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1投資信託は相続財産
①投資信託は金融商品
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が生前保有していた財産が相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
預貯金や株式以外に、いろいろな金融商品が販売されています。
被相続人が生前に投資信託を保有していることがあります。
投資信託は、金融商品のひとつです。
投資信託は、内容が複雑なものも多いものです。
投資に詳しくないから、よく分からないと思ってしまうかもしれません。
お金を預けて、資産運用の専門家が株式や債券で運用して、運用成果を分配してもらう仕組みです。
投資信託は、株式や債券で運用します。
投資信託の権利は、受益権と言います。
投資信託の受益権は、財産的な価値があります。
被相続人が保有していた投資信託の受益権は、相続財産です。
②投資信託に通帳はない
被相続人が銀行などに預貯金の口座を持っていた場合、通帳を持っているでしょう。
被相続人が投資信託を法有していた場合、通帳にあたるものがはじめからありません。
投資信託を保有している場合、証券会社などから手紙が届きます。
運用報告書や取引残高報告書などです。
自宅でこれらの書類がないか探してみましょう。
被相続人の預貯金の通帳を確認すると、証券口座への入出金履歴が見つかることがあります。
投資信託を保有していたことを知っている場合、どこの証券会社に口座があるのか探します。
取引していた証券会社が判明したら、証券会社に連絡します。
相続人は、証券会社に対して取引残高証明書の発行を請求することができます。
取引残高証明書には、どの投資信託を何口持っていたのか詳しく記載されています。
取引残高証明書の発行は、各相続人が単独で請求することができます。
③投資信託の受益権は当然分割されない
投資信託を相続するとは、運用成果を分配してもらう権利を相続することです。
投資信託の受益権は、口数を単位にしています。
当然に分割できると思うかもしれません。
投資信託の権利は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
仮に相続分が2分の1だからと言っても、被相続人の保有していた投資信託の口数の2分の1を相続できるわけではありません。
投資信託の受益権は、運用成果を分配してもらう権利だけではありません。
投資信託が適切に運用されているのか監督する権利があります。
投資信託の受益者は、出資者だからです。
投資信託の受益権は、単純な金銭支払請求権ではありません。
被相続人が投資信託を保有していた場合、投資信託を監督する権利も持っていたはずです。
投資信託を監督する権利は、分割することができません。
投資信託を監督する権利を含めて、投資信託の権利の分け方は相続人全員で決めなければなりません。
投資信託の受益権は、当然分割されません。
④投資信託の収益金は当然分割されない
投資信託は、運用成果を分配してもらう仕組みです。
あらかじめ決めらた日に、収益の分配金や償還金が支払われます。
投資信託の受益権は、当然分割されません。
投資信託の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
なかなか相続人全員の合意ができないことがあります。
相続人全員が話し合いの途中であっても、決められた日になれば収益の分配金や償還金が支払われます。
相続発生後に相続人の話し合い中に発生した分配金や償還金は、当然に分割されません。
仮に相続分が2分の1だからと言っても、分配金や償還金の2分の1を相続できるわけではありません。
分配金や償還金を受け取る権利は、投資信託の受益権の一部と言えるからです。
分配金や償還金を受け取る権利だけを切り離すことはできません。
投資信託の受益権の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
分配金や償還金を受け取るためには、相続人全員の合意が必要になります。
投資信託の収益金は、当然分割されません。
2相続発生で証券口座が凍結される
相続が発生したことを証券会社が知った場合、証券口座を凍結します。
口座の凍結とは、口座取引をすべて停止することです。
銀行の預貯金の口座と同様に相続手続が完了するまで、投資信託の処分などができなくなります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
投資信託の権利は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全の合意ができないうちに、一部の相続人が勝手に投資信託を売却することがあります。
相続人全員の共有財産なのに勝手に独り占めをしたら、大きなトラブルになるでしょう。
証券会社などは他の相続人から強い抗議を受けることになります。
抗議を受けるだけでなく、相続人のトラブルに巻き込まれることになるかもしれません。
被相続人の財産が守られないとなったら、証券会社の信用は失墜するでしょう。
大切な財産を預かているのだから、信用失墜は何としても避けたいはずです。
相続人間のトラブルに巻き込まれないため、相続発生を知ったら証券口座は凍結されます。
3投資信託の相続手続
①遺産分割協議で相続人全員の合意
被相続人が保有していた投資信託は、相続財産です。
相続財産を分けるためには、相続人全員で話し合いによる合意をする必要があります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
一部の相続人が勝手に処分することはできません。
投資信託の分け方について相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方について相続人全員合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が確認のうえ記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
②相続手続書類を提出
投資信託の相続手続は、証券会社ごとに多少異なります。
おおむね、次の書類が必要です。
(1)名義書換請求書
(2)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(3)相続人の現在戸籍
(4)相続人全員による遺産分割協議書
(5)相続人全員の印鑑証明書
③相続人の口座開設
投資信託を相続する場合、相続人の証券口座が必要です。
相続人がその証券会社に口座を持っていない場合、あらかじめ、口座開設が必要になります。
被相続人の口座から直接投資信託を売却することはできません。
口座開設には、本人確認書類やマイナンバーが分かる書類が必要です。
④相続人名義の口座へ移管
投資信託を売却できるようになるのは、相続手続が完了してからです。
相続人名義の口座に移管されたら、相続人自身の固有の財産です。
保有し続けることも売却することも、自由にできます。
⑤被相続人の口座閉鎖
被相続人の資産がすべて移管された段階で、被相続人の口座は閉鎖されます。
4投資信託を相続するときの注意点
①投資信託は価格変動する
投資信託は、株式や債券で運用します。
株式や債券は、日々大きな値動きがあります。
売却時期や方法で、売却金に大きな差が出ることがあります。
相続人全員の話し合いをしている間にも、大きな値動きがあります。
売却時期や方法で、トラブルになるおそれがあります。
相続人間のトラブルを防止するため、売却時期や方法について合意しておくといいでしょう。
合意内容は、遺産分割協議書に明記するのがおすすめです。
②遺産分割協議中も収益分配金が入金される
相続財産の分け方について、相続人全員で合意できるまで長引くことがあります。
相続人全員の話し合いをしている間にも、収益分配金が入金されることがあります。
収益分配金相当額をどうするのかについても、話し合いで合意しておく必要があります。
これらの合意事項は、忘れず遺産分割協議書に盛り込みましょう。
③遺産分割協議書の書き方不備で贈与税
投資信託をどのように分けるか、相続人全員の合意で決定します。
特定の相続人が投資信託を相続して、他の相続人はその分のお金をもらう方法があります。
投資信託を売却して、売却金を相続人で分ける方法でもいいでしょう。
これらの合意事項は、忘れず遺産分割協議書に盛り込みます。
遺産分割協議書の書き方が不適切な場合、贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。
一般的に、贈与税は想像以上に高額です。
④投資信託を売却する場合、解約違約金に注意
投資信託の種類によっては一定の期間に投資信託を売却した場合、解約違約金がかかる特約を定めていることがあります。
投資信託を売却して、売却金を相続人で分ける方法を検討する場合、解約違約金がかかるのか確認しましょう。
解約違約金がかかってでも売却するのか、解約違約金がかからない時期まで待って売却するのか、充分に検討する必要があります。
投資信託は、株式や債券で運用します。
価値が大きく上がることも、大きく下がることもあります。
解約違約金がかからない時期まで待って売却する場合、投資信託自体の価値が大きく下がることもあり得ます。
売却時期や方法でトラブルになることのないように、話し合いで合意しておく必要があります。
⑤投資信託を売却するときの税金に注意
投資信託は、価値が大きく上がることも大きく下がることもあります。
被相続人が投資信託を購入したときと比べて、売却するときには大きく値上がりしていることがあります。
投資信託の値上がり益は、課税対象になります。
5投資信託の相続を司法書士に依頼するメリット
金融商品にあまり関心のない相続人は、投資信託がよく分からないでしょう。
一般の預貯金であれば、値動きがありません。
話し合いが長引いても、あまり大きな影響はありません。
投資信託は、株式や債券で運用します。
日々、大きな値動きがあります。
解約違約金がかかったり、税金がかかったりします。
預貯金などの相続よりトラブルになりやすいものです。
証券会社などの手続も、分かりにくいことが多いものです。
相続手続は司法書士などの専門家に、丸ごとおまかせできます。
トラブルなく円満な相続手続をしたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。