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1相続人不存在のときに相続財産清算人
①相続人がいないと相続財産は国庫帰属
法律で決められた相続人がまったくいないことがあります。
相続人がまったくいないとき、相続財産は国庫に帰属します。
②相続財産清算人が相続財産を清算する
被相続人が借金を抱えたまま、死亡することがあります。
相続人がいれば、相続人に借金の請求をすることができます。
相続人がいなくても相続財産があれば、借金を払ってもらいたいと望むでしょう。
相続財産清算人は、相続財産を清算する人です。
被相続人が受け取るべきだった金銭を受け取り、払うべきだった金銭を支払います。
相続財産を清算して、残った財産を国庫に帰属させます。
③特別縁故者が相続財産を受け取るまでの流れ
手順(1)相続財産清算人選任の申立て
利害関係人は、相続財産清算人選任の申立てをすることができます。
利害関係人とは、次の人です。
・債権者
・受遺者
・特別縁故者
申立先は、被相続人の最期の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続財産清算人は、家庭裁判所が選任します。
通常は、弁護士が選任されます。
手順1つ目は、相続財産清算人選任の申立てです。
手順(2)相続人捜索の公告6か月以上
相続財産清算人を選任したら、家庭裁判所は公告をします。
同時に、相続人捜索の公告をします。
相続人捜索の公告の公告期間は、6か月以上です。
戸籍謄本を見ても、確認できない相続人を確認するためです。
例えば、次の人は戸籍謄本で確認することができません。
・死後認知を受けようとする非嫡出子
・海外在住で養子縁組届が戸籍に反映されていない養子
手順2つ目は、相続人捜索の公告6か月以上です。
手順(3)債権者・受遺者への請求申出の公告2か月以上
相続財産清算人は、債権者・受遺者への請求申出の公告をします。
債権者・受遺者への請求申出の公告の公告期間は、2か月以上です。
知れている債権者には、個別に通知も出します。
公告期間中に申出をしないと、請求は除斥されます。
手順3つ目は、債権者・受遺者への請求申出の公告2か月以上です。
手順(4)相続人不存在が確定
相続人捜索の公告と債権者・受遺者への請求申出の公告は、同時にすることができます。
債権者・受遺者への請求申出の公告は、相続人捜索の公告の期間内に満了する必要があります。
だれからも申出なく両方の公告期間が満了したら、相続人不存在が確定します。
手順4つ目は、相続人不存在が確定です。
手順(5)特別縁故者に対するの財産分与申立て3か月以内
被相続人に特別な縁故があった人は、相続財産の分与を受けることができます。
特別縁故者に認められるか、家庭裁判所が判断します。
分与される財産の種類や金額は、家庭裁判所が判断します。
手順5つ目は、特別縁故者に対するの財産分与申立て3か月以内です。
手順(6)相続財産の清算換価
相続財産清算人が相続財産を清算します。
手順6つ目は、相続財産の清算換価です。
手順(7)相続財産の国庫帰属
清算が完了したら、国庫に帰属します。
手順7つ目は、相続財産の国庫帰属です。
2特別縁故者が知るべき相続財産清算人の役割
役割①相続人捜索の公告と相続人調査
相続財産清算人を選任したら、家庭裁判所は相続人捜索の公告をします。
相続財産清算人も、相続人を調査します。
特別縁故者が知るメリットは、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てのタイミングを逃さない点にあります。
特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間は、たったの3か月です。
いつ相続人捜索の公告が満了するのか、注視する必要があるからです。
役割1つ目は、相続人調査と公告です。
役割②相続財産の保存
相続財産清算人は、相続財産を適切に保存します。
遺産の紛失や隠匿を防ぎ、分与の対象になる財産をきちんと維持します。
特別縁故者が知るメリットは、相続財産の保全状況を把握できる点です。
相続財産清算人が相続財産を適切に管理しているか、監視することができます。
相続財産清算人が財産を過少評価して、不当な処分をすることを防ぐことができます。
役割2つ目は、相続財産の保存です。
役割③相続財産の清算
相続財産清算人は、被相続人の債務を弁済します。
相続財産清算人は、被相続人の債権を回収します。
相続財産を清算するから、純粋なプラスの財産が残るはずです。
相続財産清算人は相続財産目録を作成し、家庭裁判所に提出します。
特別縁故者が知るメリットは、相続財産の全体像が明確になることです。
相続財産清算人が提出する相続財産目録が審判の基礎資料になります。
相続財産目録に基づく証拠資料を提出すると、生活実態との関連性を強めることができます。
相続財産清算人が財産を過少評価をした場合、補足資料を提出することができます。
役割3つ目は、相続財産の清算です。
役割④特別縁故者に対する財産分与の申立てに意見書提出
特別縁故者に対する財産分与の申立てでは、さまざまな証拠資料を家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所は、相続財産清算人の意見を聞いて分与の審判を行います。
相続財産清算人は家庭裁判所に対して、特別縁故者の貢献度や分与の可否を報告します。
特別縁故者が知るメリットは、意見書に対する反論書面や補足資料を提出できることです。
相続財産清算人が提出した意見書は、家庭裁判所で閲覧することができます。
意見書の内容を確認すると、誤解や事実誤認が見つかることがあります。
適切に反論書面や補足資料を提出することが有効です。
相続財産清算人が選任された段階で打ち合わせをしておくと、申立書と意見書の内容が整合性あるものになるでしょう。
家庭裁判所に対して、説得力ある申立ては審判において有利に働きます。
役割4つ目は、特別縁故者に対する財産分与の申立てに意見書提出です。
役割⑤財産の分配
特別縁故者に対する相続財産分与をするか、家庭裁判所が審判で決定します。
特別縁故者にどの財産を分与するのか、いくら分与するのか、家庭裁判所が判断します。
相続財産清算人の意見は家庭裁判所の判断に、大きな影響を与えます。
特別縁故者が知るメリットは、相続財産清算人の判断に影響を与えられる点です。
相続財産清算人に、被相続人と自分の縁故関係や生活状況を正確に伝えることができます。
相続財産清算人に、財産状況や評価内容に要望を出すことができます。
他の申立人との比較において、不利にならないよう補強資料を提出することができます。
相続財産清算人の役割を知ると、戦略的に行動することができます。
役割5つ目は、財産の分配です。
3特別縁故者に認められる条件
①生計を同じくしていた人
例えば、被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
相続人になる配偶者とは、法律上の配偶者のみです。
事実婚・内縁の配偶者は、被相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていたでしょう。
相続人不存在である場合、特別縁故者に認められる可能性があります。
例えば、配偶者に連れ子がいることがあります。
法律上の配偶者は、相続人になることができます。
連れ子は、被相続人の子どもではありません。
被相続人と連れ子が養子縁組をしていない場合、連れ子には親族関係がありません。
被相続人の相続人になることはできません。
連れ子が相続人と一緒に暮らして、生計を同じくしていることがあります。
相続人不存在である場合、特別縁故者に認められる可能性があります。
家庭裁判所は、当事者の主張だけでなく客観的な証拠を重視します。
被相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていた場合、同一の住民票があるでしょう。
事実婚・内縁の配偶者は、住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載してもらえます。
長年同居していたことも、住民票で証明することができます。
長年同居して生計を同じくしている場合、特別な縁故があったと認められやすくなるでしょう。
②被相続人の療養看護につとめた人
療養看護につとめた人とは、被相続人の身の回りの世話を献身的にした人です。
子どもの配偶者は、相続人ではありません。
被相続人のいとこなども、相続人ではありません。
子どもの配偶者やいとこが被相続人の療養看護につとめていることがあります。
親族として助け合いをする以上に献身的に療養看護に努めていた場合、特別縁故者に認められる可能性があります。
例えば、11年間にわたり被相続人を我が子同様に看護養育し病気となってからも療養看護に努めた叔母は、特別縁故者として認められました。
療養看護につとめたことは、次の書類で証明することができます。
(1)医療費や介護費の領収書
(2)療養看護のための交通費の領収書
(3)被相続人と頻繁に交流していたことが分かる手紙、写真、メール、日記
(4)献身的に療養看護につとめていたことが分かる手紙、写真、メール
③その他被相続人と特別な関係にあった人
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
遺言書がなくても、その人に相続財産を受け継がせるのが適当と考えられる特別な関係がある人は特別縁故者と認められる可能性があります。
例えば、被相続人の家族同然に暮らしてきた内弟子がいることがあります。
被相続人がわが子同然に可愛がっていて、事業を引き継がせたいと常々言っていることがあります。
被相続人が後継者にしたいと考えていた人に、相続財産を受け継がせるのに適切と考えられるでしょう。
被相続人と特別な関係にあったと認められた場合、特別縁故者に認められることがあります。
例えば、身内の中で被相続人の信頼を唯一得ており、相談にのったりしていた従兄弟の子は、特別縁故者として認められました。
被相続人と特別な関係にあったことは、次の書類で証明することができます。
(1)被相続人と親密な関係にあったことが分かる手紙、写真、メール、日記
(2)被相続人と頻繁に交流していたことが分かる手紙、写真、メール、日記
(3)被相続人が相続財産を引き継がせる意思があったことが分かる書類
④相続人が存在すると認められない
特別縁故者が認められるのは、相続人が不存在の場合のみです。
相続人がいれば、相続人が相続するからです。
家族のさまざまな事情から、被相続人と疎遠になっている家族がいることがあります。
家族と音信不通になっていたり、家族が行方不明になっていることがあります。
長期間疎遠になっていても、相続人がいれば相続人が相続します。
相続人が存在する場合、特別縁故者が認められることはありません。
4特別縁故者が知るべき注意点
注意①特別縁故者は家庭裁判所の判断
特別縁故者に認められれば、相続財産が分与されます。
特別縁故者に認められるか、家庭裁判所の判断します。
注意点1つ目は、特別縁故者は家庭裁判所の判断です。
注意②客観的証拠が重要
特別縁故者に認められるには、客観的証拠が重要です。
特別縁故者と主張するだけで、家庭裁判所は認めてくれないでしょう。
注意点2つ目は、客観的証拠が重要です。
注意③申立期間は3か月厳守
特別縁故者に対する相続財産分与の申立ては、相続人不存在が確定してから提出します。
申立期間は、たった3か月です。
期間が過ぎると、提出できません。
注意点3つ目は、申立期間は3か月厳守です。
注意④不動産取得税の対象
特別縁故者に対して、不動産が分与されることがあります。
特別縁故者に対する不動産の分与に対して、不動産取得税が課されます。
特別縁故者に対する分与は、相続ではないからです。
注意点4つ目は、不動産取得税の対象です。
注意⑤相続税の対象
分与された財産全体の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。
特別縁故者に対する分与では、基礎控除額は3000万円です。
特別縁故者は、2割加算の対象です。
注意点5つ目は、相続税の対象です。
5特別縁故者に期待するより遺言書作成して遺贈
特別縁故者に認められるか、家庭裁判所が判断します。
特別な縁故があっても客観的証拠を準備できない場合、家庭裁判所は認めてくれないでしょう。
特別縁故者に期待することは、おすすめできません。
被相続人は、特別な縁故があることをだれよりも分かっているでしょう。
遺言書を作成して、遺贈するのがおすすめです。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
遺言書で遺言執行者を決めておくと、相続手続はおまかせできます。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
遺言書を作成すれば、法定相続人や法定相続人以外の人に財産を引き継ぐことができます。
遺言書があって遺言執行者がいれば、相続手続はおまかせできます。
遺言者にとっても財産を受け取る人にとっても、安心です。
相続人がいない場合、想像以上に手間と時間がかかります。
手間と時間をかけても、確実に財産を引き継ぐことができるわけではありません。
お互いを思いやる方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。