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1市区町村役場が行方不明と判断すると職権消除する
①行方不明になると本人申請なしで住民票を削除できる
死亡や転出などで実際にその住所に住んでいないにも関わらず、住民票が残ったままであることがあります。
職権消除とは、住民基本台帳法に基づいて本人申請なしで住民票が削除されることです。
長期間所在不明で生活実態が確認できないとき、行政記録の正確性を保つために行われます。
市区町村は、次の場合に住所について調査をします。
・市区町村からの郵便が届かない
・居住者から申出がある
市区町村の調査で居住が確認できないと判断された場合、住民票は職権で消除されます。
住民票が職権消除されたケースとは、行方不明が公的に確認されたケースと言えます。
②職権消除されても相続人の地位は失わない
職権消除とは、その住所に居住していない場合に市区町村が本人申請なしで住民票を削除する手続です。
職権消除は、行政記録を正確に保つための措置に過ぎません。
職権消除されても、相続人の地位は失いません。
住民票が職権消除されても、戸籍には何も記録されません。
相続人になる人は、戸籍の記録で判断されます。
居住実態に関わらず、民法で決められた人は相続人になります。
たとえ行方不明であっても、戸籍に記録された人は相続人です。
職権消除されても、法律上の身分や権利義務に直接影響はありません。
③相続人の住民票が職権消除されたときの問題点
(1)遺産分割協議ができない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。
たとえ行方不明の相続人がいても、相続人全員の合意が必要です。
行方不明の相続人がいると、遺産分割協議ができなくなります。
(2)遺産分割協議未了でも相続登記義務化
被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更を行います。
相続登記とは、相続による不動産の名義変更です。
相続登記には、3年の期限が決められました。
3年以内に相続登記の義務を果たさないと、ペナルティーの対象になります。
ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。
多くの場合、遺産分割協議が成立してから相続登記をします。
遺産分割協議が成立しなくても、相続登記の義務は免れられません。
④親族による所在調査には限界がある
遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要です。
行方不明の相続人を除外して合意しても、遺産分割協議は成立しません。
親族が所在調査をしても、事実上見つけることは困難です。
住民票が職権消除される前には、市区町村役場が一定の調査を行っているからです。
親族であれば、特別な手がかかりがあるかもしれません。
例えば、次のような手がかかりです。
・行方不明者の友人や知人
・行方不明者の仕事の関係者
・元配偶者や子ども
市区町村役場が知らないような手がかかりがある場合、親族による所在調査が有効です。
多くの場合、親族による所在調査には限界があると言えます。
⑤海外在住であれば外務省の所在調査制度
外務省の所在調査制度とは、海外に在留している可能性が高く半年以上所在確認ができない日本人の連絡先を確認するサービスです。
外務省の所在調査制度は、3親等内の親族が利用することができます。
外務省の所在調査制度では、得られる情報が限定的です。
在外公館に対し、在留届やたびレジの情報を基に安否確認をします。
たびレジとは、外務省が提供する海外渡航者向け安全情報登録サービスです。
在外公館は捜査機関ではないから、細かな住所調査や行方の捜索はできません。
在留届などが出されている場合に限り、連絡が可能であることがあります。
本人への連絡ができたとしても、本人の同意なく居場所の開示はできません。
多くの場合、外務省の所在調査制度には限界があると言えます。
2相続人の住民票が職権消除されたときの対応方法
①不在者財産管理人選任の申立て
(1)不在者財産管理人が代わりに遺産分割協議
行方不明の相続人がいると、遺産分割協議を成立させることができません。
不在者財産管理人は、行方不明の代わりの人です。
行方不明の相続人の権利を代行することができます。
家庭裁判所に申立てをして、不在者財産管理人を選任してもらうことができます。
不在者財産管理人が代わりに、遺産分割協議を成立させることができます。
(2)申立人
不在者財産管理人選任の申立ができるのは、次の人です。
・利害関係人
・検察官
他の相続人は、利害関係人と考えられます。
(3)申立先
行方不明者の従来の住所地や居所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。
(4)添付書類
不在者財産管理人選任の申立書に添付する書類は、次のとおりです。
・行方不明の人の戸籍謄本
・行方不明の人の戸籍の附票
・不在者財産管理人の候補者の住民票か戸籍の附票
・行方不明であることが分かる資料
・行方不明の人の財産の状況の分かる資料
・利害関係の分かる資料
通常は、提出した書類のみで審査がされます。
書類の内容によっては家庭裁判所から申立人が呼び出されて事情聴取が行われます。
(5)申立てにかかる費用
①手数料
不在者財産管理人選任の申立てをする場合、家庭裁判所に手数料を納入します。
手数料は、行方不明の人1人につき、800円です。
手数料は、収入印紙で納入します。
②予納郵券
手数料とは別に、裁判所が手続に使う郵便切手を予納します。
予納する郵便切手は、家庭裁判所によって金額や枚数が異なります。
およそ3000~5000円程度です。
③予納金
不在者財産管理人選任の申立てをする際に、家庭裁判所に予納金を納入します。
予納金の額は事件によって、異なります。
おおむね数十万円~100万円程度です。
予納金は、事案に応じて裁判所が決定します。
行方不明の人の財産が少なければ、予納金として申立人が負担します。
事件終了後、予納金が余れば返還されます。
(6)申立てにかかる期間
不在者財産管理人選任の申立てをしてから選任されるまで、数か月~半年ほどかかります。
(7)遺産分割協議をするためには権限外行為の許可の申立て
不在者財産管理人は、行方不明の人の財産を保存管理をする人です。
原則として、財産の保存管理以外の権限はありません。
例えば、不動産の修繕は、財産の保存行為と認められます。
遺産分割協議は、財産の保存管理ではなく処分行為です。
不在者財産管理人は、遺産分割協議をする権限はないはずです。
不在者財産管理人が有効に遺産分割協議を成立させるため、家庭裁判所の許可が必要です。
遺産分割協議は、権限外行為だからです。
家庭裁判所の許可を得るためには、行方不明の相続人に法定相続分の財産の確保が必要です。
行方不明の相続人に不利になるような遺産分割協議をすることは、家庭裁判所が許可しません。
相続税が少なくなるような遺産分割協議を望んでも、許可されません。
被相続人の面倒を見ていた人に財産を多くする遺産分割であっても、許可されません。
不在者財産管理人が家族であっても家族以外の専門家であっても、同じことです。
行方不明の相続人に不利になる遺産分割協議は、許可されないからです。
有効に遺産分割協議を成立させるため、家庭裁判所による権限外行為の許可が必要です。
②失踪宣告
(1)失踪宣告で死亡と見なされる
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
(2)普通失踪は7年で死亡と見なされる
一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。
生死不明の期間を失踪期間と言います。
普通失踪では、失踪期間が7年必要です。
生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。
家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。
(3) 特別失踪(危難失踪)は1年で死亡と見なされる
行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。
大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。
特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。
死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。
特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。
生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
(4)失踪宣告は慎重に検討
行方不明者に失踪宣告がされると、死亡した扱いがされます。
失踪宣告がされると、相続が発生することになります。
相続関係が変更されるから、相続手続が複雑になります。
失踪宣告は、慎重に検討する必要があります。
3住所が分からない相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生した後、相続手続を進めたいのに住所が分からない相続人や行方不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する人も少なくありません。
不在者財産管理人選任の申立てなど家庭裁判所に手続きが必要になる場合などは、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した人や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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