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1印鑑証明書とは
①市区町村役場に印鑑を登録することができる
15歳以上の人は、自分の印鑑を住民票のある市区町村役場に登録することができます。
印鑑証明書は、本人の登録した印鑑による印影であることを証明する書類です。
市区町村役場に登録した印鑑を実印と言います。
②印鑑証明書が必要になる理由
相続手続を進めようとすると、印鑑証明書を用意するように言われることがあります。
重要な契約や大切な場面では、本人の意思確認のために押印をしてもらうことが多くあります。
特に重要な場面では、実印で押印してもらいます。
実印は本人が大切に保管しているから実印で押印されている場合、本人の意思で押印されたと言えるでしょう。
実印で押印したことを証明するために、印鑑証明書が必要になります。
実印で押印し印鑑証明書を添付することで本人の意思であることが間違いないと第三者にも信用してもらえます。
2遺産分割協議書に実印と印鑑証明書が必要になる
①相続人全員の合意を証明するため実印と印鑑証明書が必要
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産は、相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方について相続人全員で合意をする必要があります。
相続財産の分け方にについて相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方にについて相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
全ての財産についてまとめて合意しなければならないといったことはありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員が実印で押印し印鑑証明書を添付することで、相続手続先に対して相続人全員の合意があることを証明することができます。
②遺産分割協議書を公正証書にすることができる
遺産分割協議書は、公証役場で公正証書にすることができます。
合意内容は公証人が確認をして公正証書にします。
公証人が内容を証明するから、あらためて、実印や印鑑証明書を用意する必要はありません。
③遺産分割調停調書による相続登記で実印と印鑑証明書が不要
相続財産の分け方について相続人全員で話し合いをしても、話し合いによる合意ができないことがあります。
話し合いがつかない場合、家庭裁判所の助力を借りて話し合いをします。
相続財産の分け方について家庭裁判所の助力を借りて話し合いをすることを遺産分割調停と言います。
相続人同士では感情的になってしまうことでも、第三者を交えて話し合いをするとまとまることがあります。
家庭裁判所の助力を借りて遺産分割の合意ができた場合、家庭裁判所が合意内容を書面に取りまとめます。
家庭裁判所が合意内容を取りまとめた文書を遺産分割調停調書と言います。
遺産分割調停調書は、家庭裁判所の証明文が記載されます。
家庭裁判所の証明文があるから、相続人全員が合意していることが分かります。
あらためて、実印や印鑑証明書を用意する必要はありません。
④未成年者は実印と印鑑証明書が使えない
市区町村役場に自分の印鑑を登録できるのは、15歳以上の人です。
15歳以上の人は、自分の実印と印鑑証明書を持つことができます。
未成年者は、有効に法律行為をすることができません。
未成年者が契約などの法律行為をする場合、通常、親などの親権者が代わりに行います。
親などの親権者と未成年者が同時に相続人である場合、親は未成年者を代理できません。
親などの親権者が未成年者を代理できない場合、特別代理人が未成年者を代理します。
遺産分割協議をすることは、契約などと同じく法律行為です。
未成年者は実印と印鑑証明書を取得しても、使うことができません。
未成年者が遺産分割協議をする場合、親などの親権者や特別代理人など代わりの人が合意します。
未成年者の代わりに合意した代わりの人が実印を押印し印鑑証明書を添付します。
3被相続人の住所不明で上申書を提出するとき実印と印鑑証明書が必要
①登記名義人と被相続人が確認できないと相続登記ができない
相続手続をするために登記簿を確認すると、被相続人の住所が古いままになっている場合があります。
登記簿には、被相続人の氏名と住所が書いてあります。
登記簿には、本籍は書いてありません。
戸籍謄本には、被相続人の氏名、本籍が書いてあります。
戸籍謄本には、住所は書いてありません。
戸籍謄本だけ提出した場合、法務局は同姓同名の人かもしれないと判断します。
登記簿に書いてある人が被相続人であるか分からないから、相続登記を認めてくれません。
相続登記を申請する場合、被相続人の住民票の除票と戸籍謄本を提出します。
住民票の除票には、本籍、死亡時の住所、被相続人の氏名が書いてあります。
登記簿に書いてある住所と氏名を住民票の除票で確認します。
登記簿に書いてある住所と氏名が住民票の除票と一致すれば、登記簿に書いてある人と住民票の除票の人が同一人物であると確認できます。
住民票の除票には、本籍、被相続人の氏名が書いてあります。
住民票の除票に書いてある本籍と氏名が戸籍謄本と一致すれば、住民票の除票の人と戸籍謄本の人が同一人物であると確認できます。
登記簿に書いてある人と住民票の除票の人が同一人物で、住民票の除票の人と戸籍謄本の人が同一人物であると確認ができます。
戸籍謄本に書いてある人が、被相続人です。
この確認ができるときに、相続登記を認めてもらえます。
②被相続人の住所の移り変わりを証明できれば実印と印鑑証明書が不要
登記簿の住所が古いままになっていると、住民票の除票の住所と一致しません。
住所が一致しないから法務局は別人であると判断します。
名前は同じだけど別の人に相続が発生したと判断するから、相続登記を認めてもらえません。
登記簿に書いてある人が被相続人であることを証明するために、被相続人の住所の移り変わりを証明しなければなりません。
被相続人の住所の移り変わりを証明する書類は、次のものがあります。
(1)住民票の除票
住民票の除票には、被相続人の氏名、本籍、死亡時の住所の他に、前住所が書いてあります。
住民票の除票に書いてある前住所と登記簿に書いてある住所が一致した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明したと言えます。
(2)戸籍の附票
登記簿に書いてある住所が前住所より前の住所である場合があります。
戸籍の附票には、その戸籍が作られてからの住所の移り変わりが書いてあります。
戸籍が作られて以降であれば、前住所だけでなく前々住所も確認することができます。
戸籍の附票に書いてあるいずれかの住所と登記簿に書いてある住所が一致した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明したと言えます。
(3) 権利証
戸籍の附票の保存期間は、現在は150年です。
令和元年6月20日以前は、たった5年でした。
平成26年6月20日以降に作られた戸籍の附票は、廃棄前に保存期間が延びたので保存されています。
令和元年6月20日以前に廃棄された場合、原則として、取得することはできません。
権利証は、不動産に権利があることを証明する書類です。
被相続人の住所の移り変わりを証明することはできないけど、権利者であることを証明することができます。
法務局は、登記簿に書いてある人が被相続人であると判断し、相続登記を認めてくれます。
③被相続人の住所の移り変わりを証明できないときは実印と印鑑証明書が必要
土地や建物は重要な財産であることが多いので、その権利証は大切に保管してあるでしょう。
権利証は、紛失しても再発行されません。
被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなります。
権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。
権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。
上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。
相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。
その財産を相続する人だけではありません。
その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。
遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。
4住所証明書として印鑑証明書を提出することができる
登記簿には登記名義人の住所が登記されます。
相続登記で登記名義人になる人は、住所証明書を提出する必要があります。
住所証明書として、真っ先に思い浮かぶのは住民票でしょう。
市町村長や登記官などの公務員が職務上証明した書類であれば、住所証明書として認められます。
印鑑証明書は、住所証明書として認められています。
遺産分割協議書に添付した印鑑証明書が1枚あれば、住所証明書としても使うことができます。
印鑑証明書には、印鑑登録をした人の住所が記載されています。
印鑑証明書を取得してから長期間経過した場合、相続人が転居する場合や住居表示が実施される場合があります。
不動産を相続する人は、最新の住所が記載された住民票を提出する必要があります。
印鑑証明書の住所と住民票の住所が違う場合、法務局は別の人であると判断します。
同一人物であることを証明するために、住所の移り変わりを証明しなければなりません。
印鑑証明書の住所から住民票の住所までの住所の移り変わりを証明する書類が追加で必要になります。
住所の移り変わりを証明するより、あらためて取得し直す方が手間が少ないでしょう。
5相続登記で提出する印鑑証明書は有効期限はない
売買や贈与で所有権を移転する場合、印鑑証明書が必要になります。
発行後3か月以内の印鑑証明書を用意してくださいと言われたことがある場合もあるでしょう。
申請する登記の種類や内容によっては、確かに、発行後3か月以内の印鑑証明書が必要になる場合があります。
遺産分割協議書に添付する印鑑証明書については、発行後〇か月以内の印鑑証明書が必要といった定めはありません。
相続登記で提出する印鑑証明書については、取得後に何年経過していても問題はありません。
相続が発生する前に取得した印鑑証明書であっても差し支えありません。
相続登記で印鑑証明書を提出する場合、取得後、〇か月以内でなければ受付しませんといったことはありません。
何年も前に取得した印鑑証明書を提出しても、問題なく相続登記を受け付けてもらえます。
6印鑑証明書は原本還付してもらえる
相続手続には、たくさんの書類が必要になります。
相続登記の申請書には、たくさんの添付書類を提出します。
法務局に提出する相続登記の添付書類は、銀行などの相続手続でも必要になる書類です。
相続登記で提出した書類の多くは、請求すれば原本還付してもらうことができます。
原本還付がされる書類は、法令や先例で決められています。
登記のためだけに作られた書類は、原本還付をしてもらえません。
印鑑証明書は、請求すれば原本還付してもらうことができます。
添付書類の原本還付を希望する場合、原本還付してもらいたい書類をコピーします。
片面等倍でコピーします。
縮小するとコピーがないと扱われて、原本還付してもらえなくなるおそれがあります。
印鑑証明書は市区町村によってはマイナンバーカードを使ってコンビニエンスストアで取得することができます。
コンビニエンスストアで取得した印鑑証明書は、裏表両方をコピーする必要があります。
表面だけコピーを提出した場合、コピーがないと扱われて、原本還付してもらえなくなるおそれがあります。
原本還付をしてもらいたい添付書類のコピーの余白に「原本に相違ありません」と記載して、記名押印をします。
申請書に押印した印章と同一印で押印します。
添付書類のコピーの余白がない場合、コピーの裏に「原本に相違ありません」と記載して、記名押印をしても構いません。
7相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。
ほとんどの方は相続を何度も経験するものではありません。
だれもが手続に不慣れで聞き慣れない法律用語でへとへとになります。
一般的にいって、相続登記は難しい手間のかかる手続です。
不動産は重要な財産であることが多いので、一般の方からすると些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。
申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。
代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。
委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずだから、代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いです。
申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。
適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。
いったん申請を取り下げて、やり直しになります。
相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。
法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。
司法書士はこのような方をサポートしております。
相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。
相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。