複数の相続登記を1度にまとめる方法

1複数の相続登記を1度にまとめるメリット

①申請書が少なく済む

登記申請は、1件の申請について1通の申請書を提出するのが原則です。

条件を満たせば、複数の申請を1通の申請書で一括して申請することができます。

複数の申請を1通の申請書で申請すると、作成する申請書が少なく済みます。

書類作成の手間と時間を少なくすることができます。

②法務局の審査効率化

まとめて相続登記を申請すると、法務局側もメリットがあります。

受付から審査、登記、権利証の発行まで、一括で処理することができるからです。

複数の申請があるより、処理が早くなる可能性があります。

まとめて権利証を発行できるので、管理がしやすく間違いが起こりにくくなります。

③登記の一貫性が保たれる

まとめて相続登記を申請すると、まとめて登記されます。

登記記録の一貫性が保たれ、後日の確認が容易になります。

2複数の相続登記を1度にまとめる方法

①相続登記をまとめる条件

(1)不動産管轄が同一

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

法務局の管轄は、法務局のホームページで確認することができます。

不動産管轄が同一のケースでは、相続登記を1度にまとめることができます。

例えば、名古屋市内の不動産管轄は、次のとおりです。

名古屋法務局本局

中区、東区、北区、中村区、西区、千種区、昭和区

熱田出張所

熱田区、南区、中川区、港区、瑞穂区、緑区

名東出張所

名東区、守山区、天白区

例えば、名古屋市中区と東区の不動産がある場合、1度にまとめて相続登記をすることができます。

名古屋市内であっても、名古屋市中区と熱田区の不動産がある場合、1度にまとめて相続登記をすることができません。

名古屋市中区は名古屋法務局本局管轄で、名古屋市熱田区は名古屋法務局熱田出張所の管轄だからです。

(2)登記の目的が同一

登記申請書の冒頭に、登記の目的を記載します。

登記の目的が同一のケースでは、相続登記を1度にまとめることができます。

被相続人が所有者であるとき、「所有権移転」です。

被相続人が第三者と不動産を共有していたとき、「〇〇〇〇持分全部移転」です。

「所有権移転」と「〇〇〇〇持分全部移転」は、登記の目的が同一のケースと見なされます。

「所有権移転」と「〇〇〇〇持分全部移転」であっても、相続登記を1度にまとめることができます。

被相続人が抵当権者であるとき、「抵当権移転」です。

「所有権移転」と「抵当権移転」は、1度にまとめて相続登記をすることができません。

「所有権移転」と「抵当権移転」は、登記の目的が同一ではないからです。

(3)登記原因が同一

相続登記の登記原因は、「〇年〇月〇日相続」です。

被相続人が登記名義人であれば、登記原因は同一になるはずです。

被相続人が遺言書を作成して、不動産を遺贈することがあります。

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

遺言書に遺贈すると書いてあったら、遺贈で手続します。

遺贈を受ける人が相続人であっても、相続になるわけではありません。

遺贈による登記の登記原因は、「〇年〇月〇日遺贈」です。

「〇年〇月〇日相続」と「〇年〇月〇日遺贈」は、1度にまとめて相続登記をすることができません。

「〇年〇月〇日相続」と「〇年〇月〇日遺贈」は、登記原因が同一ではないからです。

(4)当事者が同一

相続登記の当事者とは、登記名義人になる相続人です。

例えば、土地は配偶者が相続し、建物は子どもが相続することがあります。

土地の相続登記と建物の相続登記は、1度にまとめることができません。

土地の相続登記と建物の相続登記の当事者が同一ではないからです。

(5)4条件全部満たす必要がある

複数の相続登記を1度にまとめることができるのは、4つの条件をすべて満たしたときだけです。

複数の相続登記を1度にまとめることができないのに1度にまとめて申請すると、却下や取下げになるでしょう。

登記申請の軽微なミスは補正で済みますが、重大なミスは却下や取下げになります。

4つの条件をすべて満たせないときは、別々に登記申請をします。

自分で判断ができない場合、司法書士などの専門家に依頼するのが賢明です。

②複数の相続登記を連件で提出できる

条件を満たせないときは、複数の登記申請をします。

同一管轄であれば、複数の登記申請をまとめて提出することができます。

複数の登記申請であっても、必要書類は共通することが多いでしょう。

連件申請をする場合、必要書類は1通提出するだけで済ませることができます。

③不動産だけの遺産分割協議書を作成できる

遺産分割協議が成立したら、相続人全員の合意内容を書面に取りまとめます。

遺産分割協議書とは、相続人全員による合意内容の証明書です。

相続財産全部についてまとめて合意しなくても、遺産分割協議は有効です。

一部の財産だけ、分け方の合意をすることができます。

不動産だけ合意をして、遺産分割協議書に取りまとめることができます。

相続登記をする場合、不動産のみの遺産分割協議書を作成することが一般的です。

④法務局ごとに遺産分割協議書を作成できる

法務局の管轄が異なる不動産がある場合、それぞれの法務局に相続登記を申請します。

複数の法務局に相続登記をする場合、法務局ごとに遺産分割協議書を作成することができます。

法務局ごとに遺産分割協議書を作成すると、効率よく相続登記をすることができます。

⑤法定相続情報一覧図活用で効率化

相続手続をする場合、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

相続手続先ごとに戸籍謄本を準備すると、費用がかさみます。

相続手続先から原本還付をしてもらうと、時間がかかります。

相続手続が終わらないと、戸籍謄本等の原本還付に応じてくれないからです。

たくさんの戸籍謄本と家系図を法務局に提出して、点検してもらうことができます。

法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係を一覧で示した書類です。

法務局の認証文が入るから、高い信用があります。

法定相続情報一覧図は、銀行など多くの相続手続先で利用することができます。

法定相続情報一覧図を提出すると、たくさんの戸籍謄本を提出したことと同じ取り扱いを受けることができます。

法定相続情報一覧図は、希望した枚数を発行してもらうことができます。

相続手続先の数を発行してもらうと、効率よく相続手続をすることができます。

⑥令和6年(2024年)4月1日から相続登記義務化でペナルティー

遺産分割協議が成立してから、相続登記をするのが一般的です。

令和6年(2024年)4月1日から相続登記には、3年の期限が決められました。

相続があったことを知ってから3年に以内に相続登記をしないと、ペナルティーの対象になります。

ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。

遺産分割協議中でも、相続登記の義務は免れられません。

遺産分割協議が長期化している場合、相続人申告登記をすることができます。

相続人申告登記とは、自分が相続人であると法務局に申告する制度です。

相続人申告登記をすると、ペナルティー10万円を免れることができます。

3数次相続の相続登記を1度にまとめる方法

①数次相続は複雑になる

数次相続とは、相続手続中に元気だった相続人が死亡して新たな相続が発生することです。

複数の相続があると、相続手続が複雑になります。

②中間の相続人がひとりのとき1度に相続登記ができる

(1)はじめから相続人がひとり

相続登記は、相続が発生するごとに申請するのが原則です。

複数の相続がある場合、中間の相続人がひとりのとき1度にまとめて相続登記ができます。

最初の相続の相続人が死亡した相続人ひとりである場合、1度にまとめて相続登記ができます。

(2)他の相続人全員が相続放棄でひとり

相続が発生したら、相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

最初の相続の相続人が複数いる場合、他の相続人全員が相続放棄をすることがあります。

他の相続人全員が相続放棄をすると、死亡した相続人ひとりが相続人になります。

他の相続人全員が相続放棄で相続人がひとりになると、1度にまとめて相続登記ができます。

(3)遺産分割協議で相続人がひとり

最初の相続の相続人が複数いる場合、遺産分割協議で相続財産の分け方を決定します。

遺産分割協議中に相続人が死亡した場合、死亡した相続人の相続人が話し合いに参加します。

死亡した相続人が相続する遺産分割協議を成立させることができます。

遺産分割協議中に死亡しても、相続人としての地位は有効だからです。

遺産分割協議の効力は、相続発生時にさかのぼります。

遺産分割協議成立時に死亡していても、死亡した相続人は相続することができます。

遺産分割協議で相続人がひとりになると、1度にまとめて相続登記ができます。

③中間の相続人の不動産は別で相続登記

最初の被相続人の不動産は、条件を満たせば、1度にまとめて相続登記ができます。

死亡した相続人が固有の不動産を持っていることがあります。

最初の被相続人の不動産と死亡した相続人の不動産は、1度にまとめて相続登記ができません。

登記原因が異なるからです。

死亡した相続人が所有していた不動産について、あらためて相続登記をする必要があります。

④死亡した相続人への土地の相続登記は登録免許税非課税

不動産の名義変更をすると、登録免許税が課されます。

何度も相続登記をすると、登録免許税がかさみます。

死亡した相続人への土地の相続登記は、登録免許税が非課税になります。

登録免許税の非課税措置を受ける場合、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。

記載がない場合は、免税措置は受けられません。

⑤知識がない人におすすめできない

(1)登記原因の記載誤りで却下リスク

登記申請をする場合、申請書は正確に記載する必要があります。

不動産は重要な財産だから、法務局は非常に厳格に審査するからです。

数次相続の相続登記を1度にまとめる場合、登記原因が複雑になります。

適切な記載がしていないと、相続登記が却下されるリスクがあります。

(2)相続関係の誤認で却下リスク

数次相続の相続登記を1度にまとめる条件は、中間相続人が1人のケースのみです。

中間の相続が共同相続であった場合、1度にまとめることができません。

相続関係を誤認すると、誤った登記申請をしてしまうでしょう。

誤認によって1度にまとめて相続登記をすると、相続登記が却下されます。

(3)戸籍謄本収集と相続関係説明図の作成が複雑

数次相続は、相続手続が複雑になります。

必要になる戸籍謄本は、通常の相続よりたくさんになるでしょう。

提出する相続関係説明図は、通常の相続より複雑になるでしょう。

戸籍謄本の不足や相続関係説明図の記載誤りが見つかると、補正指示や却下につながります。

(4)遺産分割協議の誤解で無効リスク

複数の相続が発生すると、遺産分割協議に参加する人を誤りがちです。

相続人全員の合意がないと、遺産分割協議が成立しません。

遺産分割協議に参加する人を誤ると、遺産分割協議が成立しません。

遺産分割協議が成立していないと、相続登記は却下になるでしょう。

(5)司法書士などの専門家の関与が不可欠

数次相続の相続登記を1度にまとめるのは、想像以上に高度な判断が必要です。

司法書士などの専門家の関与が不可欠です。

専門家のサポートなしで手続を進めると、相続人間でトラブルになりかねません。

トラブルなく相続手続を進めたい場合、司法書士などの専門家に依頼するのがおすすめです。

4相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。

ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。

手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。

一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。

不動産は、重要な財産であることが多いものです。

一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。

申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。

代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。

委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。

代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。

申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。

適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。

いったん申請を取り下げて、やり直しになります。

相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。

法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。

司法書士はこのような方をサポートしております。

相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。

相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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