遺言書で臓器提供はできない

1遺言書で臓器提供はできない

①遺言事項は法律で決められている

日本で臓器移植法が施行されたのは、1997年です。

施行されてから、20年以上経過しています。

臓器移植を希望する人は年々増えていますが、臓器移植の件数は多くはありません。

臓器移植とは、臓器の機能が低下した人に他の人の臓器と取り換えて機能回復を図る医療です。

第三者の善意による臓器提供がなければ、臓器移植をすることはできません。

自分が死亡した後に、最後に社会貢献をしたいと考えることがあるでしょう。

最後の社会貢献として、臓器提供をして社会に役に立ちたいという希望があるかもしれません。

臓器提供をするために遺言書を作成するのは、意味がありません。

遺言書は、厳格な書き方ルールがあります。

遺言書に書くことで法律上意味がある事項は、法律で決められています。

遺言書に書くことで法律上意味がある事項を遺言事項と言います。

遺言事項は、次のとおりです。

(1)財産に関すること

(2)身分に関すること

(3)遺言執行に関すること

(4)それ以外のこと

臓器提供に関することは、遺言事項にありません。

遺言事項は、法律で決められています。

②臓器提供の希望は付言事項

遺言書には、法律上意味がないことを書くことができます。

遺言事項以外のことは、付言事項と言います。

付言事項に、法律上の意味はありません。

例えば、家族への感謝の気持ちや家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどの気持ちです。

家族仲良く幸せに暮らして欲しい気持ちに、法的な拘束力はもちろんありません。

臓器提供の希望は、付言事項に過ぎません。

付言事項に、法律上の拘束力はありません。

遺言書に臓器提供の希望を書くことができます。

臓器提供の希望を書いても、法的効力はありません。

臓器提供の希望は、付言事項です。

③遺言書は火葬後に開封される

遺言書は、プライベートな内容が書かれています。

遺言者本人が積極的に家族に見せることは、あまりありません。

家族にとっても、遠慮して見ないことが多いでしょう。

封筒に入った自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で開封してもらいます。

法務局保管の自筆証書遺言は、相続発生後に遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書の発行請求をすることができます。

公正証書遺言は、相続発生後に相続人が謄本請求をすることができます。

遺言者の死亡直後は、家族が遺言書の内容を知らないことが大部分でしょう。

遺言書の内容を知らないまま、火葬されます。

葬儀などがひと段落して落ち着いてから、相続手続の準備を開始します。

家族が遺言書の有無を調べるのは、死亡後1か月以上経過していることが多いでしょう。

遺言書に臓器提供を希望すると書いても、死亡直後に家族は気づきません。

家族から臓器提供を希望することを医師に伝えてもらうことができません。

火葬した後で遺言書の内容を知ったら、家族はショックを受けるでしょう。

本人の希望をかなえてあげることができなかったからです。

確かに、遺言書に臓器提供の希望を書くことができます。

遺言書に臓器提供の希望を書いても、臓器提供ができないことがほとんどです。

遺言書を見た家族は、希望をかなえてあげられなかったと後悔します。

遺言書に臓器提供の希望を書くことは、おすすめできません。

2臓器提供の意思表示の方法

①健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入

健康保険証の裏面

臓器移植法が改正され、健康保険証・運転免許証に意思表示欄が設置されました。

マイナンバーカードにも、意思表示欄が設置されています。

健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することで、臓器提供の意思表示をすることができます。

運転免許証の裏面

健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することも記入しないこともできます。

意思表示は、任意だからです。

意思表示欄をよく見ると、「臓器を提供しません」という項目があります。

マイナンバーカード

臓器提供する意思表示も希望しない意思表示もすることができます。

臓器提供する意思表示も希望しない意思表示も、本人の意思表示です。

本人の意思表示が尊重されます。

健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードは、身分証明書として提示することがあります。

意思表示の内容を第三者に知られたくないことがあるでしょう。

意思表示欄は、保護シールを貼って人目に触れなくすることができます。

健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することで、臓器提供の意思表示をすることができます。

②インターネットで意思登録

日本臓器移植ネットワークのホームページから臓器提供の意思表示をすることができます。

インターネットで意思登録をしておくと、臓器提供に関する意思が確実に確認することができます。

インターネットで意思登録をすると、意思登録カードが届きます。

臓器提供の意思が変わったら、意思を変更することができます。

意思登録を削除したくなったら、意思登録を削除することができます。

臓器提供に関する本人の意思表示が尊重されるからです。

健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードを持ち歩けなくても、インターネットで意思登録をすることができます。

③臓器提供意思表示カードに記入

臓器提供意思表示カード

臓器提供意思表示カードは、次の場所に設置してあります。

・都道府県市区町村役場窓口

・保健所

・運転免許試験場(センター)

・一部のコンビニエンスストア等

入手した臓器提供意思表示カードに記入して携帯します。

臓器提供意思表示カードに記入することで、意思表示をすることができます。

3臓器提供の希望は本人の意思と家族の同意が必要

①本人の意思は尊重される

臓器提供においては、本人の意思が尊重されます。

臓器提供をする意思も臓器提供をしない意思も、本人の意思です。

本人の意思が尊重されます。

本人の意思だけでなく、家族の承諾が必要になります。

本人が臓器提供を拒否している場合、家族が臓器提供をすることはできません。

本人の「臓器を提供しません」という意思が尊重されるからです。

本人の意思が分からない場合、家族が判断します。

本人の意思表示がないまま判断する場合、家族は動揺するでしょう。

臓器提供について家族と話し合って、情報共有をしておくことが大切です。

②親族優先の希望ができる

臓器提供を希望する場合、親族優先提供の希望をすることができます。

親族優先提供を希望の意思表示をしたい場合、「親族優先」と記入します。

親族への優先提供ができるのは、次の条件をすべて満たす場合です。

(1)臓器提供を希望する意思表示に併せて、親族優先提供を書面で表示

(2)親族が移植希望登録をしている

(3)医学的な適合条件に合致している

優先提供がされる親族は、次の人です。

(1)配偶者

配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚・内縁の配偶者は、対象外です。

(2)子ども

(3)父母

実の親子だけでなく、特別養子による養親、養子を含みます。

普通養子による養親、養子は、対象外です。

親族が移植希望登録をしていても、医学的適合条件に合わないことがあるでしょう。

対象となる親族がいない場合、親族以外の人に移植が行われます。

優先提供する親族を指名した場合、指名された人を含めた親族全体への優先提供の意思と扱われます。

「〇〇さんにだけしか提供したくない」場合、親族の人を含め提供がされません。

自殺者から親族優先提供は行われません。

臓器提供では、親族優先の希望をすることができます。

③家族の同意がないと臓器提供ができない

臓器提供においては、本人の意思が尊重されます。

本人が臓器提供を拒否している場合、家族が臓器提供をすることはできません。

本人が臓器提供を希望する意思表示をしている場合、最終的に意思決定するのは家族です。

たとえ本人が臓器提供を希望する意思表示をしても、家族が提供しないと判断したら臓器提供をすることはできません。

臓器提供について家族と話し合って、情報共有をしておくことが大切です。

実際の現場では、家族のうち一人でも反対の人がいると臓器提供を断念することになります。

家族の同意がないと、臓器提供ができません。

4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

遺贈とは、遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。

遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。

遺言執行には法的な知識が必要になります。

遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。

せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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