不在者財産管理人による不動産売却は許可が前提

1不在者財産管理人が行方不明者の財産を管理する

①不在者財産管理人は行方不明者の財産を守る人

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理する人です。

行方不明者の財産を守るため、家庭裁判所が選任します。

不在者財産管理人は、行方不明者に不利益な財産管理をすることはできません。

家庭裁判所は、行方不明者に不利益な財産管理を許可しません。

不在者財産管理人制度は、行方不明者の財産を守る制度だからです。

②行方不明者の財産は家族が処分できない

行方不明者の財産は、家族が日常的に管理しているでしょう。

行方不明者の財産を家族が管理しているから、生活上は特に支障がないかもしれません。

生活は維持できているから、法的手続の必要を感じにくいでしょう。

生活の現状を維持する限り、家族が困ることはありません。

財産を処分するときになって、行方不明者本人による手続が必要になります。

家族による手続ができないから、初めて困ることになります。

③不在者財産管理人は家庭裁判所が選任する

不在者財産管理人は、申立てによって家庭裁判所が選任します。

不在者財産管理人選任の申立てをする際に、候補者を立てることができます。

候補者を立てても、家庭裁判所は自由に不在者財産管理人を選任することができます。

行方不明者の家族を選任することも、家族以外の専門家を選任することもあります。

家庭裁判所の人選に、異議を述べることはできません。

2不在者財産管理人による不動産売却は許可が前提

①不動産売却は管理行為ではない

不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理する人です。

不在者財産管理人の任務は、財産を管理して減らさないことです。

不在者財産管理人は、本来、不動産を売却する権限は与えられていません。

不動産の売却は、管理行為を超す処分行為だからです。

不在者財産管理人に権限が与えられていないから、特別に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

②不在者財産管理人は不利益な財産管理はできない

不在者財産管理人は、行方不明者のために財産管理をする人です。

行方不明者のためにとは、行方不明者に不利益な財産管理ができないという意味です。

不在者財産管理人は、家族の希望どおりに財産を動かすことができません。

不在者財産管理人には、善管注意義務があるからです。

たとえ家族が望んでも、行方不明者に不利益な財産管理は許されません。

③家族が不在者財産管理人に選任されても許可が必要

不在者財産管理人は、公的な立場です。

たとえ家族が不在者財産管理人に選任されても、不利益な不利益な財産管理はできません。

不在者財産管理人は、適切な財産管理を行っているか家庭裁判所の監督を受けます。

たとえ家族が希望しても、家庭裁判所は厳格に慎重に審査します。

不在者財産管理人は、家族の希望をかなえる人ではありません。

④家庭裁判所の許可なしで不動産売却はできない

不在者財産管理人は、与えられた権限の範囲内で行方不明者の代理ができます。

不動産売却をする場合、家庭裁判所の許可を得て行方不明者の代理ができます。

家庭裁判所の許可なしで、不動産売却はできません。

家庭裁判所の許可なしで不動産を売却しても、無効です。

不動産を売却したら、不動産の名義変更を行います。

所有権移転登記を申請したら、法務局は不在者財産管理人の権限を確認します。

家庭裁判所による権限外行為の許可の審判書がないと、登記を受理しません。

不在者財産管理人による不動産売却は、家庭裁判所による許可が前提です。

⑤家庭裁判所が売却を許可するポイント

重要ポイント(1)行方不明者の利益になるか

家庭裁判所は、売却が行方不明者の利益になるかを重視します。

不在者財産管理人は、行方不明者の利益のために財産管理をする義務があるからです。

たとえ家族が望んでも、行方不明者に不利益な売却は許可されません。

たとえ買主が望んでも、行方不明者に不利益な売却は許可されません。

不在者財産管理人制度は、家族や買主の希望を叶える制度ではないからです。

家族や買主の利益ではなく行方不明者の利益であるのか、家庭裁判所が厳しくチェックします。

重要ポイント(2)価格の妥当性

家庭裁判所は、価格の妥当性を重視します。

多くの場合、価格の妥当性を説明するため次の書類を準備します。

・不動産会社による査定書

・不動産鑑定士による不動産鑑定評価書

親族間売買などで相場より安い場合、行方不明者に不利益な売却と判断されます。

相場より安い親族間売買は、家庭裁判所が厳しくチェックします。

行方不明者に不利益な売却には、家庭裁判所が許可しません。

重要ポイント(3)売却の必要性

家庭裁判所は、売却の必要性を重視します。

不在者財産管理人の任務は、財産を管理して減らさないことです。

行方不明者の財産を管理するだけでなく、わざわざ売却する必要性がチェックされます。

単に家族が売却したいと望むだけでは、売却の必要性がないと判断されるでしょう。

不在者財産管理人は財産管理をする人だから、実際に管理を担う人がいると言えます。

あえて、売却する必要性は認められにくいでしょう。

たとえば次の場合、売却の必要性が認められる可能性があります。

・共有関係で紛争化して売却する以外に解決できないケース

・固定資産税などの費用が過大で維持することが不合理であるケース

・老朽化しているケース

上記のケースでも、客観的資料で家庭裁判所を説得する必要があります。

単に家族が主張するだけでは、売却の必要性がないと判断されるでしょう。

売却の必要性がない場合、家庭裁判所が許可しません。

評価ポイント(4)買主が決まっていること

家庭裁判所は、買主が決まっていることを重視しません。

買主が決まっていることは、プラス材料ですが決定打ではありません。

不在者財産管理人制度は、家族や買主の希望を叶える制度ではないからです。

たとえ買主が決まっていても、行方不明者の利益を重視します。

行方不明者に不利益な売却は、買主が決まっていても許可されません。

⑥家庭裁判所が許可しない典型的ケース

ケース(1)不在者財産管理人の親族や知人が買主

典型的に、利益誘導のリスクが非常に高いケースです。

公正な価格形成に強い疑いがあると判断されます。

不動産鑑定士による不動産鑑定評価書をつけても、不許可になりやすいケースです。

ケース(2)空き家になっているが維持費が軽微

売却の必要性に疑問があると、売却は許可されません。

不動産を保有し続ける方が行方不明者の利益にかなうと判断されます。

ケース(3)修繕せずに売却希望

老朽化した不動産であっても、修繕で済むことは多いものです。

売却前提で他の方法を検討していないと、合理的理由がないと判断されます。

ケース(4)老朽化の理由が抽象的

不動産の老朽化は、客観的資料で家庭裁判所を説得する必要があります。

何となく危ないから、古いし倒壊の危険があると主張するだけでは、リスクが立証されていないと判断されます。

ケース(5)手続の公正性に疑問

不動産業者の査定書が1社のみの場合、価格操作の疑いが濃いと判断されます。

特定の買主に売りたいなどの理由は、市場による公正な価格ではないと判断されがちです。

ケース(6)相続税対策で売却

行方不明者に相続が発生したときに備えて、不動産を売却したいことがあります。

相続税を納付する家族のための売却は、行方不明者の利益とは無関係です。

行方不明者の利益を損なうと判断されるでしょう。

⑦権限外行為の許可の申立てに売買契約書案を提出

不在者財産管理人が不動産の売却をするためには、家庭裁判所の許可が前提です。

権限外行為の許可の申立てとは、家庭裁判所に対して許可を求めることです。

権限外行為の許可の申立ては、不在者財産管理人が行います。

家族は、権限外行為の許可の申立てに関与しません。

権限外行為の許可の申立てには、売買契約書案を提出します。

家庭裁判所は、提出された売買契約書案の内容を厳しくチェックします。

権限外行為の許可の審判書には、売買契約書案が添付されます。

提出した売買契約書の内容と異なる契約をする権限はありません。

権限外行為の許可の審判書を見れば、権限の有無が一目で分かります。

売買契約書の内容を変更したい場合、あらためて権限外行為の許可の申立てをする必要があります。

3買主候補者は不在者財産管理人選任の申立てができない

①申立人は法律上の利害関係が必要

不在者財産管理人選任の申立人は、法律上の利害関係がある人に限定されています。

法律上の利害関係がある人とは、行方不明者の財産管理に直接関係がある人です。

たとえば、次の人は不在者財産管理人選任の申立てができます。

・遺産分割協議のために他の相続人が申立て

・不動産売却で推定相続人が申立て

・共有物の処分のため他の共有者が申立て

・債権債務の実現のため債権者と債務者が申立て

②買主候補者に利害関係は認められない

行方不明者の不動産は、家庭裁判所の許可がないと売却できません。

単なる買主希望者は、まだ法律上の利害関係があるとは認められません。

買主候補者には、まだ法律上の利害関係が発生していないからです。

単なる買主希望者は、不在者財産管理人選任の申立てができません。

不動産の売却が行方不明者の利益であるのか、家庭裁判所が厳しくチェックします。

不動産の価格は、ある程度幅があるのが通常です。

売却条件や売却時期によっては、大きな差が発生します。

相場の範囲内であっても、有利不利があるでしょう。

買主候補者に利害関係を認めると、行方不明者の利益が損なわれるリスクが大きくなります。

不動産の売却が必要であるのか、家庭裁判所が厳しくチェックします。

売却が必要ないのに、買主候補者の利益のために誘導されている可能性があります。

買主候補者に利害関係を認めると、必要がない売却がされるリスクが大きくなります。

行方不明者の利益を守るため、家庭裁判所は利益誘導リスクを警戒します。

結果として利益が守られたのではなく、プロセス全体で利益が守られたことが重視されます。

プロセス全体における公正性と透明性を確保することで、行方不明者に利益が守られるからです。

③売買契約後に行方不明になったら買主が申立て

売買契約を締結すると、買主には代金を支払う義務や不動産を引き渡してもらう権利が発生します。

売買契約後に行方不明になった場合、買主には法律上の利害関係が認められます。

不在者財産管理人選任を通して、買主は債権債務の実現をする必要があるからです。

4不動産売却後も任務は継続

①行方不明のままなら管理を継続

行方不明者の不動産を売却したいから、不在者財産管理人選任の申立てをすることがあります。

行方不明者の不動産を売却した後も、不在者財産管理人の任務は継続します。

不在者財産管理人の任務は、行方不明者の財産を管理することだからです。

行方不明者が帰ってくるまで、または死亡が確認されるまで、不在者財産管理人の任務は継続します。

不在者財産管理人の任務は継続するから、報酬がかかり続けます。

②売却代金は家族に渡されない

行方不明者の不動産を売却したら、売却代金を取得します。

売却代金は、行方不明者の財産です。

不在者財産管理人は、売却代金を家族に渡すことはできません。

家族は、売却代金を自由に使うことはできません。

③金銭のみなら供託できる

不在者財産管理人が管理する財産が金銭のみの場合、管理する金銭を供託することができます。

金銭を供託したら、不在者財産管理人の任務は終了します。

不在者財産管理人が管理すべき財産がなくなったからです。

行方不明者は、供託された金銭を受け取ることができます。

供託された金銭は、家族が受け取ることはできません。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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