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1住宅ローンは相続財産
①住宅を相続する人=住宅ローンを相続する人ではない
住宅ローンの対象になっている住宅と住宅ローンは、別の相続財産です。
住宅ローンの対象になっている住宅と住宅ローンを、セットにして考えがちです。
住宅ローンの対象になっている住宅を相続した人が、住宅ローンを自動的に相続するわけではありません。
住宅ローンの対象になっている住宅と住宅ローンは、別の財産だからです。
住宅ローンの対象になっている住宅は、相続人全員の合意で分け方を決めることができます。
住宅ローンは、法定相続分で相続人が相続します。
②住宅ローンを負担する人を相続人で合意できる
住宅ローンは、相続財産です。
相続が発生した場合、相続人に引き継がれます。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めることができます。
住宅ローンの分け方を相続人全員で合意することができます。
マイナスの財産の分け方を相続人全員の合意で決めた場合、相続人の内部的な合意に過ぎません。
③債権者は法定相続分で相続人全員に対して請求できる
住宅ローンは、相続財産です。
住宅ローンを返済する人を相続人全員の合意で決めることができます。
相続人全員で住宅ローンを返済する人を決めたとしても、債権者は法定相続分で相続人全員に対して請求することができます。
銀行がローンの法定相続分の返済を請求してきた場合、相続人全員の合意でローンを返済する人を決めたからその人に請求して欲しいということはできません。
ローンを返済する人を決める合意は、相続人の内部的な合意だからです。
銀行には無関係な合意だから、銀行は相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。
④債権者が法定相続分で相続人全員に対して請求できる理由
仮に相続人内部の取り決めで銀行からの請求を拒むことができるとすると、銀行が困ります。
相続人には、さまざまな経済状況の人がいるでしょう。
相続人の中には、債務超過の人がいることがあります。
相続人全員の合意で、債務超過の相続人がローンを返済する合意をすることが考えられます。
債務超過の相続人は、債務超過のうえにローンを返済することになります。
自分の債務のうえにローンを返済することはできないでしょう。
債務もローンも返済できなくなったら、自己破産をすることになります。
自己破産をされたら、ローンは返済してもらえません。
他の相続人はプラスの財産を受け取ってマイナスの財産を免れることができてしまいます。
銀行からすると、理不尽でしょう。
このような理不尽を許さないため、銀行は法定相続分で相続人全員に対してローンの返済を請求することができるのです。
⑤銀行に返済した後に住宅ローンを負担する人に請求できる
住宅ローンの対象になっている住宅を相続した人以外の人にも、銀行はローンの返済を求めることができます。
住宅ローンの対象になっている住宅を相続していないのに、ローンを返済したくないなどと文句を言うことはできません。
銀行にローンを返済した人は、ローンを相続すると合意した相続人に払った分を請求することができます。
⑥住宅ローンの名義変更は銀行の承諾
相続人全員で合意しても、銀行は相続人全員に対して法定相続分でローンの返済を求めることができます。
銀行の承諾がある場合、一部の相続人が住宅ローンを引き継ぐことができます。
住宅ローンを組む場合、銀行は対象になっている住宅を担保に取っています。
住宅ローンを引き継ぐ相続人に問題がなければ、多くの場合、銀行は承諾するでしょう。
住宅ローンを引き継ぐ相続人の返済能力に多少の問題があった場合でも、担保権を実行することができるからです。
担保権を実行するとは、担保に取った住宅を売却して売却代金から借金を返してもらうことです。
⑦抵当権の変更登記が必要になる
ローンの名義変更をした場合、登記が必要になります。
抵当権債務者が変更になるからです。
住宅ローンの対象になっている住宅の相続登記の他に、忘れずに抵当権の変更登記をしましょう。
2団体信用生命保険で住宅ローンが免除される
①住宅ローンは団体信用生命保険で返済できる
被相続人が住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入していることがあります。
団体信用生命保険は、加入者が住宅ローンを返済中に死亡や障害状態になったとき、保険金によって住宅ローンが弁済される保険です。
住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険の加入が条件になっているケースが多いものです。
団体信用生命保険加入が任意である場合や年齢制限などで加入できない場合があります。
団体信用生命保険に加入している場合、契約書面が渡されているはずです。
契約書面が見つからない場合、借入先の金融機関に尋ねてみましょう。
借入先の金融機関で答えてもらえない場合、住宅金融支援機構のコールセンターに確認することができます。
団体信用生命保険に加入していた場合、保険金で住宅ローンの返済が不要になります。
②団体信用生命保険の保険金が支払われるのは1~2か月後
団体信用生命保険の保険金は、死亡後すぐに支払われるわけではありません。
保険金の請求後、保険会社の審査があるからです。
通常、保険会社の審査は1~2か月ほどかかります。
保険会社の審査中は、住宅ローンの返済が必要です。
住宅ローンの債務者が死亡した場合、収入が途絶えていることが多いでしょう。
保険金が支払われれば、審査中の返済分は返金されます。
後から返ってくるとは言え、ひとまず返済をしなければならないことを知っておく必要があります。
③住宅ローンに延滞があると団体信用生命保険の保険金が支払われない
団体信用生命保険に加入した場合、保険料が発生します。
団体信用生命保険の保険料は、住宅ローンの返済金に含まれています。
住宅ローンの返済が滞った場合、団体信用生命保険の保険料も滞ります。
一定期間保険料が滞納になった場合、団体信用生命保険は失効になります。
団体信用生命保険が失効した後、住宅ローン債務者が死亡した場合、保険金は支払われません。
④団体信用生命保険で完済できたら抵当権抹消登記
住宅ローンがなくなった場合、銀行の抵当権がなくなります。
抵当権は自動で抹消になりますが、抵当権の登記は自動で抹消されることはありません。
銀行などが自動で手続してくれることはほとんどありません。
法務局が自動で消してくれることもありません。
住宅ローンの対象になっている住宅の相続登記の他に、忘れずに抵当権の抹消登記を申請しましょう。
3住宅ローンは相続放棄ができる
相続人が相続放棄をした場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
住宅を売却しても返済の見込みがない場合は、相続放棄をするといいでしょう。
相続放棄は、家庭裁判所に対してする手続です。
相続発生を知ってから、3か月以内に手続をしなければなりません。
相続放棄をした場合、住宅ローンから免れますが住宅も相続することはできなくなります。
4住宅ローンの相続を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続財産の大部分は自宅不動産というケースはとても多いです。
資産としての住宅だけに注目しがちですが、住宅ローンが残っている場合もあります。
住宅ローンが残っている住宅となると、住宅と住宅ローンを一体化して考えがちです。
住宅と住宅ローンは一体化して考える面と一体化して考えることができない面があります。
住宅ローンは銀行との関係があるからです。
住宅ローンの対象になっている住宅を相続しないのに、住宅ローンの請求を受ける可能性があります。
このようなことはあまり知られていません。
住宅ローンの対象になっている住宅の相続登記をすることには気づけても、抵当権の登記が必要になることは見落としがちです。
何となく銀行や法務局が自動でやってくれているはずだと思うかもしれません。
銀行が自動でやってくれることはほとんどありません。
法務局は申請しないと何もしてくれません。
団体信用生命保険で住宅ローンが完済になった場合、抵当権は自動で消えます。
抵当権は自動で消えますが、抵当権の登記は自動で消えません。
住宅ローン完済後、長期間経過して、抵当権がついたままであることが発覚します。
長期間経過してから抵当権を抹消するのは、手間も時間も負担になることが多いです。
司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。
相続登記を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。