寄与分が認められない典型的ケースの現実

1 寄与分が認められない理由

理由①寄与分で頑張りは評価されない

寄与分は、誤解が多い制度です。

頑張った人が報われる制度と、説明されることが多いからです。

介護で頑張った人は、自分の頑張りを認められたいと考えます。

自分の頑張りを寄与分で、認めてほしいと考えがちです。

裁判所は、頑張った人を救済する機関ではありません。

寄与分で、頑張りは認められません。

頑張ったことは、評価の対象外だからです。

家族のために尽くしてきたことは、決して無駄ではありません。

寄与分は頑張りを評価する仕組みではないから、努力が法律上の評価につながらないのです。

主観的評価軸と法律上の評価軸は、異なります。

法律上の評価軸に当てはまらないと、寄与分は認められません。

理由②寄与分で評価されるのは財産の維持増加のみ

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分で評価されるのは、財産の維持増加のみです。

寄与分が認められるのは、直接的に財産の維持増加に貢献することが条件です。

寄与分を主張する人が次の主張をすることがあります。

・精神的な支えになった。

・本人の安心感を高めた。

・家庭を円満にした。

上記はいずれも、直接的に財産の維持増加につながっていません。

精神的な支えや本人の安心感に、意味がないわけではありません。

寄与分で評価されないという意味です。

理由③家族として自然な行為の範囲内

家族は、助け合って暮らしています。

家族がて暮らしていくうえで、助け合いは当然の行為です。

親子や配偶者といった関係性の中で、見返りを求めない行為があります。

見返りを求めない行為であったはずなのに、寄与分として評価してほしいというのは矛盾していると考えられます。

見返りを求めない行為だったから、寄与分は認められません。

理由④寄与の内容・期間・程度を説明できない

一部の相続人に寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減ります。

寄与分を認定するには、寄与分に当たる行為を具体的に示す必要があります。

次の事項を客観的に示します。

・いつから

・どのくらいの期間

・どのようなことを

・どの程度の行ったか

現実には、長期間経過する中で記憶があいまいになります。

頑張った努力したなどの主観的主張のみで、数値化できないことがあります。

たとえ多大な貢献をしても具体的な行為を客観的証拠で説明しないと、寄与分は認められません。

具体性が欠けると、寄与分として評価できません。

理由⑤他の相続人と比べて特別ではない

寄与分が認められるためには、他の相続人と比べて明らかに突出した貢献があることが基準になります。

他の相続人の相続分を減らすため、合理性があることが重要だからです。

家族の中で役割分担をしたにすぎない場合、突出した貢献とは認められません。

偶然近くに住んでいただけの場合、他の相続人と比べて特別ではないと考えられます。

明らかに突出した貢献がないと、寄与分は認められません。

2寄与分が認められない典型的ケースの現実

ケース①同居していたケース

一部の相続人が被相続人と同居していることがあります。

同居とは、生活の場を共有することです。

生活の場を共有しても、被相続人の財産の維持増加とは無関係と考えられます。

むしろ生活費の負担が軽減されていたから、利益を受けていたと評価されることがあります。

同居してあげていた主張では、寄与分の根拠になりません。

同居していただけのケースでは、寄与分は認められません。

ケース②介護や家事など生活支援をしていたケース

同居している相続人などが生活支援をしていることがあります。

生活支援とは、次のような行為です。

・食事や排泄、入浴の介助をした

・夜間の見守りをした

・通院など外出の付き添った

・施設に入れずに自宅で身の回りの世話をした

・認知症になっても自宅で生活できるように支援した

寄与分の本質は、被相続人の財産の維持増加に対する貢献です。

生活支援が大変であっても、被相続人の財産の維持増加に直接的に結びつきません。

生活支援に献身的であっても、頑張りや努力は寄与分で評価されません。

生活支援は、家族として自然な行為の範囲内でもあります。

被相続人の介護は生活の維持であって、財産の維持増加が目的ではありません。

介護は家族として自然な行為だから、特別な貢献ではありません。

介護を行ったことは、寄与分の趣旨に合致しないと考えられています。

確かに、特殊なケースでは寄与分が認められる余地があります。

家族として自然な範囲を超え、専門職レベルの専門的介護を無償で提供した場合などです。

例えば、次のようなケースです。

・医師や看護師である相続人が医療ケアを長期間無償で行った

・理学療法士である相続人が専門的リハビリを長期間無償で行った

実務的には、非常にレアケースです。

上記のレアケースでも、財産の維持に貢献した金額を客観的証拠で立証する必要があります。

次のような医療ケアはヘルパーが行えないから、家族が行うことがあります。

・たん吸引

・経管栄養

・褥瘡ケア

厚生労働省は、家族による医療ケアを前提に制度設計をしています。

家族が医療的ケアを行うことは特別な貢献ではなく、法律上、通常の生活支援と考えられます。

家族が医療的ケアを行うことは、直接的に財産の維持増加に結びつきません。

医療的ケアを行った客観的証拠があっても、寄与分はほとんど認められません。

家族の介護で施設費用を節約したから、直接的に財産の維持に貢献したという主張するかもしれません。

実務的には、次の理由で否定されることが多いでしょう。

・本人の希望で施設に入らなかっただけ。

・家族が介護しても、施設費用が節約されたのか分からない。

・介護保険があるから、そもそも費用がかからなかったはず。

・貢献した財産額を客観的に証明できない

直接的に財産の維持に貢献した事実を客観的証拠で、立証する必要があります。

同居して家族にしかできない介護をしたと主張しても、寄与分は認められません。

家族にしかできない介護は、家族として自然な行為の範囲内と主張しているからです。

寄与分が認められないのは努力不足ではなく、生活支援が評価されない仕組みだからです

生活支援をした客観的証拠があっても、寄与分は認められません。

生活支援は、寄与分の対象外という制度上の前提があるためです。

介護や家事など生活支援をしていたケースでは、寄与分はほとんど認められません。

ケース③施設入所中のお見舞いや話し相手をしていたケース

被相続人が施設に入所することがあります。

施設入所中は、生活支援の中心は施設です。

家族が行う支援内容の中心は、精神的サポートです。

毎週お見舞いに行ったことや話し相手になったことは、精神的サポートに過ぎません。

精神的サポートをしても、被相続人の財産の維持増加とは無関係です。

精神的サポートは、家族として自然な行為の範囲内でもあります。

精神的サポートしただけの主張では、寄与分の根拠になりません。

施設入所中のお見舞いや話し相手をしていたケースでは、寄与分は認められません。

ケース④頑張っていた主観的主張だけのケース

寄与分の認定において、頑張りは評価の対象外です。

寄与分を認定する家庭場所は、被相続人や相続人の関係性を知りません。

相続人間の前提として共有する感情や信頼関係がありません。

寄与分があるはずという主観的な主張だけで、認められることはありません。

家庭裁判所は何も知らない第三者だから、主観的主張だけでは判断できません。

寄与分を主張する人は、寄与に該当する事実を立証する必要があります。

主観的な事実認識は、客観的証拠がなければ評価されません。

客観的証拠がないと、何も知らない第三者は判断できないからです。

どれだけ多大な貢献があっても、客観的証拠がないと寄与分は認められません。

何も知らない第三者が評価できるだけの充分な客観的証拠が必要です。

頑張っていた主観的主張だけのケースでは、寄与分は認められません。

ケース⑤客観的証拠が散逸しているケース

寄与分の立証には、客観的証拠が不可欠です。

寄与分があるはずという主観的な主張だけで、認められることはありません。

例えば被相続人の財産増加に貢献する行為には、次のものがあります。

・被相続人の事業を手伝って、多大な利益をもたらした。

・被相続人の不動産を無償で管理して、維持費を節約した。

・被相続人の財産を守るため特別な支出をした。

上記のような寄与に該当する事実は、数年以上の長期間積み重なる事実です。

相続が発生した時点で、客観的証拠が散逸していることが一般的です。

寄与に該当する事実は日常生活の中にあるうえ、いちいち記録しないからです。

寄与分は、遺産分割協議を前提とする制度です。

相続が発生する前に、遺産分割協議をすることはできません。

相続が発生した時点では、客観的証拠が散逸してしまっています。

長期間積み重なる事実で客観的証拠が散逸するのは、構造的に止むを得ません。

どれだけ多大な貢献があっても、客観的証拠がないと寄与分は認められません。

客観的証拠が散逸しているケースでは、寄与分は認められません。

3寄与分に期待するより現実的な対策

対策①公正証書遺言を作成して相続人に報いる

(1)遺言書があれば遺産分割協議は不要

寄与分は、遺産分割協議が前提の制度です。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

遺言書があれば、遺言書のとおりに遺産分割をすることができます。

遺言書があれば、遺産分割協議は不要です。

(2)遺言書で被相続人の意思を示す

被相続人は、だれが貢献したのか知っているはずです。

客観的証拠がなくても、どの程度の貢献なのか分かっているはずです。

遺言書を作成して、相続人に報いることができます。

遺言書は、被相続人の意思を最も直接的に示すことができます。

寄与分は、被相続人の意思を代替することはできません。

遺言書がないと寄与分争いが起きやすいという事実を家族で共有することが重要です。

(3)公正証書遺言でトラブル防止

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。

公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

遺言書を作成する場合、公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成するからです。

遺言書が無効になりにくく、高い信頼があります。

作成した遺言書は、公証役場で厳重保管されます。

公正証書遺言は、相続人間のトラブル防止になります。

対策②任意後見契約で報酬を支払う

(1)任意後見契約は介護契約ではない

任意後見契約とは、判断能力が低下したときに備えてサポートを依頼する契約です。

任意後見人は、本人に代わって財産管理や身上監護を行います。

身上監護とは、本人の日常生活や健康管理、介護など生活全般について重要な決定をすることです。

任意後見契約は、介護契約ではありません。

任意後見契約をしても、食事や身の回りの世話を依頼できません。

(2)任意後見人が生活支援の中心人物

任意後見人は、本人に代わって介護など生活全般について重要な決定をする人です。

現実的には、介護サービスの手配、通院付き添い、生活管理などを担うことになるでしょう。

任意後見人が生活支援の中心人物にならざるを得ません。

(3)任意後見人に後見報酬を支払うことができる

任意後見契約において、任意後見人に報酬を支払う定めを置くことができます。

任意後見人に支払う報酬は、本来、財産管理や身上監護に対する報酬です。

任意後見人が行うさまざまな貢献を、後見報酬に含ませて支払うことができます。

相続が発生してから寄与分を主張しても、認められにくいのが現実です。

さまざまな貢献をしたのに相続分に反映されないと、相続人間の深刻なトラブルになりがちです。

任意後見報酬なら、契約に基づいて正当に支払いを受けることができます。

任意後見契約は公正証書にするから、透明性があります。

寄与分で報われない介護を現実的に調整することができます。

(4)元気なうちに任意後見契約

任意後見契約は、本人が元気なうちだけ締結ができます。

認知症になった後で、任意後見契約はできません。

4生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。

相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。

被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。

高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。

法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。

相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。

生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。

相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。

相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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