遺言書で不動産を遺贈

1不動産を遺贈するときの遺言書の書き方

①単独所有の土地を遺贈する遺言書の書き方

遺言者は、次のとおり遺言する。

第1条

次の財産を、○○に、遺贈する。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

②土地の共有持分を遺贈する遺言書の書き方

遺言者は、次のとおり遺言する。

第2条

次の財産を、○○に、遺贈する。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

持分 4分の1

③建物を遺贈する遺言書の書き方

遺言者は、次のとおり遺言する。

第3条

次の財産を、○○に、遺贈する。

所在 ○○市○○町○丁目

家屋番号 ○番○

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡

④遺言書なしで遺贈はできない

遺贈とは、遺言書で財産を引き継いでもらうことです。

遺言書なしで、遺贈することはできません。

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。

自分ひとりで作ることができるから、気軽な遺言書です。

公正証書遺言は、遺言内容を伝えて公証人が取りまとめる遺言書です。

証人2人に確認してもらって作ります。

遺言者に法律の知識があることはあまりないでしょう。

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。

遺言書のつもりで作成しても、書き方ルールに違反すると無効になります。

不動産を遺贈したいと思っていたに、無効の遺言書では実現できません。

公正証書遺言は、公証人が取りまとめます。

公証人は、法律の専門家です。

公証人が関与するから書き方ルールの違反で遺言書が無効になることは考えられません。

公正証書遺言を作成した後、公正証書遺言原本は公証役場で厳重保管されます。

遺言書を紛失することがありません。

紛失したら、遺贈を実現できなくなります。

遺言書が改ざんや変造されることがありません。

公正証書遺言は、安心確実な遺言書です。

遺言書なしで、遺贈はできません。

2不動産を遺贈したときの登記手続

①相続人に遺贈するときは事実上単独申請

遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

遺言書を作成して、相続人に遺贈をすることができます。

遺贈の登記は、登記権利者と登記義務者が共同で登記申請をします。

受遺者が相続人である場合、登記申請書に登記権利者と登記義務者を記載するだけで義務者の関与は不要です。

形式的には共同申請ですが、事実上、受遺者が単独申請をすることができます。

相続人に遺贈するときの登記申請では、不動産の権利証が不要です。

②遺言執行者がいるときは遺言執行者が申請

遺贈をする場合、遺言書を作成する必要があります。

遺言書は作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するために、必要な権限が与えられます。

遺言執行者は、遺言書で指名することができます。

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行を妨害することができません。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者と遺贈を受ける人が共同で登記申請をします。

登記手続は、知識のない人にとって難しいことが多いでしょう。

多くの人は、司法書士などの専門家に依頼します。

司法書士などに依頼する場合、委任状を作成して交付します。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者と遺贈を受ける人が委任状を渡します。

遺贈の登記申請で、相続人は関与する必要がありません。

相続人が遺言書の内容に不満があっても、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。

遺言執行者がいるときは、遺言執行者が申請人になります。

③遺言執行者がいないときは相続人全員の協力で

遺言執行者が選任されていない遺言書は、たびたび見かけます。

遺言執行者が選任されていても選任されていなくても、遺言書は有効です。

遺言書で遺言執行者が選任されていても、就任をご辞退をされることがあります。

遺言執行者が選任されていても、遺言執行者に就任する義務はないからです。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

相続人の気持ちとしても、遺言者の意思を実現してあげたいでしょう。

不動産は、重要な財産であることが多いものです。

相続人以外の人に遺贈する場合、相続人が遺言書に不満を覚えることがあります。

遺言者の意思とは言え、財産を奪われるような気持ちになるかもしれません。

遺言書に不満がある相続人は、遺言書の内容の実現に協力してくれないでしょう。

遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任しておくことがおすすめです。

④家庭裁判所に遺言執行者選任の申立て

遺言執行者が選任されていなくても、遺言書は有効です。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。

遺言書の内容を実現するために協力しない相続人がいると、手続が進まなくなります。

遺言執行者は、家庭裁判所に選任してもらうことができます。

遺言書で遺言執行者が選任されていない場合や就任をご辞退した場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者がいれば、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

⑤登記はすみやかに

遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

相続できるのは、相続人だけです。

相続人は、相続できるし遺贈を受けることもできます。

遺言者が死亡したら、遺言書の効力が発生します。

不動産を遺贈した場合、不動産の名義変更をします。

遺贈の登記には、いつまでにやらなければならないと言った期限はありません。

遺贈の登記は先延ばしせず、すみやかに終わらせることをおすすめします。

登記がないと、権利主張ができないからです。

もしかしたら、遺言書の存在を知らない相続人が相続登記をして不動産を売却するかもしれません。

不動産を売買したら、買主はすぐに名義変更をします。

不動産の買主に名義変更がされてしまったら、遺言書に不動産を遺贈するとあっても、買主に文句は言えません。

登記がある人が、権利主張をすることができるからです。

登記があることが権利主張の条件になります。

権利主張の条件になることを対抗要件と言います。

被相続人の権利証が手元にあるから大丈夫と、のんびりしているかもしれません。

原則として、売買などで所有権移転登記をする場合、権利証が必要になります。

相続による所有権移転登記をする場合、権利証は、原則として、必要ありません。

相続人は、権利証なしで、相続による所有権移転登記ができます。

相続による所有権移転登記を済ませたら、相続人のために新しい権利証が作られます。

相続人は、新しい権利証を使って売買による所有権移転登記をすることができます。

被相続人の権利証が手元にあっても、安心はできません。

期限はなくても、すみやかに遺贈による所有権移転登記を済ませましょう。

3不動産の遺贈で税金がかかる

①不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得したときに1回だけ課される税金です。

有償で取得しても無償で取得しても、課税されます。

登記をしても登記をしなくても、課税されます。

特定遺贈で相続人以外の人が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。

特定遺贈で相続人が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されません。

遺贈は、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

相続は、相続人が財産を引き継ぐことです。

相続で不動産を取得した場合、不動産取得税が課されません。

不動産取得税は、特定遺贈で相続人以外の人が不動産を取得した場合に課されます。

②譲渡所得税

個人が1年に得た所得に対して、所得税が課されます。

不動産の譲渡によって得た利益は、譲渡所得に分類されます。

不動産を長期間保有していた場合、取得したときより大きく値上がりしていることがあります。

含み益がある不動産を売却した場合、譲渡所得が発生します。

不動産を遺贈した場合、無償か著しく低額で譲渡するでしょう。

無償か著しく低額で譲渡したときに、譲渡所得が発生しないとしたら不公平です。

含み益を手にしているのに、租税回避ができることとなるからです。

含み益がある不動産を遺贈した場合、時価で譲渡したとみなして税金を計算します。

時価で譲渡したとみなされた結果、相続人に譲渡所得が発生します。

譲渡所得税は、相続人が納税します。

③登録免許税

遺贈を受けたら、不動産の名義変更をします。

遺贈を受けた場合にも、登録免許税を納める必要があります。

遺贈を受けた場合の税率は、次のとおりです。

(1)相続人が遺贈を受けた場合、1000分の4

(2)相続人以外の人が遺贈を受けた場合、1000分の20

相続人が遺贈を受けた場合、相続登記と同じ税率です。

登録免許税は、不動産の名義変更をするときに課されます。

④相続税

遺贈を受けた場合、贈与税でなく相続税が課されます。

相続税には、基礎控除があります。

基礎控除額は次の計算式で求めることができます。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数

相続財産が基礎控除額以内であれば、相続税は課されません。

相続税が課されるのは、全体の10%にも満たないわずかな富裕層です。

4農地の遺贈は農地法の許可

①相続人以外に遺贈は農地法の許可

農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。

勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。

農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。

遺贈する不動産が農地である場合、農地法第3条の許可が必要です。

農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。

農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。

農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。

農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。

相続人以外の人に遺贈する場合、農地法第3条の許可が必要です。

②相続人に遺贈は届出のみ

相続人になる人は、法律で決まっています。

法律で決められた人だけが相続人になります。

相続できるのは、相続人だけです。

相続で農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。

相続人や相続人以外の人に、遺贈することができます。

相続人が特定遺贈で農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。

死期が迫ってから、書くものではありません。

遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。

遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。

受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。

遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。

遺言執行には、法的な知識が必要になります。

遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。

遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。

不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。

せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。

遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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