Archive for the ‘不動産登記’ Category
相続登記で戸籍の附票
1戸籍の附票で相続人の住所が分かる
①戸籍の附票は住所を証明する書類
相続人調査をする場合、必要な戸籍を読み解いて相続人を確定させていきます。
被相続人が死亡したとき、健在であった相続人が判明するでしょう。
相続人の現在戸籍を取得するときに、一緒に戸籍の附票も請求しましょう。
戸籍の附票は、住民票の異動が記録されている書類です。
住民票は、住民票を置いている市区町村役場に請求する必要があります。
住所が分からないと、請求できなくて困ってしまいます。
戸籍の附票は、戸籍謄本とちがい広域交付で取得することはできません。
本籍地のある市区町村役場に請求します。
相続人調査で戸籍謄本を集めますから、本籍は必ず判明します。
住民票上の住所は、戸籍の附票で調べることができます。
戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場に出向いて請求することもできるし、郵便で請求することもできます。
本籍地の市区町村役場に請求する場合は、戸籍謄本や戸籍の附票は、相続人であれば、だれでも取得することができます。
②戸籍謄本と戸籍の附票のちがい
大切な家族が死亡したら、相続の手続をすることになります。
相続手続のため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集めます。
戸籍には、その人の身分関係がすべて記録されています。
結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている人もいます。
身分関係に関することは、戸籍には記録されています。
その人の身分関係を証明する書類が戸籍謄本です。
戸籍の附票は、戸籍を一緒に保管されている書類です。
その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。
戸籍には、住所は記録されていません。
戸籍謄本には、住所は記載されません。
戸籍の附票に、住所が記載されています。
戸籍謄本に記載されている人の住所を確認するためには、戸籍の附票が必要です。
戸籍の附票を取得する場合、本籍の記載をしてくださいとわざわざ言う必要があります。
請求しないと本籍の記載が省略されるからです。
本籍の記載が省略された戸籍の附票の場合、戸籍謄本に記載されている人の住所の証明とは言えません。
単なる同姓同名の人かもしれないからです。
本籍と氏名と生年月日が一致するから、同一人物と認めてもらえます。
③住民票と戸籍の附票のちがい
戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。
戸籍の附票は、その人の住所を証明する書類と言えます。
一般的に、住所を証明する公的書類としては住民票の方がなじみがあるでしょう。
住民票には、現在の住所の他に前住所が記載されています。
前の前の住所は、記載されていません。
戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。
その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの間に住所を転々としていた場合、住所の移り変わりが分かります。
被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記をします。
不動産を所有している人が住所を変更した場合、原則として、その都度住所変更登記をします。
不動産を所有している人が住所を変更したのに住所変更登記をしないままであることは多々あります。
住所変更登記をしていない場合、被相続人の死亡時の住所と登記簿の住所が一致しません。
被相続人の死亡時の住所と登記簿の住所が一致しない場合、住所の移り変わりを証明する必要があります。
住所の移り変わりを証明しない場合、単なる同姓同名の人かもしれないからです。
住所の移り変わりを証明するために、戸籍の附票や住民票を提出します。
登記簿の住所が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所であれば、戸籍の附票を提出すればいいでしょう。
その人が戸籍に入る前の住所で、かつ、前住所地であれば、住民票を提出すればいいでしょう。
戸籍の附票には、その人が戸籍に入る前の住所は記載されていません。
戸籍の附票で住所の移り変わりを証明できないけど、住民票で証明できる場合があります。
④除附票を請求することができる
戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。
多くの人は、出生から死亡までの間に結婚や離婚、養子縁組や離縁、戸籍の作り直しなどで複数の戸籍を渡り歩いています。
結婚や離婚、養子縁組や離縁、戸籍の作り直しなどで除籍される場合、新しい戸籍に身分事項が記録されます。
同時に、新しい戸籍の附票に住所が記録されます。
死亡時の戸籍の附票で住所の移り変わりを証明できない場合でも、古い戸籍の附票を取得すると証明できるかもしれません。
⑤戸籍の附票は保存期間経過で取得できなくなる
戸籍の附票は、戸籍を一緒に保管されている書類です。
戸籍の附票は、永久保管ではありません。
市区町村役場は保存期間を決めていて、古くなった戸籍の附票は順次廃棄します。
戸籍の附票の保存期間は、現在は150年です。
令和元年6月20日以前は、たった5年でした。
平成26年6月20日以降に作られた戸籍の附票は、廃棄前に保存期間が延びたので保存されています。
令和元年6月20日以前に廃棄された場合、原則として、取得することはできません。
2戸籍の附票の取得方法
①戸籍の附票を請求できる人
戸籍の附票は、個人情報が記載されています。
だれでも請求できるわけではありません。
請求できる人は、次のとおりです。
(1)戸籍に記載されている本人
(2)戸籍に記載されている人の配偶者、直系尊属、直系卑属
(3)戸籍請求をする正当な利害関係人
利害関係人から請求する場合、利害関係があることの証明書が必要になります。
戸籍の附票の取得は、代理人に委任することができます。
代理人に委任する場合、委任状が必要になります。
相続手続などを司法書士などの専門家に依頼する場合、一緒に戸籍謄本や戸籍の附票の取得を依頼することができます。
②戸籍の附票の請求先
戸籍の附票の請求先は、本籍地の市区町村役場です。
③戸籍の附票の取得方法
(1)本籍地の市区町村役場の窓口で取得する
(2)本籍地の市区町村役場に郵送請求する
戸籍の附票は、郵送で請求することができます。
請求する人の身分証明書のコピーを添えて郵送します。
市区町村役場によっては、郵送事務センターなどに送付する必要がある場合があります。
郵送請求をする場合は、市区町村役場のホームページなどで確認するといいでしょう。
あらかじめ返信用の切手が貼ってある返信用の封筒を一緒に送ると、返送してくれます。
郵送するときは普通郵便でも構いませんが、レターパックなど追跡できる郵便を利用すると、安心です。
(3)コンビニ交付サービスで取得する
本籍地の市区町村役場がコンビニ交付サービスに対応している場合があります。
地方公共団体情報システム機構のホームページでコンビニ交付サービスに対応しているか調べることができます。
マイナンバーカードを使って、本籍地まで行かないでも戸籍の附票を取得することができます。
コンビニ交付サービスで取得できるのは、現在戸籍の附票のみです。
除附票は、取得できません。
④戸籍の附票の発行手数料
戸籍の附票を請求する場合、発行手数料を納入しなければなりません。
手数料は、市区町村役場によって異なります。
おおむね、300円程度です。
郵送請求すると高くなる場合やコンビニ交付の場合は安くなる場合があります。
郵送請求する場合、戸籍の附票の手数料は定額小為替で納入します。
定額小為替は、郵便局で購入することができます。
登記簿上の住所から死亡時の住所までの移り変わりを証明する場合、戸籍の附票が複数必要になることがあります。
戸籍の附票が複数になる場合、発行手数料がかさみます。
手数料が不足することがないように、多めに送っておくと余りは返してもらえます。
3戸籍の附票は本人確認書類になる
戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。
戸籍の附票は、その人の住所を証明する書類と言えます。
当然、氏名が記載されています。
法改正によって、戸籍の附票の記載事項に生年月日と男女の別が追加されました。
戸籍の附票は、本人特定事項がすべて記載されることになりました。
犯罪収益移転防止法などに規定される本人確認書類として使うことができます。
4相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で、多くの方は何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は現在と形式が違っていて、読みにくいものです。
手書きの達筆な崩し字で書いてあって、分かりにくいものです。
慣れないと、戸籍謄本の収集はタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。
膨大な手間と時間がかかるでしょう。
市区町村役場や法務局の手続では、通常、戸籍謄本や住民票の期限は問われません。
銀行預金の解約など銀行の手続では、銀行独自で期限を設けている場合があります。
手続後、集めた戸籍謄本や住民票を返却してくれる場合と返却してくれない場合があります。
期限があって、かつ、返却してくれるところから優先して手続するといいでしょう。
集めた戸籍謄本や住民票を返却してくれないところをはじめに手続すると、集め直しになるからです。
段取りよく要領よく手続するには、ちょっとしたコツがいります。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい人は、手続を丸ごとおまかせすることができます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。
集めてみたけど、途中で挫折することがあります。
全部集めたと思ったのに、金融機関や手続先からダメ出しされることがあります。
このような場合、司法書士が目を通して、不足分を取り寄せします。
相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは、負担が大きいものです。
戸籍謄本や住民票は郵便による取り寄せもできます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
やはり、負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
墓地の相続登記
1相続財産にならない財産がある
①一身専属権は相続財産ではない
相続が発生すると、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
被相続人のものでも、相続人が相続しない財産があります。
一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。
権利行使をするかしないか、本来の権利者個人の意思次第とするのが適当とされる権利です。
一身専属権は、相続人が相続しません。
一身専属権は、相続財産ではありません。
②祭祀用財産は相続財産ではない
祭祀用財産とは、墓地、墓石、仏壇、家系図などの先祖祭祀のための財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めます。
墓地、墓石、仏壇、家系図などの財産は、通常の財産と同様にすることはできません。
相続人全員の合意で分け方を決めることは、適切ではないでしょう。
祭祀用財産は、祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。
祭祀を主宰すべき人を、祭祀承継者と言います。
祭祀用財産は、相続財産ではありません。
③相続人固有の財産は相続財産ではない
被相続人の死亡をきっかけに、相続が発生します。
被相続人の死亡をきっかけに、財産を受け取ることがあります。
被相続人の死亡をきっかけに受け取る財産には、相続で受け取る財産以外の財産があります。
例えば、被相続人に生命保険がかけてある場合、死亡保険金が支払われます。
生命保険の死亡保険金は、保険契約で支払われる財産です。
被相続人の生前に死亡保険金を受け取る権利はなかったはずです。
被相続人から相続する財産ではありません。
生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産です。
受取人が「相続人」であっても、相続財産ではありません。
相続人固有の財産は、相続財産ではありません。
2墓地を所有していたら相続登記が必要
①登記簿謄本で所有者を確認する
被相続人がお墓を購入していることがあります。
被相続人が寺院の檀家になっていて、お墓を引き継いでいることがあるでしょう。
墓地を所有していた場合、相続登記が必要です。
墓地を所有しているのは、寺院や地方自治体であることがあります。
寺院や地方自治体が墓地を所有している場合、墓地を利用する契約をしているでしょう。
墓地を所有していない場合、相続登記は不要です。
墓地の登記簿謄本を取得すると、所有者が判明します。
登記簿謄本を取得して所有者を確認すると、相続登記が必要であるか確認することができます。
②墓地が祭祀用財産なら祭祀承継者が受け継ぐ
祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。
祭祀承継者は、相続人であることも相続人以外の人であることもあります。
祭祀用財産は、相続人以外の人が受け継ぐことができます。
祭祀用財産は、相続によって受け継ぐものではないからです。
墓地が祭祀用財産の場合、祭祀承継者が受け継ぎます。
③墓地が相続財産なら相続人が相続する
墓地には、祭祀用財産である墓地と相続財産である墓地があります。
祭祀用財産は、先祖祭祀のための財産です。
墓地には、先祖以外の人や神が祀られていることがあります。
先祖以外の人や神が祀られている場合、祭祀用財産とは言えません。
先祖祭祀とは、無関係だからです。
祭祀用財産以外の財産だから、相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
墓地が相続財産の場合、相続人が相続します。
④永代使用権は相続登記不要
お墓を購入した場合、墓地の所有権を得たと思うかもしれません。
通常、霊園には管理規約があります。
お墓を購入するとは、霊園と使用契約を結ぶことです。
霊園の区画を使う権利を得て、使用料や管理料を支払います。
霊園の区画を使う権利のことを永代使用権とか墓地利用権と言います。
永代使用権や墓地利用権は、墓地を利用する権利に過ぎません。
永代使用権や墓地利用権は、登記不要です。
永代使用権や墓地利用権は、霊園の管理規約に基づいて家族が引き継ぎます。
霊園の管理規約によっては、一定の範囲の親族のみが受け継ぐことができると決められています。
墓地の永代使用権は、相続登記不要です。
3墓地が祭祀用財産のときの相続登記
①登記原因は「年月日民法第897条による承継」
祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。
祭祀承継者が引き継ぐことは、民法第897条によって定められています。
祭祀承継者が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日民法第897条による承継」です。
年月日は、祭祀用財産を引き継ぐ日です。
②相続人全員と祭祀承継者で共同申請
墓地を祭祀承継者に引き継ぐ場合、相続人全員と祭祀承継者の共同申請です。
祭祀承継者を登記権利者、相続人全員を登記義務者として共同で申請します。
祭祀承継者は、遺言書で指名されることがあります。
遺言書で遺言執行者が選任されている場合、遺言執行者が義務者になります。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人だからです。
相続人全員と祭祀承継者が共同申請をする場合、登記申請書に押印をします。
登記申請書の押印は、祭祀承継者は認印による押印で差し支えありません。
相続人全員の押印は、実印による押印が必要です。
相続人全員の押印は、登記義務者の押印だからです。
③必要書類
祭祀用財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。
(1)登記原因証明情報
(2)被相続人の権利証
(3)相続人全員の印鑑証明書
(4)祭祀承継者の住民票
登記原因証明情報は、祭祀用財産の承継があったことの証明書です。
祭祀承継者の決定方法によって、次のような書類を提出します。
(1)被相続人が指定したとき
遺言書、相続人全員による指定内容の証明書
(2)慣習で決まったとき
相続人全員による祭祀承継者を確認した証明書
(3)家庭裁判所が指定したとき
調停調書、審判書と確定証明書
墓地が祭祀用財産である場合、祭祀用財産であることを証明する書類は不要です。
登記官の審査は、形式的審査にとどまるからです。
④登録免許税は非課税
墓地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。
地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。
所有権移転登記だけでなく、登記名義人住所変更登記も非課税です。
登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。
「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。
登記地目が墓地であっても、評価証明書などで現況が雑種地になっていることがあります。
登記地目が「墓地」である場合、登録免許税が課されません。
逆に、登記地目が雑種地であっても、評価証明書などで現況が墓地になっていることがあります。
登記地目が「墓地」でない場合、登録免許税が課されます。
4墓地が相続財産のときの相続登記
①登記原因は相続
相続財産は、相続人が相続します。
対象の財産が墓地であっても墓地以外の財産であっても、ちがいはありません。
相続人が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日相続」です。
年月日は、被相続人が死亡した日です。
②相続人が単独申請
墓地を相続人が引き継ぐ場合、相続人の単独申請です。
多くの場合、複数の相続人がいるものの遺産分割協議で相続人のひとりが相続するでしょう。
相続登記は、その不動産を相続する相続人が単独で申請することができます。
財産を相続しない相続人は、申請人になる必要がありません。
相続財産の相続登記する場合、登記申請書に押印をします。
登記申請書の押印は、認印による押印で差し支えありません。
③必要書類
相続財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。
(1)被相続人の住民票の除票
(2)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(3)相続人全員の現在戸籍
(4)遺産分割協議書
(5)相続人全員の印鑑証明書
(6)相続する人の住民票
(7)評価証明書
④登録免許税は非課税
墓地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。
地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。
所有権移転登記だけでなく、登記名義人住所変更登記も非課税です。
登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。
「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。
登記地目が墓地であっても、評価証明書などで現況が雑種地になっていることがあります。
登記地目が「墓地」である場合、登録免許税が課されません。
逆に、登記地目が雑種地であっても、評価証明書などで現況が墓地になっていることがあります。
登記地目が「墓地」でない場合、登録免許税が課されます。
5相続放棄をしても祭祀承継者
①祭祀承継者の主な役割
祭祀承継者は、先祖祭祀を主宰する人です。
先祖祭祀を主宰する人として、お墓や仏壇などの管理が主な役割です。
定期的なお墓参りの他に、霊園への管理料や使用料の支払を負担します。
お墓にだれの遺骨を納めるか、お墓を移転するかなども単独で判断することができます。
祭祀承継者になった場合、一周忌などの法要を主宰して、お布施などの支払をすることになるでしょう。
祭祀承継者になった場合であっても、祭祀を行う法的義務を負うものではありません。
②祭祀承継者は相続のルールが適用されない
相続人のうちのひとりが祭祀承継者になるのが一般的です。
お墓が複数ある場合、それぞれに祭祀承継者がいる場合もあります。
祭祀を主宰すべき人になる資格は、特にありません。
相続人であっても相続人以外の人であっても、祭祀承継者になることができます。
親族であっても親族以外の人であっても、祭祀承継者になることができます。
氏が同じ人であっても氏がちがう人であっても、祭祀承継者になることができます。
相続のルールが適用されるものではありません。
先祖祭祀は、親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないからです。
③祭祀承継者の決め方
祭祀承継者は、次のように決められます。
(1)被相続人の指定に従う
被相続人が祭祀を主宰すべき人として指定する場合、一方的に指定することができます。
トラブル防止のために、本人の同意をもらっておく方がいいでしょう。
(2)慣習に従って決める
(3)家庭裁判所で決定する
被相続人が指定しておらず慣習も明らかでない場合、家庭裁判所が指名します。
被相続人の意思、相続人の身分関係、過去の生活感情、祭祀を主宰する意欲や能力、他の相続人や周りの人の意見を聞いて総合的に判断します。
家庭裁判所は、総合的に考えて最もふさわしい人を祭祀承継者に指名します。
④祭祀承継者は拒否できない
祭祀承継者に選ばれた場合、祭祀承継者になることを拒否することはできません。
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
祭祀承継者には、放棄する制度がありません。
祭祀承継者は、相続のルールが適用されません。
相続放棄をした人が祭祀継承者に指名されることがあります。
祭祀承継者は指名された場合、拒否することはできません。
6墓地の相続登記を司法書士に依頼するメリット
お墓の分譲とかお墓の販売と聞くと、お墓を所有している気持ちになるかもしれません。
現代では、お墓を買うことは永代使用契約をすることです。
単に永代使用契約をして永代使用権を得るだけであれば、登記は無関係です。
墓地埋葬法ができる前から使用している墓地は、現在も各地に存在に存在しています。
新しく墓地を作ることは難しくても、すでにある墓地は使い続けることができます。
墓地を所有している場合、相続登記が必要です。
多くの場合、墓地に固定資産税がかかりません。
墓地を所有している認識がうすいでしょう。
遠方の墓地が不便な場合、お墓のお引越しをしようとすることがあります。
墓じまいをしようとしたときに、登記が必要であることに気がつきます。
ときには、祖父やそれ以前の先祖の名義のままになっていることがあります。
相続登記がされないままになっている場合、難易度は高くなります。
墓地を相続する場合は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
失踪宣告後に相続登記
1失踪宣告で死亡と見なされる
①単なる音信不通で失踪宣告はされない
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
被相続人や他の相続人と音信不通で連絡先が分からない程度であれば、生死不明とは言えません。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
死亡した取り扱いをしますから、失踪宣告がされた人に相続が発生します。
②失踪宣告には家庭裁判所の調査がある
家庭裁判所は、失踪宣告の申立書を受け付けた後、独自で調査をします。
家庭裁判所は、官報と裁判所の掲示板にお知らせを出します。
申立人にいろいろな書類の提出を求めたり、文書で照会したりします。
ときには、家庭裁判所から呼出がある場合もあります。
失踪宣告は死亡と見なす手続だから、丁寧に調査します。
③失踪宣告の審判が確定したら失踪届
家庭裁判所の調査で生存が確認されることがあります。
生存が確認された場合、失踪宣告の申立ては取り下げることになります。
どこからも届出がなければ、家庭裁判所は失踪宣告の審判をします。
家庭裁判所が審判をした後に不服を言う人がいなければ、失踪宣告の審判は確定します。
家庭裁判所が審判をした後に不服を言うことができる期間は、2週間です。
失踪宣告の審判がされた後なにごともなく2週間経過すると、失踪宣告の審判は確定します。
失踪宣告が確定した場合、家庭裁判所はあらためて官報にお知らせを出します。
このお知らせは「失踪宣告がされました」という意味です。
④市区町村役場に失踪届を提出
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした場合、申立人に審判書謄本が送られます。
審判書謄本と確定証明書を添えて市区町村役場に失踪届を提出します。
⑤戸籍に失踪宣告が記載される
市区町村役場に届出をして、はじめて戸籍に記載がされます。
相続手続では、失踪宣告の記載のある戸籍が必要になりますから、届出をしないと相続手続が進まなくなります。
戸籍には次のように記載されます。
【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日
【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日
【届出日】令和〇年〇月〇日
【届出人】親族 ○○○○
2失踪宣告を受けたら相続が開始する
①失踪宣告を受けた人が被相続人になるケース
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告を受けた人は死亡したと扱われますから、相続が開始します。
失踪宣告された人を被相続人として、相続手続をします。
相続が発生する日は、死亡とみなされる日です。
失踪宣告の申立てをした日ではありません。
普通失踪であれば、生死不明になってから7年間経過したときです。
特別失踪であれば、危難が去ったときです。
相当長期間、行方不明になっていた後に失踪宣告がされる場合があります。
失踪宣告を受けた人が死亡とみなされる日に生きていた相続人が後に死亡することがあります。
生きていた相続人が後に死亡した場合、数次相続になります。
失踪宣告を受けた人が死亡とみなされる日に相続人になるはずだった人がすでに死亡していることがあります。
相続人になるはずだった人がすでに死亡している場合、代襲相続になります。
相続手続に参加する人が異なります。
②失踪宣告を受けた人が相続人になるケース
相続人調査をすると、ときには思いもよらない相続人が判明することがあります。
相続人であることを知っていても、連絡を取ったことがない人やどこに住んでいるのか分からない人が現れることがあります。
親族だれも連絡を取っていないまま、長期間行方不明になっていることがあります。
相続人が行方不明になっている場合、相続財産の分け方についての相続人全員の合意ができません。
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
行方不明になっている相続人が失踪宣告を受けた場合、死亡したと扱われます。
失踪宣告を受けた相続人に相続が発生する日は、死亡とみなされる日です。
相当長期間、行方不明になっていた後に失踪宣告がされる場合があります。
行方不明の相続人に失踪宣告がされた場合、被相続人の死亡日より後に死亡と見なされることがあります。
被相続人の死亡日より後に死亡と見なされた場合、数次相続になります。
行方不明の相続人に失踪宣告がされた場合、被相続人の死亡日より前に死亡と見なされることがあります。
被相続人の死亡日より前に死亡と見なされた場合、代襲相続になります。
相続手続に参加する人が異なります。
相続財産の分け方は、相続人全員での合意しなければなりません。
相続手続に参加する人を間違えると、遺産分割協議は無効になります。
3相続財産に不動産があれば相続登記
①失踪宣告を受けて相続が発生しても相続登記は通常どおり
失踪宣告は、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告を受けた人は、死亡とみなされる日に死亡したとみなされます。
失踪宣告を受けた人が不動産を所有していた場合、相続登記をします。
失踪宣告であっても、通常の死亡と変わることはありません。
相続登記をする場合、通常の相続登記と同じです。
行方不明になってから長期間経過しているので、数次相続や代襲相続など複雑な相続になりやすいです。
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。
相続手続に参加する人を間違えないようにしましょう。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員による分け方の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
登記申請書には、通常、相続関係説明図を添えます。
遺言書がない場合、おおむね、次の書類が必要です。
(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(2)相続人の現在戸籍
(3)被相続人の住民票の除票
(4)不動産を相続する人の住民票
(5)遺産分割協議書
(6)相続人全員の印鑑証明書
(7)不動産の固定資産税評価証明書
事例によっては追加書類が必要になる場合があります。
被相続人が失踪宣告を受けた場合、戸籍に失踪宣告の記載がされます。
法務局に提出する戸籍謄本は、失踪宣告の記載がされた戸籍謄本である必要があります。
失踪届を提出した直後に戸籍謄本を請求した場合、失踪宣告の記載がされているか確認しましょう。
②相続人が失踪宣告を受けても相続登記は通常どおり
失踪宣告を受けた人は、死亡とみなされる日に死亡したとみなされます。
被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記をします。
相続人が失踪宣告を受けても、通常の死亡と変わることはありません。
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。
相続手続に参加する人を間違えないようにしましょう。
相続財産の分け方を決める場合、相続人全員による合意が不可欠です。
相続人全員による分け方の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
失踪宣告が確定するまでに、他の相続人で相続財産をどのように分けるか話し合いをしているでしょう。
失踪宣告が確定した後に、相続人全員で遺産分割協議書を作成します。
4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生した後、早く平穏な日常を取り戻したいでしょう。
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できないでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続登記を家族が代理申請
1相続登記を家族が代理申請
①相続登記は相続人本人が自分で申請できる
被相続人が不動産を所有していた場合、不動産は相続人が相続します。
相続登記は、不動産の名義変更のことです。
不動産を相続する相続人が自分で相続登記をすることができます。
相続登記は、相続手続の中でも複雑で手間のかかる手続です。
不動産は、多くの人にとって重要な財産です。
法務局は、重要な財産の名義変更を慎重に審査するからです。
(1)法律の素養がある
(2)調べものが好き
(3)平日の日中に役所に何度も足を運ぶ充分な時間と根気熱意がある
上記にあてはまる人は、相続登記に向いているかもしれません。
相続登記は、相続人本人が自分で申請することができます。
②無報酬で1回限りなら家族が代理申請できる
相続登記は、相続手続の中でも複雑で手間のかかる手続です。
自分で登記申請をするのが難しい場合は、代わりの人に申請してもらうことができます。
無報酬でかつ、業務として代理するのでないのなら、家族に依頼して申請してもらうことができます。
業務として代理するとは、反復継続する意思が認められることです。
今回が1回目でも今後も同じことをする意思がある場合、業務として代理していると判断されます。
今後も同じことをする意思がある場合、違法になります。
無報酬で1回限りなら、家族が代理で申請することができます。
③報酬を受けて業務として代理できるのは司法書士と弁護士だけ
報酬を受けて業務として代理できるのは、国家資格者だけです。
登記申請を報酬を受けて業務として代理できるのは、司法書士と弁護士だけです。
2代理申請に委任状が必要
①委任状は依頼されたことの証明書
相続登記は、家族に依頼して代理で申請してもらうことができます。
相続人本人以外の人が登記申請をする場合、家族であっても委任状が必要です。
委任状は、相続人本人から依頼されたことの証明書です。
相続登記を申請する場合、たくさんの添付書類と一緒に委任状を法務局に提出します。
相続人本人以外の人が申請する場合、書面で依頼を受けたことを証明する必要があるからです。
申請する権限が認められない場合、相続登記をすることができません。
司法書士や弁護士に依頼する場合であっても家族であっても、委任状は必要です。
委任状は、相続人本人から依頼されたことの証明書です。
②不適切な委任状は認められない
適切な依頼を受けていない場合、相続登記を取り下げることになるでしょう。
適切な依頼を受けていない場合、相続登記を代理する権限が認められないからです。
不動産は、多くの人にとって重要な財産です。
登記申請書だけでなく、委任状についても法務局は慎重に審査します。
委任状は、依頼されたことの証明書だからです。
委任状の記載が不適切であった場合、適切な依頼を受けたとは言えなくなります。
だいたい合っているから大丈夫ではなく、完璧な記載が求められます。
一般の人から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
相続登記に委任状には、登記申請書の内容と同じ内容を記載します。
登記申請書を訂正することができても、代理人は委任状の記載を訂正できないことが多いものです。
委任状の内容は、本人が依頼した内容だからです。
適切な委任を受けていないと判断されることになります。
適切な委任を受けていない場合、相続登記の申請を取り下げることになります。
不適切な委任状は、相続登記が認められなくなります。
③委任状の押印は認印で良い
委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。
依頼した人は、委任状に押印しなければなりません。
押印は、実印である必要はありません。
依頼した人の認印で差し支えありません。
委任状に書き間違いを見つけた場合、名前の横に押した印と同一印を押印して、訂正します。
④委任状に契印・割印
委任状に書くべき内容は、たくさんあります。
複数ページに渡る委任状になることがあります。
1通の委任状であることが分かるように、割印・契印を施します。
クリップでとめるだけなど差し替えができる状態では、委任内容を証明できるとは言えないからです。
適切な委任があったと認められない場合、相続登記を取り下げなければならなくなります。
委任状が複数枚になる場合、割印・契印を施します。
3家族が代理申請をするときの委任状の書き方
司法書士などの専門家に依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
登記申請を依頼するのであれば、司法書士が作成した委任状に記名押印するだけで済みます。
相続登記に必要な委任状には、次のことを記載します。
①相続登記を依頼される人の名前と住所
②相続登記を依頼する旨
「次の登記申請に関する一切の権限を委任します。」と記載すると分かりやすいでしょう。
③登記の目的
④登記原因
⑤相続人
③~⑤は、相続登記の申請書と同じです。
あらかじめ申請書を作ってあるのであれば、そのまま丸写しすれば記載できます。
申請書の記載を書き直す場合、委任状の記載を一緒に書き直す必要があります。
内容が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されるおそれがあります。
適切な委任を受けていない場合、登記申請を受け付けてもらえないかもしれません。
⑤相続人は、まず括弧をつけて被相続人の氏名をフルネームで記載します。
相続人が複数で共有する場合、相続人の住所氏名だけでなく持分も記載します。
⑥不動産の表示
相続登記の対象になる不動産の表示を記載します。
目的になる不動産の登記簿謄本を確認して、そのまま書き写せば記載できます。
記載事項は、申請書の内容と同じです。
土地であれば、次の事項を記載するといいでしょう。
(1)所在
(2)地番
(3)地目
(4)地積
建物であれば次の事項を記載するといいでしょう。
(1)所在
(2)家屋番号
(3)種類
(4)構造
(5)床面積
建物でも敷地権のあるマンションの一室であれば次の事項を記載するといいでしょう。
(1)一棟の建物の表示
i所在
ii建物の名称
(2)専有部分の建物の表示
i家屋番号
ii建物の名称
iii種類
iv構造
v床面積
(3)敷地権の目的である土地の表示
i土地の符号
ii所在及び地番
iii地目
iv地積
(4)敷地権の表示
i土地の符号
ii敷地権の種類
iii敷地権の割合
相続の対象が土地と建物など不動産が複数ある場合、順番に書き連ねれば差し支えありません。
不動産がたくさんある場合、書くべき項目の書き忘れに注意しましょう。
書くべき項目の書き忘れがあった場合、不動産が特定できないと指摘されるおそれがあります。
不動産を特定できない委任状の場合、登記申請を受け付けてもらえません。
⑦依頼する項目の補足事項
相続登記を申請する場合、登記申請だけでなく付随する手続があります。
手続の一環として一緒にお願いしておくと、手続がスムーズになります。
付随項目を書き忘れてしまうと、代理人が手続できなくなります。
具体的には、次のような項目です。
1.登記識別情報の受領の件及びその受領について復代理人選任に関する一切の件
1.登記識別情報の受領に関する一切の件
1.原本還付請求及び受領に関する一切の件
1.復代理人選任に関する一切の件
1.登記に係る登録免許税の還付金を受領する件
特に「登記識別情報の受領に関する一切の件」は重要です。
登記識別情報とは、権利証のことです。
代わりに登記申請をお願いしたのに、権利証を受け取りするために法務局に出向かなければならなくなるからです。
⑧日付
⑨登記申請をお願いする人の住所氏名
ふだん住所は簡単な記載をしている場合であっても、住民票の記載どおり書きましょう。
⓾押印
名前の横に押印します。
4委任状が不要になる例外
①相続人が未成年で親権者が申請
相続人本人が赤ちゃんであることがあります。
赤ちゃんなどの未成年者は、物事の良しあしを適切に判断することができません。
相続人が赤ちゃんである場合、親などの親権者が代わりに相続登記をすることができます。
未成年者は充分な判断ができないから、親などの親権者があらゆることを代理することが認められています。
未成年者に代わって親などの親権者が相続登記をする場合、委任状は不要です。
委任状の代わりに、親などの親権者であることを証明する書類が必要です。
親などの親権者と言えども、他人だからです。
親などの親権者であることを証明する書類とは、親子関係を証明する戸籍謄本です。
相続登記をする場合、親子関係を証明する戸籍謄本は発行後3か月以内のものでなければなりません。
②相続人が認知症で成年後見人が申請
相続人が認知症であることがあります。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。
記憶があいまいになることがあるでしょう。
認知症の人は自分で判断することができないから、成年後見人が代わりに判断します。
成年後見人は、認知症の人をサポートする人です。
認知症の人に代わって成年後見人が相続登記をする場合、委任状は不要です。
委任状の代わりに、成年後見人であることを証明する書類が必要です。
成年後見人と言えども、他人だからです。
成年後見制度を利用している場合、登記がされます。
成年後見人であることは、後見登記事項証明書で証明することができます。
相続登記をする場合、成年後見人であることを証明する後見登記事項証明書は発行後3か月以内のものでなければなりません。
③遺言執行者が相続登記
被相続人が遺言書を作成していることがあります。
遺言書がある場合、遺言書の内容どおりに財産を分けることができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、相続人のため相続登記を申請することができます。
遺言執行者が相続登記を申請する場合、委任状は不要です。
委任状の代わりに、遺言執行者であることを証明する書類が必要です。
遺言執行者が遺言書で指名された場合、遺言書で証明することができます。
遺言執行者が家庭裁判所で選任された場合、選任審判書と確定証明書で証明することができます。
④法定相続で権利証が発行されない
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人になる人の相続分も、法律で決まっています。
法律で決まっている相続分を法定相続分と言います。
相続人は、法定相続分で相続することができます。
法定相続分で相続すると、相続人全員で共有することになります。
不動産の共有はデメリットが多いので、おすすめできません。
相続人全員の合意があれば、法定相続分以外の分け方をすることができます。
多くの場合、相続人全員の合意で分け方を決めます。
相続人全員が法定相続分で共有する相続をする場合、原則として、相続人全員が相続手続に参加します。
相続登記をする場合、相続人全員が申請するのが原則です。
例外として、一部の相続人から委任状なしで相続登記を申請することができます。
一部の相続人から相続登記を申請する場合であっても、相続人全員が登記名義人になります。
相続人全員が登記名義人になるのに、登記申請人になった相続人にだけ権利証が発行されます。
登記申請人になっていない相続人に対して、権利証は発行されません。
後から権利証を発行してもらうこともできません。
一部の相続人が相続人全員のために相続登記をすることができるけど、おすすめできません。
権利証がないと、不動産を売却するときや担保に差し出すときに困るからです。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。
ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。
手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。
一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。
申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。
代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。
委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。
代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。
申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。
適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。
いったん申請を取り下げて、やり直しになります。
相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。
法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。
司法書士はこのような方をサポートしております。
相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。
相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続登記で委任状
1委任状で相続登記の依頼を証明する
①相続登記を依頼するときに委任状が必要
相続登記は、自分で申請することができます。
自分で登記申請をするのが難しい場合は、代わりの人に申請してもらうことができます。
業務として代理人になることができるのは、司法書士と弁護士のみです。
司法書士や弁護士といった国家資格者でなければ、報酬を受けて業務として登記申請の代理はできません。
無報酬で1回だけ家族のために、代わりに登記申請するのであれば、国家資格者でなくても差し支えありません。
自分の代わりに登記申請をしてもらう場合、委任状を一緒に提出します。
司法書士などの専門家に依頼するときも家族に依頼するときも、委任状が必要です。
登記申請を依頼した場合、法務局に対して書面で依頼の事実を証明する必要があるからです。
②不適切な委任状は認められない
委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。
委任状の記載が不適切であった場合、適切な依頼を受けたとは言えなくなります。
多くの人にとって、不動産は重要な財産です。
相続登記は、法務局で厳格に審査されます。
だいたい合っているから大丈夫ではなく、完璧な記載が求められます。
一般の人から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
相続登記に委任状には、登記申請書の内容と同じ内容を記載します。
登記申請書を訂正することができても、代理人は委任状の記載を訂正できないことが多いものです。
委任状の内容は、本人が依頼した内容だからです。
適切な委任を受けていないと判断されることになります。
適切な委任を受けていない場合、相続登記の申請を取り下げることになります。
2他人の登記申請であっても委任状が不要な例外
①未成年者の代わりに親権者が相続登記
身近な家族であっても、自分以外の人は他人として扱われます。
相続人が赤ちゃんである場合、親などの親権者は代わりに相続登記の申請をすることができます。
本人が赤ちゃんなどの未成年者である場合、自分で委任状は書けないでしょう。
未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。
充分な判断ができないから、親などの親権者があらゆることを代わりにすることが認められています。
未成年者の代わりに親権者が相続登記をする場合、委任状は不要です。
未成年者の代わりに親権者が相続登記をする場合、他に書類が必要になります。
未成年者といえども、他人の登記申請をすることには変わらないからです。
親などの親権者が申請する場合、親子関係を証明する戸籍謄本が必要になります。
相続人である未成年者のため、親などの親権者が司法書士に依頼することができます。
親などの親権者から司法書士に対する委任状を出して、登記申請を依頼することができます。
司法書士は、親子関係を証明する戸籍謄本と委任状を法務局に提出します。
②認知症の人の代わりに成年後見人が相続登記
本人が重度の認知症である場合、成年後見制度を利用していることがあります。
重度の認知症である場合、物事のメリットデメリットを充分に判断できません。
成年後見制度を利用している場合、成年後見人はあらゆることを代わりにすることが認められています。
認知症の人の代わりに成年後見人が相続登記をする場合、委任状は不要です。
認知症の人の代わりに成年後見人が相続登記をする場合、成年後見人であることを証明する必要があります。
成年後見登記事項証明書で、証明することができます。
相続人である認知症の人のため、成年後見人が司法書士に依頼することができます。
司法書士は、成年後見登記事項証明書と委任状を法務局に提出します。
③相続人の代わりに遺言執行者が相続登記
被相続人が生前に遺言書を作成して遺言執行者を指名していることがあります。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言執行のため必要な一切の行為をする権利と義務があります。
遺言執行のため遺言執行者が相続登記をする場合、委任状は不要です。
遺言執行のため遺言執行者が相続登記をする場合、遺言執行者であることを証明する必要があります。
遺言執行者を指名している遺言書で、証明することができます。
検認が必要な遺言書の場合、検認済証明書も必要です。
相続人のため、遺言執行者が司法書士に依頼することができます。
司法書士は、遺言書、検認済証明書と委任状を法務局に提出します。
④相続人全員のため一部の相続人が相続登記
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人になる人の相続分も、法律で決まっています。
法律で決まっている相続分を法定相続分と言います。
相続人は、法定相続分で相続することができます。
法定相続分で相続すると、相続人全員で共有することになります。
不動産の共有はデメリットが多いので、おすすめできません。
相続人全員の合意があれば、法定相続分以外の分け方をすることができます。
多くの場合、相続人全員の合意で分け方を決めます。
相続人全員が法定相続分で共有する相続をする場合、原則として、相続人全員が相続手続に参加します。
相続登記をする場合、相続人全員が申請するのが原則です。
例外として、一部の相続人から相続登記を申請することができます。
一部の相続人から相続登記を申請する場合であっても、相続人全員が登記名義人になります。
相続人全員のため、一部の相続人が司法書士に依頼することができます。
司法書士は、一部の相続人からの委任状を法務局に提出します。
相続人全員が登記名義人になるのに、登記申請人になった相続人にだけ権利証が発行されます。
登記申請人になっていない相続人に対して、権利証は発行されません。
後から権利証を発行してもらうこともできません。
一部の相続人が相続人全員のために相続登記をすることができるけど、おすすめできません。
権利証がないと、不動産を売却するときや担保に差し出すときに困るからです。
3相続登記に必要な委任状の書き方
司法書士などの専門家に依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
登記申請を依頼するのであれば、司法書士が作成した委任状に記名押印するだけで済みます。
相続登記に必要な委任状には、次のことを記載します。
①相続登記を依頼される人の名前と住所
②相続登記を依頼する旨
「次の登記申請に関する一切の権限を委任します。」と記載すると分かりやすいでしょう。
③登記の目的
④登記原因
⑤相続人
③~⑤は、相続登記の申請書と同じです。
あらかじめ申請書を作ってあるのであれば、そのまま丸写しすれば記載できます。
申請書の記載を書き直す場合、委任状の記載を一緒に書き直す必要があります。
内容が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されるおそれがあります。
適切な委任を受けていない場合、登記申請を受け付けてもらえないかもしれません。
⑤相続人は、まず括弧をつけて被相続人の氏名をフルネームで記載します。
相続人が複数で共有する場合、相続人の住所氏名だけでなく持分も記載します。
⑥不動産の表示
相続登記の対象になる不動産の表示を記載します。
目的になる不動産の登記簿謄本を確認して、そのまま書き写せば記載できます。
記載事項は、申請書の内容と同じです。
土地であれば、次の事項を記載するといいでしょう。
(1)所在
(2)地番
(3)地目
(4)地積
建物であれば、次の事項を記載するといいでしょう。
(1)所在
(2)家屋番号
(3)種類
(4)構造
(5)床面積
建物でも敷地権のあるマンションの一室であれば次の事項を記載するといいでしょう。
(1)一棟の建物の表示
i所在
ii建物の名称
(2)専有部分の建物の表示
i家屋番号
ii建物の名称
iii種類
iv構造
v床面積
(3)敷地権の目的である土地の表示
i土地の符号
ii所在及び地番
iii地目
iv地積
(4)敷地権の表示
i土地の符号
ii敷地権の種類
iii敷地権の割合
相続の対象が土地と建物など不動産が複数ある場合、順番に書き連ねれば差し支えありません。
不動産がたくさんある場合、書くべき項目の書き忘れに注意しましょう。
書くべき項目の書き忘れがあった場合、不動産が特定できないと指摘されるおそれがあります。
不動産を特定できない委任状の場合、登記申請を受け付けてもらえません。
⑦依頼する項目の補足事項
相続登記を申請する場合、登記申請だけでなく付随する手続があります。
手続の一環として一緒にお願いしておくと、手続がスムーズになります。
付随項目を書き忘れてしまうと、代理人が手続できなくなります。
具体的には、次のような項目です。
1.登記識別情報の受領の件及びその受領について復代理人選任に関する一切の件
1.登記識別情報の受領に関する一切の件
1.原本還付請求及び受領に関する一切の件
1.復代理人選任に関する一切の件
1.登記に係る登録免許税の還付金を受領する件
特に「登記識別情報の受領に関する一切の件」は重要です。
登記識別情報とは、権利証のことです。
代わりに登記申請をお願いしたのに、権利証を受け取りするために法務局に出向かなければならなくなるからです。
⑧日付
⑨登記申請をお願いする人の住所氏名
ふだん住所は簡単な記載をしている場合であっても、住民票の記載どおり書きましょう。
⓾押印
名前の横に押印します。
4委任状の押印は実印でなく認印でいい
委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。
依頼した人は、委任状に押印しなければなりません。
押印は、実印である必要はありません。
依頼した人の認印で差し支えありません。
委任状に書き間違いを見つけた場合、名前の横に押した印と同一印を押印して、訂正します。
5委任状に割印・契印
委任状に書くべき内容は、たくさんあります。
複数ページに渡る委任状になることがあります。
1通の委任状であることが分かるように、割印・契印を施します。
クリップでとめるだけなど差し替えができる状態では、委任内容を証明できるとは言えないからです。
適切な委任があったと認められない場合、相続登記を取り下げなければならなくなります。
6相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。
ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。
手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。
一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。
申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。
代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。
委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。
代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。
申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。
適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。
いったん申請を取り下げて、やり直しになります。
相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。
法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。
司法書士はこのような方をサポートしております。
相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。
相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続登記の期限
1 相続発生後3年以内に相続登記の義務
①所有権移転登記は原則として権利
不動産に対する権利が変動した場合、登記をします。
権利が変動した場合で最もイメージしやすいものは、不動産を購入して所有権を取得した場合でしょう。
不動産を購入して所有権を取得した場合、購入したタイミングですぐに所有権移転登記をします。
登記をしていないと、不動産に対して権利主張をする人が現れた場合に負けてしまうからです。
不動産を購入して所有権を取得したはずなのに、見知らぬ人が不動産は自分のものだから明け渡して欲しいと言ってくるようなケースです。
登記がある場合、不動産は自分のものだから明け渡す必要はないと言い返すことができます。
登記がない場合、不動産を明け渡さなければならなくなるかもしれません。
せっかく不動産を購入したのに、不動産を明け渡さなければならなくなることは何としても避けたいはずです。
不動産は自分のものだと主張するために、購入したタイミングですぐに所有権移転登記をします。
所有権移転登記をしない場合、所有者は権利主張ができません。
所有権移転登記をしない場合、所有者が不利益を受けます。
所有権移転登記をすることは、所有者の権利であって義務ではありません。
②相続登記は義務
所有権移転登記をしない場合、所有者はソンをします。
不動産に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者のはずなのに権利主張ができないからです。
不動産には、不便な場所にあるなどの理由で価値が低い土地が存在します。
所有者にとって利用価値が低い土地に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者として権利主張する必要を感じないかもしれません。
相続登記は、手間のかかる手続です。
自分で相続登記をしようとするものの、多くの人は挫折します。
相続登記をする場合、登録免許税を納付しなければなりません。
相続登記を専門家に依頼する場合、専門家に報酬を支払う必要があります。
不動産の価値が低い場合、相続登記で手間と費用がもったいないと考える人が少なくありませんでした。
相続登記がされない場合、登記簿を見ても土地の所有者が分からなくなります。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
③相続登記は3年以内に申請
相続が発生した場合、相続登記の申請義務が課せられました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日」から3年以内に申請しなければなりません。
④令和6年4月1日以降に発生した相続が対象になる
相続登記の申請義務が課せられるのは、令和6年4月1日です。
令和6年4月1日以降に発生した相続は、当然に対象になります。
⑤令和6年4月1日以前に発生した相続が対象になる
ずっと以前に相続が発生したのに、相続登記を放置している例は少なくありません。
令和6年4月1日以前に発生した相続であっても、相続登記は義務になります。
⑥相続登記未了であればペナルティーが課せられる
相続登記は、3年以内に申請しなければなりません。
相続登記の申請義務を果たしていない場合、ペナルティーが課されます。
令和6年4月1日以前に発生した相続であっても、ペナルティーが課される予定です。
2相続登記を放置すると遺産分割協議が難しくなる
①相続人が死亡してしまう
相続登記をしないまま放置すると、相続人が死亡してしまうかもしれません。
すぐに相続登記をするのであれば、気ごころの知れた兄弟で話し合いをすれば済みます。
相続登記を放置したことで兄弟の配偶者や兄弟の子どもと話し合いをしなければならなくなります。
疎遠な相続人がいると、話し合いは一挙に難しくなります。
相続財産の分け方は相続人全員の話し合いによる合意が不可欠だからです。
疎遠だから、行方不明だから、連絡を取れないからなどは、理由になりません。
住所や連絡先を調べて話し合いによる相続人全員の合意が必要です。
気ごころの知れた兄弟で合意していたことでも、合意内容を書面に取りまとめていないことがあります。
兄弟の口頭の合意内容について、兄弟の配偶者や兄弟の子どもは何も知らないことが多いでしょう。
遺産分割協議書に押印していない場合、合意があったと言っても納得してもらうことは難しいでしょう。
そうなると話し合いによる合意は、やり直しになります。
②相続人が認知症などで判断ができなくなる
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意で決める必要があります。
相続が発生したときは元気だったとしても、長期間放置しているうちに高齢になります。
相続人が高齢になると、認知症などを発症するリスクが高くなります。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。
物事のメリットデメリットを充分に判断することができない状態では、相続財産の分け方の合意はできません。
認知症など自分で判断することができなくなった人のために、サポートする人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。
認知症の人をサポートする人を成年後見人と言います。
成年後見人が本人の代わりに、相続財産の分け方の合意をします。
成年後見人は本人の利益のために働きますから、本人の法定相続分を主張します。
家族の事情を考慮した柔軟な話し合いは難しくなります。
相続登記のために成年後見人を選んでもらったとしても、相続手続完了後、やめることはできません。
③相続人が行方不明などで連絡が取れなくなる
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意で決める必要があります。
行方不明だから、連絡を取れないからなどは、話し合いから除外していい理由になりません。
行方不明の人がいる場合、代わりに話し合いをする人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。
代わりに話し合いをする人を不在者財産管理人と言います。
不在者財産管理人が本人の代わりに、相続財産の分け方の合意をします。
不在者財産管理人が相続財産の分け方の合意をする場合、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所は、本人の法定相続分が確保されていないと許可しません。
家族の事情を考慮した柔軟な話し合いは難しくなります。
④相続人の気持ちが変わる
相続登記をしないまま放置すると、相続人の気持ちが変わるかもしれません。
せっかく相続財産の分け方について話し合いによる合意をしていても、長い期間の経過するうちに気持ちが変わることもあります。
周りの人からいろいろ聞いて気持ちが変わる人もいるし、経済状況が変わって考えを変える人もいます。
相続登記を放置している間に、相続人の間で別のトラブルが起きて話し合いができなくなることもあります。
3相続登記を放置すると不動産活用ができなくなる
不動産そのままでは相続人間で分けようがない場合や遠方で住む予定がない実家を相続した場合など、相続したもののすぐに不動産を売却したい場合もあるでしょう。
このような場合にも、相続登記は必要です。
所有権は、被相続人→相続人→買主と移動しているからです。
①売却などができない
相続登記をしていないと、通常、売却ができません。
賃貸として貸し出す場合も、不動産を担保として差し出す場合も、相続登記は必要です。
相続登記をしていない場合、自分で使う以外活用できません。
②建物の取壊し後、土地を売却できない
建物の取壊しをするにも、相続人全員の合意が必要になります。
建物の取壊しだけなら、相続登記は不要です。
相続人全員の合意があれば、建物滅失登記をすることができます。
建物取壊し後、土地を売却する場合、土地は相続登記が必要です。
③特定の相続人が自分の持分を売ってしまう
法定相続分で登記するのであれば、相続人は単独で登記ができます。
他の相続人が何も知らないところで、相続人全員の法定相続分で、相続登記ができてしまうのです。
法定相続分で相続登記をした後、不動産の持分を売却することができます。
あまり知られていませんが、持分を買い取る専門の業者もいます。
買い取り価格はおおむね時価の1~3割です。
経済的に困った相続人がいる場合、このような買取業者と不動産を共有することになります。
このような業者はビジネスですから、買い取った後、共有物分割請求などの権利主張をします。
④借金のある相続人の持分が差し押さえられる
債権者は債権の保全のため、債務者の財産を差し押さえることができます。
差押など強制執行の準備のため、相続登記を申請することができます。
差押などの強制執行をするためには、相続人名義である必要があるからです。
差押の後は、競売をして債権を回収します。
債権者は債務者の事情などお構いなしで登記しますから、相続人全員の話し合いによる合意がどうなったのか待つことはありません。
たとえ、相続人全員の話し合いで特定の相続人が相続することが合意されていても、登記されていなければ債権者は勝手に相続登記ができます。
相続登記をしていなければ、相続人全員の合意内容と違うから消して欲しいなどの文句を言えません。
4相続登記を放置すると手続費用が高くなる
相続登記には書類がたくさん必要になります。
役所から取り寄せる、戸籍や住民票などです。
長期間、相続登記を放置したことで相続人が死亡した場合、死亡した相続人の相続人を確定させる必要があります。
死亡した相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が追加で必要になります。
単純に、集める戸籍謄本が増えるし、複雑になります。
また、戸籍や住民票は永年保管ではありません。
役所は書類の保存期間を決めていて、古い書類から順に廃棄します。
必要な書類が廃棄されていると取得できなくなってしまうおそれがあります。
取得できなくなったからと言って、相続登記ができなくなるということはありませんが、その代わりの書類を用意するのに余計な手間がかかります。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続手続きは一生のうち何度も経験するものではないため、だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続登記は、相続手続の中でも手間がかかる難しい手続です。
不動産は重要な財産であることが多いので、法務局は厳重な審査をします。
一般の人にとって些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
売却する予定がないのなら、先延ばししたい誘惑にかられるかもしれません。
実は、相続手続をスムーズにするコツがあります。
それは、はじめに相続登記をすることです。
相続登記は難しい手間がかかる手続なので、司法書士などの専門家に依頼するでしょう。
相続手続で挫折しがちなのは、戸籍謄本などの書類収集や遺産分割協議書の作成です。
書類収集や遺産分割協議書の作成は、司法書士に依頼することができます。
司法書士が戸籍謄本や遺産分割協議書を準備したうえに、法務局の厳重な審査をします。
法務局の審査が通った戸籍謄本や遺産分割協議書だから、銀行などの相続手続先で指摘があることはありません。
銀行などの独自書類の内容などに指摘があるとしても、簡単に済むことがほとんどでしょう。
相続手続をスムーズに進めたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
共有名義人の片方死亡後放置は危険
1放置すると遺産分割協議が難しくなる
①遺産分割協議は相続人全員の合意が必要
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
被相続人が第三者と財産を共有していた場合、財産の共有持分を持っています。
被相続人が持っていた共有持分は、相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
ときには一部の相続人と共有しているかもしれません。
一部の相続人と財産を共有していても、被相続人が持っていた共有持分は相続財産です。
他の共有者である相続人が優先して相続できるわけではありません。
他の共有者である相続人が相続する場合でも、相続人全員の合意が必要です。
共有名義人の片方が死亡した後、放置するのはおすすめできません。
②当初の相続人が死亡する
遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。
相続手続は、わずらわしいものです。
相続が発生した後、相続手続を放置したくなるかもしれません。
相続手続を放置した場合、当初の相続人が後に死亡することがあります。
当初の相続人の相続人を含めて、話し合いをする必要があります。
当初の相続人は、仲の良い兄弟などで話がしやすかったかもしれません。
死亡した相続人の配偶者や子どもなどが相続するでしょう。
関係が薄い相続人がいると、相続財産の分け方についての話し合いは難航しがちです。
当初の相続人が死亡すると、遺産分割協議が難しくなります。
③相続人が認知症になる
相続人の中には、相当高齢の人がいることがあります。
相続が発生した当時は、元気だったのに後に認知症を発症することがあります。
認知症になると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。
物事の良しあしを判断することができない人は、自分で相続財産の分け方について合意することはできません。
自分で判断することができないから、サポートする人が代わりに判断します。
子どもなどが勝手に判断することはできません。
勝手に判断して遺産分割協議書を作成しても、無効の書面です。
認知症の人のために、家庭裁判所がサポートする人を選任します。
認知症の人をサポートする人を成年後見人と言います。
成年後見人は、家庭裁判所が選任します。
認知症の人の子どもなど家族を選任することもあるし、家族以外の専門家を選任することもあります。
子どもなど家族が選任されるのは、全体の20%程度です。
成年後見人が認知症の人の代わりに相続財産の分け方について話し合いをします。
成年後見人は、認知症の人の財産を守るために働きます。
家族の意向をかなえてくれる人ではありません。
家族の事情を考慮した柔軟な対応は、認知症の人の利益にならないことが多いでしょう。
成年後見人は、法定相続分を下回る合意をすることはできません。
成年後見人が家族であっても、家族の意向どおりの合意をすることはできません。
成年後見人は、家庭裁判所から監督されているからです。
法定相続分を下回る合意は、認知症の人の利益にならない合意です。
家庭裁判所の同意を得られないでしょう。
子どもなど家族を選任された場合であっても、成年後見人は家庭裁判所から監督されます。
遺産分割協議のために成年後見人を選任しても、相続手続完了後に成年後見制度をやめることはできません。
当初の相続人が後に認知症になると、遺産分割協議が難しくなります。
④相続人が行方不明になる
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続人の中には、さまざまな事情を抱えている人がいるでしょう。
一部の相続人が行方不明になって、連絡が取れなくなることがあります。
連絡が取れないからと言っても、話し合いから除外することはできません。
一部の相続人を除外して相続財産の分け方を合意しても、無効の合意になるからです。
行方不明の相続人がいる場合、代わりに話し合いをする人を家庭裁判所に選んでもらいます。
行方不明の人の代わりに話し合いをする人を不在者財産管理人と言います。
不在者財産管理人が行方不明の人の代わりに、相続財産の分け方について話し合いをします。
不在者財産管理人は、行方不明の人の財産を守るために働きます。
不在者財産管理人は、家族の意向をかなえてくれる人ではありません。
家族の事情を考慮した柔軟な対応は、行方不明の人の利益にならないことが多いでしょう。
不在者財産管理人が相続財産の分け方について合意する場合、家庭裁判所の許可が必要です。
行方不明の人の法定相続分が確保されていない場合、家庭裁判所は許可をしないでしょう。
家族の事情を考慮した柔軟な取り扱いは困難です。
当初の相続人が後に行方不明になると、遺産分割協議が難しくなります。
2放置すると不動産活用ができない
①不動産を売却できない
相続財産の大部分が不動産である場合、相続人間で分け方の合意が難しくなります。
利用する予定のない不動産は、すぐに売却したいことがあります。
実家などはお金を出し合った人で共有していることが多いでしょう。
共有名義人の片方が死亡した後、他の共有名義人が相続人のひとりかもしれません。
他の共有名義人が被相続人の共有持分を相続して、単独所有者になった気持ちでいることがあります。
単独所有者になったつもりでも、客観的には被相続人の共有持分は相続財産です。
共有名義人が死亡した後に何もしないままの場合、被相続人名義のままになっているでしょう。
不動産を売却する場合、買主に名義を移さなければなりません。
被相続人名義から直接買主に名義を移すことはできません。
被相続人が生前に売却したのではないからです。
被相続人が死亡した後に、相続人が売却したはずです。
相続登記を省略することはできません。
被相続人から相続人に所有権が移転したことを公示する必要があるからです。
相続登記をしていない場合、買主に名義を移すことができなくなります。
買主が不動産の所有者であることを対外的に主張する際に登記が必要です。
所有権移転登記をしていないと、対外的に所有者であることを主張することができません。
買主は、とても困ります。
対外的に所有者であることを主張できないのなら、その不動産を買うことを諦めるでしょう。
相続登記をしないまま放置すると、不動産を売却することができなくなります。
②不動産を担保にできない
不動産を担保に金融機関から融資を受けることがあります。
借金の返済が滞ったときに備えて、金融機関は不動産を担保に取ります。
返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。
お金を貸した人が担保に取りますから、債権者は抵当権者です。
抵当権は、登記をすることができます。
抵当権設定登記をしていないと、対外的に抵当権者であることを主張することができません。
金融機関は、とても困ります。
抵当権は、借金の返済が滞ったときに備えて担保に取る権利です。
具体的には、借金の返済が滞った場合、担保に取った不動産を競売にかけて売却代金から優先的に借金を返してもらうことができます。
対外的に抵当権者であることを主張できない場合、抵当権を設定した意味がなくなります。
被相続人名義のままで、抵当権設定登記をすることはできません。
担保に差し出したのは、相続人だからです。
相続登記を省略することはできません。
被相続人から相続人に所有権が移転したことを公示する必要があるからです。
3放置すると相続登記が困難になる
①相続登記にはたくさんの書類が必要になる
相続による不動産の名義変更を相続登記と言います。
相続登記には、たくさんの書類が必要になります。
遺言書がない場合、おおむね次の書類が必要です。
(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(2)相続人の現在戸籍
(3)被相続人の住民票の除票
(4)不動産を相続する人の住民票
(5)遺産分割協議書
(6)相続人全員の印鑑証明書
(7)不動産の評価証明書
遺言書がある場合、おおむね次の書類が必要です。
(1)被相続人の除籍謄本
(2)相続人の現在戸籍
(3)被相続人の住民票の除票
(4)不動産を相続する人の住民票
(5)遺言書
(6)遺言書検認証明書
(7)不動産の評価証明書
事例によって追加書類が必要なることがあります
②戸籍謄本や住民票が保存期間経過で廃棄される
相続手続の最初の難関は、戸籍謄本の収集です。
相続登記には、たくさんの書類が必要になります。
戸籍謄本などの書類取集があまりにタイヘンで、挫折する人は少なくありません。
挫折したまま長期間放置すると、ますますタイヘンになります。
戸籍謄本や住民票は、永年保管ではないからです。
保存期間が決められていて、古いものから順次廃棄されます。
保存期間が経過した書類は、請求しても発行してもらえません。
必要な書類を提出できない場合、別の書類が必要になります。
一般的な事例とは異なる場合、法務局と打合せが必要になるでしょう。
長期間放置すると、相続登記が困難になります。
4放置された私道の共有持分の相続は非常に困難
被相続人がマイホームを所有していた場合、自宅の土地建物が相続財産であることは承知しているでしょう。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
自宅の土地建物について分け方の合意をした後に、私道の共有持分が見つかることがあります。
私道とは、一般私人が設置管理する道路です。
自宅の前面道路が公道ではなく私道であることがあります。
行政が設置管理をする道路が公道です。
多くの場合、私道は自宅に至る道路でしょう。
近隣住民と私道を共有していることがあります。
私道の共有持分は、自宅の土地建物とは別の財産です。
自宅の土地建物を相続した人が自動で相続できるものではありません。
自宅を使う人が私道を使います。
自宅を使う人が私道を使うとしても、私道の共有持分の分け方について別の合意が必要です。
私道の共有持分と自宅の土地建物は、別の財産だからです。
私道の共有持分は、相続登記が見落とされがちです。
自宅の土地建物は財産だと認識していても、道路を自分の財産と認識していないことが多いからです。
被相続人が認識していないと、家族はなおさら認識が薄いでしょう。
相続が発生してから長期間経過した後に、私道の共有持分が見つかります。
相続人が意図していなくても、長期間放置されていたと言えます。
先に説明したとおり、当初の相続人が死亡しているかもしれません。
当初の相続人が認知症になっているかもしれません。
当初の相続人が行方不明になっているかもしれません。
相続が発生した後に長期間放置された場合、相続人の確定が難しくなります。
家庭裁判所の手続が必要になることがあります。
必要な書類を準備できなくなることがあります。
相続が発生した後に長期間放置された場合、相続登記は非常に難しくなります。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
司法書士は、登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
私道の共有持分と自宅の相続登記
1私道の共有持分は相続財産
①道路には私道と公道がある
普段、道路を使っていろいろな所へ出かけます。
一般の交通の用に用いるのが道路です。
道路には、2種類あります。
私道と公道です。
行政が設置管理をする道路が公道です。
一般私人が設置管理する道路が私道です。
公道は、設置管理する国や地方自治体の財産です。
私道は、設置管理する人の財産です。
②私道の共有持分と自宅は別の財産
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産は相続人全員の合意で、分け方を決定します。
相続人全員の話し合いで、一部の相続財産について先に合意をすることができます。
自宅の分け方について、先に合意をすることができます。
他の財産は、後から合意をすることができます。
私道の共有持分と自宅は、別の財産です。
自宅の分け方について合意した場合、自宅だけの分け方の合意です。
私道の共有持分が自動で付いてくることはありません。
多くの場合、私道は自宅に至る道路でしょう。
自宅を使う人が私道を使います。
自宅を使う人が私道を使うとしても、私道の共有持分の分け方について別の合意が必要です。
私道の共有持分と自宅は、別の財産だからです。
2私道の共有持分と自宅の相続登記
①私道の共有持分は相続登記が必要
私道は、一般私人が設置管理する道路です。
私道は、設置管理する人の財産です。
私道を共有している人が死亡した場合、私道の共有持分は相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めることができます。
相続財産の分け方が決まったら、相続登記をします。
自宅だけでなく私道の共有持分についても、相続登記をします。
私道の共有持分に登記がされていないと、権利主張ができないからです。
登記をした人は、この不動産は私のものだと権利主張をすることができます。
登記がしてあることは、権利主張をするときの条件です。
権利主張の条件になることを対抗要件と言います。
対抗要件を備えるため、私道の共有持分に相続登記が必要です。
②私道の共有持分と自宅をまとめて相続登記
私道は設置管理する人の財産だから、相続があったら相続登記をします。
多くの場合、私道は自宅に至る道路です。
自宅を取得する人が私道の共有持分を取得する合意をするでしょう。
自宅は被相続人で単独で所有していた場合、登記の目的は所有権移転です。
私道は共有しているから、登記の目的は○○○○持分全部移転です。
原則として、登記の目的がちがう場合、まとめて登記申請をすることができません。
所有権移転と○○○○持分全部移転は、まとめて登記申請をすることができます。
2種類の登記申請を一度にすることができます。
私道の共有持分と自宅の相続登記をまとめて申請することができます。
3私道の共有持分の登録免許税の計算方法
①相続登記の登録免許税は4/1000
相続登記をするときは、法務局に登録免許税を納めます。
登録免許税は、不動産の評価額を基にして計算します。
不動産の評価額とは、固定資産税評価額のことです。
相続登記の登録免許税の税率は、1000分の4です。
相続登記の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の1000分の4です。
②固定資産税がかかるときは通常どおり4/1000
私道は、設置管理する人の財産です。
設置管理する人の財産だから、固定資産税がかかるのが原則です。
固定資産税がかかる場合、私道の固定資産税評価証明書に評価額が記載されています。
相続登記の登録免許税は、通常どおり、不動産の固定資産税評価額の1000分の4です。
共有持分の相続登記の場合、移転する持分の評価額に対して登録免許税がかかります。
例えば、不動産全体が100万円で共有持分が5分の1の場合、移転する持分の評価額は20万円です。
③公衆用道路の評価額を調べる方法
私道が公衆用道路に該当する場合、固定資産税は非課税になります。
公衆用道路の固定資産税評価証明書を取得すると、不動産の価格が記載されていない場合や0円と記載されている場合があります。
固定資産税評価証明書の記載は、市区町村役場によって異なります。
評価価格、価格、価額など統一されていません。
不動産の評価額が記載されていない場合や0円と記載されている場合でも、登録免許税はかかります。
登録免許税を計算する場合、まず不動産の評価額を調べなければなりません。
私道が公衆用道路として固定資産税が非課税とされている場合、近傍地の評価額を調べます。
近傍地の評価額を調べる方法は、市区町村役場によって対応がちがいます。
(1)公衆用道路の評価証明書に近傍地1平方メートルあたり評価額〇〇円と記載してくれる
(2)公衆用道路の評価証明書の他に近傍地の評価証明書を請求する
(3)公衆用道路の評価証明書を持って管轄法務局で近傍地を指定してもらった後、あらためて近傍地の評価証明書を請求する
近傍地が宅地である場合、宅地の評価額をそのまま使いません。
宅地の評価額の1平方メートルあたりの単価を出します。
1平方メートルあたりの単価の100分の30が公衆用道路の1平方メートルあたりの単価です。
公衆用道路の面積をかけて、公衆用道路全体の評価額を算出します。
④土地の評価額が100万円以下なら登録免許税が非課税
相続登記をするときは、原則として、登録免許税を納めなければなりません。
条件を満たした場合は例外として、土地の登録免許税が非課税になります。
土地の評価額が100万円以下の場合、非課税になります。
日本中どこの土地でも土地の評価額が100万円以下であれば対象になります。
所有権の持分を相続した場合、移転した持分の評価額が、100万円以下であれば非課税になります。
私道の共有持分を相続した場合、広大な土地であることはほとんどないでしょう。
公衆用道路の評価額は、近傍宅地の100分の30です。
高価な土地であることは、めったにありません。
私道の共有持分を相続した場合、移転した持分の価額は少額であることが多いでしょう。
移転した持分の価額が100万円以下の場合、登録免許税が非課税になります。
登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載します。
記載がないときは、非課税となりません。
結果として非課税になるときであっても、固定資産税評価証明書を提出し近傍地の評価額を調べる必要があります。
租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税になる土地とならない土地をまとめて、相続登記をすることができます。
どの土地が対象の土地であるか相続登記の申請書に記載する必要があります。
土地の評価額が100万円以下の場合、登録免許税が非課税になります。
4自宅の相続登記をした後で私道の共有持分が見つかったら
①自宅だけの遺産分割協議書は有効
被相続人が自宅と私道の共有持分を所有している場合、自宅だけ意識が向きがちです。
私道は、自分が所有している認識が薄れているかもしれません。
本人が意識していない場合、家族はなおさら意識していないでしょう。
相続が発生した後、自宅だけ分け方の合意をしていることがあります。
自宅だけ記載した遺産分割協議書は、自宅について有効な遺産分割協議書です。
私道の共有持分が記載されていなくても、原則として、無効になることはありません。
遺産分割協議書は、相続財産全部について記載しなければならないといったルールはないからです。
私道の共有持分について相続人全員の合意をしていないから、あらためて話し合いが必要です。
自宅を相続する人が自動で相続できるといったことはありません。
②記載がない財産が見つかっても遺産分割協議のやり直しは不要
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員の合意ができたら、相続財産の分け方は確定して話し合いは終了します。
遺産分割協議が成立した後、新しい財産が見つかることがあります。
新しい財産が見つかっても、遺産分割協議のやり直しは原則不要です。
遺産分割協議のやり直しが必要になるのは、ごく例外的な場合です。
遺産分割協議成立後に見つかった財産が重要な財産である場合、遺産分割協議のやり直しができます。
重要な財産があると知っていたら、相続財産の分け方に合意しなかったと言えるような場合です。
私道の共有持分が重要な財産であることは、ほとんどないでしょう。
私道の共有持分が重要な財産でない場合、遺産分割協議のやり直しは不要です。
③記載がない財産の合意があれば再協議不要
遺産分割協議が成立した後、わずかな財産が見つかることは少なくありません。
相続が発生してから何十年も経過してから、新たな財産が見つかることがあります。
わずかな財産のために、相続人全員が分け方の合意をするのはわずらわしいでしょう。
遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合について、あらかじめ合意しておくことができます。
例えば、「遺産分割協議書に記載がない財産は相続人○○が相続する」などです。
このような記載がある場合、あらためて協議する必要はありません。
新たに見つかった私道持分は、相続人○○が相続すると手続をすることができます。
④私道の共有持分だけ相続登記
自宅の相続登記をした後で私道の共有持分が見つかった場合、あらためて私道の共有持分について相続人全員で分け方の合意をします。
相続人全員の合意ができたら合意内容を文書に取りまとめます。
私道の共有持分だけ相続登記をします。
5私道の共有持分を見落とさない対策
①名寄帳を取得する
名寄帳は「なよせちょう」と読みます。
名寄帳とは、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。
市町村が税金をかけるために備えている帳簿から一覧表にまとめてくれた書類です。
その市町村が把握している不動産の状況が一目で分かるので、とても便利です。
市区町村役場によっては、非課税の不動産について記載されないことがあります。
機密性の高い個人情報であることを考慮して、名寄帳を発行していない役所があります。
名古屋市などでは、名寄帳を発行していません。
名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。
課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。
資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。
課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。
名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません
②不動産の権利証を確認する
被相続人が不動産を取得したときに、権利証が発行されているはずです。
権利証の不動産の表示に記載されている不動産を所有しているでしょう。
権利証を確認すると、自宅以外に私道の共有持分が見つかることがあります。
③売買契約書を確認する
被相続人が自宅の私道の共有持分を所有している場合、自宅を購入したときに一緒に購入しているでしょう。
私道の共有持分だけで購入することは、ほとんど考えられません。
売買契約書を確認すると、売買の対象となった不動産が記載されています。
売買契約書を確認すると、自宅以外に私道の共有持分が見つかることがあります。
④共同担保目録を確認する
被相続人が自宅を購入したときに、金融機関など住宅ローンを組んでいることがあります。
金融機関で住宅ローンを組む場合、購入する不動産を担保に取ります。
自宅と私道の共有持分がある場合、金融機関は見逃しません。
複数の不動産を担保に取った場合、登記簿謄本の共同担保目録に記載されます。
共同担保目録を確認すると、自宅以外に私道の共有持分が見つかることがあります。
6相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
司法書士は、登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
共有名義人の片方死亡後に共有持分の相続登記
1被相続人が共有者であるとき共有持分は相続財産
被相続人が不動産などを第三者と共有している場合があります。
共有している理由はさまざまです。
・夫婦で自宅を購入した。
・相続で不動産を平等に分けた。
・お金を出した親の名義がある。
上記のような理由が、大部分です。
被相続人が不動産などを第三者と共有していた場合、被相続人が持っていた共有持分は相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
相続財産の分け方は、相続人全員で、話し合いによる合意ができれば、どのように分けても構いません。
被相続人と不動産を共有していた共有者が相続人である場合、共有者である相続人が相続すると合意することができます。
被相続人と不動産を共有していた共有者でない相続人が相続しても、差し支えありません。
不動産の共有はデメリットが多いので、おすすめできません。
合意できるのなら被相続人と不動産を共有していた共有者である相続人が相続するといいでしょう。
2 共有持分の相続は相続登記が必要
①共有持分の相続登記は単独申請
被相続人の共有持分の分け方について、相続人全員の合意がまとまったら相続登記が必要です。
相続登記ですから、共有持分を相続する人からの単独申請です。
②共有持分の相続登記の必要書類は所有権すべての相続登記と同じ
共有持分の相続登記をする場合、必要な書類は所有権すべての相続登記をする場合とまったく一緒です。
遺産分割協議書を作るとき、合意の対象が不動産の共有持分であることが分かるように記載すればいいでしょう。
③共有持分の相続登記の方法
被相続人が不動産を単独所有していた場合、登記申請書に記載する登記の目的は「所有権移転」です。
被相続人が不動産を共有していた場合、登記申請書に記載する登記の目的は「〇〇持分全部移転」です。
被相続人が不動産を単独所有していた場合、相続人の氏名を記載します。
被相続人が不動産を共有していた場合、相続する持分と相続人の氏名を記載します。
相続人の記載の後に括弧を付けて被相続人の氏名を記載するのは、単独所有の相続の場合も共有持分の相続の場合も共通です。
相続人 (被相続人 〇〇〇〇)
〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
持分〇分の〇 〇〇〇〇
上記のように記載します。
④共有持分の相続の登録免許税は持分割合の1000分の4
相続登記をする場合、登録免許税を納めなければなりません。
相続登記の登録免許税は、対象になる不動産の固定資産評価額の1000分の4が課されます。
共有持分の相続登記をする場合、固定資産税評価額の持分割合の1000分の4が課されます。
例えば、共有持分が10分の1の場合、固定資産税評価額の10分の1の1000分の4が課されます。
固定資産税評価額が1億円の不動産の場合、移転した持分の価額は1000万円です。
登録免許税は、4万円を納めることになります。
共有持分の評価額が100万円以下になる場合、登録免許税が非課税になります。
固定資産税評価額が500万円の不動産の場合で、かつ、共有持分が10分の1の場合、移転した持分の価額は50万円です。
共有持分の評価額が100万円以下になる場合だから、登録免許税が非課税になります。
申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」明記する必要があります。
3不動産の共有はデメリットが大きい
デメリット①共有物を処分するには共有者全員の合意が必要
共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分はできません。
処分するとは、共有物を売却する、第三者に賃貸することなどです。
たくさんの人で共有していると合意がまとまりにくくなります。
1人でも反対の人がいると、処分はできません。
デメリット②共有者に相続が発生する
共有物を売却するためには、共有者全員の合意が必要になります。
共有者全員の合意がしにくくなると、売却などの判断は先延ばししがちです。
先延ばしにより長期間経過すると、共有者に相続が発生することがあります。
共有者に相続が発生すると、共有者の持分は相続財産になります。
このとき、死亡した共有者の共有持分を、複数の相続人が法定相続分で細分化して共有することがあります。
このような相続が何人もの共有者の間で発生すると、共有者がたくさんになり、持分が細分化されます。
適切に相続登記がされないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。
デメリット③共有持分を売却するおそれ
共有物全体を売却するためには共有者全員の合意が必要です。
それぞれの共有者が持っている共有持分を売却するためには、他の共有者の合意は不要です。
あまり知られていませんが、共有者が持っている共有持分を買い取る業者がいます。
共有持分を買い取る業者はビジネスですから、遠慮なく共有者としての権利を主張してきます。
共有持分買取請求や共有物分割請求などです。
話し合いで解決できなければ、当然、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。
知識のない一般の人では対応できませんから、弁護士に依頼することになるでしょう。
4共有を解消する場合の登記は共同申請
①共有解消の合意ができたら登記申請が必要
相続などで不動産を共有するのは、デメリットが大きくおすすめできません。
すでに不動産を共有しているのであれば、できるだけ早い時期に共有を解消し単独所有にするように話し合いをするといいでしょう。
他の共有者と話し合いによって、自分の持分を譲り渡す場合や他の共有者の持分を譲り受ける場合、共有持分の名義変更が必要になります。
②共有解消の登記申請の方法
不動産を共有するため名義変更をする場合、相続登記のように単独で申請をすることはできません。
共有持分を譲り受ける人を権利者、譲り渡す人を義務者として共同で申請をします。
登記申請書に記載する登記の目的は「〇〇持分全部権移転」です。
登記申請書に記載する登記原因は、他の共有者との話し合いの内容によって異なります。
権利者と義務者の共同申請なので、権利者と義務者の氏名を記載します。
権利者の氏名を記載するとき、譲り受ける持分も一緒に記載します。
義務者の氏名を記載するとき、譲り渡す持分を記載する必要はありません。
権利者 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
持分〇分の〇 〇〇〇〇
義務者 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
〇〇〇〇
上記のように記載します。
③共有解消の登録免許税は持分割合の1000分の20
共有解消の登記をする場合、登録免許税を納めなければなりません。
登録免許税は、対象になる不動産の固定資産評価額の1000分の20が課されます。
共有解消の登記をする場合、固定資産税評価額の持分割合の1000分の20が課されます。
例えば、共有持分が10分の1の場合、固定資産税評価額の10分の1の1000分の20が課されます。
固定資産税評価額が1億円の不動産の場合、移転した持ち分の価額は1000万円です。
登録免許税は、20万円を納めることになります。
④共有解消の登記申請の必要書類
共有を解消する場合の登記で必要な書類は、次のとおりです。
(1)登記原因証明情報
(2)登記識別情報
(3)譲り渡す人の印鑑証明書3か月以内のもの
(4)譲り受ける人の住民票
(5)登記委任状
(6)固定資産税評価証明書
譲り渡す人は、実印で押印が必要になります。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。
ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではないでしょう。
相続手続に不慣れで聞き慣れない法律用語で、へとへとになります。
相続登記は、相続手続の中でも難しい手間のかかる手続です。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
一般の方から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があります。
法務局の登記手続案内に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いものです。
司法書士は、このような方をサポートしております。
相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。
相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続した建物に所有権保存登記
1表題登記と所有権保存登記のちがい
①不動産登記には2種類ある
不動産登記には、2種類あります。
表題登記と権利登記です。
表題登記とは、土地や建物の物理的状況を表示する登記です。
権利登記とは、土地や建物の権利関係を表示する登記です。
所有権保存登記は、権利登記のひとつです。
②表題登記とは
埋め立てや土地の隆起があった場合、新たな土地が生じます。
新たな土地が生じた場合、土地表題登記をします。
土地の所在や地番、地目などを登記します。
新しく建物を建設した場合、新たな建物が生じます。
新たな建物が生じた場合、建物表題登記をします。
新たな土地が生じることはめったにありません。
単に表題登記といったら、建物表題登記を指すことがほとんどです。
建物の表題部に登記される主な項目は、次のとおりです。
(1)種類
居宅、店舗、事務所など
(2)構造
建物の主たる構成材料、屋根の種類、階数など
(3)構成材料による区分
木造、石造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造など
(4)屋根の種類による区分
瓦葺、スレート葺、亜鉛メッキ鋼板葺、陸屋根など
(5)階数による区分
平家建、2階建など
③所有権保存登記とは
建物表題登記をした後、初めて所有者としてする登記を所有権保存登記と言います。
所有権保存登記をした場合、所有者として第三者に対して権利主張をすることができます。
所有権保存登記をしていない場合、第三者が所有者であると権利主張したときに文句を言うことができません。
所有者として第三者に対して権利主張をすることができるのは、登記の重要な機能です。
所有者として第三者に対して権利主張をすることができる機能を対抗力と言います。
表題登記をした場合、所有者が記録されます。
登記簿の表題部に、所有者が登記されます。
表題部の所有者の登記には、対抗力がありません。
表題部に所有者と登記されても、所有者として第三者に対して権利主張をすることができません。
表題部に所有者と登記された場合には、対抗力がないからです。
所有権保存登記をした場合には、対抗力があります。
2表題部所有者に相続が発生したときの所有権保存登記
①相続した建物は相続財産
新たな建物が生じた場合、建物表題登記をします。
建物表題登記ができたら、所有権保存登記をします。
建物表題登記は、建物完成から1か月以内に登記をしなければなりません。
所有権保存登記は、原則として、登記をする義務はありません。
所有権保存登記をしないと、所有者として第三者に対して権利主張をすることができないだけです。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしないまま長期間経過していることがあります。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしないまま、表題部に所有者と記録された人が死亡することがあります。
相続が発生した場合、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
被相続人が建物を所有していた場合、所有していた建物は相続財産になります。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしない建物であっても、所有していた建物は相続財産になります。
②相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定
相続が発生すると、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。
相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議といいます。
相続財産の分け方は、相続人全員による合意で決定します。
相続人全員で合意がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協遺書は、相続人全員の合意内容の証明書です。
③建物を相続する相続人から所有権保存登記
所有権保存登記の申請をすることができるのは、原則として、表題部所有者です。
表題部所有者が死亡した場合、表題部所有者の相続人が所有権保存登記の申請をすることができます。
遺産分割協議によって建物を相続する相続人を決めることができます。
建物を相続する相続人が所有権保存登記の申請をすることができます。
④被相続人が生前に建物を売却していたら
所有権保存登記は、原則として、登記をする義務はありません。
建物表題登記をした後、所有権保存登記をしないまま被相続人が建物を売却していることがあります。
被相続人が建物を売却した場合、建物は被相続人のものではありません。
被相続人が建物を所有していない場合、建物は相続財産になりません。
被相続人から建物を買った人は、建物について所有権移転登記をして欲しいと望むでしょう。
所有権移転登記をしていない場合、所有者として第三者に対して権利主張をすることができないからです。
第三者から所有者であると権利主張がされたときに、買主が文句を言うことができなくなります。
被相続人は建物を売却したのだから、買主に対して所有権移転登記をする義務があります。
買主に対して所有権移転登記をする義務を果たさないまま相続が発生することがあります。
相続人全員は、所有権移転登記をする義務を相続します。
相続人全員は、買主に対して所有権移転登記をする義務があります。
買主に対して所有権移転登記をするため、所有権保存登記をしなければなりません。
所有権保存登記は、建物表題登記をした後、初めて所有者としてする登記です。
初めて所有者としてする登記をしないと、所有権移転登記をすることができません。
相続人は所有権保存登記をして、買主に対して所有権移転登記をします。
所有権保存登記は、被相続人が所有者となる登記です。
所有者が死亡した後であっても、死亡した所有者名義の登記をすることができます。
被相続人が過去に所有者だったからです。
被相続人が生前に建物を売却したから、相続人は建物を相続していません。
相続人は建物を相続していないから、相続人名義の所有権保存登記をすることはできません。
区分建物でない建物の場合、買主に対して直接所有権保存登記をすることはできません。
所有権保存登記の申請をすることができるのは、表題部所有者またはその相続人だからです。
建物の買主は、表題部所有者またはその相続人のどちらにも該当しないでしょう。
建物の買主は、所有権保存登記をすることができません。
2表題部所有者に数次相続が発生したときの所有権保存登記
①数次相続とは
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまらないうちに相続人が死亡してしまうことがあります。
数次相続とは、話し合いがまとまらないうちに相続人が死亡して新たな相続が発生することです。
死亡した相続人に相続が発生した場合、相続人の地位が相続されます。
最初の相続で話し合いをする地位が、死亡した相続人の相続人に相続されます。
数次相続は、どこまででも続きます。
法律上の制限は、設けられていません。
②数次相続が発生したときは最終の相続人から所有権保存登記
所有権保存登記の申請をすることができるのは、表題部所有者またはその相続人です。
表題部所有者に数次相続が発生した場合、最終の相続人から所有権保存登記を申請することができます。
数次相続が発生後に所有権保存登記をする場合、中間の相続人が単独である必要はありません。
中間の相続人が単独である場合も中間の相続人が複数である場合も、直接最終の相続人名義の所有権保存登記をすることができます。
通常は、権利登記がされているでしょう。
所有権登記がされている所有者が死亡した場合、所有権移転登記をします。
数次相続が発生後に所有権移転登記をする場合、中間の相続人が単独であるときのみ直接最終の相続人名義の所有権移転登記をすることができます。
所有権移転登記で直接最終の相続人名義にするためには、中間の相続人が単独である必要があります。
中間の相続人が複数である場合、いったん複数の相続人で相続登記をします。
あらためて相続登記をして最終の相続人名義にする必要があります。
数次相続が発生後に所有権移転登記をする場合、中間の相続人が複数であるときは直接最終の相続人名義の所有権移転登記をすることができません。
3相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
相続登記も簡単にできる、ひとりでできたという記事も散見されます。
多くの場合、不動産は重要な財産でしょう。
登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いものです。
法務局の登記手続案内を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえます。
案内対象と異なる事例に関しては、わざわざ説明してくれません。
知識のない方にとっては、案内対象の事例かどうか判断がつかないでしょう。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。
表題部所有者などは、一般的には聞き慣れないことがほとんどでしょう。
一般向けの相続登記の解説書などに説明されていることはほとんどありません。
通常の相続登記と異なることにも気づかないでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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