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1株式の相続で現金化するメリット
メリット①資産の流動性の向上
相続した株式は、市場で売却することができます。
売却した後は現金になるから、利用がしやすくなります。
株式の相続で現金化すると、資産の流動性が向上します。
メリット1つ目は、資産の流動性の向上です。
メリット②円滑な遺産分割
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
被相続人が株式を保有していた場合、株式は相続財産です。
保有していた株式の銘柄や株式数によっては、公平に分けにくいことがあります。
現物のままで分けにくい場合、売却して現金で分けることができます。
株式の相続で現金化すると、円滑な遺産分割が期待できます。
メリット2つ目は、円滑な遺産分割です。
メリット③市場や会社へのリスク回避
株式の価格は、日々変動します。
市況によっては、20%程度の変動リスクがあります。
相続人によっては、株価の変動リスクに耐えられないかもしれません。
株価の変動リスクが受け入れられない場合、株式の売却が選択肢になります。
株式の相続で現金化すると、市場や会社へのリスク回避になります。
メリット3つ目は、市場や会社へのリスク回避です。
メリット④納税資金の確保
相続財産全体の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。
相続税は、原則として、現金で一括納付をする必要があります。
納税資金が充分にない場合、相続財産を売却して納税資金を準備する必要があります。
株式は不動産などと較べて現金化しやすい財産だから、売却のニーズが高まります。
メリット4つ目は、納税資金の確保です。
2株式の相続で現金化する流れ
手順①証券会社を探す
被相続人が上場株式を保有している場合、証券会社に口座を持っているでしょう。
証券会社と取引があれば、通常、残高報告書が届いているはずです。
自宅などで保管されている書類を確認すると、取引がある証券会社が分かります。
銀行などの預貯金口座の取引履歴を確認すると、配当金などが入金されていることがあります。
被相続人が複数の証券会社と、取引していることがあります。
ネット証券なども見落としなく、よく確認しましょう。
取引がある証券会社が分からない場合、証券保管振替機構に照会することができます。
手順1つ目は、証券会社を探すことです。
手順②証券会社へ連絡
取引がある証券会社が判明したら、口座の持ち主を死亡したことを連絡します。
ひとまずコールセンターなどに、電話するといいでしょう。
相続手続の案内を希望と伝えて、必要書類や手続きの手順を詳しく聞いておきます。
証券会社によって、支店窓口に出向いて手続をするように案内されます。
複数の証券会社と取引があった場合、すべての証券会社に連絡します。
口座の持ち主を死亡したことを連絡すると、口座が凍結されます。
口座凍結とは、口座取引を停止することです。
口座凍結になると、入出金や株式などの売買はできなくなります。
手順2つ目は、証券会社へ連絡です。
手順③遺産分割協議書の作成
上場株式の分け方を決めるため、相続人全員で話し合いをします。
話し合いがまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。
遺産分割協議書とは、相続人全員による合意内容の証明書です。
遺産分割協議書の内容に間違いがないか、相続人全員に確認してもらいます。
間違いがないことを確認したうえで、相続人全員が記名し実印で押印します。
実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
相続人が各地に住んでいると、遺産分割協議書の作成が難航しがちです。
郵送の手間などで手続に時間がかかると、トラブルに発展するおそれがあります。
相続人全員の合意ができたら、すみやかに協議書の作成をします。
手順3つ目は、遺産分割協議書の作成です。
手順④必要書類の準備
証券会社から、相続手続の案内がされます。
指定の手続用紙や必要書類のリストが届きます。
証券会社の案内に従って、必要書類を準備します。
遺言書がないときの代表的な必要書類は、次のとおりです。
・証券会社指定の株式名義書き換え請求書
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の現在戸籍
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
必要書類や手続手順は証券会社によって若干異なります。
必要な書類が準備できないと、相続手続が進められなくなります。
手順4つ目は、必要書類の準備です。
手順⑤相続人名義の口座開設
被相続人の株式を引き継ぐため、相続する人は証券会社に口座を開設します。
口座開設には、本人確認書類やマイナンバーが分かる書類が必要です。
手順5つ目は、相続人名義の口座開設です。
手順⑥書類提出
必要書類が全部揃ったら、証券会社に提出します。
証券会社によっては、郵送提出のみであることがあります。
手順書に添って、書類を提出します。
手順6つ目は、書類提出です。
手順⑦移管手続完了
提出書類に問題がなければ、相続人の口座に移管されます。
相続人が売却できるのは、移管された後です。
書類を提出してから、移管手続が完了するまでに1か月程度かかります。
相続人の口座に移管されると、被相続人の口座は閉鎖されます。
複数の証券会社に口座がある場合、各証券会社に対して同様の手続をします。
手順7つ目は、移管手続完了です。
手順⑧株式の売却
相続人の口座に移管されたら、相続人が自由に処分することができます。
換価分割をする場合、相続人全員の合意に従って売却します。
手順7つ目は、株式の売却です。
3株式の相続で現金化するポイント
①被相続人名義のまま売却できない
上場株式は、証券会社の口座で管理されています。
口座の持ち主が死亡したことを証券会社が知った時点で、証券口座は凍結されます。
被相続人名義のまま、株式を売却することはできません。
現金化する場合、株式の名義変更を省略できません。
必要書類を準備して、証券会社に相続手続をします。
相続人名義の口座を開設し、株式を移管します。
②代表相続人名義にした後に売却が主流
株式の相続で現金化する場合、2つの方法があります。
・代表相続人の口座に移管し、売却代金を相続人で分ける方法
・各相続人の口座に移管して、各相続人が売却する方法
代表相続人の口座に移管し、売却代金を相続人で分ける方法が一般的です。
遺産分割協議でどちらの方法にするのか、相続人全員で充分に合意しておきます。
③株価の急騰リスク急落リスクがある
株式の価格は、日々変動します。
株式には、株価の急騰リスクと急落リスクがあります。
売却のタイミングによっては、売却代金が大きく影響を受けるでしょう。
遺産分割協議では、売却のタイミングや売却方法についても充分に合意しておきます。
例えば、急騰リスクと急落リスク緩和のため、複数回に分けて売却する方法があります。
相続人間のトラブル回避のため、合意内容は遺産分割協議書に明記しておくといいでしょう。
④換価分割で確定申告
換価分割とは、相続財産を売却して売却代金を分ける遺産分割の方法です。
相続した株式を売却して現金で分けるのは、換価分割です。
換価分割をする場合、譲渡所得が発生することがあります。
譲渡所得を得た場合、確定申告が必要になります。
売却代金をを取得した相続人全員が確定申告をします。
4非上場株式は買い手探しが最大のハードル
①非上場株式は譲渡制限がある
被相続人が株式投資をするのではなく、会社経営をしていることがあります。
経営していた会社が株式会社である場合、会社の株式は家族で保有しているでしょう。
非上場会社の株式は、ほとんどの場合、譲渡制限株式です。
譲渡制限株式とは、株式を譲渡により取得するためには会社の承認を必要とする株式です。
小規模な会社は、親族など身内のみで経営しています。
身内以外の人が株主となって、会社の経営に口出しすることを嫌がります。
会社にとって好ましくない人が株主となることを防ぐため、譲渡制限が付いています。
非上場株式は、譲渡制限株式がほとんどです。
②譲渡制限株式の売却で株式会社の承認が必要
相続で譲渡制限株式を取得するときは、会社の承認は不要です。
譲渡制限株式を譲渡によって取得する場合、会社の承認が必要です。
会社にとって好ましくない人が譲渡制限株式の買主になった場合、株式会社は承認を拒絶することができます。
非上場株式の売却は、買い手探しが最大のハードルです。
買い手の候補者は、次のとおりです。
・株式の発行会社
・経営陣
・主要株主
・他の株主
発行会社や親族以外に対して株式を売却することは、ほとんどできません。
③非上場株式の売却価格決定が重要
非上場株式には、市場価格がありません。
相続税申告をする場合、財産評価基本通達に基づいて評価します。
財産評価基本通達による非上場株式の評価方法は、次のとおりです。
・類似業種比準方式
・純資産価額方式
・配当還元方式
非上場株式の売却価格決定は、上記の評価額を参考にします。
税金の計算における公平さを保つため、公平な価格を基準にするからです。
財産評価基本通達による評価額と大きく乖離する場合、課税リスクが生じます。
例えば、相続税評価額1株1万円の非上場株式を1株2000円で売却した場合、差額1株8000円が贈与を見なされるおそれがあります。
贈与と判断されると、贈与税が課されます。
株式の発行会社や経営陣が買い取る場合、極端に低額提示のリスクがあります。
売却価格決定で課税リスクを回避するため、税理士などのサポートが必要になるでしょう。
買い手候補が見つかったら、株式の価格や取引条件を個別交渉します。
5株式の名義変更を司法書士に依頼するメリット
上場会社の株式は市場で自由に売買できますが、非上場会社の場合、市場で取引ができません。
売却したいと思ったら、買ってくれる人を探して相対で取引することになります。
非上場会社は多くは小規模で、身内で経営しています。
投資目的の株取引でなく、会社経営権に密接にかかわります。
通常の相続手続よりも、トラブルになる要素は多いと言えるでしょう。
株式の名義変更でもめごとを起こしたくない方は、司法書士などの専門家に依頼するのをおすすめします。