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1おひとりさまの不安は頼れる人がいないから
不安①死亡後の手続を頼めない
おひとりさまには、家族がいないことが多いでしょう。
家族はいても疎遠で、頼ることが難しいかもしれません。
死亡後には、さまざまな手続が必要になります。
例えば、次の手続が必要になります。
・葬儀や納骨
・病院や施設費用の精算
・賃貸マンションの退去
・健康保険や年金手続などの行政手続
・デジタルデータの解約や処分
生前に自分で手続をすることが難しいでしょう。
おひとりさまにとって、死亡後の手続を頼めないことが不安になります。
不安1つ目は、死亡後の手続を頼めないことです。
不安②周囲の人に迷惑をかけてしまう
死亡後に必要になる手続は、生前に自分ですることが難しいものです。
何も対策しないと、周囲の人に迷惑をかけてしまう結果になります。
残された人に負担をかけたくないとの気持ちから、不安になります。
不安2つ目は、周囲の人に迷惑をかけてしまうことです。
不安③デジタル遺品からプライバシーが流出
現代では、生活の多くがデジタル化されています。
スマートフォンやインターネットを利用している場合、デジタル面の準備が欠かせません。
デジタル遺品とは、被相続人のデジタルデータやオンラインアカウントです。
本人以外の人は、IDやパスワードを知りません。
本人が死亡した後、だれも管理できずに放置されるおそれがあります。
監理されないまま放置された結果、アカウントが乗っ取られ個人情報が流出するおそれがあります。
被相続人のデジタルデータやオンラインアカウントから、プライバシーが流出する不安があります。
不安3つ目は、デジタル遺品からプライバシーが流出です。
不安④葬儀供養がされない不安
身近に頼れる人がいない場合、葬儀供養がされないおそれがあります。
家族がいても、遺体の引取りを拒否することができます。
親族がいない場合や連絡が取れない場合、自治体が法律に基づき火葬にします。
葬儀などの宗教的儀式は行いません。
だれにも見送られないことに対して、不安や寂しさを感じることがあります。
葬儀供養の希望があっても、かなえられないでしょう。
不安4つ目は、葬儀納骨がされないことです。
不安⑤財産の相続や引継
不安5つ目は、財産の管理です。
おひとりさまが死亡したら、おひとりさまの財産は相続人が引き継ぎます。
おひとりさまには家族がいても、疎遠になっていることが多いでしょう。
適切に財産を引き継げるのか、不安になります。
相続人以外の人に引き継ぎたい希望がある場合、どうしたらかなえられるのか不安になります。
不安5つ目は、財産の相続や引継です。
2おひとりさまが死後事務委任契約をする必要性
①死後事務委任契約で死亡後の手続を依頼する
死後事務委任契約とは、死亡後に必要になる手続を依頼する契約です。
通常の委任契約は、死亡によって終了します。
死後事務委任契約は、当事者が死亡しても終了しません。
死後事務委任契約で死亡後の事務を依頼しておくと、周りの人に迷惑をかけなくて済みます。
死後事務委任契約を利用することで、安心して自分らしく人生を送ることができます。
②死後事務委任契約で依頼できること
(1)親族や知人への連絡
自分が死亡した事実を関係者に連絡してもらうことができます。
(2)葬儀や埋葬の手配
依頼者が死亡した後、すぐに発生する手続です。
次の事項を依頼することができます。
・遺体の引取り
・葬儀や火葬の手続
・埋葬やお墓の手続
・供養に関する手続
どのような葬儀にしてもらいたいのか、宗教や形式を具体的に決めておきます。
火葬後の納骨や散骨の方法を具体的に決めておきます。
人生最後の儀式を安心して、任せることができます。
(3)治療費や施設代の精算
死亡までの治療費や介護施設の費用を精算してもらうことができます。
(4)賃貸借契約の解除
依頼者が賃貸マンションなどに住んでいることがあります。
賃貸マンションの賃貸借契約を解除し鍵を返却してもらうことができます。
部屋の清掃や家財道具の処分し原状回復をして、明渡し依頼することができます。
(5)ペットの引き継ぎ
飼主にとって大切な家族であるペットは、飼主を失うと人間以上に困ります。
ペットの引取り先を指定して引渡しを依頼することができます。
(6)健康保険や年金手続などの行政手続
死亡したら、健康保険証や介護保険証を返還します。
健康保険証や介護保険証の返還を依頼することができます。
年金受給者が死亡した場合、受給権者死亡届を年金事務所に提出します。
受給権者死亡届の提出を依頼することができます。
(7)デジタルデータの解約や処分
SNSアカウントを放置すると、乗っ取り行為や荒らし行為に使われるおそれがあります。
SNSアカウントの削除を依頼することができます。
インターネットや携帯電話契約の解約手続が必要になります。
契約解約だけでなく、パソコンやスマートフォンの個人情報を抹消してもらうことができます。
③死後事務委任契約は信頼できる依頼先が重要
(1)相手方に特別な資格は不要
死後事務委任契約をする相手方は、特別な資格は不要です。
家族以外の第三者でも、死後事務委任契約の相手方になることができます。
本人が信頼できる人であることが重要です。
(2)友人や知人
死後事務委任契約の相手方は、知人や友人であっても差し支えありません。
信頼できる友人や知人に、依頼することができます。
おすすめの人は、次の人です。
・身近な人に依頼したい人
・信頼できる友人や知人がいる人
・費用を抑えたい人
(3)司法書士や弁護士
司法書士や弁護士などの専門家に、死後事務を依頼することができます。
専門家にサポートを依頼する場合、契約書を作成する段階から携わることになるでしょう。
認知症対策や相続対策を含めて、トータルでサポートしてもらうことができます。
おすすめの人は、次の人です。
・法的トラブルを避けたい人
・確実に契約を実行してもらいたい人
・家族がいない人
・友人や知人に頼れない人
(4)社会福祉協議会
社会福祉協議会の事業で、死後事務の委任を受けていることがあります。
社会福祉協議会が事業を行っていても、利用できる人に制限が設けられています。
例えば、可児市社会福祉協議会が行うず~っとあんき支援事業では、次のような条件があります。
・可児市在住で65歳以上
・子どもがいない
・生活保護を受給していない
上記以外にも、さまざまな制限があります。
おすすめの人は、次の人です。
・経済的負担を抑えたい人
・地域の福祉サービスを利用したい人
(5)民間企業
民間企業が死後事務委任契約の受任者になることができます。
信用できる企業であるのか、慎重に判断する必要があります。
おすすめの人は、次の人です。
・ワンストップで依頼したい人
・信頼できる民間企業がある人
④依頼先の信頼性を見極めるチェックポイント
ポイント(1)契約内容やサービス範囲を明確にする
どのような手続をどこまで依頼できるのか、契約内容を具体的に記載してもらいます。
あいまいな内容や不充分な説明があると、後々のトラブルにつながります。
ポイント(2)費用の明確化
依頼にかかる費用が明確であるのか、見積書で確認します。
預託金の管理体制や契約解除をしたときの返還ルールも重要です。
ポイント(3)契約書を公正証書で作成
死後事務委任契約は、公正証書で作成することがおすすめです。
公正証書にすることで、紛失リスクや改ざんリスクに備えることができるからです。
ポイント(4)司法書士などの専門家の関与
死後事務委任契約は、司法書士などの専門家に相談するのが安心です。
司法書士などの専門家が関与していないと、あいまいな表現などでトラブルに発展するリスクがあるからです。
ポイント(5)過去の実績や評判
依頼先に実務経験があるのか、確認します。
法律知識や実務経験がないと、適切に死後事務を履行できないおそれがあるからです。
⑤依頼先の選び方
ポイント(1)複数の依頼先に相談
依頼先ごとにサービス内容や費用対応範囲が異なります。
複数に資料請求をして、事前相談をします。
ポイント1つ目は、複数の依頼先に相談です。
ポイント(2)自分の希望を整理
依頼したいことや重視するポイントは、人それぞれです。
エンディングノートを書きながら希望を明確にすると、決めやすくなります。
ポイント2つ目は、自分の希望を整理です。
ポイント(3)対応地域の確認
遺体の引取りなど現地の対応が必要になる場合、対応地域に該当するの確認します。
ポイント3つ目は、対応地域の確認です。
ポイント(4)サービス内容と費用のバランス
あいまいなサービス内容は、トラブルを招きます。
全部おまかせのパッケージプランは、サービス内容があいまいでトラブルになりがちです。
希望するサービスが適切な料金であるのか、よく確認します。
ポイント4つ目は、サービス内容と費用のバランスです。
⑥遺言書で死後事務を依頼できない
遺言書は、主に財産の分け方を書くことができます。
遺言書があれば、遺言書のとおりに遺産分割をすることができます。
遺言書に、葬儀納骨の希望などの死後事務の依頼を書くことがあります。
遺言書に死後事務の依頼をしても、法律上の意味はありません。
死後事務の手続先は、依頼があったとは認めてくれないでしょう。
死後事務の依頼は、遺言書ではなく死後事務委任契約でする必要があります。
3死後事務委任契約の流れ
手順①依頼内容を決める
自分が何に不安に思っているのか、書き出してみるといいでしょう。
依頼者が何を依頼したいのか、決定します。
手順1つ目は、依頼内容を決めることです。
手順②相手方を決める
死後事務を依頼する相手方を決定します。
本人が信頼できる人に依頼することが重要です。
手順2つ目は、相手方を決めることです。
手順③契約書を作成する
委任契約は、口頭の合意であっても成立します。
口頭の合意より、契約書の作成がおすすめです。
契約書がないと、合意があったのか証拠がないからです。
死後事務の手続先に対して、合意があったことを証明できないでしょう。
死後事務の手続先に信用してもらうため、契約書を作成します。
死後事務委任契約は、依頼者が死亡した後の事務を依頼します。
依頼者が死亡した後に、依頼したか確認することはできません。
手順3つ目は、契約書を作成することです。
手順④公正証書にする
死後事務委任契約は、公正証書にするのがおすすめです。
公正証書とは、公証人が作成する公文書です。
公証人が当事者の本人確認をしたうえで本人の意思確認をして、公正証書にします。
公正証書にすると、依頼者の意思が明確になります。
手順4つ目は、公正証書にすることです。
4死後事務委任契約でよくある失敗と対策
失敗①依頼先の倒産や預託金の持ち逃げ
死後事務委任契約をしてからサービスを受けるまで、長期間経過します。
長期間経過する間に、依頼先が倒産したり預託金を持ち逃げすることがあります。
失敗1つ目は、依頼先の倒産や預託金の持ち逃げです。
依頼先の経営状況や預託金の管理状況をよく確認して、信頼できるか見極めることです。
対策は、信頼できる依頼先を選ぶことです。
失敗②口頭契約で内容不明確
死後事務委任契約は、口頭の合意で成立します。
口頭の契約では、合意内容が証明できずトラブルになります。
失敗2つ目は、口頭契約で内容不明確です。
口頭の合意で契約できても、文書にするのがおすすめです。
できれば、合意内容を盛り込んで公正証書にするといいでしょう。
対策は、公正証書で死後事務委任契約を締結することです。
失敗③あいまいな契約内容とあいまいな料金
全部おまかせのパッケージプランは、契約内容と料金体系があいまいになりがちです。
依頼したいことが対象外であったり、高額の別料金や追加料金が請求されます。
失敗3つ目は、あいまいな契約内容とあいまいな料金です。
契約内容と料金体系は、契約前に詳細に確認します。
合意内容は、契約書にはっきりと記載し公正証書にします。
対策は、契約書に明記です。
5死後事務委任契約と併用でもっと安心
①相続手続は遺言書作成
死後事務委任契約では、財産の分け方など相続手続に関与することはできません。
財産の分け方は、遺言書で決めておくことができます。
死後事務委任契約の他に遺言書を作成すると、もっと安心です。
②任意後見契約で認知症になったときの備え
死後事務委任契約は、生前のサポートを依頼することはできません。
任意後見契約とは、認知症などになったときに備えてサポートを依頼する契約です。
死後事務委任契約の他に任意後見契約をすると、もっと安心です。
③財産管理委任契約で身体が衰えたときの備え
財産管理委任契約は、認知症になるまでサポートを依頼する契約です。
信頼できる人に、財産管理などのサポートを依頼することができます。
死後事務委任契約の他に財産管理委任契約をすると、もっと安心です。
6生前対策を司法書士に依頼するメリット
生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策はする方はあまり多くありません。
争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。
対策しないまま認知症になると、家族に大きな面倒をかけることになります。
認知症になってからでは遅いのです。
お元気なうちに準備する必要があります。
なにより自分が困らないために、大切な家族に面倒をかけないために生前対策をしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。