このページの目次
1相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書のちがい
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという家庭裁判所に対する申立てです。
家庭裁判所は、提出された書類を審査して相続放棄を認めるか認めないか判断します。
相続放棄を認める場合、本人に対して、相続放棄申述受理通知書を送ります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。
債権者などから見るとは、通常、知らないうちに相続放棄の手続がされていて、知らないうちに相続放棄が認められていることになります。
相続放棄をしたことを知らないから、被相続人にお金を貸していた人は相続人に返してもらおうと考えます。
被相続人にお金を貸していた人から返済を請求されたとしても、相続放棄をしたのだから通常支払う必要はないはずです。
債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことの証明書です。
相続人でないことを証明するために使います。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡せば足りるでしょう。
銀行などの金融機関は、相続放棄申述受理通知書では足りず、相続放棄申述受理証明書の提出を求めてきます。
請求があってから、取り寄せることで差し支えないでしょう。
2相続放棄申述受理証明書の申請方法
①相続放棄申述受理証明書は申請が必要
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人宛のお知らせです。
相続放棄の申立てが認められたら、自動的に届きます。
相続放棄申述受理証明書は、自動的に送られることはありません。
家庭裁判所に対して、手数料を払って証明書を作ってくださいと申請する必要があります。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
家庭裁判所によっては、相続放棄申述受理通知書と一緒に、送られてくることもあります。
手数料を払って手続をすれば何枚でも発行してくれるし、再発行もしてくれます。
相続放棄申述受理証明書の申請先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
②相続放棄をした本人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
相続放棄申述受理証明申請の手数料は1通につき、150円です。
手数料は、申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。
収入印紙は家庭裁判所で消印を押します。
申請する人は、貼り付けるだけで消印は押しません。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
返信用の封筒に住所と宛名を記載して、郵便切手を一緒に提出すると、郵便で送り返してくれます。
③他の相続人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)申請する人の戸籍謄本
手数料は本人が申請する場合と一緒です。
(2)と(3)の戸籍謄本は多くの場合、希望すれば原本還付してくれます。
家庭裁判所によっては、最初からコピーを提出するだけでよい場合もあります。
すでに相続放棄をした人が、同じ被相続人について、相続放棄した他の人の相続放棄申述受理証明申請をすることはできません。
すでに相続放棄をした人は、相続人でなくなります。
相続人でないから、他の相続人が相続放棄をしていても相続放棄をしていなくても関係ありません。
利害関係がない人は、相続放棄申述受理証明申請をすることができないからです。
各自、相続放棄申述受理証明申請をしましょう。
相続放棄申述受理証明申請書には、事件番号や受理年月日の記載が必要です。
事件番号や受理年月日が分からない場合、あらかじめ相続放棄申述受理の有無についての照会をする必要があります。
相続放棄申述受理の有無についての照会は無手数料です。
④債権者が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)金銭消費貸借契約などの債権者であることが分かる書類
(4)法人の場合、資格証明書
相続放棄申述受理証明申請をしてから、証明書が送られるまでに半月から1か月ほどかかります。
⑤相続放棄申述受理証明書を紛失しても再発行してもらえる
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
本人あての1回限りのお知らせだから、紛失しても再発行してくれません。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所に対して手数料を払って証明書を作ってくださいと申請すれば何度でも発行してくれます。
相続放棄申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書を紛失していても、ペナルティーはありません。
⑥相続放棄申述受理証明書の申請期限は30年間
家庭裁判所は相続放棄に関する書類を30年間保管しています。
相続放棄が認められてから30年以上経過している場合、書類を廃棄しているから家庭裁判所は分からなくなります。
相続放棄申述受理証明申請をしても、証明してもらえません。
相続放棄が認められてから30年以上経過した後、被相続人の債権者から借金の返済を求められた場合、時効が完成しているでしょう。
時効を援用すれば、借金を返済する必要はありません。
3相続放棄をした相続人がいる相続登記
被相続人の財産に不動産が含まれている場合があります。
不動産を相続する相続人は、不動産の名義を書き換えます。
相続財産の分け方は、多くの場合、相続人全員の話し合いによる合意で決めます。
相続人全員の合意が必要ですから、一部の相続人が含まれていない場合、話し合いによる合意は無効になります。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
一部の相続人が相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人は相続財産の分け方についての話し合いに参加しません。
話し合いに参加していない人は、相続放棄をしたことを証明する必要があります。
このような場合、相続放棄申述受理証明書が必要になります。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人だけに通知します。
法務局などに家庭裁判所から自主的に通知することはありません。
法務局の登記官に、相続放棄をしたので相続人ではないことを証明する必要があるからです。
以前は、相続放棄をした相続人がいる相続登記の申請をする場合、相続放棄申述受理証明書を提出しなければなりませんでした。
かつては相続放棄申述受理通知書では認められませんでした。
現在は、相続放棄申述受理証明書の記載内容と同等の内容が網羅されていれば、相続放棄申述受理通知書でも認められます。
相続放棄申述受理通知書の記載内容は、家庭裁判所ごとに違います。
相続放棄申述受理証明書の記載内容と同等の内容が網羅されていなければ、現在でも、相続放棄申述受理証明書を提出する必要があります。
相続登記で相続放棄申述受理証明書や相続放棄申述受理通知書を提出した場合、希望すれば、原本還付してもらうことができます。
相続放棄が認められてから30年以上経過している場合、相続放棄申述受理証明書を発行してもらえません。
相続登記ができなくなるおそれがありますから、相続登記はすみやかに済ませましょう。
4相続登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではないため、だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続手続きで使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。
一般的な内容であれば、インターネットや書籍などを調べて手続きできることがあるかもしれません。
相続放棄した人がいる相続登記になると、簡単な書籍では書いてないことも多いです。
相続登記をスムーズに済ませたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
5相続放棄申述受理証明申請を司法書士に依頼するメリット
相続放棄が家庭裁判所で認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人に通知をします。
自主的に他の相続人や債権者などに連絡することはありません。
役所や法務局なども例外ではありません。
相続放棄をした人がいる場合、相続放棄をしたので相続人ではありませんと証明する必要があります。
相続放棄申述受理通知書で足りる場合がほとんどですが、時々、相続放棄申述受理証明書が必要になります。
司法書士は、このような家庭裁判所に対する書類作成もサポートしております。
相続放棄や相続放棄申述受理証明書でお困りの方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。