事実婚・内縁の証明資料に住民票の記載が重要

1事実婚・内縁とは婚姻に準ずる関係

①事実婚・内縁は婚姻届を出さない夫婦関係

事実婚・内縁とは、婚姻に準ずる関係です。

法律上婚姻関係と認められるためには、婚姻届と提出する必要があります。

さまざまな事情から婚姻意思はあるものの、婚姻届を出していない夫婦があります。

法律上婚姻関係と認められていなくても、社会的に婚姻関係が認められることがあります。

事実婚・内縁は、婚姻届を出さない夫婦関係です。

②事実婚・内縁と認められるための2要件

要件(1)お互いに婚姻意思があること

お互いに、夫婦として生活する意思が必要です。

単なる同棲や恋人関係では、婚姻意思はないでしょう。

婚姻意思が認められないと、事実婚・内縁と認められません。

要件(2)夫婦同然の共同生活を営んでいること

夫婦が一定期間以上同居して、共同生活を営んでいることが必要です。

一定期間とは、概ね3年以上が目安です。

共同生活を営む期間だけでなく、生活実態が重視されます。

生計同一をしていることや日常生活を共にしていることが判断材料になります。

共同して子どもを育てている事情も、考慮されます。

③事実婚・内縁は総合的に判断される

法律婚は、戸籍に記載されます。

戸籍謄本を取得すれば、法律婚は証明することができます。

事実婚・内縁は、単独の決定的証拠がありません。

複数の証明資料を積み上げて、事実婚・内縁を証明します。

複数の証明資料を確認して、総合的に判断するからです。

事実婚・内縁の証明資料は、多いほど有利です。

ひとつの証明力は小さくても、たくさんの証拠資料が積み上がると大きな証明力があるからです。

④事実婚・内縁を証明するシーン

シーン(1)健康保険の扶養家族に入る

健康保険の被保険者の家族は、条件を満たせば、扶養家族に入ることができます。

扶養家族に入れれば、自分で保険料を負担する必要がありません。

保険者に認められれば、事実婚・内縁配偶者は扶養家族に入ることができます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(2)国民年金3号被保険者になる

厚生年金や共済年金の被保険者の配偶者は、条件を満たせば、国民年金3号被保険者になることができます。

国民年金3号被保険者になれれば、自分で保険料を負担する必要がありません。

日本年金機構に認められれば、事実婚・内縁配偶者は国民年金3号被保険者になることができます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(3)遺族年金を受け取る

遺族年金は、年金に加入していた人が死亡したときに遺族に対して支給される年金です。

日本年金機構に認められれば、事実婚・内縁配偶者に対して遺族年金が支給されます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(4)未支給年金を受け取る

年金は、後払いで支給されます。

例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。

年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。

4月分の年金は、6月に振込みがされます。

多くの場合、6月の年金支払い日には、口座が凍結されているでしょう。

未支給年金とは、口座凍結などでまだ受け取っていない年金です。

日本年金機構に認められれば、事実婚・内縁配偶者に対して未支給年金が支給されます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(5)公営住宅の入居

公営住宅は、住宅に困窮する低所得者に安定した住まいを提供する制度です。

住宅供給公社に認められれば、事実婚・内縁配偶者も公営住宅に入居することができます。

例えば、名古屋市住宅供給公社では住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載が必要になるなどの証明資料が必要です。

2事実婚内縁の証明資料に住民票の記載が重要

①住民票でお互いの住所が分かる

住民票を取得すると、お互いの住所が分かります。

同じ住所地であっても、事実婚・内縁であるか分かりません。

それぞれが世帯主である場合、別世帯と考えられるからです。

例えば、ルームシェアをしていると、それぞれが世帯主です。

②住民票で同居しているか分かる

同一世帯であれば、世帯主から見た続柄が記載されています。

住民票を確認すると、一方が同居人と記載されていることがあります。

同居人と記載されている場合、同居していることが分かります。

同一世帯であっても、事実婚・内縁であるか分かりません。

同居人と記載されている場合、同棲しているだけのことがあるからです。

③住民票で事実婚・内縁と分かる

住民票を確認すると、一方が「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されていることがあります。

「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されている場合、事実婚・内縁と分かります。

④市区町村役場で続柄を変更する方法

事実婚・内縁を証明する場合、必ず住民票が必要になります。

事実婚・内縁を証明するシーンが予想されるなら、あらかじめ続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」しておくのがおすすめです。

当事者双方が市区町村役場の窓口に出向きます。

同居人ではなく住民票の記載を「未届(夫)」「未届(妻)」と記載してほしい旨を明確に申し出ます。

申出には、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要です。

市区町村役場が戸籍を確認し、法律上の婚姻条件を満たしていれば「未届(夫)」「未届(妻)」と記載してもらえます。

⑤「未届(夫)」「未届(妻)」と記載する総務省通知がある

平成24年2月10日総行住17号で総務省自治行政局長から「住民基本台帳事務処理要領の一部改正について(通知)」が発出されています。

通知が出てから10年以上経過しても、理解がない市区町村があります。

「未届(夫)」「未届(妻)」と記載できないと言われた場合、できない理由を確認するといいでしょう。

総務省からの通知を示して、具体的な理由を確認することが重要です。

3住民票を補う証明資料が必要になる

①住民票単独では事実婚内縁を証明できない

住民票に「未届(夫)」「未届(妻)」と記載されると、行政上は夫婦と認められやすくなります。

行政手続の便宜的な認定に過ぎません。

法律上事実婚・内縁と認められるためには、住民票だけでは不足です。

要件(1)お互いに婚姻意思があること

要件(2)夫婦同然の共同生活を営んでいること

上記の要件が認められないと、法律上事実婚・内縁とは認められないからです。

住民票における「未届(夫)」「未届(妻)」の記載は、証拠資料のひとつに過ぎません。

住民票単独では、事実婚内縁を証明できません。

②パートナシップ宣誓制度を利用

パートナシップ宣誓制度とは、同性カップルや事実婚カップルが互いに人生のパートナーと自治体に宣誓する制度です。

人生のパートナーであることを自治体から公的に証明してもらうことができます。

パートナシップ宣誓には、法律婚のような法的効果はありません。

行政サービスや社会的なシーンで、夫婦同様の扱いを受けることができます。

名古屋市には、令和4年(2022年)12月1日からファミリーシップ制度があります。

愛知県には、令和6年(2024年)4月1日からファミリーシップ宣誓制度があります。

公的な証明書が発行されるから、有力な証明になります。

③婚姻契約公正証書を作成

婚姻契約とは、婚姻意思や共同生活の取り決めを契約書にしたものです。

婚姻契約書は、公証役場で公正証書にしてもらうことができます。

当事者の本人確認をしたうえで、本人の意思確認をして公正証書にします。

公証人は、法律の専門家です。

公的な第三者が関与して公正証書にするから、高い信頼性があります。

婚姻契約公正証書は、婚姻意思の強力な証拠になります。

④共同生活を示す証拠資料

(1)賃貸借契約書

住居の賃貸借契約書で夫婦が連名で契約した場合、共同生活の強力な証拠になります。

夫婦連名で契約していなくても、居住者欄に夫婦の名前が記載されていることがあります。

居住者欄に同居人より「未届(夫)」「未届(妻)」の記載があると、有効な証拠になります。

契約を何度も更新している場合、継続的な共同生活を証明することができます。

(2)家賃・公共料金・通信費の支払記録

共同生活をしている場合、生計同一の証明が重要です。

共同口座から引き落としをしている場合、生計同一をしていると言えます。

同一のクレジットカードや銀行口座を利用している場合、経済的結びつきを示すことができます。

長期間の支払いをしている場合、安定的な共同生活を証明することができます。

(3)社会保障や扶養関係

健康保険の扶養家族になっている場合、保険者から扶養関係が認められたと言えます。

遺族年金の支給を受けている場合、日本年金機構から遺族と認められたと言えます。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

(4)勤務先関係

勤務先への緊急連絡先に指定されている場合、勤務先から家族と認められたと言えます。

扶養手当や慶弔規程の配偶者適用履歴があると、勤務先から配偶者と認められたと言えます。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

(5)生命保険死亡保険金の受取人

生命保険死亡保険金の受取人は、親族などに限られているのが原則です。

親族以外を受取人にすると、保険金目的の不正な事故を誘発するからです。

生命保険死亡保険金の受取人に指定されている場合、保険会社が親族と認めたと言えます。

⑤社会的に夫婦と扱われていることを示す証拠資料

(1)夫婦連名で届いた結婚式の招待状

結婚式の招待状が夫婦連名で届くことは、親族や友人から夫婦として扱われていることを示します。

社会生活上の評価を示しています。

(2)夫婦で参列した葬儀の記帳

葬儀などに夫婦で参列した場合、夫婦で揃って記帳します。

家族ぐるみでかかわりがある場合、社会的な関係を補充することができます。

(3)夫婦連名で届いた年賀状

年賀状は年1回であるものの、対外的に夫婦であることが示されると言えます。

長期間継続されていると、対外的に長期間安定的な関係があることを示すことができます。

(4)地域コミュニティーでの関係

自治会名簿の記載があると、地域で夫婦として認められていることを示すことができます。

社会的に夫婦と認められていることは、事実の積み上げが重要です。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

4事実婚・内縁配偶者は相続人になれない

①長期間一緒にいても相続人ではない

相続人になる人は、法律で決められています。

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。

相続人になる配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚・内縁配偶者は何年一緒にいても、相続人になりません。

②事実婚・内縁配偶者は特別縁故者になれる

被相続人に相続人がいない場合、相続財産は国庫に帰属するのが原則です。

被相続人に特別な縁故がある人がいる場合、相続財産を取得させる方がいいことがあります。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故がある人です。

事実婚・内縁配偶者は、特別縁故者になることができます。

特別縁故者になるか、家庭裁判所が判断します。

③特別縁故者に期待するより遺言書作成して遺贈

家庭裁判所に認められないと、特別縁故者になることはできません。

家庭裁判所に認められるのは、高いハードルがあります。

特別縁故者に期待するより、遺言書作成して遺贈がおすすめです。

遺言書があれば、事実婚・内縁配偶者に自由に財産を引き継がせることができるからです。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

家族のさまざまな事情から、事実婚・内縁を選択する人がいます。

事実婚・内縁関係であっても、元気であれば不自由が少なくなっています。

事実婚・内縁の配偶者が死亡した場合、相続人になることはできません。

事実婚・内縁の配偶者に財産を受け継いでもらいたい場合、生前から準備しておくことが重要です。

遺言書は、遺言書の意思を示すものです。

遺言書は遺言者の死後に効力を生じるものなので、厳格な書き方ルールがあります。

厳格な書き方ルールに合わない遺言は、無効になります。

せっかく遺言書を作成するのであれば、公証人が関与する公正証書遺言がおすすめです。

公証人は、法律の専門家です。

公正証書遺言は公証人が文書にするから、書き方ルール違反で無効になることは考えられません。

公正証書遺言を作成する場合、事前に公証役場との打ち合わせが必要になります。

何の準備もせず公証役場に出向いても、遺言書作成をすることはできません。

公正証書遺言の作成は、司法書士などの専門家に依頼することができます。

司法書士などの専門家は、公証役場などの打ち合わせをして遺言書作成をサポートします。

司法書士などの専門家に依頼することで、スムーズに遺言書作成をすることができます。

事実婚・内縁の配偶者に財産を受け継いでもらいたい人は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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