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遺言書で不動産を遺贈
1不動産を遺贈するときの遺言書の書き方
①単独所有の土地を遺贈する遺言書の書き方
遺言者は、次のとおり遺言する。
第1条
次の財産を、○○に、遺贈する。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
②土地の共有持分を遺贈する遺言書の書き方
遺言者は、次のとおり遺言する。
第2条
次の財産を、○○に、遺贈する。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
持分 4分の1
③建物を遺贈する遺言書の書き方
遺言者は、次のとおり遺言する。
第3条
次の財産を、○○に、遺贈する。
所在 ○○市○○町○丁目
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡
④遺言書なしで遺贈はできない
遺贈とは、遺言書で財産を引き継いでもらうことです。
遺言書なしで、遺贈することはできません。
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
自分ひとりで作ることができるから、気軽な遺言書です。
公正証書遺言は、遺言内容を伝えて公証人が取りまとめる遺言書です。
証人2人に確認してもらって作ります。
遺言者に法律の知識があることはあまりないでしょう。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。
遺言書のつもりで作成しても、書き方ルールに違反すると無効になります。
不動産を遺贈したいと思っていたに、無効の遺言書では実現できません。
公正証書遺言は、公証人が取りまとめます。
公証人は、法律の専門家です。
公証人が関与するから書き方ルールの違反で遺言書が無効になることは考えられません。
公正証書遺言を作成した後、公正証書遺言原本は公証役場で厳重保管されます。
遺言書を紛失することがありません。
紛失したら、遺贈を実現できなくなります。
遺言書が改ざんや変造されることがありません。
公正証書遺言は、安心確実な遺言書です。
遺言書なしで、遺贈はできません。
2不動産を遺贈したときの登記手続
①相続人に遺贈するときは事実上単独申請
遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書を作成して、相続人に遺贈をすることができます。
遺贈の登記は、登記権利者と登記義務者が共同で登記申請をします。
受遺者が相続人である場合、登記申請書に登記権利者と登記義務者を記載するだけで義務者の関与は不要です。
形式的には共同申請ですが、事実上、受遺者が単独申請をすることができます。
相続人に遺贈するときの登記申請では、不動産の権利証が不要です。
②遺言執行者がいるときは遺言執行者が申請
遺贈をする場合、遺言書を作成する必要があります。
遺言書は作成するだけでは、意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の内容を実現するために、必要な権限が与えられます。
遺言執行者は、遺言書で指名することができます。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行を妨害することができません。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者と遺贈を受ける人が共同で登記申請をします。
登記手続は、知識のない人にとって難しいことが多いでしょう。
多くの人は、司法書士などの専門家に依頼します。
司法書士などに依頼する場合、委任状を作成して交付します。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者と遺贈を受ける人が委任状を渡します。
遺贈の登記申請で、相続人は関与する必要がありません。
相続人が遺言書の内容に不満があっても、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。
遺言執行者がいるときは、遺言執行者が申請人になります。
③遺言執行者がいないときは相続人全員の協力で
遺言執行者が選任されていない遺言書は、たびたび見かけます。
遺言執行者が選任されていても選任されていなくても、遺言書は有効です。
遺言書で遺言執行者が選任されていても、就任をご辞退をされることがあります。
遺言執行者が選任されていても、遺言執行者に就任する義務はないからです。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
相続人の気持ちとしても、遺言者の意思を実現してあげたいでしょう。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
相続人以外の人に遺贈する場合、相続人が遺言書に不満を覚えることがあります。
遺言者の意思とは言え、財産を奪われるような気持ちになるかもしれません。
遺言書に不満がある相続人は、遺言書の内容の実現に協力してくれないでしょう。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任しておくことがおすすめです。
④家庭裁判所に遺言執行者選任の申立て
遺言執行者が選任されていなくても、遺言書は有効です。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。
遺言書の内容を実現するために協力しない相続人がいると、手続が進まなくなります。
遺言執行者は、家庭裁判所に選任してもらうことができます。
遺言書で遺言執行者が選任されていない場合や就任をご辞退した場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者がいれば、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
⑤登記はすみやかに
遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人は、相続できるし遺贈を受けることもできます。
遺言者が死亡したら、遺言書の効力が発生します。
不動産を遺贈した場合、不動産の名義変更をします。
遺贈の登記には、いつまでにやらなければならないと言った期限はありません。
遺贈の登記は先延ばしせず、すみやかに終わらせることをおすすめします。
登記がないと、権利主張ができないからです。
もしかしたら、遺言書の存在を知らない相続人が相続登記をして不動産を売却するかもしれません。
不動産を売買したら、買主はすぐに名義変更をします。
不動産の買主に名義変更がされてしまったら、遺言書に不動産を遺贈するとあっても、買主に文句は言えません。
登記がある人が、権利主張をすることができるからです。
登記があることが権利主張の条件になります。
権利主張の条件になることを対抗要件と言います。
被相続人の権利証が手元にあるから大丈夫と、のんびりしているかもしれません。
原則として、売買などで所有権移転登記をする場合、権利証が必要になります。
相続による所有権移転登記をする場合、権利証は、原則として、必要ありません。
相続人は、権利証なしで、相続による所有権移転登記ができます。
相続による所有権移転登記を済ませたら、相続人のために新しい権利証が作られます。
相続人は、新しい権利証を使って売買による所有権移転登記をすることができます。
被相続人の権利証が手元にあっても、安心はできません。
期限はなくても、すみやかに遺贈による所有権移転登記を済ませましょう。
3不動産の遺贈で税金がかかる
①不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得したときに1回だけ課される税金です。
有償で取得しても無償で取得しても、課税されます。
登記をしても登記をしなくても、課税されます。
特定遺贈で相続人以外の人が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
特定遺贈で相続人が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されません。
遺贈は、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続は、相続人が財産を引き継ぐことです。
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税が課されません。
不動産取得税は、特定遺贈で相続人以外の人が不動産を取得した場合に課されます。
②譲渡所得税
個人が1年に得た所得に対して、所得税が課されます。
不動産の譲渡によって得た利益は、譲渡所得に分類されます。
不動産を長期間保有していた場合、取得したときより大きく値上がりしていることがあります。
含み益がある不動産を売却した場合、譲渡所得が発生します。
不動産を遺贈した場合、無償か著しく低額で譲渡するでしょう。
無償か著しく低額で譲渡したときに、譲渡所得が発生しないとしたら不公平です。
含み益を手にしているのに、租税回避ができることとなるからです。
含み益がある不動産を遺贈した場合、時価で譲渡したとみなして税金を計算します。
時価で譲渡したとみなされた結果、相続人に譲渡所得が発生します。
譲渡所得税は、相続人が納税します。
③登録免許税
遺贈を受けたら、不動産の名義変更をします。
遺贈を受けた場合にも、登録免許税を納める必要があります。
遺贈を受けた場合の税率は、次のとおりです。
(1)相続人が遺贈を受けた場合、1000分の4
(2)相続人以外の人が遺贈を受けた場合、1000分の20
相続人が遺贈を受けた場合、相続登記と同じ税率です。
登録免許税は、不動産の名義変更をするときに課されます。
④相続税
遺贈を受けた場合、贈与税でなく相続税が課されます。
相続税には、基礎控除があります。
基礎控除額は次の計算式で求めることができます。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数
相続財産が基礎控除額以内であれば、相続税は課されません。
相続税が課されるのは、全体の10%にも満たないわずかな富裕層です。
4農地の遺贈は農地法の許可
①相続人以外に遺贈は農地法の許可
農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。
勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
遺贈する不動産が農地である場合、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。
農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。
相続人以外の人に遺贈する場合、農地法第3条の許可が必要です。
②相続人に遺贈は届出のみ
相続人になる人は、法律で決まっています。
法律で決められた人だけが相続人になります。
相続できるのは、相続人だけです。
相続で農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。
相続人や相続人以外の人に、遺贈することができます。
相続人が特定遺贈で農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。
遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。
遺言執行には、法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。
不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書の内容は代襲相続できない
1代襲相続とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
2遺贈する遺言は代襲相続できない
①遺贈とは
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈で財産を譲ってあげる人のことを遺贈者、譲ってもらう人を受遺者と言います。
相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。
遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
譲ってもらう人は自然人でもいいし、法人などの団体でも差し支えありません。
遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。
②死亡した受遺者の子どもは代襲相続できない
遺言書に「□□に財産□□を遺贈する」と書いてあるケースがあります。
遺言書によって財産を譲ってもらう人が遺言者より先に死亡している場合、遺言のその部分は無効になります。
□□が遺言者より先に死亡している場合、「□□に財産□□を遺贈する」は無効になります。
□□の子どもが□□に代わって財産を受け取ることはできません。
遺言は死亡時に効力が発生するので、死亡時に受取人が存在している必要があるからです。
遺言によって財産を受け取る権利は、本人限りです。
遺贈する遺言内容は、代襲相続ができません。
「□□に財産□□を遺贈する」は無効になりますから、財産□□は遺言書に記載がない財産になります。
③財産は相続人全員の共有財産
□□が遺言者より先に死亡している場合、「□□に財産□□を遺贈する」は無効になります。
「□□に財産□□を遺贈する」が無効になるから、財産□□は遺言書に記載のない財産になります。
遺言書に記載のない財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
どのような分け方をする場合でも、受遺者の親族などの同意は必要ありません。
④予備的遺言が有効
遺言書がある場合、相続手続がスムーズに進みます。
遺言書がある場合、相続財産は遺言書のとおりに分ければいいからです。
受遺者が先に死亡した場合、遺言書の記載が無効になります。
せっかく遺言書を作成しても、相続人全員で相続財産の分け方の話し合いが必要になります。
遺言書を作成する際に、一工夫が必要になります。
「□□に財産□□を遺贈する」の他に「受遺者□□が遺言者より先に死亡した場合、受遺者の子ども□□□に財産□□を遺贈する」と書くことができます。
「受遺者□□が遺言者より先に死亡した場合、受遺者の子ども□□□に財産□□を遺贈する」を予備的遺言と言います。
⑤相続発生時に生きていた受遺者は遺贈を受けることができる
被相続人が死亡したときに、受遺者が生きていたのに相続手続中に受遺者が死亡することがあります。
被相続人が死亡したときに受遺者が生きていた場合、「□□に財産□□を遺贈する」は有効です。
相続手続中に受遺者が死亡しても、遺言書の内容は無効になりません。
受遺者□□は死亡後であっても、財産□□を受け取ることができます。
受遺者□□が財産を受け取った後、受遺者□□の相続人が財産□□を相続します。
3相続させる遺言は代襲相続できない
①死亡した相続人の子どもは代襲相続人
代襲相続とは、相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することです。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
被相続人の子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。
②遺言書の内容は相続人の子どもが代襲相続できない
遺言書に「相続人〇〇に財産〇〇を相続させる」と書いてあるケースがあります。
遺言書によって財産を譲ってもらう人が遺言者より先に死亡している場合、遺言のその部分は無効になります。
相続人〇〇が遺言者より先に死亡している場合、「相続人〇〇に財産〇〇を相続させる」は無効になります。
相続人〇〇の子どもが相続人〇〇に代わって財産を受け取ることはできません。
遺言は死亡時に効力が発生するので、死亡時に受取人が存在している必要があるからです。
遺言によって財産を受け取る権利は、本人限りです。
相続させる遺言内容は、代襲相続ができません。
「相続人〇〇に財産〇〇を相続させる」は無効になりますから、財産〇〇は遺言書に記載がない財産になります。
③財産は相続人全員の共有財産
相続人〇〇が遺言者より先に死亡している場合、「相続人〇〇に財産〇〇を相続させる」は無効になります。
「相続人〇〇に財産〇〇を相続させる」が無効になるから、財産〇〇は遺言書に記載のない財産になります。
遺言書に記載のない財産は、相続人全員の共有財産です。
相続人〇〇の子どもは、代襲相続人になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人〇〇の子どもは代襲相続人として、相続財産の分け方の話合いに参加します。
相続人全員の合意が得られた場合、財産〇〇を相続することができます。
④予備的遺言が有効
受遺者も相続人も先に死亡した場合、遺言書の記載が無効になります。
せっかく遺言書を作成しても、相続人全員で相続財産の分け方の話し合いが必要になります。
「〇〇に財産〇〇を相続させる」の他に「受遺者〇〇が遺言者より先に死亡した場合、相続人〇〇の子ども〇〇〇に財産〇〇を相続させる」と書くことができます。
予備的遺言をすることでスムーズな相続手続が実現できます。
⑤相続発生時に生きていた相続人は相続することができる
被相続人が死亡したときに、相続人が生きていたのに相続手続中に相続人が死亡することがあります。
被相続人が死亡したときに相続人が生きていた場合、遺言書の内容は有効です。
相続人〇〇は死亡後であっても、財産〇〇を受け取ることができます。
相続人〇〇が財産を受け取った後、相続人〇〇の相続人が財産〇〇を相続します。
4遺言書は書き換えができる
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。
遺言書を書くこと自体を大げさに考えて、書いたら終わりと思われがちです。
民法には、いつでも、遺言書の撤回ができるとはっきり書いてあります。
遺言書は、新たな遺言書で書き換え(撤回)ができます。
書き直しをするのも遺言書なので、本人以外が書き直しをすることはできません。
他の人が代理で書き直すことはできませんし、相続人が撤回することもできません。
自筆証書遺言で、かつ、些細な書き間違いであれば、内容訂正する程度でも差し支えありません。
大きな修正をする場合は改めて作った方がいいでしょう。
一度書いたら書き直しがなくて済む場合もあります。
状況が変われば書き直しすることは、割とよくあることです。
新たに誕生した孫や曽孫に財産を譲りたい場合、新たに書き直すことができます。
遺言書で財産を相続させる子どもがお世話をしてくれないのであれば、お世話をしてくれる子どもに財産を相続させると書き直すことができます。
財産を受け取ってもらいたい人が先に死亡した場合、引き継いでもらう内容を大きく変更したいことがあるでしょう。
予備的遺言で対応しきれない場合や複雑になる場合、遺言書の書き換えがおすすめです。
何度も書き直すことで、よりいい遺言書にすることができます。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
いろいろ言い訳を考えて、先延ばしします。
先延ばしした結果、認知症などになると遺言書を作れなくなります。
その先には、家族のもめごとが待っています。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠です。
まず、遺言書を書くことをおすすめします。
遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。
遺言書がないから、トラブルになることはたくさんあります。
遺言書1枚あれば、相続手続きは格段にラクになります。
状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。
家族をトラブルから守りたい人は、司法書士に遺言書作成を依頼することをおすすめします。
遺言書で延命治療は拒否できない
1遺言書で延命治療は拒否できない
①遺言者の死亡時に遺言書の効力発生
病気やけがなどで回復の見込みがなくなった後も、治療が続けられることがあります。
延命治療とは、生命維持を目的に行われる治療です。
具体的には、人工呼吸器による呼吸管理や点滴や胃ろうなどによる栄養管理などの医療行為を指します。
延命治療には、苦痛を伴うことがあります。
意識を失った後も延命治療が続けられることで、自分らしさが失われると感じるかもしれません。
自分らしさを維持するため、延命治療を拒否したいというニーズがあります。
延命治療を拒否するために遺言書を作成するのは、意味がありません。
遺言書で、延命治療を拒否できません。
遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。
遺言者が生きている間は、効力がありません。
延命治療は、生きている間に行われるものです。
遺言書は遺言者が死亡した後に効力が発生するから、延命治療を拒否することができません。
②遺言事項は法律で決められている
遺言書は、厳格な書き方ルールがあります。
遺言書に書くことで法律上意味がある事項は、法律で決められています。
遺言書に書くことで法律上意味がある事項を遺言事項と言います。
遺言事項は、次のとおりです。
(1)財産に関すること
(2)身分に関すること
(3)遺言執行に関すること
(4)それ以外のこと
延命治療は拒否することは、遺言事項にありません。
遺言書には、法律上意味がないことを書くことができます。
例えば、家族への感謝の気持ちや家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどの気持ちです。
家族仲良く幸せに暮らして欲しい気持ちに、法的な拘束力はもちろんありません。
延命治療は拒否することを書いても、法的効力はありません。
③遺言書は死亡後に開封される
遺言書は、プライベートな内容が書かれています。
遺言者本人が積極的に家族に見せることは、あまりありません。
家族にとっても、遠慮して見ないことが多いでしょう。
封筒に入った自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で開封してもらいます。
法務局保管の自筆証書遺言は、相続発生後に遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書の発行請求をすることができます。
公正証書遺言は、相続発生後に相続人が謄本請求をすることができます。
遺言者の生前は、家族が遺言書の内容を知らないことが大部分でしょう。
遺言書に延命治療を拒否すると書いても、生前に家族は気づきません。
家族から延命治療を拒否する希望を伝えてもらうことができません。
2尊厳死宣言公正証書で延命治療拒否を表示する
①尊厳死と安楽死はちがう
延命治療を拒否することを、安楽死や尊厳死と表現することがあります。
安楽死と尊厳死には、さまざまな見解があります。
大きな苦痛を伴いながら過剰な延命治療を受け続けることは、自分らしくないとも考えられます。
尊厳死は、過剰な延命治療を行わずに尊厳を保持しつつ自然な死を迎えるものです。
尊厳死は、死に至るまでの方法と言えます。
尊厳死を直接認める法律はありません。
日本医師会や学会などは、尊厳死を認める意見です。
安楽死は、激しい苦痛から解放されるために薬剤などを使って積極的に死を迎えるものです。
安楽死は、死を選択することと言えます。
尊厳死では、本人の意思と緩和ケアによる生命の質の確保が前提になります。
②延命治療の拒否は意思表示が重要
尊厳死では、本人の意思が重視されます。
多くの場合、延命治療を受けるか受けないか判断する場面において本人が意志表示をすることはできません。
意識がもうろうとしていたり話ができなかったりするためです。
延命治療の拒否を希望する場合、あらかじめ医師や家族に意思を伝えておく必要があります。
終末期における治療に関してする意思表示を一般的にリビングウィルと言います。
医師や家族が本人の希望を知らなかった場合、延命治療を選択するでしょう。
③公正証書は信用がある
公正証書は、公証人が作成する公文書です。
公証人は、法律の専門家です。
公正証書は公証人が関与して作られるから、高い信用力があります。
公証人の前で延命治療を拒否することを宣言し、公正証書にすることができます。
延命治療の拒否は、医師にとっても悩ましい問題です。
延命治療を行わないと、死期を早めることになるでしょう。
延命治療を行わない判断や延命治療を中止する決定について、家族が不満に思う可能性があります。
家族が本人の希望を知らなかった場合、医師に強く抗議するでしょう。
大きなトラブルに発展することをおそれて、延命治療を行うことになるでしょう。
公正証書を作成する場合、公証人が本人確認と本人の意思確認をします。
公正証書を作成した後は、公正証書原本は公証役場で厳重保管されます。
本人が尊厳死を希望する意思があることを公正証書で示すことができます。
公正証書には、高い信用があります。
④治療を続けるか医師が判断
現在の日本では、尊厳死は法制化されていません。
延命治療を拒否する意思表示をしても、治療をする判断は医師に委ねられています。
一部の医師が回復の見込みがなくなったと言っても、他の医師は回復の見込みがあると判断するかもしれません。
同じ治療をしても、救命治療であるか延命治療であるか区別することはできないでしょう。
尊厳死宣言公正証書を見せて意思表示をした場合、医師は本人の強い意志があると判断するでしょう。
日本医師会や学会などは、尊厳死を容認しています。
本人の強い意思を尊重する判断をしやすくなるでしょう。
日本尊厳死協会のアンケート結果によると、尊厳死宣言を示したことによる尊厳死の認容率は9割を超えています。
尊厳死宣言公正証書に法律上の効力はなくても、医師や家族に意思表示をする意味があると言えます。
3尊厳死宣言公正証書を作る方法
①尊厳死宣言公正証書の作成の流れ
尊厳死宣言公正証書の作成の流れは、次のとおりです。
(1)尊厳死宣言公正証書の原案作成
(2)公証役場に提出して打合せ
(3)公証人の面談予約
(4)尊厳死宣言公正証書の作成
(5)尊厳死宣言公正証書の正本と謄本の受領
公証役場の混雑状況によりますが、原案作成から公正証書作成まで1か月程度かかります。
②尊厳死宣言公正証書の必要書類
尊厳死宣言公正証書を作成する場合、次の書類のうちいずれかが必要になります。
(1)印鑑登録証明書と実印
(2)運転免許証と認印
(3)パスポートと認印
(4)マイナンバーカードと認印
(5)その他の顔写真入り公的証明書と認印
③公証役場に手数料がかかる
尊厳死宣言公正証書を作成する場合、公証役場に手数料を支払う必要があります。
手数料は、作成手数料と謄本代で15000円程度です。
公証役場に出向くことができない場合、公証人に出張してもらうことができます。
出張してもらうときは、10000円程度加算されます。
④尊厳死宣言公正証書の文例


4尊厳死宣言公正証書と公正証書遺言の同時作成がおすすめ
尊厳死宣言は、終末期の医療に対する意思決定です。
自分自身の生き方を考えているでしょう。
自分の財産は、生きている間は自分で自由に処分することができます。
自分が死亡した後、だれに引き継がせるか自由に決めることができます。
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
尊厳死宣言公正証書と公正証書遺言は、どちらも公証人の関与で作成します。
尊厳死宣言公正証書を作成するのなら、公正証書遺言を一緒に作成するといいでしょう。
公証役場と打合せをするのも公証役場に出向くのも、まとめて済ませることができるからです。
尊厳死宣言公正証書と公正証書遺言の同時作成がおすすめです。
5尊厳死宣言を司法書士に依頼するメリット
生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策をする人はあまり多くありません。
争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。
尊厳死宣言は、人間としての尊厳を維持したいという希望を文書にしたものです。
家族は元気だったときの姿を知っているから、ベッドに横たわるだけの姿を見ると動揺します。
回復の見込みのない状態だと分かっていても、判断ができません。
大きな苦痛を伴うことを知っていても、どうするかを判断したくない気持ちになるでしょう。
何も判断したくない、判断を先延ばししたいという気持ちから、延命治療が続けられます。
延命治療が続けられれば、苦痛も続きます。
延命治療が続く間、本人も苦痛が続き、見ている家族も苦痛が続くのです。
家族は、後々になっても、本人を苦しめてしまったのではないかと後悔するのです。
尊厳死宣言は、自己決定権を尊重するものです。
自分がどのような治療や措置を受けたいのか、どのような治療や措置を受けたくないのか、どのような最期を迎えたいのか意思を示すものです。
家族は、本人の意思をかなえてあげることができると救われます。
自分自身のためにも、大切な家族のためにも、意思を示してあげましょう。
大切な家族に面倒をかけないために尊厳死宣言書を作成したい方は、すぐに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
司法書士に遺言執行を依頼する
1遺言執行者とは
①遺言執行者は遺言書の内容を実現する人
遺言書は、遺言者の意思を示したものです。
遺言書を書いただけでは、意味がありません。
遺言書を書いただけで、自動的に遺言内容が実現するわけではないからです。
遺言書の内容を実現する人が遺言執行者です。
相続人は遺言の内容を見たら、被相続人の意思を尊重し、実現してあげたいと思うでしょう。
相続人にとって不利な内容になっている場合、遺言の実現に協力してくれないこともあります。
遺言執行者を選任しておくと、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。
遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。
協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。
遺言執行者はいてもいなくても、遺言書の効力に違いはありません。
遺言執行者がいると、確実に遺言者の意思を実現してもらえますから、安心です。
②遺言執行者の選任方法
遺言執行者を決める方法は、次の3つがあります。
(1)遺言書で指名する
(2)遺言執行者を指名する人を遺言書で指名する
(3)遺言者が死亡した後、家庭裁判所に選んでもらう
(3)家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらうことを遺言執行者選任の申立てと言います。
相続発生後に、家族が家庭裁判所で手続をするのは手間がかかります。
家族に面倒をかけるより、遺言書で遺言執行者を指名するのがおすすめです。
遺言者は、遺言執行者を自由に指名することができます。
親族のうちから選んでも構わないし、司法書士などの専門家に依頼することもできます。
家族から選んだ場合、相続人同士の関係性や財産状況が分かっているので相続手続がスムーズに進むかもしれません。
難易度の高い相続手続や財産状況が複雑な場合、対応しきれなくなることがあります。
司法書士などの専門家に遺言執行者になってもらう場合、専門性や中立性の面から安心です。
③遺言執行者がいると家族がラク
遺言執行者がいても遺言執行者がいなくても、遺言書の効力にちがいはありません。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言書の内容を実現します。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。
相続人全員が遺言書の内容に納得していて相続手続に協力できる場合、必ずしも遺言執行者を選任する必要はありません。
相続人の中には遺言書の内容に納得していても、相続手続に協力する時間的余裕がない人がいるでしょう。
相続手続に協力する気持ちがあっても、知識不足から行き違いを起こすことがあります。
相続手続は何度も経験するものではないから、だれにとっても不慣れでスムーズに手続を進めることができません。
相続が発生したら、膨大な手続があります。
相続手続をする先は、銀行などの金融機関や役所、法務局、家庭裁判所などです。
いずれも、平日の昼間しか手続できません。
相続手続をカンタンに考えていると、スムーズに行かない手続にイライラします。
仕事や家事で忙しい人にとって、不慣れな手続にさらにイライラが募ります。
遺言執行者がいる場合、面倒な相続手続をおまかせすることができます。
家族は待っているだけです。
遺言執行者がいると、家族はラクができます。
2遺言執行者になれる人なれない人
①未成年・破産者は遺言執行者になれない
未成年・破産者は、遺言執行者になることができません。
遺言書を作成したとき、未成年者であっても相続が発生したときに成年に達していれば遺言執行者になることができます。
結婚している人は未成年であっても、成年扱いされます。
破産申立の後、裁判所から免責許可決定を受けていれば、遺言執行者になることができます。
②相続人・受遺者は遺言執行者になれる
遺言者は、遺言執行者を自由に指名することができます。
財産を受け継いでもらう人を遺言執行者に指名することができます。
遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を受け継いでもらうことを遺贈と言います。
遺贈で財産を譲り受ける人を受遺者と言います。
受遺者を遺言執行者に指名することができます。
多くの場合、遺贈で財産を受け継いでもらうのは相続人以外の人です。
相続人に財産を受け継いでもらう場合、相続させればいいからです。
不動産を遺贈する場合、遺贈登記が必要になります。
遺言執行者がいない場合で、かつ、相続人以外の人が受遺者として遺贈登記を申請する場合、相続人全員の協力が必要になります。
相続人以外の人が財産を受け取ることに、納得できない相続人がいるかもしれません。
遺言書の内容に納得できない相続人は、遺贈登記に協力してくれないでしょう。
遺言執行者がいる場合、相続人全員の協力は不要です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人だからです。
協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。
③司法書士に遺言執行を依頼できる
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
相続手続を相続人全員の代わりにやってくれます。
相続手続はカンタンに考えがちですが、想像以上に面倒で手間と時間がかかります。
相続手続は法律の知識が必要になることも少なくありません。
家族を遺言執行者に指名することができますが、荷が重いものです。
司法書士は、相続手続をはじめとする法律の専門家です。
司法書士などの専門家に遺言執行を依頼することができます。
家族がわずらわしい相続手続から解放されるから、家族のトラブルが軽減されます。
④遺言執行者が司法書士に遺言執行を依頼できる
遺言執行者は、未成年や破産者でなければだれでも指名することができます。
遺言執行者に就任した後、あまりの大変さに音を上げることがあります。
相続手続はだれにとっても経験が少ないためスムーズに進めるのが難しいからです。
遺言執行者は、司法書士などの専門家に遺言執行を依頼することができます。
2019年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。
遺言執行者に指名されたのが2019年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。
止むを得ない理由がなくても、専門家に任せることができるように変更になりました。
遺言執行は法律知識が必要な手続が多いので、専門家に任せる方がスムーズでしょう。
法律改正で、専門家に任せやすくなったといえます。
3遺言執行者の役割
①遺言執行者就任を通知する
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。
遺言執行者のやることは細々とあります。
遺言書の内容と遺言執行者に就任したことを相続人や遺贈を受ける人にお知らせします。
遺言執行者に指名されてもお断りができます。
お断りの理由を言う必要はありません。
仕事が忙しいでも、自信がないでも、何となく気が進まないでも構いません。
断るときは、すみやかに意思表示をしましょう。
②遺言書の検認の申立て
法務局保管でない自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、遺言書の検認が必要です。
公正証書遺言は、検認不要です。
遺言書の検認には時間がかかることから、遺言書作成は公正証書遺言がおすすめです。
③相続人調査
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取り寄せます。
戸籍の取り寄せは、思う以上に時間や労力がかかります。
古い戸籍は現在の戸籍と書き方が違ううえに、手書きなので読み解くのに苦労するかもしれません。
④財産調査
相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。
不動産の権利証や預貯金の残高証明書や借入金等を調査して、財産の全容を明らかにします。
財産を一覧表に取りまとめ、すみやかに相続人に交付します。
⑤遺言内容の執行
(1)預貯金などの解約
ほとんどの場合、相続財産に預貯金が含まれています。
銀行などの金融機関は口座の持ち主が死亡したことを確認すると口座を凍結します。
銀行の預貯金口座は日常生活に不可欠なので、すみやかに手続きする必要があります。
遺言書の内容を越えて手続きすることはできません。
例えば、〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる
上記遺言がある場合、普通預金だけ解約できます。
別の支店の口座や定期預金は解約できません。
(2)不動産の名義変更
遺贈をする場合も、相続する場合も、遺言執行者が登記申請ができます。
遺言執行者は、司法書士や弁護士に依頼することができます。
(3)家庭裁判所へ申立てや役所への届出
子どもの認知や相続人廃除の申立て、相続人廃除の取消の申立てなどは遺言執行者がします。
申立てが認められた後、戸籍の届出も遺言執行者が行います。
⑥相続財産の換価
財産を売却して得られたお金を相続人に平等に分けるように指定してあることがあります。
不動産の場合、売却が指定してある場合でも、相続登記が必要です。
⑦遺言執行の完了報告
すべての任務が終了したら、相続人全員に職務完了を報告します。
4遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。
相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。
子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。
遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。
その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。
以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。
遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。
今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。
遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。
家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。
家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
農地があるときの遺言書で農地法の許可
1農地の名義変更に農地法の許可が必要
①農地の権利移動で農地法3条の許可が必要
農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。
勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
許可が必要になる権利移動は、売買、贈与、賃貸などです。
農地法第3条の許可の要件は、次のとおりです。
(1) 全部効率利用要件
全部効率利用要件とは、農地の全部をつかって効率よく農業をすることです。
農地を耕作するのに充分な労働力が確保されているか技術があるか審査されます。
労働力が不足する場合、充分な能力がある機械があるか審査されます。
(2)農作業常時従事要件
農作業常時従事要件とは、農作業に常時従事することです。
常時とは、年間150日以上とされています。
住居と生計を同一する家族が満たせば認められます。
権利者本人だけでなく家族で助け合えば、要件を満たすことができます。
(3)下限面積要件
下限面積要件とは、農地を取得する人の耕作する面積の要件です。
下限面積は、5000平方メートルです。
すでに耕作している土地がある場合、合算して審査されます。
地域によっては、下限面積要件を緩和しています。
新規の就農者を増やしたいことがあるからです。
(4)地域調和要件
地域調和要件とは、地域の取組に協力的であることです。
地域の活動に支障がある場合、許可されにくくなります。
例えば、地域全体で無農薬栽培に取り組んでいる場合、協力しない人には許可されにくいでしょう。
②農地の転用で農地法4条の許可が必要
農地の転用とは、農地を農地以外の土地にすることです。
例えば、農地を宅地にして家を建てる場合、農地の転用に該当します。
農地の転用には、農地法第4条の許可が必要です。
③農地の転用と権利移動で農地法5条の許可が必要
農地の転用と権利移動をする場合があります。
例えば、農地を売却したうえで宅地にして家を建てる場合です。
農地の転用と権利移動をするには、農地法第5条の許可が必要です。
④許可がないと権利取得ができない
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。
農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
2農地を相続させる遺言書
①農地を相続させる遺言書の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第1条
次の財産を、相続人○○に、相続させる。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 畑
地積 200㎡
②相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
③相続で農地を取得するときは3条の許可不要
相続人になる人は、法律で決まっています。
法律で決められた人だけが相続人になります。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人が農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが農業をしないことがあります。
子どもは農業をしないけど、子どもの子どもが農業をすることがあります。
孫に農地を相続させたいと考えることがあります。
子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。
孫に相続させることはできません。
孫に農地を受け継いでもらいたい場合、別の方法を考える必要があります。
相続で農地を取得するときは、農地法第3条の許可は不要です。
④3条の許可なしで農地を取得したときは届出が必要
農地を取得する場合、原則として、農地法第3条の許可が必要です。
相続で農地を取得した場合、例外として、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可を得ずに農地を取得した場合、農地法第3条の3の定めにより届出が必要です。
農地法第3条の3の定めによる届出は、農業委員会に対して提出します。
提出期限は、相続があったことをしてから10か月以内です。
3農地を特定遺贈する遺言書
①農地を特定遺贈する遺言書の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第2条
次の財産を、◇◇に、遺贈する。
所在 ◇◇市◇◇町◇丁目
地番 ◇番◇
地目 畑
地積 300㎡
②特定遺贈は指定した財産を譲る
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
特定遺贈とは、遺言書に、「財産◇◇◇◇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。
遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。
③相続人以外の人に特定遺贈するときは3条の許可が必要
遺贈は、遺言書で財産を受け継ぐことです。
遺贈は、相続ではありません。
相続人以外の人が特定遺贈で財産を受け継ぐことができます。
相続人以外の人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。
相続人以外の人に特定遺贈をしたい場合、許可されるのか農業委員会に確認しておくといいでしょう。
農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。
子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。
孫に相続させることはできません。
孫に遺贈することができます。
孫が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。
孫は、相続人以外の人だからです。
④相続人に特定遺贈するときは3条の許可が不要
相続人や相続人以外の人に、遺贈することができます。
相続人に対して、農地を相続させることができます。
相続人に対して、農地を特定遺贈することができます。
相続人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
4農地を全部包括遺贈する遺言書
①全部包括遺贈する遺言書の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第3条
全財産を、◇◇に、遺贈する。
②全部包括遺贈は全財産を譲る
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
包括遺贈とは、遺言書に割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
全部包括遺贈は、「財産すべてを包括遺贈する」と記載してある場合です。
全部包括遺贈をする場合、法定相続人や法定相続人以外の人に全財産を譲ってあげることができます。
③全部包括遺贈は遺産分割協議不要
全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は相続人と共有することがありません。
相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。
遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。
全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。
相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。
④相続人以外の人に包括遺贈するときは3条の許可が不要
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
5農地を一部包括遺贈する遺言書
①一部包括遺贈をする記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第3条
全財産の10分の1を、◇◇に、遺贈する。
②一部包括遺贈は指定した割合で譲る
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
包括遺贈とは、遺言書に割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
一部包括遺贈は、「財産の2分の1を包括遺贈する」と記載してある場合です。
包括遺贈では、何を遺贈するのか具体的財産は記載されていません。
③一部包括遺贈を受けたら遺産分割協議
一部包括遺贈は、指定した割合で財産を譲るものです。
一部包括遺贈を受けた場合、遺産分割協議に参加します。
包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。
遺言書は割合だけ書いてあるだけで、具体的な財産は記載されていないからです。
相続財産は、包括遺贈を受けた人と相続人全員で共有しています。
相続財産の分け方について、包括遺贈を受けた人と相続人全員で合意する必要があります。
包括受遺者がいるのに、相続人全員だけで遺産分割協議をしても無効です。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。
遺産分割協議の結果次第では、農地を受け取ることができないかもしれません。
一部包括遺贈を受けただけでは、何を受け取るのか決められていないからです。
一部包括遺贈を受けたら、遺産分割協議が必要です。
④相続人以外の人に包括遺贈するときは3条の許可が不要
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
遺言書を作成して、孫に一部包括遺贈をすることができます。
孫が包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
⑤包括遺贈は負債も受け継ぐ
特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。
遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。
特定遺贈では、負債を受け継ぐことはありません。
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
相続財産に負債がある場合、指定された割合で負債を引き継ぎます。
農業を営んでいる場合、多額の負債があることがあります。
包括遺贈を受ける場合、農地だけでなく多額の負債を引き継ぐことになります。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。
遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。
遺言執行には、法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。
不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書作成後に書き換えができる
1遺言書は書き換えができる
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。
遺言書を書くこと自体を大げさに考えて、書いたら終わりと思われがちです。
民法には、いつでも、遺言書の撤回ができるとはっきり書いてあります。
遺言書は、新たな遺言書で書き換え(撤回)ができます。
書き直しをするのも遺言書なので、本人以外が書き直しをすることはできません。
他の人が代理で書き直すことはできませんし、相続人が撤回することもできません。
自筆証書遺言で、かつ、些細な書き間違いであれば、内容訂正する程度でも差し支えありません。
大きな修正をする場合は改めて作った方がいいでしょう。
一度書いたら書き直しがなくて済む場合もありますが、状況が変われば書き直しすることは割とよくあることです。
新たに誕生した孫や曽孫に財産を譲りたい場合、新たに書き直すことができます。
遺言書で財産を相続させる子どもがお世話をしてくれないのであれば、お世話をしてくれる子どもに財産を相続させると書き直すことができます。
何度も書き直すことで、よりいい遺言書にすることができます。
2遺言書を書き換えるときの注意点
①遺言書の書き換えをしたら原則新しい遺言書が有効
新しい遺言書と古い遺言書がある場合、新しい遺言書が優先します。
古い遺言書は撤回されたと考えられるからです。
この場合、両立できない部分だけ、撤回されたと考えます。
古い遺言書
〇〇銀行の預貯金は相続人〇〇に相続させる
不動産〇〇は相続人◇◇に相続させる
新しい遺言書
不動産〇〇は相続人〇〇に相続させる
上記のように遺言書があった場合、新しい遺言書で、不動産についてのみ書き直されたと考えます。
預貯金については古い遺言書が効力を持っています。
複数の遺言書が見つかった場合でも、内容が両立できる部分は撤回されません。
新しい遺言書で内容が反映されていないと、トラブルの火種となります。
後から誤解を招くおそれがあることから、新たにすべての内容の遺言書を作成したほうがいいでしょう。
新しい遺言書の内容に〇年〇月〇日付遺言書は全部撤回するとして、撤回理由も書くと相続人も納得しやすくトラブルが減ります。
このうえで、古い遺言書を破り捨てると安心でしょう。
②遺言書の書き換えはいつでも何度でもできる
遺言書の書き直しは、遺言者が生きている間はいつでも何度でもできます。
相続人らと遺言書の書き直しはしませんと約束しても無効です。
書き直し回数の上限もありません。
何度でも書き直すことができます。
新たに孫や曽孫が誕生したから書き換える、財産の内容が変化したから書き直すこともよくあることです。
③遺言書の書き換えに承諾は不要
書き直しをするために相続人の承諾をもらう必要はありません。
書き直しをしたことをだれかに知らせなければならないといったこともありません。
最初に作った遺言書が公正証書遺言である場合、公正証書を作った公証役場に連絡する必要はありません。
新たに公正証書遺言を作る場合、以前公正証書遺言を作成したことを申告する必要はありません。
④自筆証書遺言でも公正証書遺言でも書き換えができる
遺言書を書き直す場合、遺言書の方式は問われません。
遺言の方式とは、自筆証書遺言、公正証書遺言といった遺言書の種類のことです。
自筆証書遺言、公正証書遺言いずれの方式でも書き換えることができます。
いずれの方式でも日付の新しいものが優先されます。
理論上は、日付の古い公正証書遺言を日付の新しい自筆証書遺言で書き直すことができます。
公正証書遺言は遺言内容を聞いた公証人が作るので、様式に不備がなく遺言書が確実に作ることができます。
自筆証書遺言はだれの確認も受けずに遺言者がひとりで作ることが多いので、遺言書が無効になりがちです。
後から書いた自筆証書遺言が無効になった場合、家族がトラブルになることが予想できるでしょう。
遺言書の書き直しは、できるだけ、公正証書遺言にすることをおすすめします。
⑤撤回遺言を撤回した場合は最初の遺言は復活しない
遺言書の書き換えはいつでも何度でもできます。
相続が発生した後、複数の遺言書が見つかることがあります。
例えば、1番目の遺言書が作られた後、2番目の遺言書が作られて、さらに3番目の遺言書が作られたようなケースです。
2番目の遺言書の内容が「1番目の遺言書を撤回する」の場合、1番目の遺言書は無効になります。
3番目の遺言書の内容が「2番目の遺言書を撤回する」の場合、2番目の遺言書は無効になります。
2番目の遺言書の内容が「1番目の遺言書を撤回する」で、かつ、3番目の遺言書の内容が「2番目の遺言書を撤回する」の場合、1番目の遺言書は復活しません。
2番目の遺言書で、撤回したからです。
「遺言書を撤回する」内容の遺言書を撤回遺言と言います。
撤回遺言を撤回した場合、最初の遺言書は無効のままです。
⑥撤回遺言を取り消した場合は最初の遺言は復活する
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
遺言者が自分の意思で書くものです。
ときには、だれかに強迫されたりだまされて遺言書を書かされてしまう場合があります。
例えば、1番目の遺言書が作られた後、2番目の遺言書が作られた場合で、2番目の遺言書がだれかに強迫されたりだまされて書かされた遺言書であるケースです。
2番目の遺言書の内容が「1番目の遺言書を撤回する」の場合、通常は、1番目の遺言書は無効になります。
2番目の遺言書は、だれかに強迫されたりだまされて書いた遺言書です。
遺言者が自分の意思で書いた遺言書ではありません。
遺言者が自分の意思で書いたのではないから、遺言書を取り消すことができます。
2番目の遺言書を取り消した場合、2番目の遺言書は無効になります。
2番目の遺言書を取り消した場合、1番目の遺言書は復活します。
「1番目の遺言書を撤回する」は、遺言者の意思ではなかったからです。
⑦自筆証書遺言は検認が必要
遺言書の書き換えはいつでも何度でもできます。
自筆証書遺言を見つけた人は、家庭裁判所に対して検認の申立てをしなければなりません。
自筆証書遺言書がたくさんある場合、検認手続を何度もすることになります。
自筆証書遺言はだれの確認も受けずに遺言者がひとりで作ることが多いので、遺言書が無効になりがちです。
遺言書作成は書き換えも含めて公正証書遺言をおすすめします。
3撤回とみなされる行為がある
古い遺言書は新しい遺言書で撤回することができます。
新しい遺言書がなくても、撤回したとみなされることがあります。
撤回したとみなされるのは次の場合です。
①遺言書の内容と抵触する生前処分がされた場合
遺言書で不動産〇〇〇を相続人〇〇に相続させると書いた後、不動産〇〇〇を売ったり、贈与したりする場合です。
②遺言書を書いた人が故意に遺言書を捨てた場合
公正証書遺言原本は公証役場で保管されていますから、捨てることができません。
公正証書遺言を作成した後、正本と謄本が渡されます。
手元にある正本と謄本を破り捨てても意味はありません。
遺言書原本は公証役場に厳重に保管してあるからです。
公正証書遺言を撤回するためには、新たに遺言書を作る必要があります。
新たに作る遺言書は、トラブル防止のためにも、公正証書遺言をおすすめします。
③遺言書を書いた人が故意に目的物を捨てた場合
捨てるのは、物理的に捨てることをいいますが、経済的な意味で使えなくすることも捨てると同様だと解釈されます。
4家族信託契約は勝手に書き換えができない
家族信託では、信託契約の中でいろいろなことを自由に決めることができます。
家族信託がいつ終了するのか、信託契約の中で決めておくことができます。
信託が終了したら、だれが信託財産を受け継ぐのか、信託契約の中で決めておくことができます。
家族信託は契約ですから、当事者が一方的に書き換えをすることはできません。
家族の中に不信感がある場合、それぞれが自分に有利な遺言書を書いてもらいたいと考えます。
遺言書は何度でも書き換えができるからです。
身のまわりが不自由になって不安になっているときに、優しい言葉をかけられると有利な遺言書を書いてあげたくなります。
物事のメリットデメリットを充分に判断することが難しくなっても、遺言書の書き換えは続きます。
公正証書遺言を作成するのは、ほんの1時間程度でしょう。
見知らぬ公証人がいるときは、気丈にふるまうことが多いです。
1時間程度では気付かれずに遺言書を作ることができてしまいます。
家族信託契約の中で、だれが信託財産を受け継ぐのか決めておく方がいい場合があります。
家族信託契約は当事者が一方的に撤回することができないから、家族でよく話し合って契約することが重要です。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
いろいろ言い訳を考えて先延ばしします。
先延ばしした結果、認知症などで遺言書を作れなくなって、その先には家族のもめごとが待っています。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠ですから、まず遺言書を書くことをおすすめします。
遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。
遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。
そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続きは格段にラクになります。
状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
甥姪に相続させる遺言書
1甥姪が相続人になるケース
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②甥姪と養子縁組で相続人になる
被相続人が養親になる養子縁組をしていることがあります。
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に法律上の親子関係を作る制度です。
養子縁組をした場合、養親と養子は親子になります。
養子は、養親の子どもです。
養親に相続が発生した場合、養子は相続人になります。
養子は、養親の子どもだからです。
被相続人が兄弟姉妹の子どもと養子縁組をすることがあります。
養子は、養親の子どもです。
兄弟姉妹の子どもは、被相続人から見ると甥姪です。
兄弟姉妹の子どもと養子縁組をした場合、被相続人の子どもの身分と甥姪の身分があります。
養子は、被相続人の子どもになります。
相続が発生した場合、甥姪が相続人になります。
③甥姪が代襲相続人になる
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
相続人になるはずだった人が先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもが相続します。
相続人になるはずだった人が先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもが相続することを代襲相続と言います。
兄弟姉妹が相続人になるはずだったのに被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。
相続人になるはずだった兄弟姉妹の子どもが代襲相続人です。
被相続人の兄弟姉妹の子どもは、被相続人から見ると甥姪です。
被相続人の兄弟姉妹が先に死亡した場合、甥姪が代襲相続人になります。
2相続できるのは相続人だけ
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人が相続します。
相続ができるのは、相続人だけです。
相続人以外の人は、相続することはできません。
被相続人の死亡をきっかけに、財産を譲る方法はいくつか考えられます。
相続人以外の人に財産を譲りたい場合、相続以外の方法で譲ります。
生前に何の準備をしていなくても、相続人は被相続人のものを相続します。
生前に何の準備をしていないと、相続人以外の人は被相続人の財産を受け取ることはできません。
「財産○○を相続人○○に相続させる」遺言書があれば、相続手続がラクになります。
遺言書で遺言執行者を指名しておくと、相続手続は遺言執行者におまかせできます。
甥姪が相続人になる場合、生前に何の準備をしていなくても相続することができます。
甥姪が相続人でない場合、生前に何の準備もしていないと財産を受け取ることはできません。
相続人でない甥姪に財産を受け取ってもらいたい場合、生前に財産を譲る準備が必須です。
自称専門家は、財産を譲ることをすべて相続と称して混乱させています。
相続ができるのは、相続人だけです。
相続人以外の人は、相続することはできません。
知識がない自称専門家に、充分注意しましょう。
3甥姪に遺贈ができる
遺贈とは、被相続人が遺言によって、相続人や相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈で財産を譲り渡す人のことを遺贈者、譲り受ける人を受遺者と言います。
相続では、法律で決められた相続人だけが相続します。
遺贈では、相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
甥姪が相続人でない場合、遺言書で財産を譲ってあげることができます。
相続に対して遺贈することができるし、相続人以外の人に遺贈することができるからです。
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
包括遺贈では、具体的な財産は書いてありません。
「財産の2分の1を包括遺贈する」とあった場合、財産の2分の1とは、どの財産なのか分かりません。
包括遺贈を受けた場合、相続人全員と遺産分割協議が不可欠です。
具体的にどの財産を受け取るのか、相続人全員と話し合いで決めなければなりません。
遺言書の記載は2分の1などの割合だけで、具体的財産の記載がないからです。
包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。
4甥姪に相続させる遺言書の注意点
①兄弟姉妹以外の相続人に遺留分がある
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人が一人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが相続人になる場合、甥姪は原則として相続人になりません。
子どもが相続人になる場合、子どもには遺留分が認められます。
被相続人が「財産すべてを包括遺贈する」遺言書を作成して死亡することがあります。
全財産を遺贈した場合、相続人である子どもは何も相続することはできません。
相続財産に対して認められる最低限の権利すら相続できない場合、遺留分が侵害されています。
相続人である子どもは、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求がされる場合、相続人間で深刻なトラブルに発展します。
遺言書を作成する場合、相続人の遺留分に配慮することが大切です。
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。
②相続人が兄弟姉妹なら遺留分侵害額請求はできない
遺留分は、相続人に認められる最低限の権利です。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹は、相続人になっても遺留分が認められません。
被相続人が「財産すべてを包括遺贈する」遺言書を作成して死亡することがあります。
全財産を遺贈した場合、他の相続人は何も相続することはできません。
兄弟姉妹が相続人になる場合、遺留分は認められません。
兄弟姉妹は何も相続できなかった場合、何も請求することができません。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していることがあります。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が先に死亡した場合、代襲相続が発生します。
相続人になるはずだった兄弟姉妹の子どもが相続します。
代襲相続が発生した場合、被代襲者の相続分と遺留分を引き継ぎます。
兄弟姉妹は、相続人になっても遺留分が認められません。
相続人になるはずだった兄弟姉妹に遺留分はないから、兄弟姉妹の子どもにも遺留分はありません。
被相続人が「財産すべてを包括遺贈する」遺言書を作成して死亡した場合、兄弟姉妹や甥姪から遺留分を請求されることはありません。
③遺言書の内容は具体的に記載
相続財産の内容は、不動産、預貯金、株式、借金などいろいろな種類があるのが通常です。
遺言書で相続財産の分け方を指定する場合、遺産のうちどの財産についての記載なのか特定することが重要です。
遺言書は、相続人など家族だけが見るものではないからです。
相続が発生した後、遺言書を執行します。
相続手続先の人が見ても、内容を特定できる必要があります。
内容が特定できない場合、遺言書を執行することができません。
自宅を譲ってあげたい場合、「自宅」と記載したくなるかもしれません。
家族以外の第三者は、自宅とはどこの土地どこの建物なのか分かりません。
あいまいな表記では、第三者には分からないのです。
多くの場合、自宅には土地と建物があるでしょう。
土地と建物両方を別々に記載する必要があります。
登記事項証明書を見て書き写すといいでしょう。
遺言書の内容は、第三者にも分かるように具体的に記載することが大切です。
④遺言書の内容は代襲相続しない
遺言者は、遺言書で相続財産の分け方を指定することができます。
遺言者は、遺言書で相続財産を遺贈することができます。
相続人〇〇に相続させると遺言書に記載しても、相続人が先に死亡することがあります。
財産を受け取る人が先に死亡した場合、遺言書のその記載は無効になります。
遺言書は、相続が発生したときに効力が発生するからです。
相続人に子どもがいても、子どもが受け取ることはできません。
遺言書の内容は、代襲相続されないからです。
〇〇に遺贈すると遺言書に記載しても、受遺者が先に死亡することがあります。
財産を受け取る人が先に死亡した場合、遺言書のその記載は無効になります。
遺言書は、相続が発生したときに効力が発生するからです。
受遺者に子どもがいても、子どもが受け取ることはできません。
遺言書の内容は、代襲相続されないからです。
5公正証書遺言がおすすめ
①遺言書の種類
遺贈とは、被相続人が遺言によって、相続人や相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈をしたい場合、遺言書を作成する必要があります。
遺言書の種類は、民法という法律で決められています。
大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。
普通方式の遺言は、次の3つです。
(1)自筆証書遺言
(2)公正証書遺言
(3)秘密証書遺言
特別方式の遺言は、次の4つです。
(1)死亡の危急に迫った者の遺言
(2)伝染病隔離者の遺言
(3)在船者の遺言
(4)船舶遭難者の遺言
特別方式の遺言は、生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言です。
ごく稀な遺言と言えるでしょう。
多くの方にとって、遺言というと普通方式の遺言です。
自筆証書遺言か公正証書遺言を作成する人がほとんどです。
②公正証書遺言は費用がかかるけど安心確実
公正証書遺言は、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。
せっかく遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
費用はかかってしまうものの、メリットが大きいからです。
公正証書遺言の主なメリットは、次のとおりです。
(1)公証人が文面を取りまとめてくれる
(2)遺言書の書き方ルールの違反などで無効になりにくい
(3)相続発生後に家庭裁判所で検認手続が不要
(4)公証人が遺言者の意思確認をしているからトラブルになりにくい
(5)遺言書の紛失や改ざんがない
公正証書遺言がある場合、トラブルに発展するのはごくわずかです。
遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書がある場合、遺言書の内容を実現してあげたいと思うでしょう。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めます。
相続人以外の人に財産を残したい場合、遺言書の作成は欠かせません。
インターネットが普及したから、たくさんの情報を手軽に入手することができます。
インターネット上には、適切な情報も適切でない情報も入り混じっています。
自称専門家は、相続人でない人が相続できるなどと曖昧な情報発信をしています。
スムーズな財産承継のため、信頼できる専門家のサポートが必要です。
家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現するために、せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
相続人以外の他人に財産を残したい方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書作成して生命保険受取人を変更
1遺言書を作成して生命保険の受取人変更ができる
①遺言書の書き方ルールは厳格に決まっている
法律的に有効な遺言をするには、民法の定めに従わなくてはなりません。
遺言者が死亡した後に、遺言書は効力が発生します。
遺言書の書き方ルールは、厳格に決まっています。
②遺言事項は法律で決まっている
法律の定めに従った遺言であれば、何を書いてもいいというわけではありません。
遺言書に書いておくことで、意味があること、効力があることも法律で決まっています。
遺言書に書いておくことで、意味があること、効力があることを遺言事項と言います。
遺言事項は、次のとおりです。
(1)財産に関すること
(2)身分に関すること
(3)遺言執行に関すること
(4)それ以外のこと
生命保険の保険金の受取人変更は、(4)それ以外のことです。
遺言書に書くことで、生命保険の保険金の受取人変更ができます。
保険契約の中で、保険金の受取人は配偶者や一定の血族に限定されていることが多いでしょう。
保険商品によっては、親族関係のない第三者を受取人にできるケースがあります。
③遺言書に付言事項を書くことができる
遺言書を作成する場合、法律上意味のないことを書くことがあります。
付言事項とは、遺言書に書いておくことで意味がないこと、効力がないことです。
法律上意味のないことを書いてはいけないというルールはありません。
現実に、法律上意味のないことを書く方はたくさんいます。
生命保険の保険金の受取人変更を書いた場合、以前、受取人だった人はびっくりするでしょう。
なぜ受取人変更をするのか、遺言書に理由を書いておくといいでしょう。
受取人を変更する理由は、法律上の効力はありません。
以前受取人だった人へのメッセージです。
変更する理由を詳細に書いておいた場合、受取人変更に納得しやすくなります。
そのうえで家族への感謝の気持ちや家族仲良く幸せに暮らして欲しいといった気持ちが書いておくといいでしょう。
家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどに、法的な拘束力はもちろんありません。
これらの言葉があることで、家族のトラブルは確実に減ります。
2遺言書で受取人変更するとトラブルになる可能性がある
遺言書で受取人変更することができことは、保険法で明文化されました。
保険法は、平成22年4月1日施行されました。
平成22年4月1日より前の保険契約は、原則として、遺言書で受取人変更はできないとされています。
平成22年4月1日施行の法律だから、平成22年3月31日までにされた契約には適用されないからです。
保険会社によっては、保険契約の内容によっては、遺言書による受取人の変更を受け付けてくれる場合もあります。
遺言書による受取人の変更ができないのに、遺言書に受取人変更の記載があると相続人間のトラブルになることは容易に想像できるでしょう。
適切な遺言書で条件を満たせば、生命保険の受取人変更をすることはできます。
相続人間のトラブルになることを防止する観点からは、できるだけ生前に受取人を変更した方が確実です。
遺言書で生命保険の受取人を変更できるとしても、あまりおすすめできるものではありません。
受取人の変更を家族に知られたくない、相続人以外の人を受取人にしたいなど特段の事情がある場合でなければ、生前に手続をすることをおすすめします。
3旧受取人に支払われる可能性がある
①保険会社と旧受取人は遺言書の内容を知らない
適切な遺言書で条件を満たせば、生命保険の受取人変更をすることはできます。
遺言書の内容は、保険会社は通常知りません。
旧受取人も知らないことがあるでしょう。
生命保険がかけてある人が死亡した場合、死亡保険金が支払われます。
旧受取人は、何も知らずに死亡保険金を請求するでしょう。
保険会社は、請求があればすみやかに死亡保険金を支払います。
遺言書の内容を保険会社に知らせる前に、死亡保険金が支払済みになることがあります。
保険会社も旧受取人も、遺言書の内容を知らないからです。
変更後の受取人が保険会社に請求しても保険金は支払われません。
旧受取人に保険金が支払われた後だからです。
変更後の受取人は、保険会社に文句を言うことはできません。
遺言書の内容を保険会社に知らせる前に、死亡保険金が支払われたからです。
遺言書の内容を保険会社に知らせる前だから、保険会社に非はありません。
②旧受取人は引渡しに応じてくれない
支払い済みになった後、変更後の受取人が保険会社に請求しても保険金は支払われません。
新受取人は、旧受取人に保険金の引き渡しを請求することができます。
旧受取人に引渡しを請求しても、容易に引渡してくれることは少ないでしょう。
引渡しをめぐって、大きなトラブルになることが予想されます。
4相続人が受取人変更を保険会社に通知しない
①保険金が支払われる前に保険会社に通知
相続が発生したら、遺言書の内容を執行します。
生命保険の受取人変更がある場合、直ちに保険会社に連絡することが重要です。
旧受取人に保険金が支払われた後は、変更後の受取人が請求しても保険金は支払われないからです。
遺言書の内容を保険会社に知らせる前に、旧受取人に保険金が支払われた場合、変更後の受取人は保険会社に文句を言うことはできません。
旧受取人に保険金が支払われる前に、保険会社に通知しなければなりません。
②相続人は保険会社に通知しない
生前に受取人を変更すれば、旧受取人に支払われることはありません。
遺言書で受取人を変更する場合、旧受取人は相続人でしょう。
受取人変更を家族に知られたくないから、遺言書を作成したのでしょう。
変更後の受取人は、相続人以外の人であることが多いものです。
相続人以外の人に受取人を変更する場合、相続人が協力するのはレアケースです。
相続人が保険会社に遺言書の内容を伝えないことが想定されます。
③遺言執行者から保険会社に通知してもらう
保険会社に遺言書の内容を知らせるのは、相続人でも遺言執行者でも差し支えありません。
実質的に、相続人の協力は得られないと考えるべきでしょう。
遺言書で遺言執行者を指名することができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者から保険会社に連絡をしてもらうように手配するといいでしょう。
中立公正な立場から、遺言書の内容を実現してもらうことができます。
適切かつ公正な職務執行をする法律の専門家に遺言執行を依頼するのがいいでしょう。
遺言執行者は、生命保険の受取人変更を保険会社に通知することができます。
④家庭裁判所の検認手続は時間がかかる
遺言書は、多くの場合、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
法務局保管でない自筆証書遺言は、家庭裁判所で開封してもらう必要があります。
家庭裁判所で開封してもらう手続を遺言書の検認と言います。
遺言書検認の申立てをしてから検認期日まで、およそ1~2か月かかります。
家庭裁判所で検認を受けていない遺言書は、受け付けてもらうことができません。
⑤公正証書遺言がおすすめ
遺言書で生命保険の受取人を変更する場合、すみやかに保険会社に連絡することが重要です。
家庭裁判所の検認手続が必要になる場合、すみやかに連絡することはできません。
検認期日までに旧受取人は保険金を請求するでしょう。
保険金が支払済みになったら、変更後の受取人は保険金を受け取ることができません。
生命保険の受取人変更がある場合、特に公正証書遺言がおすすめです。
公正証書遺言は、相続が発生した後に家庭裁判所の関与が不要です。
公正証書遺言は、すぐに執行することができます。
遺言書を作成する場合、公正証書遺言がおすすめです。
5公正証書遺言は相続人のトラブル防止に有効
適切な遺言書で条件を満たせば、生命保険の受取人変更をすることができます。
相続人以外の人に受取人を変更する場合、旧受取人が遺言書をよく思わないでしょう。
遺言書は脅されるなどして無理矢理書かされたものだとか、認知症が相当進んでいて意味を分かっていなかったなどと主張することが考えられます。
作成した遺言書が自筆証書遺言である場合、このようなトラブルに発展しがちです。
自筆証書遺言は、だれにも知られず一人で作ることができるからです。、
トラブル防止の観点から、公正証書遺言がおすすめです。
公正証書遺言は、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。
公証人が関与して証人2人がいるところで、無理矢理書かされたなどあり得ません。
認知症が相当進んでいて意味を分かっていなかった場合、公証人は遺言書の作成はできないと判断するでしょう。
公証人は法律の専門家です。
厳格な遺言書の書き方ルールについて、精通しています。
公正証書遺言は、もっとも確実な遺言書を作ることができます。
トラブルを回避することが期待できます。
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。
偽造・変造・隠匿・紛失などの心配もありません。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者が死亡してから効力が発生します。
遺言者の死亡後に効力が発生するから、厳格な書き方ルールがあります。
自筆証書遺言は、専門家などの関与なくひとりで作られることがほとんどです。
厳格な書き方ルールの違反で、無効になりがちです。
せっかく相続人がトラブルに巻き込まれないように願って作った遺言書が無意味になります。
無意味になるだけでなく、トラブルのタネになりかねません。
生命保険の受取人の変更は、従来、遺言書で変更できるかについて争いがありました。
平成22年4月1日施行の保険法によって、遺言書で変更できることが明文化されました。
法律上は、遺言書で受取人の変更をできるようになりました。
あまりおすすめできるものではありません。
相続対策の一番大事な点は、相続人がトラブルに巻き込まれないようにすることです。
遺言書は、相続対策で重要な役割を果たします。
遺言書で受取人を変更する場合、トラブルに発展する危険が大きいからです。
やむを得ず、遺言書で生命保険の受取人変更をする場合、トラブルに発展するリスクを充分に理解したうえで実行する必要があります。
家族をトラブルに巻き込まないために遺言書作成を考えている方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書作成して相続させたくない
1法定相続人と遺留分権利者とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
このような相続を代襲相続と言います。
遺留分は①配偶者②子ども③直系尊属に認められます。
④兄弟姉妹は遺留分がありません。
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
代襲相続があった場合、法定相続分と遺留分は受け継がれます。
④兄弟姉妹は遺留分がありませんから、兄弟姉妹が被相続人より先に死亡したため、兄弟姉妹の子どもが相続する場合、兄弟姉妹の子どもは遺留分がありません。
故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害した人や殺害しようとした人などは、相続欠格者となります。
相続欠格者は相続資格を失いますから、遺留分も失います。
被相続人に対して、虐待や重大な侮辱をした人は、廃除されます。
相続廃除者は相続資格を失いますから、遺留分も失います。
2絶縁しても絶交しても相続人
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になるかどうかは、法律の定めで決まります。
被相続人と絶縁していても、相続人になるかどうかとは関係ありません。
絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。
たとえ何十年も音信不通でも親子は親子です。
何十年も会っていなくても兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
子どもが重大な親不孝をした場合に、親が子どもを勘当にすることがあります。
子どもを勘当にして、絶縁状を作ることがあります。
絶縁状を配達証明付き内容証明郵便で送られてきても、法的な効力はありません。
家の敷居をまたぐなとか、お葬式に呼ばないなども法的効力はありません。
生まれる前に父母が離婚したので、一度も被相続人に会ったことがない人もいます。
生まれてから一度も会ったことがなくても、子どもであることには変わりはありません。
3相続させたくない場合は廃除の申立て
被相続人を虐待したなど重大な理由がある場合、相続をさせたくないと考えることは自然と言えます。
絶縁状に法的な効力はありません。
家の敷居をまたぐなとか、お葬式に呼ばないなども法的効力はありません。
生きている間、交際をしない宣言に過ぎません。
相続をさせたくないと思ったら、まず、遺言書に虐待などをした相続人に相続をさせないと書くことが思い浮かぶでしょう。
虐待などをした相続人が兄弟姉妹であれば、遺言書を作成することで相続させないことが実現できます。
配偶者、子ども、親などの直系尊属に関しては、遺言書に書くだけでは不十分です。
兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分があるからです。
遺言書を書いても、遺留分を奪うことはできません。
遺留分侵害額請求をしたら、相続財産のいくらかは虐待した相続人が受け継いでしまいます。
被相続人の意思で、相続人の資格を奪うのが、相続人廃除です。
相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。
相続人廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。
相続人が廃除されると、遺留分が奪われます。
相続人廃除の申立は被相続人が生前に申立てることもできるし、遺言書で行うこともできます。
遺言書で相続人廃除の意思表示を行った場合、相続が発生した後、遺言執行者が家庭裁判所に申立てを行います。
遺言書で遺言執行者が選任されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
4「相続させない」遺言はトラブルのもとになる
絶縁状を渡した子どもに相続させたくない場合、「〇〇に相続させない」という遺言書を書くことが考えられます。
①子どもには遺留分がある
絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。
たとえ何十年も音信不通でも親子は親子です。
子どもは、相続人になります。
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。
子どもには、遺留分があります。
絶縁状を渡していても、子どもは相続人になります。
音信不通でも、子どもには遺留分があります。
「〇〇に相続させない」という遺言書を書いた場合、家族のトラブルに発展するでしょう。
子どもは遺留分侵害額請求をすることができます。
②「相続させない」遺言は廃除の意思があるのか分からない
遺言書を書く場合は、内容を明確にしておかなければなりません。
「〇〇に相続させない」という遺言書は、遺言者の意思があいまいです。
(1)〇〇に財産を相続させないけど、遺留分侵害額請求をすることを認める。
(2)〇〇に財産を相続させないうえに、遺留分侵害額請求をすることも許さない。
「〇〇に相続させない」という遺言書は、(1)と(2)のいずれなのか分からないからです。
(2)「遺留分侵害額請求をすることも許さない」場合、遺言執行者は家庭裁判所に対して、相続人廃除の申立てをしなければなりません。
遺言書で遺言執行者を選任しておいても、明らかにトラブルになる遺言書であれば、就任をご辞退されるでしょう。
遺言執行者に選任しても、就任前であれば、ご辞退ができます。
「〇〇に相続させない」という遺言書の解釈をめぐって、家族のトラブルになるのは明らかです。
遺言書で遺言執行者が選任されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合、司法書士などの専門家が選ばれることがほとんどです。
家庭裁判所が選任した遺言執行者は家族の事情を全く知りません。
専門家は遺言執行者に選任されたら、遺言書に書いてあるとおりに相続人廃除の申立てをしてくれるでしょう。
相続人廃除の申立てをしてくれた場合であっても、相続人廃除が認められる可能性はとても低いでしょう。
家庭裁判所が選任した遺言執行者は、家族の事情を全く知らないからです。
家族の事情を全く知らない場合、相続人廃除が認められるような証拠を集めることは困難です。
家族のトラブルになるのは明らかですから、他の相続人が積極的に協力することは望めません。
被相続人は死亡していますから、家庭裁判所で証言することもできません。
(1)「遺留分侵害額請求をすることを認める」場合、遺留分に相当する財産を相続させる方がいいでしょう。
相続させたくない気持ちは分かりますが、家族をトラブルにしてまで相続させたくないのか充分に考える必要があります。
(2)「遺留分侵害額請求をすることも許さない」場合、生前に自ら相続人廃除の申立てをする方がいいでしょう。
家族の事情が分かっているから、証拠を集めることが容易です。
何よりも自ら家庭裁判所で証言することができますから、説得力が違います。
それでも家庭裁判所が廃除を認めることはめったにありません。
相続人廃除は、相続人の遺留分を奪う重大な決定だからです。
単に子どもが気に入らないとか、長期間会っていないからとか、再婚したから前婚の子どもには相続させたくないからなどの理由では認められません。
5遺言書を作れば兄弟姉妹に相続させないことができる
疎遠になっている兄弟姉妹より、配偶者に全財産を渡したい人も少なくありません。
兄弟姉妹には遺留分がありません。
配偶者に全財産を相続させる場合、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求はできません。
財産を渡す相手は、親族以外でも構いません。
公益団体などに全財産を遺贈した場合でも、兄弟姉妹は何も言えません。
遺言書を作れば、兄弟姉妹に相続をさせないことが実現できます。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
疎遠になっている相続人に相続させたくない人は少なくありません。
自分の財産は、原則として、自分の思いどおりに処分することができます。
だから、自分の財産を自分の思いどおりに相続させたいと思うのでしょう。
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。
遺留分は、遺言書によっても侵害することはできません。
被相続人の名義になっている財産であっても家族の協力によって築いたものだからです。
遺留分を侵害するような遺言書は、トラブルに発展することが予想されます。
生前贈与して相続財産を減らせばよいと指南する自称専門家も散見します。
生前贈与に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
生命保険契約をして相続財産を減らせばよいと指南する自称専門家も散見します。
過大な生命保険に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
被相続人の財産は家族の協力があって築くことができたもののはずです。
すべてを自分の思いどおりにするより、家族へ感謝を伝えてあげる方が家族を幸せにすることができます。
一生をかけて築いた財産は、家族を幸せにするためのものだったでしょう。
せっかく築き上げた財産で家族がトラブルになったら、空しい苦労になります。
疎遠になっている相続人にも感謝を伝えてあげることで、家族も自分も幸せにすることができます。
トラブルになりにくい遺言書作成を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続人以外の他人に財産を残す方法
1相続人になる人は法律で決まっている
①相続人になる人は一定の範囲の親族
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②親族でも相続人以外の人は他人扱い
相続人になる人は、法律で決まっています。
法律で決められた相続人以外の人は、相続人になることはできません。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが相続人になるのに、子どもの子どもが相続人になることはありません。
相続人になるはずだったのに子どもが被相続人より先に死亡することがあります。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが相続人になります。
これを代襲相続と言います。
代襲相続が発生した場合、子どもの子どもが相続人になります。
被相続人の子どもが相続人になる場合、代襲相続は発生しません。
被相続人の子どもが相続人になるのに、子どもの子どもが相続することはできません。
被相続人の子どもが相続人になる場合、子どもの子どもは他人扱いです。
被相続人にとって、子どもの子どもは親族です。
赤の他人というのは、抵抗があるでしょう。
相続においては、子どもの子どもは相続人ではありません。
赤の他人が相続人でないのと同様に、子どもの子どもは相続人ではありません。
親族であっても相続人以外の人に財産を残すためには、赤の他人と同様の対策が必要になります。
2相続人以外の他人に遺贈ができる
①遺言書を作成して遺贈ができる
遺贈とは、被相続人が遺言によって、相続人や相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈で財産を譲り渡す人のことを遺贈者、譲り受ける人を受遺者と言います。
相続では、法律で決められた相続人だけが相続します。
遺贈では、相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
②特定遺贈と包括遺贈
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
③特定遺贈で財産を残すことができる
特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を譲ってあげるだけ、特定の財産を譲ってもらうだけです。
相続財産の内容は、不動産、預貯金、株式、借金などいろいろな種類があるのが通常です。
ポイントは、遺産のうちどの財産を譲ってあげるのか具体的に特定する必要がある点です。
遺言書に書いていない財産は、譲ってあげることも譲ってもらうこともありません。
自宅などを譲ってあげたい場合、土地と建物があるでしょう。
土地と建物両方を別々に記載する必要があります。
譲ってあげたい財産が不動産である場合、登記事項証明書を見て書き写すといいでしょう。
譲ってあげたい財産を具体的に特定できない場合、登記手続ができなくなるおそれがあるからです。
遺言書を作成して特定遺贈をすることで、相続人以外の他人に財産を残すことができます。
④包括遺贈で財産を残すことができる
包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
包括遺贈では、具体的な財産は書いてありません。
「財産の2分の1を包括遺贈する」とあった場合、財産の2分の1とは、どの財産なのか分かりません。
包括遺贈を受けた場合、相続人全員と遺産分割協議が不可欠です。
具体的にどの財産を受け取るのか、相続人全員と話し合いで決めなければなりません。
遺言書の記載は2分の1などの割合だけで、具体的財産の記載がないからです。
包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。
相続財産の中にマイナスの財産がある場合、マイナスの財産も指定された割合で受け継ぐことになります。
3遺贈をするために遺言書作成
①遺言書の種類
遺贈とは、被相続人が遺言によって、相続人や相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈をしたい場合、遺言書を作成する必要があります。
遺言書の種類は、民法という法律で決められています。
大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。
普通方式の遺言は、次の3つです。
(1)自筆証書遺言
(2)公正証書遺言
(3)秘密証書遺言
特別方式の遺言は、次の4つです。
(1)死亡の危急に迫った者の遺言
(2)伝染病隔離者の遺言
(3)在船者の遺言
(4)船舶遭難者の遺言
特別方式の遺言は、生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言です。
ごく稀な遺言と言えるでしょう。
多くの方にとって、遺言というと普通方式の遺言です。
なかでも、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成する人がほとんどです。
②自筆証書遺言は手軽だが無効になるおそれ
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作った遺言書です。
専門家の手を借りることなく手軽に作ることができます。
世の中の大半の遺言書は、自筆証書遺言です。
封筒に入れなければならないといった決まりもありません。
書き換えられるおそれが大きいのでお勧めはできませんが、鉛筆で書いても有効です。
ひとりで作ることができるので、作るだけであれば、費用はかかりません。
作った遺言書を法務局で預かってもらうことができます。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反していると、無効になってしまうおそれがあります。
自筆証書遺言は、専門家の手を借りずに作られることが多いものです。
法律の知識がないと、書き方ルールの違反をしがちです。
自筆証書遺言は、手軽に作ることができるけど無効になるおそれがあります。
②公正証書遺言は費用がかかるけど安心確実
公正証書遺言は、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。
公証人は、法律の専門家です。
公正証書遺言は、法律の専門家の手を借りて作る遺言書です。
法律の専門家が関与するから、書き方ルールの違反は考えられません。
公正証書遺言を作成した後、遺言書原本は公証役場で厳重に保管されます。
遺言書の紛失や改ざんの心配がありません。
公正証書遺言は公証人の手を借りるから、公証人へ手数料を払わなければなりません。
公正証書遺言は、作成するために費用がかかるけど安心確実です。
③おすすめは公正証書遺言
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成する人がほとんどです。
せっかく遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
費用はかかってしまうものの、メリットが大きいからです。
公正証書遺言の主なメリットは、次のとおりです。
(1)公証人が文面を取りまとめてくれる
(2)遺言書の書き方ルールの違反などで無効になりにくい
(3)相続発生後に家庭裁判所で検認手続が不要
(4)公証人が遺言者の意思確認をしているからトラブルになりにくい
(5)遺言書の紛失や改ざんがない
公正証書遺言がある場合、トラブルに発展するのはごくわずかです。
遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
4相続人以外の他人に財産を残すときの注意点
①相続人の遺留分を侵害しない
遺留分とは、一定の範囲の相続人に認められる最低限の権利です。
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があって築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には相、続財産に対して最低限の権利が認められています。
遺留分がある相続人を遺留分権利者と言います。
遺留分権利者は、配偶者、子ども、親などの直系尊属です。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹は相続人になっても、遺留分はありません。
遺言書で相続人以外の他人に全財産を遺贈しても、兄弟姉妹は何も言うことはできません。
兄弟姉妹には遺留分がないから、遺留分侵害額請求をすることはできません。
兄弟姉妹以外の人が相続人になる場合、遺留分権利者です。
遺留分を侵害するような遺言書を作成した場合、家族の深刻なトラブルになりかねません。
家族を幸せにするために、築いた財産でしょう。
生涯をかけて築いた財産で家族がトラブルになったら本末転倒です。
相続人の遺留分を侵害しない財産分与をおすすめします。
②遺贈を放棄することができる
遺贈は、被相続人が遺言によって、相続人や相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺言書は、遺言者がひとりで作成することができます。
遺言書を作成するにあたって、相続人や財産を受け取る人の同意などは不要です。
遺言書で、一方的に財産を譲ってあげると決めることができます。
財産を受け取る側にとって、ありがた迷惑かもしれません。
財産を受け取ることはありがたくても、相続人とトラブルになりたくないからご辞退したいことがあります。
遺贈は、放棄することができます。
遺言書を作成する場合、財産を受け取る人の事情を聞いておくといいでしょう。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書がある場合、遺言書の内容を実現してあげたいと思うでしょう。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めます。
相続人以外の人に財産を残したい場合、遺言書の作成は欠かせません。
相続人以外の親族に財産を残したい場合、赤の他人と同様に遺言書が欠かせません。
インターネットが普及したから、たくさんの情報を手軽に入手することができます。
インターネット上には、適切な情報も適切でない情報も入り混じっています。
自称専門家は、相続人でない人が相続できるなどと曖昧な情報発信をしています。
スムーズな財産承継のため、信頼できる専門家のサポートが必要です。
家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現するために、せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
相続人以外の他人に財産を残したい方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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