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1相続人は遺言書を他の相続人に見せる義務はない
①見せてもらえないと不安に感じるのは自然
遺言書があると聞いたのに、他の相続人が見せてくれないことがあります。
自分だけが不利に扱われるのではないか、不安になるかもしれません。
・一部の相続人が遺言書を保管している
・他の相続人だけが内容を知っている
・自分は遺言書を見せてもらえない
上記の状況であっても、違法ではありません。
冷静でいようとしても、不信感が生まれやすいのは無理からぬことです。
②相続人であっても遺言書の開示を請求する権利はない
遺言書があると聞いたら、内容が気になるのは当然です。
相続人だから、他の相続人に遺言書の開示を請求する権利があるはずと思うかもしれません。
相続人であっても、他の相続人に遺言書の開示を請求する権利は認められていません。
相続人であることと他の相続人に遺言書の開示を請求することは、別問題です。
遺言書の開示を拒まれても、当然、権利侵害ではありません。
そもそも、他の相続人に遺言書の開示を請求する権利は認められていないからです。
権利がないのに他の相続人を責め立てると、不要なトラブルになるおそれがあります。
③相続人に対して遺言書を開示する義務はない
遺言書を保管しているなら、他の相続人に対して遺言書を開示する義務があるはずと思うかもしれません。
相続人は、遺言書を他の相続人に見せる義務はありません。
遺言書を保管していても、他の相続人に遺言書を開示する義務は認められていません。
相続人であっても、遺言書を開示する義務は認められていません。
相続人であることと他の相続人に遺言書の開示することは、別問題です。
遺言書の開示を拒まれても、当然、不正行為ではありません。
2遺言執行者は相続人に遺言書を開示する義務がある
①遺言執行者が遺言書の内容を実現する
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書を作成するときに、遺言執行者を指名することができます。
遺言執行者に就職したら、相続人全員に遺言書の内容を通知する義務があります。
遺言執行者に就職したのに、遺言書を開示しないときは問題になります。
相続人であれば、遺言執行者に対して遺言書の開示を請求する権利があります。
相続人であれば、遺言執行者は遺言書を開示する義務があります。
②相続人は遺言執行者の妨害はできない
遺言執行者が就職したら、相続人は遺言執行を妨害することができません。
遺言執行者が就職したのに通知をしないと、相続人は自分で相続手続を進めようとするでしょう。
結果として、そのつもりがないのに遺言執行の妨害行為をしてしまうおそれがあります。
相続人と遺言執行者がトラブルにならないようにするため、通知が義務付けられています。
③遺言書を開示しない遺言執行者に解任請求ができる
遺言執行者が遺言書を開示しない場合、遺言執行者としての義務を果たしていないと言えます。
義務を果たさない遺言執行者を解任するように、家庭裁判所に請求することができます。
3相続人が遺言書の内容を知る方法
①公正証書遺言は謄本請求ができる
(1)公正証書遺言は公証役場で厳重保管
遺言書を作成する場合、公正証書遺言か自筆証書遺言を作成することがほとんどです。
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。
公正証書遺言を作成したら、遺言書原本は公証役場で厳重に保管されます。
(2)遺言者の生前は答えてもらえない
遺言書には、プライベートな内容が書かれています。
遺言者の生前は、遺言者本人以外の人は内容を知ることができません。
公証役場に遺言書の内容を尋ねても、答えてもらえません。
遺言書を作成したか作成していないかも、プライベートな内容と考えられています。
遺言者の生前は、遺言者本人以外の人は遺言書の有無を知ることができません。
公証役場に遺言書の有無を尋ねても、答えてもらえません。
たとえ相続人になる予定の人でも、遺言者本人ではありません。
たとえ遺言者本人が重度の認知症であっても、答えてもらえません。
重要な秘密だから、公証役場は厳重に管理しています。
(3)遺言者が死亡しても通知されない
公正証書遺言を作成後に遺言者が死亡しても、公証役場からは何も通知されません。
公証役場は、遺言者が死亡したことを知る方法がないからです。
公証役場は、だれが相続人になるか知る方法がないからです。
公正証書遺言を作成した後、公証役場は保管するだけが役割です。
(4)公正証書遺言の有無を調べることができる
遺言者が死亡した後、相続人は単独で公証役場に公正証書遺言の有無を調べることができます。
公正証書遺言の有無は、日本中どこの公証役場でも調べてもらうことができます。
適切な書類があれば、相続人はだれでも調べることができます。
(5)謄本請求で内容確認ができる
公正証書遺言が作成されていることが判明したら、相続人は謄本請求をすることができます。
公正証書遺言の謄本を取得したら、遺言書の内容を知ることができます。
相続人は単独で、公正証書遺言の謄本を取得することができます。
公正証書遺言は、隠す余地がない遺言書です。
②法務局保管制度利用の自筆証書遺言は遺言書情報証明書
(1)自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作る遺言書です。
自筆証書遺言は、保管場所に困ります。
保管場所を家族と共有すると、改ざんや破棄のリスクがあります。
保管場所を家族と共有しないと、紛失や見つけてもらえないリスクがあります。
自筆証書遺言を法務局に提出して、保管してもらうことができます。
法務局保管制度を利用すると、法務局が厳重に保管します。
(2)遺言者の生前は答えてもらえない
遺言書には、プライベートな内容が書かれています。
公証役場同様に法務局も、遺言者本人以外の人に遺言書の内容は答えてくれません。
公証役場同様に法務局も、遺言者本人以外の人に遺言書の有無は答えてくれません。
重要な秘密だから、法務局は厳重に管理しています。
(3)相続人に通知される
法務局保管制度を利用すると、自筆証書遺言を預かっていることが相続人に通知されます。
たとえ通知がされなくても、相続人は自筆証書遺言の保管の有無を調べてもらうことができます。
適切な書類があれば、相続人はだれでも調べることができます。
(4)遺言書情報証明書で内容確認ができる
相続人に通知されるのは、自筆証書遺言を保管している事実のみです。
通知書で遺言書の内容を知ることはできません。
遺言書情報証明書とは、遺言書の内容の証明書です。
遺言書情報証明書を取得したら、遺言書の内容を知ることができます。
相続人は単独で、遺言書情報証明書を取得することができます。
法務局保管制度利用の自筆証書遺言は、隠す余地がない遺言書です。
(5)遺言書情報証明書で相続手続
遺言者が預けた自筆証書遺言は、遺言者本人以外の人に返還されません。
遺言者本人が死亡したら、だれにも返還されません。
遺言書情報証明書を取得して、相続手続を行います。
③自宅保管の自筆証書遺言は検認手続
(1)検認とは家庭裁判所で開封してもらう手続
自宅などで遺品整理をしていると、自筆証書遺言が見つかることがあります。
自筆証書遺言を見つけた人や預かっていた人は、家庭裁判所へ届け出る必要があります。
検認手続とは、自筆証書遺言を家庭裁判所へ提出して開封してもらう手続です。
(2)検認期日は欠席してもいい
自筆証書遺言検認の申立てを受付けたら、相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。
相続人に立会いをしてもらって、遺言書を開封するためです。
家庭裁判所に呼び出されても、欠席しても差し支えありません。
相続人は、単なる立会人だからです。
検認期日に出席すると、自分の目で開封の瞬間を確認することができます。
遺言書の状態を自分で確認できるから、安心できるでしょう。
検認期日に欠席しても、不利に扱われることはありません。
(3)検認調書謄本で内容確認
検認期日では、遺言書の内容や形状を確認します。
家庭裁判所が確認した内容は、検認調書に取りまとめられます。
検認手続は、遺言書の偽造変造を防止する手続だからです。
相続人は単独で、検認調書の閲覧やコピーを請求することができます。
たとえ検認期日に欠席しても、検認調書の閲覧やコピーを請求することができます。
検認調書を見れば、遺言書の内容を知ることができます。
検認調書は、相続人間で隠す余地がありません。
(4)検認しないと相続手続ができない
検認手続は遺言書の偽造変造を防止する手続であって、遺言書の有効無効は判断しません。
検認手続が必要なのに検認していないと、相続手続を進めることができません。
相続手続先は、検認済証明書の提出を求めるからです。
検認済証明書がないと、銀行の預貯金は口座凍結解除ができません。
検認済証明書がないと、不動産の名義変更ができません。
(5)検認を怠るとペナルティー
自宅などで見つけた自筆証書遺言は、すみやかに検認手続をする必要があります。
検認が必要なのに検認を怠ると、ペナルティーになります。
ペナルティーの内容は、5万円以下の過料です。
(6)遺言書を隠すと相続欠格のおそれ
自分の利益のために遺言書を隠すと、相続欠格になります。
相続欠格とは、相続人の資格を奪う制度です。
すみやかに自筆証書遺言検認の申立てをしないと、他の相続人から疑いの目を向けられるでしょう。
相続人間で、深刻なトラブルになるおそれがあります。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書がある場合、相続財産について、相続人全員で、分け方を合意する必要はありません。
もっともトラブルになりやすい遺産分割協議で、相続人全員で合意をしなくていいのは大きなメリットです。
せっかく遺言書を作成しても、遺族に見つけてもらえなければ意味がありません。
同時に、死亡する前に自分に都合の悪い遺言書を隠したり捨ててしまったりする心配があります。
さらに、遺言書には厳格な書き方ルールがあります。
ルールが守られていない遺言書は無効になります。
書き方のルールは守られていても、内容があいまいだったり、不適切であったために、実現できない遺言書も少なくありません。
せっかく遺言書を書くのであれば、家族を幸せにできる遺言書を確実に作りましょう。
司法書士は確実な遺言書を作るお手伝いをします。
家族のために適切で確実な遺言書を作りたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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