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1生前対策が重要な理由
理由①判断能力低下に備える
認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断できなくなります。
認知症になると、自分の財産を管理したり処分したりすることができなくなります。
財産の管理や処分ができなくなると、本人と家族が困ります。
自分の財産であっても、自分で使うことができなくなります。
物事のメリットデメリットを適切に判断できないからです。
親のためであっても、子どもなどが親の財産を処分することができません。
親の財産は、親自身の判断で処分します。
親自身が認知症などで判断できなくなっても、子どもが代わりに判断することはできません。
せっかく財産があっても、認知症に備えておかないと処分ができなくなります。
判断能力低下に備えるため、生前対策が重要です。
理由②経済的負担の軽減
生前対策をしないまま認知症になると、資産は凍結されます。
資産凍結とは、本人や家族が財産を使えなくなることです。
不動産を保有していても、認知症になると処分ができなくなります。
口座の持ち主が認知症であると知ったら、預貯金などの口座は凍結されます。
認知症になると、自宅などで家族がお世話をすることが難しくなるでしょう。
施設に入所しようとすると、高額な費用がかかります。
本人の財産は凍結されるから、家族が用立てることになるでしょう。
家族に経済的な負担をかけないため、生前対策が重要です。
理由③家族間のトラブルの防止
家族には、さまざまな経済状態の人がいます。
一部の相続人が経済的負担をした場合、相続で清算して欲しいと考えるでしょう。
一部の相続人が介護などで尽力した場合、相続で清算して欲しいと考えるでしょう。
相続が発生すると、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意によって決定します。
さまざまな家族の事情があると、相続人全員の合意が難しくなるでしょう。
ときには、家族間のトラブルに発展します。
家族間のトラブルの防止するため、生前対策が重要です。
理由④家族への気持ちを伝える
一部の相続人が介護などで尽力しても、他の相続人は当然と考えていることがあります。
他人の労力や尽力は、軽く見えがちだからです。
一部の相続人の尽力は、被相続人自身が最も分かることでしょう。
被相続人の財産の分け方は、被相続人の意思が尊重されるべきでしょう。
介護などで尽力した相続人に、感謝の気持ちを伝えることができます。
家族への気持ちを伝えるため、生前対策が重要です。
2生前対策の始め方
手順①財産の棚卸し
所有している財産を整理し、一覧表に取りまとめます。
不動産や預貯金などを一覧表に取りまとめると、資産状況を明確に確認できます。
併せて、不動産や預貯金関係の重要書類を整理すると、不要な書類が見つかるでしょう。
一覧表と照らし合わせると、管理の効率化を図ることができます。
預貯金の通帳などは身近にあるから、取り組みやすいでしょう。
手順1つ目は、財産の棚卸しです。
手順②自分らしい生き方の整理
家族に伝えたい言葉や感謝の気持ちを整理します。
医療や介護の方法に、希望があるでしょう。
例えば、延命治療の希望や自宅で過ごしたいなどの希望です。
自分が死亡した後に、どのような葬儀納骨をして欲しいのか考えているかもしれません。
エンディングノートを活用すると、自分の希望を取りまとめやすくなるでしょう。
エンディングノートに法的な効力はありません。
自分の考えをまとめたり明確にするために、活用するのがおすすめです。
手順2つ目は、自分らしい生き方の整理です。
手順③家族との話し合い
医療や介護の方法に希望がある場合、家族と情報共有をすることが重要です。
エンディングノートの内容を見せながら、不安や希望を話すといいでしょう。
家族の感情に配慮しながら、話を進めます。
一度に全部話そうとせず、まずは将来のことを話したいと声をかけるのがおすすめです。
生前対策の話は、身構えてしまうことがあるからです。
いったん声をかけておくと、家族も聞く準備ができるでしょう。
不安や希望をオープンに話すのがポイントです。
手順3つ目は、家族との話し合いです。
手順④司法書士などの専門家と相談
生前対策には、さまざまな手法があります。
ひとつの手法だけでは、不安を解決できないでしょう。
希望を実現するためには、複数の手法を組み合わせる必要があるかもしれません。
司法書士などの専門家に相談すると、不安や希望に応じて提案をしてもらうことができます。
この時点で家族間のトラブルに発展している場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
手順4つ目は、司法書士などの専門家と相談です。
手順⑤対策の手法の選択
司法書士などの専門家から提案を受けて、どの生前対策をするのか判断します。
司法書士などの専門家に、生前対策のサポートをしてもらうことができます。
家族の事情や財産状況に応じて、必要な手法は異なります。
メリットやデメリットを詳しく聞いて、家族で情報共有します。
手順5つ目は、対策の手法の選択です。
手順⑥遺言書作成や契約書の締結
司法書士などの専門家にサポートをしてもらって、遺言書作成や契約書の締結をします。
遺言書は、公正証書遺言がおすすめです。
契約書は、公正証書で作成するのがおすすめです。
公正証書とは、公証人が作成する公文書です。
公正証書は、公証人が本人確認のうえ本人の意思確認をして作成します。
公正証書には、高い信頼性があります。
手順6つ目は、遺言書や契約書の準備です。
手順⑦定期的な見直し
生前対策をした後に、家族の事情が変わることがあるでしょう。
いったん生前対策をしても、定期的な見直しが大切です。
1~2年ごとに見直しをすると、継続的な安心を得ることができます。
手順7つ目は、定期的な見直しです。
3主要な生前対策の手法
①任意後見契約で認知症の備え
任意後見契約とは、信頼できる人にサポートを依頼する契約です。
本人が重度の認知症になった後で、任意後見契約をすることはできません。
認知症などで判断能力が低下したとき、サポートをしてもらうことができます。
任意後見契約では、サポートする人を自分で選ぶことができます。
多くの場合、信頼できる人は本人の子どもなど身近な家族でしょう。
認知症になると、銀行口座が凍結されます。
任意後見契約で、口座の預貯金の管理処分を依頼することができます。
任意後見人は、本人のために本人の預貯金を使うことができます。
例えば、本人の預貯金を使って施設の入所費用を支出することができます。
②家族信託で柔軟な財産管理
家族信託契約とは、信頼する家族に財産管理を依頼する契約です。
本人が重度の認知症になった後で、家族信託契約をすることはできません。
所有権をよく見ると、財産を管理する権利と財産を利用する権利に分けることができます。
財産を管理する権利を信頼できる家族に渡して、財産を利用する権利だけ持っていることができます。
家族信託とは、財産を管理する権利を信頼できる家族に渡して、財産を利用する権利だけ持っている仕組みです。
家族信託を利用すると、認知症による資産凍結に効果的な対策になります。
財産を管理する権利を信頼できる家族に渡してあるからです。
信頼できる家族が本人のために信託された財産を使うことができます。
例えば、信託財産を使って施設の入所費用を支出することができます。
③遺言書作成で遺産分割の方法の指定
遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意によって決定します。
さまざまな家族の事情があると、各相続人が独自の主張をして話し合いがまとまらなくなります。
相続財産の分け方は、遺言書で指定することができます。
遺言書があれば、遺言書のとおりに分けることができます。
遺言書で、遺言執行者を指名することができます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書を作成することで、家族間のトラブルを防止することができます。
④自分の生活の安心を確保したうえで生前贈与
生前対策は、自分自身の生活の安心を確保するのが重要です。
老後の資金を確保したうえで、家族のトラブル防止を考えるといいでしょう。
将来の資金計画を立て、充分な余剰資金があれば生前贈与を検討します。
⑤主要な生前対策の比較
手法 | 主な目的 | 認知症対策 | 相続対策 | 特徴 |
任意後見契約 | 判断能力低下後のサポート | 〇 | ✖ | 家庭裁判所の手続で効力発生 |
家族信託 | 柔軟な財産管理 | 〇 | 〇 | 契約内容が複雑 |
遺言書 | 遺産分割の指定 | ✖ | 〇 | 公正証書遺言が確実 |
生前贈与 | 節税 | ✖ | 〇 | 余剰資金があるとき |
4生前対策のよくある失敗と対策
失敗①相続「税」対策にだけ偏り過ぎる
相続財産の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。
生前対策や相続対策は相続「税」対策と思い込むと、失敗します。
節税にはなっても、かえって家族の負担が増すことがあるからです。
例えば、節税のために不動産を購入したものの、不動産経営に失敗し大赤字になるケースです。
大赤字が続くと、家族間でもトラブルに発展するでしょう。
そもそも、相続税はかからないケースが大半です。
相続財産が一定以上の場合だけ、相続税が課されるからです。
相続税には、基礎控除があります。
基礎控除額は、次の計算式で求めることができます。
基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数
基礎控除額以下の場合、相続税の心配は不要です。
生前対策の失敗1つ目は、相続「税」対策にだけ偏り過ぎる点です。
財産の棚卸しがしてあると、現時点での財産を把握できます。
相続財産の規模が分かるでしょう。
基礎控除額以下であれば、相続税の対象ではありません。
相続税の対象であれば、自分の生活設計と老後の資金確保のバランスを取ります。
対策は、無理のない計画を立てることです。
失敗②家族間の情報共有の不足
生前対策は、本人や当事者だけで進めることができます。
本人や当事者だけで生前対策をすると、失敗します。
他の家族が不公平感を覚え、不満につながるからです。
特に財産の分け方について配分が偏っていると、トラブルになりがちです。
不安や希望をオープンに話すのが重要です。
生前対策の失敗2つ目は、家族間の情報共有の不足です。
生前対策は、当事者にならない家族にもオープンにすることがおすすめです。
特定の相続人に負担や財産の配分が偏らないように、公平性と納得感を重視します。
対策は、公平性と納得感を重視することです。
失敗③財産の把握不充分
財産の把握が不充分であると、失敗します。
相続が発生した後で、財産が見つかると相続人間のトラブルにつながるからです。
生前対策の失敗3つ目は、財産の把握不充分です。
所有している財産を丁寧に整理し、一覧表に取りまとめます。
定期的に財産一覧表も、見直しをします。
対策は、定期的な見直しです。
失敗④生前対策の着手遅れ
高齢になってから生前対策をすると考えていると、失敗します。
まだまだ若いと考えて、生前対策を先延ばしするからです。
先延ばししているうちに、相続が発生するかもしれません。
先延ばししているうちに、認知症になるかもしれません。
いざ相続発生や認知症発症の事態になったときには、生前対策をすることができなくなります。
生前対策の失敗4つ目は、生前対策の着手遅れです。
まだまだ若いと言っている間は、判断能力が充分にある証拠と言えます。
生前対策は、充分な判断能力がある間だけすることができます。
対策は、元気なうちから備えることです。
失敗⑤専門家に相談しない
専門家に相談せず家族だけで決めると、失敗します。
法律や税制は、複雑だからです。
専門家に相談しないと、適切な判断ができないでしょう。
生前対策の失敗5つ目は、専門家に相談しない点です。
家族の事情を家族以外の人に話すのは、気が進まないかもしれません。
司法書士などの専門家には、守秘義務があります。
対策は、安心して専門家に相談することです。
5生前対策を司法書士に依頼するメリット
生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策はする方はあまり多くありません。
争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。
対策しないまま認知症になると、家族に大きな面倒をかけることになります。
認知症になってからでは遅いのです。
お元気なうちに準備する必要があります。
なにより自分が困らないために、大切な家族に面倒をかけないために生前対策をしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。