このページの目次
1表題登記と所有権保存登記のちがい
①不動産登記には2種類ある
不動産登記には、2種類あります。
表題登記と権利登記です。
表題登記とは、土地や建物の物理的状況を表示する登記です。
権利登記とは、土地や建物の権利関係を表示する登記です。
所有権保存登記は、権利登記のひとつです。
②表題登記とは
埋め立てや土地の隆起があった場合、新たな土地が生じます。
新たな土地が生じた場合、土地表題登記をします。
土地の所在や地番、地目などを登記します。
新しく建物を建設した場合、新たな建物が生じます。
新たな建物が生じた場合、建物表題登記をします。
新たな土地が生じることはめったにありません。
単に表題登記といったら、建物表題登記を指すことがほとんどです。
建物の表題部に登記される主な項目は、次のとおりです。
(1)種類
居宅、店舗、事務所など
(2)構造
建物の主たる構成材料、屋根の種類、階数など
(3)構成材料による区分
木造、石造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造など
(4)屋根の種類による区分
瓦葺、スレート葺、亜鉛メッキ鋼板葺、陸屋根など
(5)階数による区分
平家建、2階建など
③所有権保存登記とは
建物表題登記をした後、初めて所有者としてする登記を所有権保存登記と言います。
所有権保存登記をした場合、所有者として第三者に対して権利主張をすることができます。
所有権保存登記をしていない場合、第三者が所有者であると権利主張したときに文句を言うことができません。
所有者として第三者に対して権利主張をすることができるのは、登記の重要な機能です。
所有者として第三者に対して権利主張をすることができる機能を対抗力と言います。
表題登記をした場合、所有者が記録されます。
登記簿の表題部に、所有者が登記されます。
表題部の所有者の登記には、対抗力がありません。
表題部に所有者と登記されても、所有者として第三者に対して権利主張をすることができません。
表題部に所有者と登記された場合には、対抗力がないからです。
所有権保存登記をした場合には、対抗力があります。
2表題部所有者に相続が発生したときの所有権保存登記
①相続した建物は相続財産
新たな建物が生じた場合、建物表題登記をします。
建物表題登記ができたら、所有権保存登記をします。
建物表題登記は、建物完成から1か月以内に登記をしなければなりません。
所有権保存登記は、原則として、登記をする義務はありません。
所有権保存登記をしないと、所有者として第三者に対して権利主張をすることができないだけです。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしないまま長期間経過していることがあります。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしないまま、表題部に所有者と記録された人が死亡することがあります。
相続が発生した場合、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
被相続人が建物を所有していた場合、所有していた建物は相続財産になります。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしない建物であっても、所有していた建物は相続財産になります。
②相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定
相続が発生すると、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。
相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議といいます。
相続財産の分け方は、相続人全員による合意で決定します。
相続人全員で合意がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協遺書は、相続人全員の合意内容の証明書です。
③建物を相続する相続人から所有権保存登記
所有権保存登記の申請をすることができるのは、原則として、表題部所有者です。
表題部所有者が死亡した場合、表題部所有者の相続人が所有権保存登記の申請をすることができます。
遺産分割協議によって建物を相続する相続人を決めることができます。
建物を相続する相続人が所有権保存登記の申請をすることができます。
④被相続人が生前に建物を売却していたら
所有権保存登記は、原則として、登記をする義務はありません。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしないまま被相続人が建物を売却していることがあります。
被相続人が建物を売却した場合、建物は被相続人のものではありません。
被相続人が建物を所有していない場合、建物は相続財産になりません。
被相続人から建物を買った人は、建物について所有権移転登記をして欲しいと望むでしょう。
所有権移転登記をしていない場合、所有者として第三者に対して権利主張をすることができないからです。
第三者から所有者であると権利主張がされたときに、買主が文句を言うことができなくなります。
被相続人は建物を売却したのだから、買主に対して所有権移転登記をする義務があります。
買主に対して所有権移転登記をする義務を果たさないまま相続が発生することがあります。
相続人全員は、所有権移転登記をする義務を相続します。
相続人全員は、買主に対して所有権移転登記をする義務があります。
買主に対して所有権移転登記をするため、所有権保存登記をしなければなりません。
所有権保存登記は、建物表題登記をした後、初めて所有者としてする登記です。
初めて所有者としてする登記をしないと、所有権移転登記をすることができません。
相続人は所有権保存登記をして、買主に対して所有権移転登記をします。
所有権保存登記は、被相続人が所有者となる登記です。
所有者が死亡した後であっても、死亡した所有者名義の登記をすることができます。
被相続人が過去に所有者だったからです。
被相続人が生前に建物を売却したから、相続人は建物を相続していません。
相続人は建物を相続していないから、相続人名義の所有権保存登記をすることはできません。
区分建物でない建物の場合、買主に対して直接所有権保存登記をすることはできません。
所有権保存登記の申請をすることができるのは、表題部所有者またはその相続人だからです。
建物の買主は、表題部所有者またはその相続人のどちらにも該当しないでしょう。
建物の買主は、所有権保存登記をすることができません。
2表題部所有者に数次相続が発生したときの所有権保存登記
①数次相続とは
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまらないうちに相続人が死亡してしまうことがあります。
数次相続とは、話し合いがまとまらないうちに相続人が死亡して新たな相続が発生することです。
死亡した相続人に相続が発生した場合、相続人の地位が相続されます。
最初の相続で話し合いをする地位が、死亡した相続人の相続人に相続されます。
数次相続は、どこまででも続きます。
法律上の制限は、設けられていません。
②数次相続が発生したときは最終の相続人から所有権保存登記
所有権保存登記の申請をすることができるのは、表題部所有者またはその相続人です。
表題部所有者に数次相続が発生した場合、最終の相続人から所有権保存登記を申請することができます。
数次相続が発生後に所有権保存登記をする場合、中間の相続人が単独である必要はありません。
中間の相続人が単独である場合も中間の相続人が複数である場合も、直接最終の相続人名義の所有権保存登記をすることができます。
通常は、権利登記がされているでしょう。
所有権登記がされている所有者が死亡した場合、所有権移転登記をします。
数次相続が発生後に所有権移転登記をする場合、中間の相続人が単独であるときのみ直接最終の相続人名義の所有権移転登記をすることができます。
所有権移転登記で直接最終の相続人名義にするためには、中間の相続人が単独である必要があります。
中間の相続人が複数である場合、いったん複数の相続人で相続登記をします。
あらためて相続登記をして最終の相続人名義にする必要があります。
数次相続が発生後に所有権移転登記をする場合、中間の相続人が複数であるときは直接最終の相続人名義の所有権移転登記をすることができません。
3相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
相続登記も簡単にできる、ひとりでできたという記事も散見されます。
多くの場合、不動産は重要な財産でしょう。
登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いものです。
法務局の登記手続案内を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえます。
案内対象と異なる事例に関しては、わざわざ説明してくれません。
知識のない方にとっては、案内対象の事例かどうか判断がつかないでしょう。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。
表題部所有者などは、一般的には聞き慣れないことがほとんどでしょう。
一般向けの相続登記の解説書などに説明されていることはほとんどありません。
通常の相続登記と異なることにも気づかないでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。