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1法定相続情報証明制度で相続手続を簡素化
①法定相続情報一覧図は公的書類
法定相続情報証明制度とは、法定相続情報一覧図を法務局に認証してもらう制度です。
法定相続情報一覧図は、被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのかを取りまとめた書類です。
法定相続情報一覧図があると、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かります。
法定相続情報一覧図を利用して相続手続をする場合、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
法定相続情報一覧図は、法務局の認証文が入った公的証明書だからです。
法定相続情報一覧図は、多くの相続手続先で高い信頼性があります。
法定相続情報一覧図は、公的証明書です。
②法定相続情報証明制度の背景
法定相続情報証明制度の主な目的は、相続手続の負担軽減と相続登記の促進です。
不動産の権利を取得したら、すぐに登記申請をします。
登記がないと、権利主張ができないからです。
不動産登記簿を見たら、不動産の権利関係が分かります。
相続登記がされていないと、所有者がだれなのか分からなくなります。
所有者が分からない土地が増えると、公共事業や災害復興の現場で困ります。
法定相続情報証明制度によって、相続登記の促進をしています。
法定相続情報証明制度と相続登記義務化によって、所有者不明土地解消につなげる目的があります。
2法定相続情報証明制度のメリットデメリット
メリット①手数料が無料
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出に、手数料はかかりません。
保管及び交付の申出をするときに、法定相続情報一覧図の必要通数を申し出ることができます。
複数枚の法定相続情報一覧図を発行してもらっても、手数料は無料です。
メリット1つ目は、手数料が無料であることです。
メリット②5年間は何度でも再発行をしてもらえる
法定相続情報一覧図が不足した場合、再発行をしてもらうことができます。
法定相続情報一覧図の保管期限は、5年間です。
保管期限を過ぎると順次、廃棄されます。
最初の申出から5年間は何度でも、再発行をしてもらうことができます。
メリット2つ目は、5年間は何度でも再発行をしてもらえることです。
メリット③登記官の認証文が入る
法定相続情報一覧図は、登記官が点検して問題がないときに発行します。
法定相続情報一覧図は、登記官の認証文が入る公的証明書です。
メリット3つ目は、登記官の認証文が入ることです。
メリット④司法書士などの専門家に依頼できる
法定相続情報一覧図は、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反すると、書き直しになります。
相続人が自分で作ることが難しい場合、司法書士などの専門家に依頼することができます。
メリット4つ目は、司法書士などの専門家に依頼できることです。
メリット⑤相続手続がスムーズになる
相続手続では、たくさんの戸籍謄本の束を提出する必要があります。
受取る相続手続先にとっても、たくさんの戸籍謄本を読むのは手間がかかる事務です。
法定相続情報一覧図があると、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かります。
戸籍謄本の読解をしなくていいから、相続手続がスムーズに進みます。
メリット5つ目は、相続手続がスムーズになることです。
メリット⑥郵送申請ができる
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の提出先は、次のとおりです。
(1)被相続人の死亡時の本籍地
(2)被相続人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)被相続人名義の不動産の所在地
窓口まで出向いて提出しても郵送で提出しても、差し支えありません。
メリット5つ目は、郵送申請ができることです。
デメリット①戸籍謄本等を集めるのがタイヘン
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書を提出しても、戸籍謄本等は法務局で集めてくれるわけではありません。
必要になるのは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍です。
デメリット1つ目は、戸籍謄本等を集めるのがタイヘンなことです。
デメリット②法定相続情報一覧図が使えないケースがある
次のケースは、法定相続情報一覧図が使えません。
(1)戸籍等が集められないケース
(2)日本国籍のない人がいるケース
(3)子ども全員が相続放棄したケース
(4)廃除された相続人がいるケース
(5)欠格の相続人がいるケース
(6)子どもが認知されたケース
(7)胎児が出生したケース
法定相続情報一覧図に記載されても、相続人でないケースがあります。
本来の相続人を証明する書類を追加して、相続手続をします。
デメリット2つ目は、法定相続情報一覧図が使えないケースがあることです。
デメリット③法務局の審査で時間がかかる
家系図と戸籍謄本等を提出して登記官に点検してもらうため、時間がかかります。
法務局の審査状況によって異なりますが、1~2週間ほどかかります。
デメリット3つ目は、法務局の審査で時間がかかることです。
デメリット④家系図作成が負担になる
法務局は、提出された家系図と戸籍謄本等の点検をするだけです。
家系図は、法務局で作ってもらえるものではありません。
デメリット4つ目は、家系図作成が負担になることです。
デメリット⑤書き方ルールが厳格
法定相続情報一覧図は、公的証明書です。
認証文をつけるにふさわしい厳格な書き方を守る必要があります。
デメリット5つ目は、書き方ルールが厳格なことです。
3法定相続情報一覧図の取得方法
手順①必要書類を集める
どういう続柄の人が相続人であるのか、確認できる書類を準備します。
必要な書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(2)被相続人の住民票の除票
(3)相続人全員の現在戸籍
(4)申出人の本人確認書類
(5)相続人全員の住民票
(6)委任状
法定相続情報一覧図は、相続人の住所を記載しても記載しなくても構いません。
多くの場合、相続手続で相続人の住所確認がされることから住所が記載してあると便利です。
手順②法定相続情報一覧図を作成
A4サイズの白紙に縦置きで、家系図を書きます。
パソコンなどで作っても手書きで作っても、差し支えありません。
法務局は、提出された家系図と戸籍謄本等を点検するだけです。
戸籍謄本等を提出するだけで、作ってくれるわけではありません。
法定相続情報一覧図は公的書類だから、書き方が厳格に決められています。
下から5センチは余白にします。
法務局が認証文を入れるためです。
手順2つ目は、法定相続情報一覧図を作成することです。
手順③申出書を作成
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書に、必要事項を記入します。
記入のみで、押印は不要です。
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書は、法務局のホームページからダウンロードすることができます。
手順3つ目は、申出書を作成することです。
手順④法務局へ提出
申出書と必要書類を取りまとめて、法務局へ提出します。
申出書の提出先は、次の地を管轄する法務局です。
(1)被相続人の死亡時の本籍地
(2)被相続人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)被相続人名義の不動産の所在地
被相続人の最後の住所地を管轄する法務局に提出したい場合、被相続人の最後の住所地を証明する書類を提出する必要があります。
法務局の窓口に出向いて提出する他に、郵送で提出することができます。
手順4つ目は、法務局へ提出です。
手順⑤法定相続情報一覧図の発行
提出書類に問題があれば、法務局から連絡があります。
すみやかに、対応します。
問題がなければ、法定相続情報一覧図が発行されます。
申出書を提出してから発行されるまで、2週間程度かかります。
郵送で提出したときは、返信用の切手と封筒を入れておくと返送してくれます。
手順5つ目は、法定相続情報一覧図の発行です。
4法定相続情報一覧図でできること
できる①相続登記
法定相続情報一覧図は、相続登記をするときに利用することができます。
法定相続情報一覧図には、右上に法定相続情報番号が記載されています。
相続登記では法定相続情報一覧図を紙で提出することもできるし法定相続情報番号を提出することもできます。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること1つ目は、相続登記です。
できる②預貯金の凍結解除
法定相続情報一覧図は、預貯金の凍結解除をするときに利用することができます。
銀行などの口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。
口座の凍結とは、口座取引を停止することです。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
複数の法定相続情報一覧図が発行されるから、同時進行で相続手続を進めることができます。
できること2つ目は、預貯金の解約です。
できる③信用情報機関への照会
信用情報機関に照会することで、被相続人のマイナスの財産を調査することができます。
信用情報機関は、次の3つがあります。
・日本信用情報機構(JICC)
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)
法定相続情報一覧図は、信用情報機関への照会をするときに利用することができます。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること3つ目は、信用情報機関への照会です。
できる④生命保険の照会と請求
法定相続情報一覧図は、生命保険の照会をするときに利用することができます。
生命保険照会制度を利用することで、生命保険の有無や保険会社を調査することができます。
生命保険照会制度で生命保険会社が分かったら、各生命保険会社に契約内容を照会し保険請求をします。
法定相続情報一覧図は、保険請求をするときも利用することができます。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること4つ目は、生命保険の照会と請求です。
できる⑤証券保管振替機構への照会と凍結解除
法定相続情報一覧図は、証券保管振替機構へ登録済加入者情報の開示請求をするときに利用することができます。
登録済加入者情報の開示請求で分かるのは、口座を開設している証券会社のみです。
証券会社の口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。
法定相続情報一覧図は、証券会社の口座の凍結解除をするときに利用することができます。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること5つ目は、証券保管振替機構への照会と凍結解除です。
できる⑥自動車の名義変更
法定相続情報一覧図は、自動車の名義変更をするときに利用することができます。
自動車の名義変更は、運輸支局で手続をします。
軽自動車の名義変更は、軽自動車検査協会で手続をします。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること6つ目は、自動車の名義変更です。
できる⑦死亡による役員変更登記
登記された役員が死亡した場合、死亡による役員変更登記が必要です。
法定相続情報一覧図は、死亡による役員変更登記をするときに利用することができます。
法定相続情報一覧図を利用すると、戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること7つ目は、死亡による役員変更登記です。
できる⑧死亡による年金手続
法定相続情報一覧図は、死亡による年金手続をするときに利用することができます。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること8つ目は、死亡による年金手続です。
できる⑨相続税申告
法定相続情報一覧図は、相続税申告をするときに利用することができます。
法定相続情報一覧図を利用すると、たくさんの戸籍謄本を提出する必要がありません。
できること9つ目は、相続税申告です。
5法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出と相続登記を司法書士に依頼するメリット
法定相続情報一覧図と相続関係説明図は、ポイントを押さえて書くことが重要です。
相続手続が少ない場合など、法定相続情報一覧図を作るまでもないこともあるでしょう。
相続手続をする手続先が多い場合は、法定相続情報一覧図は大変便利です。
要領よく相続手続を進めるためには、不動産の相続登記を先行させるのがおすすめです。
相続登記は、相続手続の中でも難易度が高い手続です。
司法書士などの専門家は、相続登記に必要な戸籍謄本などの書類をすべて準備してくれるからです。
難易度の高い相続登記で使った書類があれば、銀行などで書類の不足を指摘されることは大幅に減ります。
すみやかな手続を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。