老老相続の問題点と生前対策

1 高齢化で老老相続が増加傾向

高齢化社会が到来して、多くの人は長生きになりました。

21世紀半ばには、国民の3人に1人が65歳以上になると予想されています。

高齢者が死亡した場合、相続人も高齢です。

90歳の高齢者が死亡したとき、70歳代の子どもが相続人であることは珍しくありません。

相続人もすでに高齢者であるような相続を老老相続と言います。

高齢化が進展して、老老相続は増加傾向です。

2老老相続で認知症のリスク

①認知症になると判断力が低下する

80歳以上になると、およそ2人に1人は認知症になると言われています。

長生きになった分、認知症になるリスクが高まったと言えるでしょう。

認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなります。

記憶があいまいになって、ひとりで決めることが不安になるかもしれません。

認知症になると、判断能力が低下します。

②遺産分割協議は相続人全員で

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方を決めるための相続人全員による話し合いです。

一部の相続人を含めずに合意しても、無効の合意です。

認知症になると、判断能力が低下します。

自分で遺産分割協議をすることはできません。

自分で物事のメリットデメリットを適切に判断できないからです。

遺産分割協議をしたと称して書面を作っても、無効の書面です。

認知症の相続人を含めずに合意しても、無効の合意です。

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が不可欠だからです。

遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。

③成年後見人は家庭裁判所が選任

認知症になると、自分で遺産分割協議に参加することはできません。

認知症の相続人に代わって、成年後見人が遺産分割協議をします。

成年後見人とは、認知症の人をサポートする人です。

認知症の人が契約や遺産分割協議などの法律行為をする必要があるとき、代わりに判断します。

認知症を発症した後に、成年後見人を選任するのは家庭裁判所です。

本人や家族が家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が選任します。

申立てをする際に、成年後見人の候補者を立てることができます。

多くの場合、本人に近い関係の家族を候補者に立てるでしょう。

候補者を立てても、家庭裁判所は自由に成年後見人を選任します。

本人の資産が1000万円以上ある場合や家族が協力的でない場合、見知らぬ専門家を選任するでしょう。

相続手続が終わっても、成年後見をやめることはできません。

本人が死亡するまで、成年後見は続きます。

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

④遺言能力がないと遺言書は無効

被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。

遺言書を作成するのは、高齢になってからが多いでしょう。

重度の認知症になると、遺言書を作成することができなくなります。

遺言書を作成するためには、遺言能力が必要だからです。

遺言能力とは、遺言書の内容を理解して遺言書の結果を理解する能力です。

高齢になってから作成した遺言書は、遺言能力があったのか問題になることがあります。

遺言書の内容に不満を持つ相続人がいる場合、遺言書の有効無効を争うでしょう。

遺言能力がなかったと判断されれば、遺言書は無効になります。

高齢になってから作成した遺言書は、相続人間のトラブルに発展するリスクがあります。

⑤認知症になると不動産の利活用ができない

一部の相続人を含めずに合意しても、遺産分割協議は無効です。

認知症の相続人が遺産分割協議をするためには、成年後見人が欠かせません。

成年後見を避けるため、法定相続分で相続人全員が共有する選択をするかもしれません。

認知症の人と不動産を共有したら、不動産の利活用ができなくなります。

不動産を利活用するためには、共有者全員の同意が必要になるからです。

例えば、不動産を売却する場合、認知症の人を含めて共有者全員の同意が必要です。

認知症になると、自分で不動産売却の同意をすることはできません。

認知症になると、自分の財産であっても自分で売却できなくなります。

たとえ、介護施設に入るためであっても売却できません。

「認知症になったら自宅を売却して施設に入るわ」と、考えている人はたくさんいます。

実際には、認知症になると自宅は売却できなくなります。

認知症になると、不動産の利活用ができなくなります。

3老老相続で数次相続のリスク

①相続手続中に相続人が死亡

老老相続では、続けて相続が起こるおそれがあります。

はじめの相続が発生したときに元気だった相続人が相続手続中に死亡することがあります。

数次相続とは、相続手続中に相続人が死亡して次の相続が発生することです。

数次相続が発生すると、死亡した相続人の相続人が相続します。

死亡した相続人の配偶者や子どもが相続人になるでしょう。

数次相続が発生すると、関係性のうすい相続人と協力して相続手続をします。

②数次相続で遺産分割協議が困難になる

数次相続が発生すると、遺産分割協議が困難になりがちです。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があるからです。

家族には、さまざまな事情があるでしょう。

死亡した相続人は、家族の事情を承知していたかもしれません。

死亡した相続人の相続人は、家族の事情に疎いでしょう。

家族の事情が分からないまま、自分の権利を主張するかもしれません。

関係性のうすい相続人とは、打ち解けた話し合いが難しいでしょう。

単純に話し合いに参加する人が増えるだけでも、合意がまとまりにくくなります。

ときには、複数の相続人に数次相続が発生することがあります。

面識がない相続人がいると、話し合いは困難を極めるでしょう。

相続人間で話し合いがつかない場合、家庭裁判所の助力を借りることができます。

数次相続が発生すると、遺産分割協議が困難になります。

③相続手続の負担増大

相続が発生したら、相続人は相続手続をします。

相続手続では、普段聞き慣れない言葉が飛び交います。

相続で使われる言葉は、法律用語だからです。

老老相続では、相続人も高齢者です。

聞き慣れない言葉を探したり分からない手続を調べたりすることは、負担が大きいかもしれません。

数次相続があると、相続手続が複雑になります。

相続手続に必要な書類を準備するだけでも、負担が大きいでしょう。

高齢者が相続手続をするのは、いっそう負担感が大きくなります。

事務負担の大きさから、相続手続を先延ばししがちになります。

先延ばしにすると、相続手続がさらに難しくなります。

ときには、必要者書類を取得することができなくなります。

代わりにどのような書類を準備するのか、調べる必要があります。

数次相続が発生すると、相続手続の負担が増大します。

4老老相続に備える生前対策

対策①遺言書を作成する

被相続人は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。

遺言書を作成して、自分が死亡した後だれに財産を引き継ぐか決めておくことができます。

遺言書があれば、相続財産は遺言書のとおりに分けることができます。

遺言書のとおりに分ければ、遺産分割協議は不要です。

相続人になる予定の人がすでに認知症になっていたら、遺言書作成は有効です。

認知症の人は、自分で遺産分割協議ができないからです。

遺言書を作成しておけば、成年後見人のデメリットを回避することができます。

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

公証人は、遺言者の意思確認をして遺言書を作成します。

遺言者が認知症などで意思確認ができない場合、公証人は遺言書を作成しません。

公正証書遺言には、自筆証書遺言に比べると高い信頼があります。

遺言書を作成するなら、公正証書遺言がおすすめです。

老老相続に備える生前対策の1つ目は、遺言書を作成することです。

対策②任意後見契約

認知症の人が契約や遺産分割協議などの法律行為をする必要があるとき、成年後見人が判断します。

成年後見には、2種類あります。

法定後見と任意後見です。

法定後見とは、認知症になった後で家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう制度です。

任意後見とは、認知症になる前にサポートを依頼する契約です。

任意後見契約では、自分で成年後見人を選ぶことができます。

多くの場合、契約する人は近い関係の家族でしょう。

本人の好みをよく知った家族にサポートをしてもらえるから、安心できます。

任意後見契約は、公正証書で契約する必要があります。

任意後見契約をするときに公正証書遺言を作成するのが、おすすめです。

老老相続に備える生前対策の2つ目は、任意後見契約をすることです。

対策③家族信託

家族信託とは、自分の財産を家族に預けて管理処分を任せる契約です。

認知症になる前に信頼できる家族に財産を預けておけば、必要に応じて管理処分をしてもらうことができます。

家族信託を利用すると、自分の認知症対策になるし相続対策になります。

本人の認知症対策になるから、家族から生前対策の話がしやすくなるでしょう。

家族信託契約は、公正証書で契約することがほとんどです。

老老相続に備える生前対策の3つ目は、家族信託をすることです。

対策④生前贈与

自分の財産は、生きている間に自由に処分することができます。

相続が発生する前に、自分の財産を家族に贈与することができます。

年間110万円までは、贈与税の負担なく贈与することができます。

一定の条件にあてはまる場合、生前贈与を行っても相続税を計算するときに持ち戻しがされます。

そのうえ、生前贈与は特別受益に該当するでしょう。

特別受益の主張があると、遺産分割協議がまとまりにくくなるおそれがあります。

老老相続に備える生前対策の4つ目は、生前贈与をすることです。

5老老相続は社会にも大きな影響

①経済成長の停滞

老老相続では、財産を引き継ぐ相続人も高齢者です。

相続した財産は、いざというときのために蓄えておくでしょう。

引き継いだ資産を消費しないから、社会に出回りません。

社会全体から見ると、経済成長の停滞につながります。

②世代間格差の拡大

年代別に金融資産を保有額を比べてみると、高齢者世代が多くの金融資産を持っています。

2024年家計の金融行動に関する世論調査によると、金融資産保有額は次のとおりです。

世帯主の年齢平均額(万円)中央値(万円)
20歳代326127
30歳代844350
40歳代1303500
50歳代1719700
60歳代25211050
70歳代23911100

老老相続では、高齢者が財産を引き継ぎます。

若い世代に財産を引き継がれないから、世代間格差が大きくなります。

6生前対策を司法書士に依頼するメリット

生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策はする方はあまり多くありません。

争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。

対策しないまま認知症になると、家族に大きな面倒をかけることになります。

認知症になってからでは遅いのです。

お元気なうちに準備する必要があります。

なにより自分が困らないために、大切な家族に面倒をかけないために生前対策をしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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