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1相続が発生したのに相続財産が分からない理由
理由①財産を把握していたのは被相続人本人だけ
相続が発生したのに、相続財産が分からないことは珍しくありません。
財産の全貌を把握していたのは、被相続人本人だけであることが多いからです。
高齢になった親に財産の話を切り出したところ、不機嫌になるケースはよく聞くところです。
プラスの財産以上に、マイナスの財産は家族に知らされません。
理由②信用情報機関の調査に限界がある
信用情報機関に照会することで、被相続人の借金を調査することができます。
信用情報機関は、次の3つがあります。
・日本信用情報機構(JICC)
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)
信用情報機関の調査には、限界があります。
信用情報機関に加入していないと、記録されないからです。
例えば、友人や知人からの借り入れは信用情報機関に照会しても把握できません。
理由③主債務者が返済中は連帯保証人に請求されない
被相続人が第三者の連帯保証人になっていることがあります。
連帯保証人とは、第三者が借金の返済ができなくなったときに肩代わりをする人です。
連帯保証人の肩代わりの義務は、相続人に相続されます。
主債務者がきちんと返済している間、債権者は連帯保証人に何も言ってきません。
連帯保証人が死亡してから長期間経過した後、主債務者が返済を滞らせると相続人に肩代わりを請求します。
連帯保証人になっていることは、特に把握しにくいと言えます。
2相続財産が分からなくても相続放棄ができる
①相続放棄で相続人でなくなる
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続しません。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、相続人でなくなります。
後から借金が見つかっても、相続放棄の効力が無効になりません。
②相続放棄には3か月の期限がある
相続放棄には、期限があります。
相続があったことを知ってから、3か月です。
3か月の期限が過ぎてしまったら、相続放棄はできません。
相続放棄の期限3か月を熟慮期間と言います。
熟慮期間3か月は、相続を単純承認するか相続放棄するか熟慮する期間です。
③相続財産の内容は審査されない
相続放棄の申立てを受付けると、家庭裁判所は次の点を審査します。
・法定相続人であるか
・相続があったことを知ってから3か月以内か
・本人の意思で相続放棄の申立てをしたか
相続放棄は、相続財産の内容を把握してから手続する制度ではありません。
家庭裁判所は、相続財産調査の内容は審査しません。
相続財産調査の内容に関心はないから、相続財産が分からなくても相続放棄ができます。
④相続財産が分からなくても相続放棄ができる理由
理由(1)相続発生前に調査できないから
相続が発生するまでは、被相続人の財産状況を調べることはできません。
たとえ家族であっても、本人の重要なプライバシーだからです。
相続人になってから、相続財産を調査することができます。
相続財産の全貌が分からないことは、当然に予定されています。
相続財産の全貌が分からないことが当然だから、相続財産が分からなくても相続放棄ができます。
理由(2)熟慮期間3か月がある
熟慮期間とは、相続を単純承認するか相続放棄するか熟慮する期間です。
財産が分からない状態から、熟慮期間中に財産調査をします。
財産が複雑で財産調査に時間がかかる場合、熟慮期間の伸長の申立てをすることができます。
相続財産の全貌が分からないことが当然だから、熟慮期間3か月があると言えます。
理由(3)重要なのは相続しない意思だから
相続放棄とは、相続人になることを拒否する意思表示です。
重要なのは、相続しない意思と言えます。
相続財産の詳細な内容について、知る必要はありません。
相続財産の全貌が分からなくても、相続しない意思表示をすることができます。
理由(4)相続放棄は相続人を保護する制度だから
相続放棄は、相続人を分からない負債から守る制度です。
財産が分からないと相続放棄できないとすると、調査できない相続人や情報がない相続人が救済されません。
相続人は守られなくなることは、制度の趣旨に反します。
相続放棄は相続人を保護する制度だから、相続財産が分からなくても相続放棄ができます。
3単純承認をすると相続放棄が無効になる
①相続財産の利用処分で単純承認と見なされる
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
いったん単純承認をすると、相続放棄ができなくなります。
相続財産を利用処分した場合、単純承認をしたと見なされます。
相続財産を利用処分する行為は、単純承認を前提とする行為だからです。
相続財産を利用処分した後で、相続放棄をすることはできません。
詳しい事情が分からないまま、家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしてしまうことがあります。
家庭裁判所の決定は、絶対ではありません。
後から裁判などで、相続放棄が無効になります。
②相続放棄検討中に避けるべき具体例
危険(1)不動産の売却や解体
不動産の売却や解体は、相続財産を利用処分する行為です。
不動産の大規模修繕も、利用処分する行為に含まれます。
相続放棄検討中、不動産の売却や解体は避けるべき行為です。
危険(2)預貯金の引出し
預貯金を引出して自分のために使う行為は、相続財産を利用処分する行為です。
後から返しても利用処分した時点で、単純承認と見なされます。
金額の多い少ないではありません。
後から説明すれば許されることは、ありません。
相続放棄検討中、預貯金の引出しは避けるべき行為です。
危険(3)借金の支払猶予を求める
被相続人が借金を抱えて死亡した場合、借金は相続財産です。
債権者は、相続人に借金の返済を求めることができます。
不意に返済を求められると、今は払えないから待って欲しいなどと言ってしまうことがあります。
今は払えないから待って欲しいと交渉することは、相続人であることを認めたと言えます。
借金の支払猶予を求めることは、単純承認と見なされます。
誠実に対応しようと考えた行動であっても、動機は考慮されません。
相続放棄検討中、借金の支払猶予を求めることは避けるべき行為です。
危険(4)賃貸借契約の解除
被相続人が賃貸マンションなどで暮らしていることがあります。
賃貸マンションのお部屋を借りる権利は、相続財産です。
マンションの賃貸借契約を解除する行為は、相続財産を利用処分する行為です。
マンションの賃貸借契約を解除すると、単純承認と見なされます。
迷惑をかけないようと考えた行動であっても、動機は考慮されません。
相続放棄検討中、賃貸借契約の解除は避けるべき行為です。
③相続放棄をしても受け取れる財産
(1)生命保険の死亡保険金
被相続人の死亡をきっかけに、死亡保険金が支払われます。
生命保険の死亡保険金を受取る権利は、受取人の固有の財産です。
相続とは無関係だから、生命保険の死亡保険金を受け取っても単純承認になりません。
相続放棄検討中でも問題なく、受け取ることができます。
(2)香典や弔慰金
葬儀では、弔問客が香典を持ってきます。
香典や弔慰金は、葬儀の主宰者に対する贈与です。
相続とは無関係だから、香典や弔慰金を受け取っても単純承認になりません。
相続放棄検討中でも問題なく、受け取ることができます。
(3)遺族年金の請求
遺族年金は、年金に加入していた人が死亡したときに遺族に対して支給される年金です。
遺族年金を受け取る権利は、受取人の固有の財産です。
相続とは無関係だから、遺族年金を請求しても単純承認になりません。
相続放棄検討中でも問題なく、請求することができます。
(4)健康保険の埋葬料や葬祭費
健康保険の被保険者が死亡すると、埋葬料や葬祭費が支給されます。
埋葬料や葬祭費を受け取る権利は、相続財産ではありません。
相続とは無関係だから、健康保険の埋葬料や葬祭費を受け取っても単純承認になりません。
④単純承認を招く誤解
誤解(1)迷惑をかけないことを優先する
迷惑かけないようにと考えた行動が、単純承認につながります。
家主や管理会社に迷惑ではないかと思うと、賃貸借契約を解除してしまいます。
銀行口座を放置すると迷惑ではないかと思うと、預貯金を解約してしまいます。
債権者を無視すると失礼ではないかと思うと、借金の支払猶予を求めてしまいます。
良かれと思っても、単純承認になります。
誤解(2)後で説明すれば許してもらえる
相続財産を利用処分しても、後から説明すれば許してもらえると誤解しがちです。
一時的に使っても、後から説明して返せばいいと考えるかもしれません。
単純承認は、相続人としての客観的行動で判断されます。
動機や事情は、考慮されません。
後から説明しても、単純承認になります。
誤解(3)相続人として誠実に責任を果たそうとする
相続放棄をするにあたって、最低限の整理や対応をしようとするかもしれません。
本人の認識では、誠実に責任を果たす姿勢でしょう。
相続人として対応することは、単純承認と評価されます。
本人の認識は、考慮されません。
4相続財産が分からなくても相続放棄を判断するポイント
①相続放棄の期限3か月厳守が優先
相続放棄には、3か月の期限があります。
3か月の期限が過ぎてしまったら、相続放棄はできません。
相続財産調査に時間をかけすぎると、相続放棄ができなくなります。
相続財産調査の範囲に、正解はありません。
後から借金が出てくる不安を消せないなら、相続放棄を選択してもいいでしょう。
相続財産が分からなくても、期限内に結論を出す必要があります。
相続放棄の期限3か月厳守が優先です。
②相続財産の全容把握を目標にしない
相続財産が分からないと、相続放棄をすべきか判断に迷うかもしれません。
被相続人の生活状況によっては、相続財産全体を把握できないのは止むを得ないことです。
相続財産が分からないまま、相続放棄を検討することは不自然ではありません。
③借金の可能性は慎重に判断
被相続人が借金を抱えていた場合、慎重に判断する必要があります。
特に連帯保証人になっていることは、表に出にくいものです。
連帯保証債務の可能性がある場合、相続放棄を選択肢として検討するのは合理的です。
④プラスの財産がないから相続放棄
相続財産調査をしても、目立ったプラスの財産が見つからないことがあります。
後から借金が見つかったら、債務超過になるでしょう。
相続放棄をしたら、借金を相続しません。
目立ったプラスの財産が見つからない場合、安全策として相続放棄を検討します。
5後から財産が見つかっても相続放棄は撤回できない
①3か月以内でも相続放棄は撤回できない
相続放棄が認められると、撤回することはできません。
たとえ3か月以内であったとしても、撤回は認められません。
相続放棄の撤回を認めると、相続手続が混乱するからです。
②後から見つかった借金は返済不要
相続放棄が認められた後に、借金が見つかることがあります。
新たに見つかった借金は、返済不要です。
債権者は相続放棄をしたことを知らずに、督促してくるかもしれません。
相続放棄申述受理通知書を見せると、分かってもらえます。
③後から見つかった財産は相続できない
相続放棄が認められた後に、財産が見つかることがあります。
新たに見つかった財産は、相続できません。
相続放棄をしたときに知らなかったとしても、相続できません。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄を検討している方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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