このページの目次
1特定遺贈と包括遺贈がある
①特定遺贈は特定の財産を指定する
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
遺言書を作成して特定遺贈をする場合、引き継ぐ財産と引き継ぐ人は遺言書で指定します。
例えば、次ような記載です。
・不動産を〇〇〇〇さんに遺贈する
・〇〇銀行〇〇支店普通預金口座番号〇〇〇〇〇〇〇の預金を〇〇〇〇さんに遺贈する
・預貯金のうち100万円を〇〇〇〇さんに遺贈する
遺言者の意思を具体的に書くから、遺言者の気持ちを実現させることができます。
特定遺贈は、遺言書を作成して引き継ぐ財産を指定します。
②包括遺贈は割合で指定する
包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
遺言書は、遺言者が元気なときに作成します。
遺言者が死亡するまでに、長期間経過することが多いでしょう。
財産内容が大きく変動することがあります。
特定遺贈する予定だった財産を処分するかもしれません。
特定された財産が処分された場合、特定遺贈する遺言の条項は無効になります。
包括遺贈は財産内容が大きく変動しても、一定の割合で遺贈することができます。
包括遺贈は、遺言書を作成して引き継ぐ財産の割合を指定します。
③遺贈を放棄することができる
遺言書は、遺言者がひとりで作ります。
遺言書で財産について定めるとき、相続人や受遺者の同意は不要です。
受遺者とは、遺贈で財産を引き継ぐ人です。
言わば一方的に、遺言書作ることができます。
遺言書に書いてあっても、相続人に気兼ねすることがあります。
トラブルになりたくないから、遠慮したいことがあるでしょう。
財産を受け取れると言っても、ありがた迷惑であることがあります。
遺言書に書いてあっても、遺贈を受ける義務はありません。
遺贈を放棄することができます。
2特定遺贈を放棄する方法
①特定遺贈の放棄に期限はない
特定遺贈の放棄の方法に、決まりはありません。
特定遺贈は、いつでも放棄することができます。
特定遺贈の放棄は、期限がありません。
②遺贈義務者に通知
特定遺贈を放棄する場合、遺贈義務者に通知します。
遺贈義務者とは、次の人です。
(1)遺言執行者がいる場合 遺言執行者
(2)遺言執行者がいない場合 相続人
(3)遺言執行者と相続人がいない場合 相続財産清算人
特定遺贈の放棄を遺贈義務者に通知する方法に、決まりはありません。
口頭の通知でも、差し支えありません。
口頭の通知では、後日トラブルになるおそれがあります。
例えば、配達証明付き内容証明郵便を利用すると、通知した証拠を残すことができて安心です。
特定遺贈の放棄は、遺贈義務者に通知します。
③特定遺贈は一部放棄ができる
具体的に財産を分けることができれば、特定遺贈全部を放棄することも一部だけ放棄することもできます。
例えば、「不動産と預貯金100万円を遺贈する」と書いてある場合、次の選択肢があります。
選択肢①特定遺贈全部を放棄する
選択肢②預貯金100万円を受け取って、不動産を放棄する
選択肢③預貯金60万円を受け取って、不動産と預貯金40万円を放棄する
特定遺贈は、一部放棄ができます。
3包括遺贈を放棄する方法
①包括遺贈の放棄の期限は3か月
包括遺贈を放棄する場合、相続を放棄する場合と同じ手続をします。
包括遺贈の放棄の期限は、遺贈があったことを知ってから3か月以内です。
包括遺贈の放棄の期限は、3か月以内です。
②手続先は家庭裁判所
包括遺贈を放棄する場合、家庭裁判所に包括遺贈を放棄する申立てをします。
提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。
包括遺贈の放棄の手続先は、家庭裁判所です。
③必要書類
包括遺贈の放棄で必要になる書類は、次のとおりです。
(1)遺言書
(2)遺言者の住民票
(3)受遺者の戸籍謄本(3か月以内のもの)
(4)収入印紙800円分
(5)家庭裁判所が使う郵便切手
家庭裁判所が使う郵便切手は、裁判所ごとに必要な金額や枚数が異なります。
4遺贈の放棄の注意点
注意①遺贈の放棄をしても相続人
遺贈によって、相続人に対して財産を引き継ぐことができます。
遺贈を放棄しても、相続人であることは変わりません。
遺贈を放棄しても、相続人として相続することができます。
相続したくない場合は、あらためて相続放棄の手続をする必要があります。
遺贈の放棄と相続放棄は、別の手続です。
遺贈の放棄の注意点1つ目は、遺贈の放棄をしても相続人であることです。
注意②相続放棄をしても遺贈
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄をしても、遺贈を受けることができます。
遺贈は、相続人以外の人に財産を引き継ぐことができるからです。
遺贈を受けたくない場合は、あらためて遺贈の放棄の手続をする必要があります。
遺贈の放棄と相続放棄は、別の手続です。
遺贈の放棄の注意点2つ目は、相続放棄をしても遺贈を受けることができる点です。
注意③放棄された財産は遺産分割協議で決定
遺言書を作成して遺贈しても、遺贈を放棄することができます。
遺贈が放棄されたら、遺贈した財産は行き先を失います。
遺贈が放棄されたら、相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、遺産分割協議で決定します。
遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話合いです。
遺贈の放棄の注意点3つ目は、放棄された財産は遺産分割協議で決定することです。
注意④放棄の撤回はできない
遺贈されたことを知ったら、遺贈を単純承認するか遺贈を放棄するか選択することができます。
特定遺贈を放棄するときは、遺贈義務者に通知します。
包括遺贈を放棄するときは、家庭裁判所に包括遺贈の放棄の申立てをします。
遺贈の放棄をしたら、撤回することはできません。
相続放棄が撤回できないのと同様です。
撤回を認めると、相続が混乱するからです。
遺贈の放棄の注意点4つ目は、放棄の撤回はできないことです。
注意⑤催告に返答しないと承認
特定遺贈は、遺贈の放棄に期限がありません。
いつまでたっても単純承認をするのか放棄するのか決めないと、相続手続が進められません。
相続人は受遺者に対して早く決めて欲しいと、催告することができます。
催告期間内に返答をしないと、遺贈を承認したと見なされます。
遺贈の放棄の注意点5つ目は、催告に返答しないと承認と見なされることです。
注意⑥包括遺贈は一部放棄ができない
特定遺贈では、遺贈の一部放棄をすることができます。
包括遺贈では、一部放棄ができません。
相続放棄と同じです。
相続放棄は、一部放棄ができません。
遺贈の放棄の注意点6つ目は、包括遺贈は一部放棄ができないことです。
5遺贈の放棄のメリットデメリット
メリット①負担の回避ができる
遺言書で不動産を遺贈されることがあります。
不動産は重要な財産である一方で、固定資産税や除草などの負担があります。
相続財産全体の規模が大きいと、相続税が課されます。
ときには、遺贈がありがた迷惑であるかもしれません。
遺贈を放棄することで、負担を回避することができます。
遺贈の放棄のメリット1つ目は、負担の回避ができる点です。
メリット②相続人とのトラブル回避
相続人の中には、遺言書の内容に不満を持っている人がいるかもしれません。
遺言書に書いてあると言っても、相続人に気兼ねすることがあるでしょう。
遺贈を放棄することで、相続人とのトラブルを回避することができます。
遺贈の放棄のメリット2つ目は、相続人とのトラブル回避です。
メリット③特定遺贈は一部放棄ができる
具体的に分けることができれば、特定遺贈は一部放棄をすることができます。
受け取りたい財産だけ選んで、遺贈を受けることができます。
遺贈の放棄のメリット3つ目は、特定遺贈は一部放棄ができる点です。
メリット④遺贈を放棄しても相続できる
遺贈の放棄と相続放棄は、別の制度です。
相続人に対して遺贈があった場合、遺贈の放棄をしても相続人のままです。
相続放棄をしても、遺贈を受けることができます。
遺贈の放棄のメリット4つ目は、遺贈を放棄しても相続できる点です。
デメリット①放棄は撤回できない
遺贈を放棄すると、撤回できません。
遺贈を放棄した後に、財産の価値が急上昇することがあります。
いったん放棄をすると、財産は取り戻せません。
遺贈の放棄のデメリット1つ目は、放棄は撤回できない点です。
デメリット②包括遺贈の放棄に期限3か月
包括遺贈の放棄は、3か月の期限があります。
法律の知識がないと、3か月の期限があるルールを知らないでしょう。
手続しないまま3か月が過ぎると、包括遺贈の放棄ができません。
遺贈の放棄のデメリット1つ目は、包括遺贈の放棄に期限3か月がある点です。
デメリット③相続人とのトラブル
遺言書で遺贈された財産は、相続人が受け取りたくない財産であることがあります。
例えば、遠方にある不動産などです。
遺贈を放棄すると、財産は相続財産になります。
相続人が引き継ぐことになるから、相続人とトラブルになるおそれがあります。
遺贈の放棄のデメリット3つ目は、相続人とのトラブルになるおそれがある点です。
デメリット④包括遺贈の放棄の手続が煩雑
包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に対して包括遺贈の放棄の申立てをします。
裁判所に提出する書類作成は、知識がないと難しいことが多いでしょう。
遺贈の放棄のデメリット4つ目は、包括遺贈の放棄の手続が煩雑な点です。
6相続放棄と遺贈の放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄も包括遺贈の放棄もプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられません。
放棄ができるのは、その相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
相続放棄も遺贈の放棄も、原則として、撤回ができません。
3か月の期間内に手続するのは、想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。