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1戸籍謄本を請求できる人は限られている
①本人・配偶者・直系血族は請求できる
相続が発生したら、相続人は相続手続をします。
相続手続の最初の難関は、相続人調査です。
相続の手続先には、相続人であることを客観的に証明する必要があります。
相続人を客観的に証明するため、戸籍謄本を取得します。
戸籍には、その人の身分事項がすべて記載されています。
身分事項とは、その人の出生、結婚、離婚、養子縁組、離縁、認知、死亡、失踪など身分関係の項目です。
身分事項は、その人のプライベートな内容です。
戸籍謄本を請求できる人は、限られています。
本人、配偶者、直系血族は、その人の戸籍謄本を請求することができます。
直系血族とは、父母、祖父母、子ども、孫など縦のつながりのある家族です。
②代理人に依頼して請求できる
戸籍には、その人の身分関係が記録されています。
身分関係の項目は、その人のプライベートな項目です。
自分のプライベートな情報は、みだりに他人に知られたくないでしょう。
戸籍謄本は、第三者が興味本位で取得することはできません。
本人が自分の戸籍謄本を取得する場合、本人確認のうえ交付されます。
他人の戸籍謄本を取得する場合、原則として、本人から委任状をもらって請求します。
委任を受けた人の本人確認をしたうえで、交付されます。
③委任状は依頼内容の証明書
第三者に戸籍謄本の請求を依頼する場合、委任状が必要です。
委任状は、依頼内容の証明書です。
第三者が興味本位で戸籍謄本を請求することがないように、委任状を提出します。
適切な委任状を提出することで、戸籍謄本が正当な目的で取得することが保証されます。
2戸籍謄本の代理請求で委任状の書き方
①委任者と代理人の情報
委任者は、戸籍請求を依頼する人です。
依頼する人が客観的に特定できるように、記載します。
具体的には、依頼する人の住所、氏名、生年月日を書きます。
市区町村役場によっては、記名だけでなく委任者が自署する必要があります。
例えば、名古屋市では署名または記名が必要です。
代理人は、依頼を受けて窓口へ出向く人です。
依頼を受けた人が客観的に特定できるように、記載します。
具体的には、依頼を受けた人の住所、氏名、生年月日を書きます。
窓口では、代理人の本人確認があります。
代理人の身分証明書を提示して、請求します。
身分証明書の住所、氏名、生年月日と異なる場合、依頼を受けた人ではないと判断されるでしょう。
委任状に記載する代理人の住所、氏名、生年月日は、身分証明書の記載をそのまま書き写します。
②委任内容の明確化
委任状は、依頼内容の証明書です。
委任状には、依頼内容をはっきりと記載します。
具体的には、次のように記載します。
・戸籍謄本1通
・〇〇〇〇について戸籍抄本1通
・本籍地 名古屋市中区〇〇一丁目〇番
・筆頭者 〇〇〇〇
・筆頭者と委任者の関係 本人
③委任者の押印
委任状の委任者が朱肉を使う印章で押印をします。
スタンプ印などでは、押印と認められないことが多いでしょう。
市区町村役場によっては、戸籍謄本のみの請求であれば押印不要の取り扱いをしています。
例えば、名古屋市では戸籍謄本の請求を依頼する場合、委任状は押印不要です。
戸籍の附票の請求を依頼する場合、委任状の押印が必要です。
どちらか分からない場合、押印しておく方がいいでしょう。
④電話番号などの連絡先
委任状に委任者の連絡先を記載します。
委任状の内容によっては、委任者に確認する必要があるからです。
例えば、名古屋市では戸籍謄本の請求を依頼する場合、委任者の電話番号は必ず記載します。
⑤委任状のひな形と記載例

3代理請求で使う委任状作成の注意点
注意①ペン書きをすること
委任状は、ボールペンなどのインクで記載します。
消えるペンや鉛筆による記載の場合、適切な委任状と認められないことがあります。
注意点1つ目は、ペン書きをすることです。
注意②委任状原本を提出すること
作成した委任状は、原本を窓口に提出します。
作成した委任状をコピーして窓口に提出しても、適切な委任状と認められないでしょう。
注意点2つ目は、委任状原本を提出することです。
注意③代理人の本人確認
代理請求で委任状を提出しても、代理人の本人確認がされます。
代理人は、委任状の他に身分証明書を提示する必要があります。
身分証明書には、次の書類があります。
・マイナンバーカード
・運転免許証
・パスポート
・在留カード
注意点3つ目は、代理人の本人確認です。
注意④任意様式でもよい
多くの市区町村では、委任状を用意しています。
ホームページを確認すると、ダウンロードすることができます。
市区町村が用意した様式を利用すると、形式的な不備を減らすことができます。
必要事項が適切に記載されていれば、所定の様式でなくても差し支えありません。
注意点4つ目は、任意様式でもよいです。
注意⑤手書きで作成できる
委任状は、全文手書きで作成することができます。
縦書きでも横書きでも、差支えありません。
注意点5つ目は、手書きで作成できることです。
注意⑥修正箇所に訂正印
委任状を作成する際に、書き誤りをしてしまうことがあります。
書き誤りを見つけたら、二重線を引いて近傍に正書します。
訂正箇所には、委任者欄の押印と同一印を押します。
修正液や修正テープで訂正すると、適切な委任状と認められないことがあります。
注意点6つ目は、修正箇所に訂正印です。
4相続で戸籍謄本を取得するときは委任状不要
①国等に提出する必要があるときは第三者請求ができる
国や地方公共団体に提出する必要がある場合、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。
国や地方公共団体に提出する必要がある場合、戸籍を取得するための正当な理由があると言えます。
相続登記をする場合、法務局にたくさんの戸籍謄本を提出します。
相続登記は、国や地方公共団体に提出する必要がある場合です。
国に提出する必要がある場合だから、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。
国や地方公共団体に提出する必要があると認められるためには、客観的な具体的な書類が必要です。
請求者との家族関係が分かる戸籍謄本のコピーなどを準備する必要があります。
国や地方公共団体に提出する必要がある場合であることが認められた場合、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。
②第三者請求は広域交付の対象外
本籍地の市区町村役場に戸籍謄本を請求するのは、大きな手間と時間がかかります。
令和6年3月1日から戸籍謄本の広域交付が始まりました。
広域交付制度を利用すれば、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本を請求することができます。
例えば、名古屋市に本籍がある人が名古屋市外の市区町村役場で戸籍謄本を請求することができます。
名古屋市外に本籍がある人が名古屋市内の各区役所で戸籍謄本を請求することができます。
第三者が戸籍謄本を請求できるのは、特別な理由があるときのみです。
戸籍にはその人のプライベートな事柄が記載されています。
特別な理由について、厳格な審査が必要です。
特別な理由が明らかにできない場合、戸籍謄本を発行してもらうことはできません。
第三者が戸籍謄本を請求する場合、広域交付を利用することはできません。
他人の戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求する必要があります。
5相続人確定を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
相続手続のために、たくさんの戸籍謄本を集めなければなりません。
古い戸籍は、現在と形式が違っています。
慣れないと、読みにくいものです。
現代とちがって、古い戸籍は手書きで書いてあります。
手書きの達筆な崩し字で書いてあると、分かりにくいものです。
戸籍集めは、相続以上にタイヘンです。
本籍地を何度も変更している人は、たくさんの戸籍を渡り歩いています。
結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている人は、戸籍が何度も作り直されています。
戸籍をたくさん渡り歩いているので、戸籍謄本収集は膨大な手間と時間がかかります。
段取りよく要領よく手続するには、ちょっとしたコツがいります。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続をおまかせできます。
相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。