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1相続人になる人は民法で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
誰が相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2胎児は条件付きで相続人になる
①胎児は生まれたものと見なされる
人は、財産を所有したり契約の当事者になることができます。
財産を所有したり契約の当事者になる資格は、人に与えられています。
財産を所有したり契約の当事者になる資格を権利能力と言います。
権利能力は、出生したときに与えられ死亡したときに終了します。
相続権があるのは、相続が発生した時点で生きている人が原則です。
胎児は出生していないから、権利能力がありません。
胎児は、相続が発生した時点で出生していません。
すでに生まれたものと見なして、相続権を認められます。
すでに生まれたものと見なして相続権を認めるけど、これは生きて生まれてきたときの取り扱いです。
死体で生まれたときは、相続権は与えられません。
胎児は、生きて生まれてくることを条件に相続人になることができます。
生きて生まれてきたら、相続人になります。
生きて生まれてきた後、間もなく赤ちゃんが死亡することがあります。
すぐに死亡しても、相続人であることに変わりはありません。
生きて生まれてきた赤ちゃんが相続した後、あらためて次の相続人が相続します。
②胎児は代襲相続人になれる
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。
相続人になるはずだった人の子どもが胎児の場合があります。
胎児は、代襲相続人になることができます。
相続の場面では、胎児はすでに生まれたものと見なして相続権を与えられるからです。
③胎児は遺贈を受けることができる
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈で財産を譲ってあげる人のことを遺贈者、譲ってもらう人を受遺者と言います。
相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。
遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
譲ってもらう人は自然人でもいいし、法人などの団体でも差し支えありません。
胎児は、遺贈を受けることができます。
胎児はすでに生まれたものと見なして、相続権を与えられます。
同様に、胎児はすでに生まれたものと見なして遺贈を受ける権利が与えられます。
遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。
④胎児がいるときに離婚したら
胎児がいるときに父母が離婚することがあります。
離婚した後に父が死亡した場合、胎児は相続人になります。
父母が離婚しても婚姻中でも、子どもは子どもだからです。
父母の離婚と相続は、関係ないことです。
⑤胎児の相続放棄は出産を待ってから
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
胎児は、生きて生まれてきたら相続人になります。
何もしなければ被相続人のマイナスの財産も受け継ぐことになります。
被相続人に莫大なマイナスの財産がある場合、相続放棄をすることができます。
胎児は、相続放棄の手続ができません。
出生した後、相続放棄の手続をします。
3胎児がいるときの遺産分割協議
①胎児がいるときの遺産分割協議は出産を待ってから
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
相続の場面では、胎児はすでに生まれたものと見なして相続権を与えられます。
相続財産の分け方について相続人全員の話し合いによる合意をする場合、胎児を無視することはできません。
仮に、胎児を含めないで相続財産の分け方の合意をしたとしても、その後に胎児が生きて生まれてた場合、相続財産の分け方の合意が無効になります。
胎児がいる場合、出産までは相続人になるのか相続人にならないのか不確かです。
多くの場合、相続手続をせずに出産を待ちます。
胎児が誕生した場合、誕生した子どもは他の相続人と同じ立場の相続人になります。
②未成年の相続人は親権者が代理する
赤ちゃんや幼い子どもは、物事のメリットデメリットを充分に判断ができません。
幼い子どもや赤ちゃんが契約をするなどの法律行為をする場合は、親などの法定代理人が代わりに手続をします。
遺産分割協議は法律行為だから、原則として、親などの親権者が代理します。
③利益相反になるときは親などの親権者が代理できない
未成年者は物事のメリットデメリットを充分に判断ができないから、原則として、親などの親権者が代理します。
未成年者の利益を守るため、親などの親権者が代理できない場合があります。
親などの親権者がトクすると未成年者がソンする場合です。
一方がトクすると他方がソンする関係を利益相反と言います。
親などの親権者と未成年者が相続人になる場合、利益相反になります。
利益相反になる場合、親などの親権者は未成年者を代理することができません。
利益相反になるかどうかは、客観的に判断されます。
親などの親権者がトクする気持ちが全くなくても、利益相反になります。
親などの親権者の意思や気持ちで主観的に判断せず、客観的に判断するからです。
相続財産全部を未成年者に相続させる場合も、利益相反になります。
相続財産には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産もあるからです。
不動産などプラスの財産であっても使い勝手が良くない財産や費用がたくさんかかる財産があることが理由のひとつです。
④親などの親権者が相続人でなければ代理できる
親などの親権者と未成年者が相続人になる場合、利益相反になります。
相続が発生する前に親権者が離婚をする場合があります。
離婚した元配偶者は、相続人ではありません。
親などの親権者が相続人でない場合、どのような遺産分割協議をしても親などの親権者がトクをすることはありません。
親などの親権者が未成年者を代理することができない理由は、親などの親権者がトクすると未成年者がソンするリスクがあるからです。
親などの親権者がトクをすることがないから、親などの親権者が未成年者を代理することができます。
離婚などで親などの親権者が被相続人の配偶者でない場合、相続人にはなりません。
親などの親権者が相続人でない場合、親などの親権者が未成年者を代理することができます。
4胎児名義で相続登記ができる
胎児は相続が発生した時点で出生していないけど、すでに生まれたものと見なして相続権を認めています。
被相続人が不動産を所有していた場合、胎児は相続人だから不動産を相続します。
胎児が不動産を相続したことを公示するため、相続登記をすることができます。
胎児はまだ誕生していないため、戸籍がなく名前もありません。
不動産の登記名義は、「亡〇〇〇〇妻□□□□胎児」になります。
胎児名義で相続登記をすることができるのは、法定相続と遺言書による相続の場合です。
遺産分割協議による相続登記をすることはできません。
胎児は出生していないから親権者などが代理することができません。
胎児がいる場合、胎児のまま有効な遺産分割協議ができないからです。
5胎児がいるときの法定相続情報一覧図
①法定相続情報一覧図とは
相続が発生すると、相続人は多くの役所や銀行などの金融機関などで相続手続をすることになります。
相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。
大量の戸籍を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。
受け取る役所や銀行などの金融機関にとっても、戸籍謄本の束を読解するのは手間のかかる事務です。
被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。
この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。
登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。
これが法定相続情報証明制度です。
登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。
②胎児が出生した場合は法定相続情報一覧図が使えない
被相続人の子どもは、必ず、相続人になります。
相続が発生したときに、子どもが胎児の場合があります。
相続が発生したときに胎児であっても、無事誕生すれば相続人になります。
胎児が誕生するまで数か月かかることがあります。
役所に出生届が提出される前に、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出がされる場合があります。
胎児が誕生する前だから、戸籍には何も書いてありません。
子どもは誕生していないので、法定相続情報一覧図に記載することはできません。
子どもが誕生した後、子どもが誕生する前に作られた法定相続情報一覧図を使うことはできません。
出生届が提出された後、あらためて、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることができます。
6胎児がいる相続を司法書士に依頼するメリット
被相続人が若くして亡くなった場合や代襲相続が発生した場合、未成年の人が相続人になるケースは少なくありません。
被相続人が若くして亡くなった場合などは不意のことが多く、対策していなかった場合がほとんどでしょう。
銀行などの金融機関から預貯金の引き出しや定期預金の解約を断られて、途方に暮れる方も多いです。
特別代理人選任の申立てなど家庭裁判所に手続が必要になる場合など通常ではあまり聞かない手続になると専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
信託銀行はこのような手間のかかる手続は引き受けません。
税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、銀行などから断られた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。