このページの目次
1口座凍結で未支給年金が発生する
①口座の持ち主が死亡すると口座凍結
銀行などの口座は、日常生活に欠かせません。
多くの人は、銀行などに口座を持っているでしょう。
口座の持ち主が死亡したら、口座は凍結されます。
口座凍結とは、口座取引をできなくすることです。
口座が凍結されると、預入れや引出しなどの口座取引はすべてできなくなります。
口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。
②年金は死亡月まで支給される
口座が凍結されると、口座取引はすべてできなくなります。
振込みもできないし、公共料金などの引落しもできなくなってしまいます。
年金を受け取っている人は、口座振り込みで受け取っているでしょう。
年金は、後払いで支給されます。
例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。
年金は、死亡月まで支給されます。
年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。
4月分の年金は、6月に振込みがされます。
多くの場合、6月には口座が凍結しているでしょう。
4月分の年金は、受け取ることができません。
未支給年金とは、受け取ることができなかった年金です。
年金は後払いだから、必ず未支給年金が発生します。
口座凍結で、未支給年金が発生します。
2公的年金の未支給年金は相続財産ではない
①未支給年金は遺産分割協議の対象ではない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人が年金を受け取っていたから、受け取るはずの年金は相続財産に見えるかもしれません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続財産は、民法に基づいて相続人が相続します。
未支給年金は、別の法律に基づいて一定の遺族に支給されます。
公的年金の未支給年金は、相続人全員で分け方を決めることはできません。
公的年金の未支給年金は、遺産分割協議の対象ではないからです。
②相続放棄をしても未支給年金
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続財産は、相続人が相続します。
はじめから相続人でなくなるから、相続財産を相続することはできません。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続することはありません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
一定の遺族は、未支給年金を受け取ることができます。
一定の遺族の中には、相続人である人もいるし相続人でない人もいるでしょう。
相続人である人も相続人でない人も、一定の遺族であれば未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を受け取る権利は、一定の遺族の固有の権利です。
相続財産を処分した場合、単純承認をしたとみなされます。
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
死亡した被相続人が受け取るはずの年金を受け継いだものではありません。
法律で認められた遺族の固有の権利です。
被相続人から相続した相続財産ではないから、相続放棄とは無関係です。
相続人が相続放棄をした場合でも相続放棄をしない場合でも、法律の定めに基づいて未支給年金を受け取ることができます。
未支給年金を受け取っても、相続の単純承認をしたと言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではなく遺族の固有の財産だからです。
相続放棄をした後に未支給年金を請求した場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取った後に相続放棄をした場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、遺族の固有の権利だから、相続放棄とは無関係です。
すでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、未支給年金を受け取ることができます。
③事実婚・内縁の配偶者が未支給年金
公的年金の未支給年金は、一定の遺族に支給されます。
一定の遺族の条件に、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人という条件があります。
相続人になる人は、民法で決まっています。
相続人になる人には、生計を維持されていた人という条件はありません。
配偶者は、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人でしょう。
死亡した年金受給者に生計を維持されていた配偶者は、法律上の配偶者でないことがあります。
相続人になる配偶者は、法律上の配偶者に限られます。
事実婚・内縁の配偶者は、相続人になりません。
事実婚・内縁の配偶者は、公的年金の未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を請求する権利は、一定の遺族の固有の権利だからです。
公的年金の未支給年金は相続財産ではないから、事実婚・内縁の配偶者が受け取ることができます。
3未支給年金の受取方法
①未支給年金を請求できる人
未支給年金を受け取ることができるのは、次の人のうち優先順位の高い人です。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
(7)その他これら以外の3親等内の親族
未支給年金は、年金を受け取っていた人と生計を同じくしていた人が受け取ることができます。
遺族年金と未支給年金は、別の制度です。
遺族年金を受け取ることができる場合で、かつ、未支給年金を受け取ることができる場合、それぞれの手続が必要です。
②未支給年金を請求に必要な書類
未支給年金を受け取るためには、受給権者死亡届と未支給年金・未払い給付金請求書の提出が必要です。
受給権者死亡届に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)死亡の事実を明らかにできる書類
(2)死亡の事実を明らかにできる書類は、戸籍謄本、市区町村長に提出した死亡診断書のコピー、死亡届の記載事項証明書などです。
未支給年金・未払い給付金請求書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)被相続人と請求者の続柄が分かる戸籍謄本
(3)被相続人と請求者が生計を同じくしていたことが分かる住民票と除票
(4)受け取りを希望する金融機関の通帳
(5)生計同一についての申立書(被相続人と請求者が別世帯の場合)
(2)戸籍謄本(3)住民票は、死亡日より後に発行されたものが必要です。
(2)戸籍謄本(3)住民票は、原本を返してもらうことができます。
③未支給年金は5年以内に請求
未支給年金を受け取るためには、請求をしなければなりません。
未支給年金を受け取る権利は、何もしないで放置すると時効で消滅します。
年金支払い日の翌月の初日から起算して5年で時効消滅します。
5年経過で時効消滅すると、未支給年金を受け取ることができなくなります。
未支給年金を受け取る権利が亡くなる前に、請求しましょう。
④繰り下げ受給の待機中の死亡は未支給年金で請求できる
被相続人が年金の繰り下げ受給の待機中に死亡する場合があります。
年金の繰り下げ受給の待機中に死亡した場合、本人が受け取るはずだった年金を遺族が請求することができます。
65歳から死亡した月の分までの年金が、未支給年金として支給されます。
未支給年金には、待機した分の増額は反映されません。
この場合、時効の起算は65歳からです。
⑤未支給年金が振り込まれるまでに3か月
未支給年金を請求した後、問題がなければ3か月程度で振り込まれます。
未支給年金の請求書を提出した後、未支給年金支給決定通知書が発送されます。
支給されないときは、不該当通知書が発送されます。
⑥未支給年金に相続税はかからない
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続税法は、相続財産でないのに相続税がかかる財産を定めています。
相続財産でないのに相続税がかかる財産をみなし相続財産と言います。
公的年金の未支給年金は、見なし相続財産でもありません。
公的年金の未支給年金は、相続税の対象ではありません。
⑦未支給年金は受取人の所得になる
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
受取人の固有の財産だから、受取人の所得になります。
受け取る年金や金額によっては、所得税がかかります。
受け取った年の翌年3月15日までに確定申告が必要になる場合があります。
4企業年金の未支給は相続税の対象になる
①現職死亡の企業年金は死亡退職金扱い
社員が現職で死亡し企業年金が遺族に支払われた場合、死亡退職金と見なされます。
死亡退職金は、相続財産でないのに相続税がかかる財産です。
死亡退職金には、非課税限度額があります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
死亡退職金が非課税限度額以下である場合、相続税は課税されません。
相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合、非課税の適用はありません。
②企業年金受給中の死亡は定期金扱い
企業年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、定期金と見なされます。
定期金に関する権利は、相続財産です。
定期金にかかる権利は、非課税枠はありません。
5私的年金の未支給は相続税の対象になる
被相続人が個人年金の契約を締結していることがあります。
年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、年金受給権を相続したと言えます。
私的年金の年金受給権は、相続財産です。
私的年金の年金受給権は、非課税枠はありません。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼すれば、遺族のお疲れも軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続きを丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。