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1遺言書は書き換えができる
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。
遺言書を書くこと自体を大げさに考えて、書いたら終わりと思われがちです。
民法には、いつでも、遺言書の撤回ができるとはっきり書いてあります。
遺言書は、新たな遺言書で書き換え(撤回)ができます。
書き直しをするのも遺言書なので、本人以外が書き直しをすることはできません。
他の人が代理で書き直すことはできませんし、相続人が撤回することもできません。
自筆証書遺言で、かつ、些細な書き間違いであれば、内容訂正する程度でも差し支えありません。
大きな修正をする場合は改めて作った方がいいでしょう。
一度書いたら書き直しがなくて済む場合もありますが、状況が変われば書き直しすることは割とよくあることです。
新たに誕生した孫や曽孫に財産を譲りたい場合、新たに書き直すことができます。
遺言書で財産を相続させる子どもがお世話をしてくれないのであれば、お世話をしてくれる子どもに財産を相続させると書き直すことができます。
何度も書き直すことで、よりいい遺言書にすることができます。
2遺言書を書き換えるときの注意点
①遺言書の書き換えをしたら原則新しい遺言書が有効
新しい遺言書と古い遺言書がある場合、新しい遺言書が優先します。
古い遺言書は撤回されたと考えられるからです。
この場合、両立できない部分だけ、撤回されたと考えます。
古い遺言書
〇〇銀行の預貯金は相続人〇〇に相続させる
不動産〇〇は相続人◇◇に相続させる
新しい遺言書
不動産〇〇は相続人〇〇に相続させる
上記のように遺言書があった場合、新しい遺言書で、不動産についてのみ書き直されたと考えます。
預貯金については古い遺言書が効力を持っています。
複数の遺言書が見つかった場合でも、内容が両立できる部分は撤回されません。
新しい遺言書で内容が反映されていないと、トラブルの火種となります。
後から誤解を招くおそれがあることから、新たにすべての内容の遺言書を作成したほうがいいでしょう。
新しい遺言書の内容に〇年〇月〇日付遺言書は全部撤回するとして、撤回理由も書くと相続人も納得しやすくトラブルが減ります。
このうえで、古い遺言書を破り捨てると安心でしょう。
②遺言書の書き換えはいつでも何度でもできる
遺言書の書き直しは、遺言者が生きている間はいつでも何度でもできます。
相続人らと遺言書の書き直しはしませんと約束しても無効です。
書き直し回数の上限もありません。
何度でも書き直すことができます。
新たに孫や曽孫が誕生したから書き換える、財産の内容が変化したから書き直すこともよくあることです。
③遺言書の書き換えに承諾は不要
書き直しをするために相続人の承諾をもらう必要はありません。
書き直しをしたことをだれかに知らせなければならないといったこともありません。
最初に作った遺言書が公正証書遺言である場合、公正証書を作った公証役場に連絡する必要はありません。
新たに公正証書遺言を作る場合、以前公正証書遺言を作成したことを申告する必要はありません。
④自筆証書遺言でも公正証書遺言でも書き換えができる
遺言書を書き直す場合、遺言書の方式は問われません。
遺言の方式とは、自筆証書遺言、公正証書遺言といった遺言書の種類のことです。
自筆証書遺言、公正証書遺言いずれの方式でも書き換えることができます。
いずれの方式でも日付の新しいものが優先されます。
理論上は、日付の古い公正証書遺言を日付の新しい自筆証書遺言で書き直すことができます。
公正証書遺言は遺言内容を聞いた公証人が作るので、様式に不備がなく遺言書が確実に作ることができます。
自筆証書遺言はだれの確認も受けずに遺言者がひとりで作ることが多いので、遺言書が無効になりがちです。
後から書いた自筆証書遺言が無効になった場合、家族がトラブルになることが予想できるでしょう。
遺言書の書き直しは、できるだけ、公正証書遺言にすることをおすすめします。
⑤撤回遺言を撤回した場合は最初の遺言は復活しない
遺言書の書き換えはいつでも何度でもできます。
相続が発生した後、複数の遺言書が見つかることがあります。
例えば、1番目の遺言書が作られた後、2番目の遺言書が作られて、さらに3番目の遺言書が作られたようなケースです。
2番目の遺言書の内容が「1番目の遺言書を撤回する」の場合、1番目の遺言書は無効になります。
3番目の遺言書の内容が「2番目の遺言書を撤回する」の場合、2番目の遺言書は無効になります。
2番目の遺言書の内容が「1番目の遺言書を撤回する」で、かつ、3番目の遺言書の内容が「2番目の遺言書を撤回する」の場合、1番目の遺言書は復活しません。
2番目の遺言書で、撤回したからです。
「遺言書を撤回する」内容の遺言書を撤回遺言と言います。
撤回遺言を撤回した場合、最初の遺言書は無効のままです。
⑥撤回遺言を取り消した場合は最初の遺言は復活する
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
遺言者が自分の意思で書くものです。
ときには、だれかに強迫されたりだまされて遺言書を書かされてしまう場合があります。
例えば、1番目の遺言書が作られた後、2番目の遺言書が作られた場合で、2番目の遺言書がだれかに強迫されたりだまされて書かされた遺言書であるケースです。
2番目の遺言書の内容が「1番目の遺言書を撤回する」の場合、通常は、1番目の遺言書は無効になります。
2番目の遺言書は、だれかに強迫されたりだまされて書いた遺言書です。
遺言者が自分の意思で書いた遺言書ではありません。
遺言者が自分の意思で書いたのではないから、遺言書を取り消すことができます。
2番目の遺言書を取り消した場合、2番目の遺言書は無効になります。
2番目の遺言書を取り消した場合、1番目の遺言書は復活します。
「1番目の遺言書を撤回する」は、遺言者の意思ではなかったからです。
⑦自筆証書遺言は検認が必要
遺言書の書き換えはいつでも何度でもできます。
自筆証書遺言を見つけた人は、家庭裁判所に対して検認の申立てをしなければなりません。
自筆証書遺言書がたくさんある場合、検認手続を何度もすることになります。
自筆証書遺言はだれの確認も受けずに遺言者がひとりで作ることが多いので、遺言書が無効になりがちです。
遺言書作成は書き換えも含めて公正証書遺言をおすすめします。
3撤回とみなされる行為がある
古い遺言書は新しい遺言書で撤回することができます。
新しい遺言書がなくても、撤回したとみなされることがあります。
撤回したとみなされるのは次の場合です。
①遺言書の内容と抵触する生前処分がされた場合
遺言書で不動産〇〇〇を相続人〇〇に相続させると書いた後、不動産〇〇〇を売ったり、贈与したりする場合です。
②遺言書を書いた人が故意に遺言書を捨てた場合
公正証書遺言原本は公証役場で保管されていますから、捨てることができません。
公正証書遺言を作成した後、正本と謄本が渡されます。
手元にある正本と謄本を破り捨てても意味はありません。
遺言書原本は公証役場に厳重に保管してあるからです。
公正証書遺言を撤回するためには、新たに遺言書を作る必要があります。
新たに作る遺言書は、トラブル防止のためにも、公正証書遺言をおすすめします。
③遺言書を書いた人が故意に目的物を捨てた場合
捨てるのは、物理的に捨てることをいいますが、経済的な意味で使えなくすることも捨てると同様だと解釈されます。
4家族信託契約は勝手に書き換えができない
家族信託では、信託契約の中でいろいろなことを自由に決めることができます。
家族信託がいつ終了するのか、信託契約の中で決めておくことができます。
信託が終了したら、だれが信託財産を受け継ぐのか、信託契約の中で決めておくことができます。
家族信託は契約ですから、当事者が一方的に書き換えをすることはできません。
家族の中に不信感がある場合、それぞれが自分に有利な遺言書を書いてもらいたいと考えます。
遺言書は何度でも書き換えができるからです。
身のまわりが不自由になって不安になっているときに、優しい言葉をかけられると有利な遺言書を書いてあげたくなります。
物事のメリットデメリットを充分に判断することが難しくなっても、遺言書の書き換えは続きます。
公正証書遺言を作成するのは、ほんの1時間程度でしょう。
見知らぬ公証人がいるときは、気丈にふるまうことが多いです。
1時間程度では気付かれずに遺言書を作ることができてしまいます。
家族信託契約の中で、だれが信託財産を受け継ぐのか決めておく方がいい場合があります。
家族信託契約は当事者が一方的に撤回することができないから、家族でよく話し合って契約することが重要です。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
いろいろ言い訳を考えて先延ばしします。
先延ばしした結果、認知症などで遺言書を作れなくなって、その先には家族のもめごとが待っています。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠ですから、まず遺言書を書くことをおすすめします。
遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。
遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。
そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続きは格段にラクになります。
状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。