遺言書の種類と特徴

1遺言書の種類

①普通方式の遺言書

遺言書には、2つの形式があります。

普通方式の遺言書と特別方式の遺言書です。

普通方式の遺言書は、日常生活の中で作成される遺言書です。

普通方式の遺言書には、次の3種類があります。

・自筆証書遺言

・公正証書遺言

・秘密証書遺言

遺言書を作成する場合、普通方式の遺言書を作成します。

自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

普通方式の遺言書の特徴は、次のとおりです。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作成法方法ひとりで作成公証人が取りまとめ公証人に提出して完成
証人不要必要必要
保管方法原則自分で保管公証役場で厳重保管自分で保管
検認手続原則必要不要必要
主な特徴手軽安心確実秘密にできる

②特別方式の遺言書

特別方式の遺言とは、通常の遺言書を作成する余裕がないときに利用する特殊な遺言書です。

余裕がないときとは、生命の危機や隔絶された状況など通常では考えられない特殊な状況です。

特別方式の遺言には、危急時遺言と隔絶地遺言があります。

危急時遺言は、次の2つです。

・一般危急時遺言

・難船危急時遺言

隔絶地遺言は、次の2つです。

・一般隔絶地遺言

・船舶隔絶地遺言

普通方式の遺言書を作成できるようになった後6か月以上経過したら、特別方式の遺言書は無効になります。

特別方式の遺言は、稀な遺言書です。

③遺言書の効力にちがいはない

普通方式の遺言書は、3種類あります。

特別方式の遺言書は、4種類あります。

方式がちがうだけで、効力にちがいはありません。

複数の遺言書が見つかった場合、新しい日付の遺言書が優先します。

2自筆証書遺言は手軽

①自筆証書遺言のメリット

メリット(1)手軽に作成できる

自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。

ひとりで作ることができるから、手軽です。

思い立ったら、すぐに作成することができます。

自筆証書遺言のメリット1つ目は、手軽に作成できる点です。

メリット(2)費用がかからない

自筆証書遺言は、筆記用具と印章があれば作成することができます。

自筆証書遺言を作成するだけなら、費用はほとんどかかりません。

自筆証書遺言のメリット2つ目は、費用がかからない点です。

メリット(3)遺言内容を秘密にできる

自筆証書遺言は、遺言内容を知られることがありません。

自筆証書遺言のメリット3つ目は、遺言内容を秘密にできる点です。

②自筆証書遺言のデメリット

デメリット(1)無効になるリスクが大きい

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

書き方ルールに違反すると、遺言書は無効になります。

専門家の関与なく作成するから、自筆証書遺言は無効になるリスクが高いと言えます。

自筆証書遺言のデメリット1つ目は、無効になるリスクが大きい点です。

デメリット(2)全文自書の負担

自筆証書遺言は、文字どおり自筆で作成する必要があります。

身体的に負担が大きいから、高齢や病気などで作成が難しいことがあります。

自筆証書遺言のデメリット2つ目は、全文自書の負担がある点です。

デメリット(3)紛失や偽造のリスク

自筆証書遺言を作成したら、原則として、自分で保管します。

自筆証書遺言は、保管場所に困ります。

保管場所を家族と共有していない場合、紛失するリスクや見つけてもらえないリスクがあります。

保管場所を家族と共有している場合、偽造変造されるリスクや破棄されるリスクがあります。

家族が何もしていなくても、他の家族から偽造変造を疑われるリスクがあります。

自筆証書遺言のデメリット3つ目は、紛失や偽造のリスクがある点です。

デメリット(4)遺言書の有効性を確認できない

遺言書を有効に作成するには、遺言能力が必要です。

遺言能力とは、遺言書に書いた内容を理解し遺言の結果のメリットデメリットを充分に判断できる能力です。

重度の認知症になった後で、遺言書を作成しても無効です。

自筆証書遺言はひとりで作成されるから、有効性を確認できません。

遺言能力の有無を巡って、家族間で意見の食い違いに発展しがちです。

自筆証書遺言のデメリット4つ目は、遺言書の有効性を確認できない点です。

③自筆証書遺言の法務局保管制度

自筆証書遺言を作成した後、法務局に提出して保管してもらうことができます。

法務局は、預かった自筆証書遺言を厳重に保管します。

紛失や偽造のリスクがなく、安心です。

自筆証書遺言の法務局保管制度を利用する場合、遺言者本人が法務局に出向く必要があります。

病気などで身体が不自由な人は、利用することが難しいでしょう。

法務局保管制度を利用する場合、手数料を納める必要があります。

保管申請手数料は、1件3900円です。

法務局保管制度を利用すると、検認手続が不要です。

検認手続とは、家庭裁判所が遺言書の存在や内容を確認する手続です。

検認手続は、改ざん防止のための手続で、有効無効を決める手続ではありません。

検認の申立てをしてから検認をしてもらうまでに、1か月程度かかります。

自筆証書遺言を作成したら、法務局保管制度を利用することができます。

④公正証書遺言作成までのつなぎに自筆証書遺言

公正証書遺言を作成する場合、手間と時間がかかります。

原則として、自筆証書遺言は相続人間のトラブルを招きやすく、おすすめできません。

公正証書遺言を作成するまでのつなぎとして、自筆証書遺言は作成するといいでしょう。

3公正証書遺言は安心確実

①公正証書遺言のメリット

メリット(1)安心確実

公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

公証人は、法律の専門家です。

公証人が書面に取りまとめるから、書き方ルールの違反で無効になることは考えられません。

公正証書遺言のメリット1つ目は、安心確実な点です。

メリット(2)偽造変造トラブルの防止

公正証書遺言を作成したら、遺言書原本は公証役場で厳重に保管されます。

相続人らが偽造変造することはできません。

相続人間で偽造変造の疑いがかけられる心配がありません。

公正証書遺言のメリット2つ目は、偽造変造トラブルの防止できる点です。

メリット(3) 検認手続が不要

検認手続は、偽造変造を防止するための手続です。

公正証書遺言は偽造変造ができないから、検認手続は不要です。

およそ1か月かかる検認手続せずに、スピーディーに遺言執行をすることができます。

公正証書遺言のメリット3つ目は、検認手続が不要である点です。

メリット(4)遺言者の負担が少ない

公正証書遺言は、公証人が書面に取りまとめます。

自書できない人であっても、遺言書を作成することができます。

自宅や病院などに出張してもらって、公正証書遺言を作成することができます。

外出が難しくても、遺言書を作成することができます。

公正証書遺言のメリット4つ目は、遺言者の負担が少ない点です。

メリット(5)検索システムで探しやすい

公正証書遺言を作成すると、検索システムに登録されます。

相続が発生した後に、相続人は検索システムで公正証書遺言を探してもらうことができます。

公正証書遺言のメリット5つ目は、検索システムで探しやすい点です。

②公正証書遺言のデメリット

デメリット(1)費用がかかる

公正証書遺言を作成する場合、手数料がかかります。

遺言書の内容や遺産の額によって、手数料の額が変わります。

公正証書遺言のデメリット1つ目は、費用がかかる点です。

デメリット(2)証人2人必要

公正証書遺言は、証人2人に確認してもらって作ります。

遺言者の家族は、証人になることができません。

公正証書遺言作成は、司法書士などの専門家にサポートしてもらうことが多いでしょう。

サポートする専門家に証人を依頼することができます。

公正証書遺言のデメリット2つ目は、証人2人必要である点です。

デメリット(3)遺言内容を知られる

公正証書遺言は、公証人に遺言内容を伝えます。

証人も、遺言内容を聞いています。

公証人や証人に、遺言内容を知られます。

公正証書遺言のデメリット3つ目は、遺言内容を知られる点です。

③公正証書遺言がおすすめ

公正証書遺言は費用と手間がかかるけど、相続トラブル防止の観点からおすすめです。

公正証書遺言は公証人が関与するから、信頼性が高いからです。

先に説明したとおりメリットとデメリットを比べると、幅広い人に公正証書遺言が最もおすすめです。

4秘密証書遺言は稀

①秘密証書遺言のメリット

メリット(1)遺言内容を秘密にできる

秘密証書遺言とは、遺言書を封筒に入れて封をして提出する遺言書です。

封筒に入れて封がされているから、内容を知られることがありません。

公正証書遺言のメリット1つ目は、遺言内容を秘密にできる点です。

メリット(2)遺言者の負担が少ない

秘密証書遺言は、本文をパソコンで作成して署名押印して作成することができます。

本文を他の人に代筆してもらうこともできます。

本人は署名と押印だけなので、遺言者の負担が少ないと言えます。

公正証書遺言のメリット2つ目は、遺言者の負担が少ない点です。

メリット(3)公証人による存在証明

秘密証書遺言は、遺言書の存在だけ証明してもらう遺言書です。

公証人による存在証明があるから、一定の真正性があります。

公正証書遺言のメリット3つ目は、公証人による存在証明がある点です。

②秘密証書遺言のデメリット

デメリット(1)無効になるリスクが大きい

秘密証書遺言は、封筒に入れて公証人に提出します。

遺言内容に関与しないから、無効になるリスクは自筆証書遺言と同じです。

秘密証書遺言のデメリット1つ目は、無効になるリスクが大きい点です。

デメリット(2)証人2人必要

秘密証書遺言を公証人に提出する際に、証人2人に立会ってもらいます。

遺言者の家族は、証人になることができません。

秘密証書遺言のデメリット2つ目は、証人2人必要である点です。

デメリット(3) 紛失や偽造のリスク

秘密証書遺言を作成したら、原則として、自分で保管します。

自筆証書遺言同様に、保管場所に困ります。

保管場所を家族と共有していない場合も共有している場合も同様に、リスクがあります。

秘密証書遺言のデメリット3つ目は、紛失や偽造のリスクがある点です。

デメリット(4)家庭裁判所で検認手続が必要

秘密証書遺言は、相続発生後に検認手続をする必要があります。

検認手続が必要なのに検認手続をしていない場合、相続手続を進めることはできません。

秘密証書遺言のデメリット4つ目は、家庭裁判所で検認手続が必要である点です。

デメリット(5)費用がかかる

秘密証書遺言を作成する場合、手数料がかかります。

秘密証書遺言の認証手数料は、1通11000円です。

秘密証書遺言のデメリット5つ目は、費用がかかる点です。

③秘密証書遺言はデメリットが目立つ

秘密証書遺言は、遺言内容を秘密にすることが大きなメリットです。

特定のケースでは、有効かもしれません。

秘密証書遺言は、稀な遺言書です。

5自筆遺言の封筒に決まりはない

①封がしていなくても遺言書は有効

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言の成立要件は、次のとおりです。

・遺言者の全文自書すること

・遺言者が日付と氏名を自書すること

・遺言者が押印をすること

封がされていない遺言書が見つかることがあります。

自筆証書遺言の成立要件に、「封をすること」はありません。

封がされていない遺言書も、有効な遺言書です。

封がされていない遺言書であっても、検認手続は必要です。

②封筒に入れなくても遺言書は有効

自筆証書遺言の成立要件に、「封筒に入れること」はありません。

封筒に入っていなくても、遺言書は有効です。

封筒に入っていない遺言書であっても、検認手続は必要です。

③封筒の書き方

自筆証書遺言の成立要件になくても、自筆証書遺言は封筒に入れることが一般的です。

封筒に入れて封をしたら改ざんされていないと、一定の信頼ができるからです。

封筒は、どのような封筒であっても差し支えありません。

例えば、大きな封筒であれば、A4の紙を折らずに入れることができます。

表書きに「遺言書」と記載すると、中に遺言書が入っていることが分かります。

自宅などで保管している自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認手続を受ける必要があります。

見つけた人が検認手続について知らないと、うっかり開封してしまうでしょう。

「開封せずに家庭裁判所に提出して検認手続をするように」と記載すると親切です。

遺言者の氏名と日付を書いて押印すると、丁寧な印象になります。

遺言者本人が書いたと、信頼してもらいやすくなるでしょう。

6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

せっかく遺言書を作るのなら、確実な公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言を作成するときは、司法書士などの専門家にサポートしてもらうといいでしょう。

相続人になる予定の人の遺留分に配慮し、遺言書文案作成から公正証書遺言作成まで、サポートを受けられるからです。

希望すれば、証人を準備し遺言執行までトータルでサポートしてもらうことができます。

確実な遺言書を作成できるから、遺言者は安心できます。

手間と時間がかかる相続手続から解放されるから、相続発生後に相続人は安心です。

遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

keyboard_arrow_up

0527667079 問い合わせバナー 事前相談予約