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1成年後見人(法定後見人)を解任できる
認知症や精神障害や知的障害などで判断能力が低下すると、物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなります。
記憶があいまいになる人もいるでしょう。
ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度です。
成年後見人(法定後見人)は、本人をサポートする人です。
成年後見人(法定後見人)がサポートに適さない場合、家庭裁判所は成年後見人(法定後見人)を解任することができます。
本人のサポートと無関係な理由で解任することはできません。
2成年後見人(法定後見人)を解任する条件は厳しい
①不正な行為があった場合は成年後見人(法定後見人)を解任できる
不正な行為の典型例は、本人の財産の使い込みです。
本人の財産を成年後見人(法定後見人)が自分の生活費などに使う行為は、横領などの犯罪でもあります。
利益相反行為は、不正な行為にあたります。
利益相反とは、一方がトクすると他方がソンする関係のことです。
例えば、成年後見人(法定後見人)が自分の借金をするために、本人の不動産を担保に差し出すことは、利益相反になります。
利益相反にあたる場合、成年後見人(法定後見人)は本人を代理できません。
②著しい不行跡があった場合は成年後見人(法定後見人)を解任できる
著しい不行跡とは、品性または素行が甚だしく悪いことです。
成年後見人(法定後見人)の品性や素行が著しく悪い場合、本人の財産管理に悪影響が起きかねないからです。
③後見の任務に適さない場合は成年後見人(法定後見人)を解任できる
財産管理が不適当である
成年後見人(法定後見人)としての義務違反
成年後見人(法定後見人)が病気療養のため、職務ができない
成年後見人(法定後見人)が遠方に転居したため、職務ができない
任務に適さない場合には、上記のような理由が考えられます。
④家族の希望で成年後見人(法定後見人)を解任できない
家族の意向をかなえてくれないから成年後見人(法定後見人)を代えて欲しいという希望は多いものです。
ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度です。
本人を適切にサポートをしているのであれば、成年後見人(法定後見人)を解任できません。
成年後見人(法定後見人)の愛想がよくないから、代えて欲しい
成年後見人(法定後見人)が家族でないから、代えて欲しい
成年後見人(法定後見人)の後見方針に賛成できないから、代えて欲しい
成年後見人(法定後見人)が気に入らないから、代えて欲しい
成年後見人(法定後見人)が誠実に職務を行っている場合、成年後見人(法定後見人)を解任できません。
家族の意向をかなえてくれない、愛想がよくないなどは、本人のサポートとは無関係な理由です。
本人のサポートと無関係な理由で解任することはできません。
3成年後見人(法定後見人)を解任するのは家庭裁判所
①成年後見人解任の申立てが必要
成年後見人(法定後見人)を解任する条件は、法律に定めがあります。
解任する条件は、とても厳しいです。
厳しい条件にあてはまる事実があった場合、家庭裁判所に申立てをします。
成年後見人(法定後見人)を解任する条件にあてはまると家庭裁判所が認める場合、家庭裁判所が解任します。
成年後見人(法定後見人)が不正な行為をしていることが明白な場合であっても、家族は解任することはできません。
家族は、成年後見人(法定後見人)が不正な行為をしている客観的証拠を集めて、申立てをします。
家庭裁判所に対して成年後見人解任の申立てをして、家庭裁判所に解任してもらいます。
家族が不正な行為をしているというだけでは、家庭裁判所は認めてくれないでしょう。
解任してもらうためには、家庭裁判所が納得できる客観的証拠を準備しなければなりません。
②成年後見人解任の申立てができる人
成年後見人解任の申立てができる人は、次のとおりです。
(1)後見監督人
(2)被後見人
(3)被後見人の親族
(4)検察官
家庭裁判所は、申立てがなくても職権で成年後見人(法定後見人)を解任することができます。
③成年後見人解任の申立先
成年後見人解任の申立書の提出先は、成年後見開始の審判をした家庭裁判所です。
④成年後見人解任の申立ての必要書類
成年後見人解任の申立てに必要な書類は、次のとおりです。
(1)申立人の戸籍謄本(親族が申し立てる場合)
(2)本人の戸籍謄本
(3)本人の住民票または戸籍の附票
(4)後見登記事項証明書
成年後見人解任の申立てには、手数料がかかります。
手数料は、申立書に収入印紙を貼り付けて納入します。
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアで購入することができます。
収入印紙は貼り付けるだけで、消印をせずに提出します。
必要書類とは別に、家庭裁判所が使う郵便切手を提出する必要があります。
提出する郵便切手は、各家庭裁判所で異なりますから問い合わせをするといいでしょう。
⑤成年後見人(法定後見人)が解任されたら後任の成年後見人(法定後見人)が選任される
ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度です。
本人が物事のメリットデメリットを充分に判断することができないことを確認して、成年後見開始の審判がされます。
本人は物事のメリットデメリットを充分に判断することができないから、サポートする人をなしにするわけにはいきません。
成年後見の制度は本人のサポートのための制度だからです。
家族が、本人のサポートは不要ですと主張しても意味はありません。
成年後見人(法定後見人)が解任されたら、新しい成年後見人(法定後見人)が選任されます。
後任の成年後見人(法定後見人)をだれにするのか、家庭裁判所が決めます。
家庭裁判所の人選に家族が不服を言うことはできません。
4成年後見を解除することはできない
①判断能力が回復したら成年後見をやめることができる
成年後見人(法定後見人)が解任されたら、新しい成年後見人(法定後見人)が選任されます。
成年後見制度の利用をやめたわけではないからです。
成年後見制度を使い続ける限り、成年後見人(法定後見人)が死亡しても、解任されても、辞任しても、新しい成年後見人(法定後見人)が選任されます。
成年後見制度は、原則として、やめることができません。
成年後見制度をやめることができるのは、本人の判断能力が回復したときです。
判断能力が回復した診断書がある場合、成年後見制度をやめることができます。
本人や家族が、判断能力が回復したと主張するだけでは、成年後見をやめることができません。
②遺産分割や不動産の売却が終わっても成年後見をやめることはできない
認知症の人が相続人になる相続が発生した場合があります。
認知症の人の不動産を売却する必要がある場合があります。
遺産分割協議や不動産の売却の必要がある場合、成年後見開始の審判を申し立てるきっかけになります。
成年後見制度を使うきっかけとなった遺産分割や不動産売却が終わった場合でも、成年後見をやめることはできません。
ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度だからです。
ひとりで判断することができない人を放置することは許されません。
家族が成年後見人(法定後見人)は不要だからやめたいと希望しても、本人の保護のため成年後見(法定後見)は続きます。
5成年後見開始の申立てを司法書士に依頼するメリット
認知症や精神障害や知的障害などで、判断能力が低下すると、物事の良しあしが適切に判断することができなくなります。
また、記憶があいまいになる人もいるでしょう。
このような場合に、ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度です。
本人自身も不安になりますし、家族も不安になります。
身のまわりの不自由を補うために、身近な家族がお世話をすることが多くなるでしょう。
成年後見の申立ては家庭裁判所へ手続が必要です。
身のまわりのお世話をしている家族が本人の判断能力の低下に気づくことが多いです。
身のまわりのお世話をしながら、たくさんの書類を用意して煩雑な手続をするのは負担が大きいでしょう。
司法書士は裁判所に提出する書類作成もサポートしております。
成年後見開始の申立てが必要なのに忙しくて手続をすすめられない方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。