化社会が到来したといわれて、多くの方は長生きになりました。

平均寿命は男性も女性も80歳を超して、認知症になる方が多くなりました。

認知症になると、物事のメリットデメリットが充分に判断できなくなります

本人の財産は、本人しか処分できません。

本人が判断できなくなると、資産が凍結されてしまいます。

本人が介護施設入所するためであっても、家族が不動産を勝手に売却することはできません。

本人の実の子どもであっても、本人の定期預金を解約することはできません。

一部の金融機関では、本人以外の家族がキャッシュカードを使っていることを確認したら、キャッシュカードを回収しています。

本人の意思確認を重視する流れは、他の金融機関にも広がっていくでしょう。

認知症対策は、本人の判断能力がしっかりしているうちしかできません。

いつか認知症対策をしようではなく、今なら元気だから対策しようが正解です。

認知症になると、本人はもとより家族も困ります。

自分のためにも家族のためにも認知症対策を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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