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1住民票上の住所を変更しても登記は変更されない
①登記の住所は自動で変更されない
不動産を所有している人は、登記をしているでしょう。
登記簿には、所有者の住所や氏名などが記録されています。
不動産を所有した後で、引っ越しをすることがあります。
引っ越しをしたら、市区町村役場などに手続をします。
住民票を移しても、市区町村役場から法務局へ連絡されません。
市区町村役場に手続をしても、登記の記録は自動で変更されることはありません。
所有者の住所が変更になった場合、住所変更登記をする必要があります。
法務局に住所変更登記を申請していない場合、登記簿上は旧住所のままです。
②相続登記の準備で登記記録の確認
登記申請を準備する場合、現在の登記記録を確認します。
現在の登記記録を確認しないと、どのような準備をすればいいか分からないからです。
登記記録を確認する方法は、2つあります。
法務局で登記簿謄本を取得する方法と登記情報を取得する方法です。
内容は、どちらも同じです。
近くの法務局で日本中どこの不動産の登記簿謄本であっても、取得することができます。
2 相続した不動産に住所変更登記は不要
①相続登記で被相続人の住民票を提出する
相続登記を申請する場合、被相続人の住民票を提出します。
被相続人の住民票には、死亡時の住所が記録されています。
住民票を移しても、登記の住所は自動で変更されません。
相続登記の申請を準備する場合、現在の登記記録を確認します。
登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なることは、少なくありません。
登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合、別人であると判断されます。
家族にとっては納得できなくても、別人扱いされたら相続登記をすることはできません。
相続登記を申請する場合、被相続人の住民票を提出します。
②相続登記では住所の移り変わりを証明すればよい
登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合、別人であると判断されます。
登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合であっても、相続登記の前提として住所変更登記をする必要はありません。
相続登記では、住所の移り変わりを証明すればよいとされているからです。
③住民票で移り変わりを証明する
相続登記を申請する場合、被相続人の住民票を提出します。
住民票には死亡時の住所だけでなく、前住所が記録されています。
住民票に記録されている前住所が登記記録上の住所と一致することがあります。
登記記録上の住所と一致した場合、住所の移り変わりを証明できたと言えます。
住所の移り変わりを証明できたから、相続登記をすることができます。
④戸籍の附票で移り変わりを証明する
戸籍の附票とは、住所の移り変わりを取りまとめた証明書です。
本籍地の市区町村役場で、戸籍と同様に管理されています。
戸籍が作られたときに、戸籍の附票も作られます。
戸籍が作られた以降の住所の移り変わりが記録されています。
住民票には、前住所だけ記録されています。
戸籍の附票を取得すると、前住所より以前の住所が判明することがあります。
戸籍の附票に記録された住所が登記記録上の住所と一致することがあります。
登記記録上の住所と一致した場合、住所の移り変わりを証明できたと言えます。
住所の移り変わりを証明できたから、相続登記をすることができます。
⑤保存期限経過で証明ができなくなる
住民票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。
保存期限が過ぎたものは、順次廃棄されます。
保管期限は、現在は150年です。
令和元年6月20日までは、たったの5年でした。
保存期限経過によって廃棄されてしまった後は、取得することはできません。
住民票や戸籍の附票を取得できなくなると、住所の移り変わりを証明することができなくなります。
3住所の移り変わりを証明できないときの対処法
①権利証を提出する
通常、登記上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合、別人であると判断されます。
別人扱いされたら相続登記をすることはできません。
住民票や戸籍の附票が廃棄されてしまった場合、住所の移り変わりを証明することはできません。
権利証は、不動産の所有者が大切に保管しています。
権利証を提出した場合、所有者であることを証明できたと言えます。
住所の移り変わりを証明できなくても、相続登記をすることができます。
②不在籍・不在住証明書を提出する
権利証は、不動産の所有者であることを証明する重要な書類です。
普段は大切に保管して、簡単に人目にさらしてはいないでしょう。
権利証の保管場所を家族と共有していないと、家族が見つけることができなくなります。
不在籍証明書とは、申請があった本籍・氏名に該当する戸籍がないことを証明する書類です。
不在住証明書とは、申請があった住所・氏名に該当する住民票がないことを証明する書類です。
登記上の住所・氏名に該当する住民票と戸籍がないことが証明されます。
登記上の住所・氏名に該当する人が存在しないという消極的な証明と言えます。
③固定資産税の納税証明書を提出する
固定資産税は、固定資産を保有している人に課される税金です。
不動産の所有者であれば、固定資産税を納めているでしょう。
固定資産税を納めているのであれば、所有者である可能性が高いと言えます。
④相続人全員の印鑑証明書付き上申書を提出する
上申書とは、「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。
相続人全員が実印を押して、印鑑証明書を添付します。
上申書には相続人全員が実印で押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります。
遺産分割協議書に上申書の記載事項を盛り込むと相続人の手間が省けて便利です。
⑤法務局によって取り扱いが異なる
住所の移り変わりを証明できないときの対処法は、法務局によってまちまちです。
複数の書面を提出するように言われることがあります。
あらかじめ法務局と打合せのうえ、登記申請をするといいでしょう。
4遺贈で住所変更登記が必要になるケースがある
①遺言書に遺贈と書いてあったら遺贈で手続
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人に外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
遺言書に遺贈すると記載されていた場合、遺贈で手続をします。
②相続人に遺贈したときは住所変更登記不要
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
相続する場合、相続登記をします。
相続登記では、あらかじめ住所変更登記は不要です。
住所の移り変わりを証明すれば、相続登記をすることができます。
相続人に遺贈をした場合、遺贈の登記をします。
相続人に対する遺贈の登記では、あらかじめ住所変更登記は不要です。
住所の移り変わりを証明すれば、相続人に対する遺贈の登記をすることができます。
③相続人以外の人に遺贈したときは住所変更登記必要
相続人に対しても相続人以外の人に対しても、遺贈をすることができます。
相続人以外の人に対して遺贈をする場合、あらかじめ住所変更登記が必要です。
④住所変更登記は遺言執行者におまかせできる
遺贈とは、遺言書で財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者には、遺言書の内容を実現するために必要な権限が与えられています。
相続人以外の人に対して遺贈をする場合、あらかじめ住所変更登記が必要です。
住所変更登記をしてからでないと、遺贈の登記をすることはできません。
住所変更登記をすることは、遺言書の内容を実現するために不可欠です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するため住所変更登記を申請することができます。
遺言執行者を選任しておくと、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
住所変更登記は、遺言執行者におまかせできます。
5相続人が共有者のとき住所変更登記がおすすめ
①住所変更登記が義務化
令和8年4月1日から住所・氏名変更登記が義務化されます。
登記上の住所や氏名に変更があった場合、変更があった日から2年以内に登記を申請しなければなりません。
令和8年4月1日以前に変更があった場合も令和8年4月1日以降に変更があった場合も、義務化の対象になります。
正当な理由なく登記申請を怠った場合、5万円以下のペナルティーになるおそれがあります。
②住所変更登記をしないと別人扱い
被相続人と相続人が不動産を共有していることがあります。
相続が発生した場合、被相続人の共有持分は相続財産になります。
不動産を共有すると、デメリットが大きいものです。
相続を機に、共有を解消するといいでしょう。
被相続人と不動産を共有していた相続人が被相続人の共有持分を相続します。
相続人の登記上の住所が現在の住所と異なる場合、住所変更登記をしておくことをおすすめします。
被相続人の共有持分について相続登記をしたら、現在の住所で登記されます。
同一人物のはずなのに、異なる住所で登記されているのは違和感があるでしょう。
同じ住所になっていれば所有者と登記されるのに、住所が異なると共有者と登記されます。
住所が異なると、別人扱いされるからです。
将来、不動産を売却するときには、住所変更登記をする必要があります。
令和8年4月1日から住所・氏名変更登記が義務化されます。
共有者である相続人の住所が異なるときも、住所変更登記をするのがおすすめです。
6不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。
住所変更登記が必要になるか必要にならないかなどもそのひとつでしょう。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではありません。
だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続手続で使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。
相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。