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1行方不明になっても婚姻関係は継続
①自動で婚姻関係は解消しない
配偶者が行方不明になっても、婚姻関係は継続します。
たとえ何年も連絡が取れない状態になっても、法律上は「夫」「妻」の身分があります。
長期間行方不明になっても、自動で婚姻が解消されることはありません。
長期間行方不明になっても、生きている扱いです。
婚姻関係の解消には、法的手続が必要です。
法的手続を行わない限り、法的関係の整理は進みません。
②長期間の行方不明で前に進めない
(1)財産を処分できない
長期間行方不明になっても、財産は行方不明の人のものです。
家族が行方不明の人の財産を自由に処分することはできません。
(2)再婚ができない
長期間行方不明になっても、自動で婚姻関係は解消しません。
戸籍上は、配偶者が生きている既婚者のままです。
婚姻関係が継続しているから、再婚は重婚になってしまいます。
(3)相続が発生しない
長期間行方不明になっても、相続は発生しません。
行方不明の人の財産のまま、だれも利用することができなくなります。
③婚姻関係を解消する方法
婚姻関係の解消とは、法律上の夫婦関係を終了することです。
戸籍上の婚姻関係を終了させると、再婚や相続などの財産整理を進めることができます。
婚姻関係を解消する方法は、2つあります。
離婚と失踪宣告です。
離婚とは、当事者の意思によって法律上の婚姻関係を終了することです。
失踪宣告とは、生死不明の人を死亡扱いにする手続です。
生死不明の配偶者が失踪宣告を受けたら、離婚でなく死別扱いです。
今すぐ手続を始める必要は、ありません。
今すぐ判断をする必要は、ありません。
離婚と失踪宣告は、どちらも重大な影響を及ぼします。
落ち付いて、制度を理解することが大切です。
2裁判離婚で行方不明の配偶者と婚姻解消
①離婚は当事者が生きていることが前提
離婚は、当事者双方か一方の意思によって婚姻関係を終了する制度です。
生きている配偶者との婚姻関係を終了させます。
死亡した配偶者と離婚はできません。
配偶者が死亡したら、死亡によって当然に婚姻関係は終了するからです。
②長期間行方不明になっても生きている扱い
長期間行方不明になっても、自動で死亡扱いにはなりません。
行方不明の人が、どこにいるか分からないだけです。
長期間行方不明の人は、生きている前提です。
③生きている前提だから離婚の対象
行方不明の配偶者は生きている前提だから、離婚の対象になります。
夫婦が離婚する場合、3つの方法があります。
協議離婚、調停離婚、裁判離婚です。
協議離婚と調停離婚は、当事者の話し合いによる離婚です。
行方不明の配偶者と離婚する場合、裁判離婚が選択肢になります。
④裁判離婚では離婚原因の立証が必要
裁判で離婚する場合、離婚原因が認められなければなりません。
離婚原因は、客観的証拠によって立証することが重要です。
離婚したいと主張するだけでは、裁判所は離婚を認めれくれません。
多くのケースでは、ハードルが高いと言えます。
⑤行方不明と3年以上の生死不明は別物
配偶者が3年以上生死不明である場合、離婚原因に該当します。
生死不明と行方不明は、別物です。
離婚原因となる生死不明とは、生きているのか死亡しているのか分からない状態です。
典型的には、次の事情があるケースが挙げられます。
・事故
・大災害
・海難
生存の可能性が非常に低いケースです。
配偶者が行方不明で婚姻関係を解消したい場合、生きている可能性が高いケースが多いでしょう。
・単なる家出
・音信不通
・生活費を入れない
・住所を転々としている
家庭裁判所は、生死不明に該当するか非常に厳格に審査します。
単なる行方不明3年以上は、離婚原因に該当しないと判断します。
⑥悪意の遺棄は故意を立証する必要がある
悪意の遺棄がある場合、離婚原因に該当します。
夫婦は、同居、協力、扶助の義務があります。
悪意の遺棄とは、同居、協力、扶助の義務を正当な理由なく意図的に放棄することです。
家庭裁判所は、次の点を重視します。
・意図的に家族を捨てたか。
・正当な理由なく義務を放棄したか。
配偶者が行方不明になる場合、さまざまな事情があるでしょう。
・仕事などのトラブル
・うつ病などの精神疾患
・借金問題
・生活の困窮
・事件や事故に巻き込まれた可能性
上記の事情は、家族を捨てる故意があったか不明確です。
単に行方不明であるだけで、悪意の遺棄とは認められません。
例えば次の事情があると、悪意の遺棄が認められやすいでしょう。
・生活費を入れず、他の異性と暮らしている。
・DVから逃れるために避難したのに、生活費を渡さない。
・家族を捨てて別居し、連絡を拒否している。
上記の事情は、家族を捨てる故意が明確だからです。
たとえ10年以上行方不明であっても、それだけで悪意の遺棄は認められません。
悪意の遺棄は、故意の立証が必要だからです。
⑦婚姻を継続しがたい重大な理由は立証困難
婚姻を継続しがたい重大な理由がある場合、離婚原因に該当します。
婚姻を継続しがたい重大な理由とは、夫婦関係が客観的に破綻して回復の見込みがないことです。
家庭裁判所は、夫婦の実態が失われているかを重視します。
例えば次の事情がある場合、夫婦関係が客観的に破綻していると認められやすいでしょう。
・5~10年以上の別居
・DV
・不貞行為
・深刻なモラハラ
・重度の依存症
上記の事情は、夫婦関係の破綻が明確で証拠が残りやすいでしょう。
単に行方不明であるだけで、婚姻を継続しがたい重大な理由とは認められません。
行方不明は、夫婦関係の破綻の結果であって原因ではないからです。
原因が分からないと、婚姻を継続しがたい重大な理由があるのか分かりません。
たとえ長期間行方不明であっても、夫婦関係が破綻していない可能性があります。
行方不明の配偶者がいないから、夫婦関係の悪化を証明する資料を準備できないでしょう。
事実関係によっては、認められる余地があります。
多くのケースでは、ハードルが高いと言えます。
3失踪宣告で行方不明の配偶者と婚姻解消
①残された家族のため失踪宣告
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
死亡扱いする重大な手続だから、手続を進めていいのか不安に思うかもしれません。
行方不明が長期化した場合、家族が困ります。
家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。
行方不明者の配偶者は、再婚することができません。
残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。
失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。
失踪宣告がされると、配偶者は再婚をすることができます。
②自動で失踪宣告はされない
失踪宣告を受けると、死亡が確認できないのに死亡と見なされます。
失踪宣告には、次の条件があります。
(1)行方不明の人が生死不明であること
(2)生死不明のまま一定期間継続していること
上記の条件を満たしたうえで、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをします。
長期間行方不明であっても、自動で失踪宣告がされることはありません。
家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。
③普通失踪は7年で死亡と見なされる
失踪宣告には、2種類があります。
普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。
一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。
生死不明の期間を失踪期間と言います。
普通失踪では、失踪期間が7年必要です。
家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。
生死不明のまま7年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
普通失踪における法的な死亡日は、7年満了した日です。
④特別失踪(危難失踪)は1年で死亡と見なされる
行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。
大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。
特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。
死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。
特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。
生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
特別失踪(危難失踪)における法的な死亡日は、危難が去った日です。
⑤失踪宣告で相続が発生する
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
死亡の扱いがされるから、相続が発生します。
普通失踪における法的な死亡日は、7年満了した日です。
特別失踪(危難失踪)における法的な死亡日は、危難が去った日です。
失踪宣告を受けた人の財産は、法律で決められた相続人が相続します。
⑥生きていることが分かったら失踪宣告の取消
失踪宣告がされた後、本人が帰ってくることがあります。
失踪宣告がされた後、生きていることが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。
失踪宣告をするときも失踪宣告を取り消すときも、家庭裁判所の関与が必要です。
失踪宣告は、死亡したと扱う重大な手続だからです。
⑦失踪宣告の取消があったら財産は返還
失踪宣告がされると、相続が発生します。
失踪宣告が取り消されると、死亡はなかったことになります。
死亡がなかったことになるから、相続もなかったことになります。
相続によって財産を得た人は、失踪宣告を受けた人に財産を返さなければなりません。
たとえ、生きているとは思わなかったとしても、財産は返す必要があります。
返還する財産は、現に利益を受けている限度とされています。
現に利益を受けている限度とは、同じ形で残っている意味ではありません。
形を変えて残っている場合も含みます。
生活費として使ったのであれば、自分のお金をその分使わずに済んでいます。
生活費分の利益を得ていると言えます。
⑧再婚した配偶者は後婚のみ有効
(1)婚姻関係は復活する
行方不明の配偶者に失踪宣告がされたら、死別の扱いです。
失踪宣告が取消されたら、婚姻関係も復活します。
(2)再婚したら復活しない
残された配偶者は、再婚をすることができます。
再婚した後で、行方不明だった配偶者が帰ってくることがあります。
残された配偶者が再婚していた場合、前婚は復活しません。
後婚のみ有効という意見が有力です。
後婚のみ有効になるのは、残された配偶者と再婚相手が行方不明者が生きていることを知らなかった場合だけと考えられます。
4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続や遺産承継の手続きは、専門家選びが重要です。
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