共有名義人の片方死亡後放置は危険

1放置すると遺産分割協議が難しくなる

①遺産分割協議は相続人全員の合意が必要

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

被相続人が第三者と財産を共有していた場合、財産の共有持分を持っています。

被相続人が持っていた共有持分は、相続財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

ときには一部の相続人と共有しているかもしれません。

一部の相続人と財産を共有していても、被相続人が持っていた共有持分は相続財産です。

他の共有者である相続人が優先して相続できるわけではありません。

他の共有者である相続人が相続する場合でも、相続人全員の合意が必要です。

共有名義人の片方が死亡した後、放置するのはおすすめできません。

②当初の相続人が死亡する

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。

相続手続は、わずらわしいものです。

相続が発生した後、相続手続を放置したくなるかもしれません。

相続手続を放置した場合、当初の相続人が後に死亡することがあります。

当初の相続人の相続人を含めて、話し合いをする必要があります。

当初の相続人は、仲の良い兄弟などで話がしやすかったかもしれません。

死亡した相続人の配偶者や子どもなどが相続するでしょう。

関係が薄い相続人がいると、相続財産の分け方についての話し合いは難航しがちです。

当初の相続人が死亡すると、遺産分割協議が難しくなります。

③相続人が認知症になる

相続人の中には、相当高齢の人がいることがあります。

相続が発生した当時は、元気だったのに後に認知症を発症することがあります。

認知症になると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

物事の良しあしを判断することができない人は、自分で相続財産の分け方について合意することはできません。

自分で判断することができないから、サポートする人が代わりに判断します。

子どもなどが勝手に判断することはできません。

勝手に判断して遺産分割協議書を作成しても、無効の書面です。

認知症の人のために、家庭裁判所がサポートする人を選任します。

認知症の人をサポートする人を成年後見人と言います。

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

認知症の人の子どもなど家族を選任することもあるし、家族以外の専門家を選任することもあります。

子どもなど家族が選任されるのは、全体の20%程度です。

成年後見人が認知症の人の代わりに相続財産の分け方について話し合いをします。

成年後見人は、認知症の人の財産を守るために働きます。

家族の意向をかなえてくれる人ではありません。

家族の事情を考慮した柔軟な対応は、認知症の人の利益にならないことが多いでしょう。

成年後見人は、法定相続分を下回る合意をすることはできません。

成年後見人が家族であっても、家族の意向どおりの合意をすることはできません。

成年後見人は、家庭裁判所から監督されているからです。

法定相続分を下回る合意は、認知症の人の利益にならない合意です。

家庭裁判所の同意を得られないでしょう。

子どもなど家族を選任された場合であっても、成年後見人は家庭裁判所から監督されます。

遺産分割協議のために成年後見人を選任しても、相続手続完了後に成年後見制度をやめることはできません。

当初の相続人が後に認知症になると、遺産分割協議が難しくなります。

④相続人が行方不明になる

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

相続人の中には、さまざまな事情を抱えている人がいるでしょう。

一部の相続人が行方不明になって、連絡が取れなくなることがあります。

連絡が取れないからと言っても、話し合いから除外することはできません。

一部の相続人を除外して相続財産の分け方を合意しても、無効の合意になるからです。

行方不明の相続人がいる場合、代わりに話し合いをする人を家庭裁判所に選んでもらいます。

行方不明の人の代わりに話し合いをする人を不在者財産管理人と言います。

不在者財産管理人が行方不明の人の代わりに、相続財産の分け方について話し合いをします。

不在者財産管理人は、行方不明の人の財産を守るために働きます。

不在者財産管理人は、家族の意向をかなえてくれる人ではありません。

家族の事情を考慮した柔軟な対応は、行方不明の人の利益にならないことが多いでしょう。

不在者財産管理人が相続財産の分け方について合意する場合、家庭裁判所の許可が必要です。

行方不明の人の法定相続分が確保されていない場合、家庭裁判所は許可をしないでしょう。

家族の事情を考慮した柔軟な取り扱いは困難です。

当初の相続人が後に行方不明になると、遺産分割協議が難しくなります。

2放置すると不動産活用ができない

①不動産を売却できない

相続財産の大部分が不動産である場合、相続人間で分け方の合意が難しくなります。

利用する予定のない不動産は、すぐに売却したいことがあります。

実家などはお金を出し合った人で共有していることが多いでしょう。

共有名義人の片方が死亡した後、他の共有名義人が相続人のひとりかもしれません。

他の共有名義人が被相続人の共有持分を相続して、単独所有者になった気持ちでいることがあります。

単独所有者になったつもりでも、客観的には被相続人の共有持分は相続財産です。

共有名義人が死亡した後に何もしないままの場合、被相続人名義のままになっているでしょう。

不動産を売却する場合、買主に名義を移さなければなりません。

被相続人名義から直接買主に名義を移すことはできません。

被相続人が生前に売却したのではないからです。

被相続人が死亡した後に、相続人が売却したはずです。

相続登記を省略することはできません。

被相続人から相続人に所有権が移転したことを公示する必要があるからです。

相続登記をしていない場合、買主に名義を移すことができなくなります。

買主が不動産の所有者であることを対外的に主張する際に登記が必要です。

所有権移転登記をしていないと、対外的に所有者であることを主張することができません。

買主は、とても困ります。

対外的に所有者であることを主張できないのなら、その不動産を買うことを諦めるでしょう。

相続登記をしないまま放置すると、不動産を売却することができなくなります。

②不動産を担保にできない

不動産を担保に金融機関から融資を受けることがあります。

借金の返済が滞ったときに備えて、金融機関は不動産を担保に取ります。

返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。

お金を貸した人が担保に取りますから、債権者は抵当権者です。

抵当権は、登記をすることができます。

抵当権設定登記をしていないと、対外的に抵当権者であることを主張することができません。

金融機関は、とても困ります。

抵当権は、借金の返済が滞ったときに備えて担保に取る権利です。

具体的には、借金の返済が滞った場合、担保に取った不動産を競売にかけて売却代金から優先的に借金を返してもらうことができます。

対外的に抵当権者であることを主張できない場合、抵当権を設定した意味がなくなります。

被相続人名義のままで、抵当権設定登記をすることはできません。

担保に差し出したのは、相続人だからです。

相続登記を省略することはできません。

被相続人から相続人に所有権が移転したことを公示する必要があるからです。

3放置すると相続登記が困難になる

①相続登記にはたくさんの書類が必要になる

相続による不動産の名義変更を相続登記と言います。

相続登記には、たくさんの書類が必要になります。

遺言書がない場合、おおむね次の書類が必要です。

(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺産分割協議書

(6)相続人全員の印鑑証明書

(7)不動産の評価証明書

遺言書がある場合、おおむね次の書類が必要です。

(1)被相続人の除籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺言書

(6)遺言書検認証明書

(7)不動産の評価証明書

事例によって追加書類が必要なることがあります

②戸籍謄本や住民票が保存期間経過で廃棄される

相続手続の最初の難関は、戸籍謄本の収集です。

相続登記には、たくさんの書類が必要になります。

戸籍謄本などの書類取集があまりにタイヘンで、挫折する人は少なくありません。

挫折したまま長期間放置すると、ますますタイヘンになります。

戸籍謄本や住民票は、永年保管ではないからです。

保存期間が決められていて、古いものから順次廃棄されます。

保存期間が経過した書類は、請求しても発行してもらえません。

必要な書類を提出できない場合、別の書類が必要になります。

一般的な事例とは異なる場合、法務局と打合せが必要になるでしょう。

長期間放置すると、相続登記が困難になります。

4放置された私道の共有持分の相続は非常に困難

被相続人がマイホームを所有していた場合、自宅の土地建物が相続財産であることは承知しているでしょう。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

自宅の土地建物について分け方の合意をした後に、私道の共有持分が見つかることがあります。

私道とは、一般私人が設置管理する道路です。

自宅の前面道路が公道ではなく私道であることがあります。

行政が設置管理をする道路が公道です。

多くの場合、私道は自宅に至る道路でしょう。

近隣住民と私道を共有していることがあります。

私道の共有持分は、自宅の土地建物とは別の財産です。

自宅の土地建物を相続した人が自動で相続できるものではありません。

自宅を使う人が私道を使います。

自宅を使う人が私道を使うとしても、私道の共有持分の分け方について別の合意が必要です。

私道の共有持分と自宅の土地建物は、別の財産だからです。

私道の共有持分は、相続登記が見落とされがちです。

自宅の土地建物は財産だと認識していても、道路を自分の財産と認識していないことが多いからです。

被相続人が認識していないと、家族はなおさら認識が薄いでしょう。

相続が発生してから長期間経過した後に、私道の共有持分が見つかります。

相続人が意図していなくても、長期間放置されていたと言えます。

先に説明したとおり、当初の相続人が死亡しているかもしれません。

当初の相続人が認知症になっているかもしれません。

当初の相続人が行方不明になっているかもしれません。

相続が発生した後に長期間放置された場合、相続人の確定が難しくなります。

家庭裁判所の手続が必要になることがあります。

必要な書類を準備できなくなることがあります。

相続が発生した後に長期間放置された場合、相続登記は非常に難しくなります。

5相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。

ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。

インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。

多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。

司法書士は、登記の専門家です。

スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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