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1失踪宣告で死亡と見なされる
①残された家族のため失踪宣告
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明が長期化した場合、家族が困ります。
家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。
行方不明者の配偶者は、再婚することができません。
残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。
失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。
失踪宣告がされた人に、相続が発生します。
相続財産は、相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の合意があれば、相続財産を自由に分けることができます。
遺産分割協議によって相続した後は、相続人が自由に処分をすることができます。
②失踪宣告には条件がある
失踪宣告には、2種類があります。
普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
死亡したことが確認できないのに、死亡と見なされます。
死亡と見なされるという強い効果があります。
失踪宣告が認められるためには、次の条件があります。
(1)行方不明の人が生死不明であること
(2)生死不明のまま一定期間継続していること
2失踪宣告は家庭裁判所で審判
①失踪宣告の審判は2週間で確定
家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。
家庭裁判所が死亡と認めていいと判断した場合、失踪宣告の審判がされます。
家庭裁判所が決定したことについて不服がある人がいる場合があります。
失踪宣告の審判がされた後、不服の受付をします。
不服の受付期間は、2週間です。
失踪宣告の審判がされた後、2週間経過してもだれも不服の申立てがなかったら確定します。
②家庭裁判所から官報公告がされる
失踪宣告の審判が確定した場合、家庭裁判所は官報でお知らせをします。
官報を見ている人は、少ないでしょう。
官報でお知らせするだけで、家庭裁判所は個別に連絡しません。
申立人や利害関係人に、失踪宣告が確定しましたよとお知らせがされることはありません。
市区町村役場に、失踪宣告が確定しましたよとお知らせがされることはありません。
③確定証明書取得は家庭裁判所に申請
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした場合、審判書は自動的に送られてきます。
審判書が届いてから2週間だれも不服を申し立てなければ、審判は確定します。
審判が確定しても、自動で確定証明書は送られてきません。
失踪宣告の審判が確定した後、確定証明書が必要になります。
いつ確定するのか確認して家庭裁判所に発行申請をします。
3市区町村役場に失踪届提出で戸籍に反映
①失踪宣告確定後は死亡届でなく失踪届
失踪宣告は、家庭裁判所の審判です。
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、審判が確定しても市区町村役場に連絡されることはありません。
失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。
失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出を失踪届と言います。
死亡したときに提出する死亡届とは別の書類です。
失踪届は、多くの市区町村役場でホームページからダウンロードができます。
失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。
失踪宣告が記載された戸籍謄本を提出することで、生死不明の人が法的に死亡した取り扱いがされることを証明できます。
②失踪届を提出する人
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、市区町村役場に連絡しません。
審判が確定しても、市区町村役場に連絡しません。
失踪宣告の審判が確定した後、失踪宣告の申立て人は、市区町村役場に失踪届をします。
③失踪届の届出期限
失踪宣告の審判が確定してから、10日以内です。
10日しかないので、すみやかに手続する必要があります。
④失踪届の提出先
失踪届の提出先は次の市区町村役場です。
(1)失踪宣告を受けた人の本籍地
(2)届出人の所在地
⑤失踪届の添付書類
失踪届の添付書類は、次のとおりです。
(1) 失踪宣告の審判書
(2)確定証明書
(3)失踪宣告を受けた人の戸籍謄本
(4)届出人の戸籍謄本
(3)失踪宣告を受けた人の戸籍謄本(4)届出人の戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に提出する場合は不要です。
⑥失踪宣告がされたときの戸籍の記載例
戸籍には次のように記載されます。
【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日
【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日
【届出日】令和〇年〇月〇日
【届出人】親族 ○○○○
⑦戸籍に反映するには時間がかかる
失踪届を提出しても、戸籍に反映されるまでには時間がかかります。
死亡届を提出しても時間がかかるのと同様です。
⑧失踪届を出しても探してもらえない
失踪届は、失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出です。
市区町村役場は、失踪届を受理したら失踪宣告がされたことを戸籍に記載します。
失踪届を出しても、市区町村役場が生死不明の人を探してくれることはありません。
失踪届は、死亡と扱ってもらうための届出だからです。
生死不明の人を探してもらいたい場合、警察へ行方不明者届を提出します。
行方不明者届は、以前は捜索願と呼んでいました。
失踪届と行方不明者届(捜索願)は、まったく別の届出です。
4失踪宣告で相続が開始する
①相続開始日は死亡と見なされる日
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
普通失踪では生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
特別失踪(危難失踪)では危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。
たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。
死亡と見なされる日が、相続が開始する日です。
失踪宣告の手続は、長期間かかります。
相続が開始する日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。
裁判所が失踪宣告をした日でもありません。
相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。
②失踪宣告後に相続放棄ができる
莫大な借金をしたまま音信不通になる人がいます。
いつか自分に借金が降りかかってくるのではないかと不安になることでしょう。
被相続人の生前に相続放棄をすることはできません。
行方不明の人は生きていると判断されます。
相続放棄ができるのは、相続人だけだからです。
行方不明なだけで生きているのだから、相続放棄を受け付けてもらえません。
失踪宣告は、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされた場合、相続が発生します。
相続放棄の申立てをする場合、被相続人の戸籍謄本を提出します。
被相続人の戸籍に失踪宣告の記載がされている必要があります。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できないでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。