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1失踪宣告の申立てとは
長期間、行方不明になっている人の中には死亡している可能性が高い人もいます。
このような場合、条件を満たせば失踪宣告の申立てをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとする手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明の人を含めず、遺産分割協議をすることができます。
2失踪宣告されても本人は困らない
失踪宣告はたとえ死亡していなくても、死亡した取り扱いをする制度です。
失踪宣告がされたけど、実は本人は新天地で元気に生きていたということがあります。
たとえ失踪宣告がされて死亡した扱いになった場合でも、本人の生活自体にはほとんど影響がありません。
失踪宣告がされて死亡した扱いになった場合でも、権利が制限されることはありません。
死亡した扱いになるからと言って、死者との契約だから無効だと言われることもありません。
元気で生きているから、当然、契約は有効です。
本人の知らないところで、財産が相続されてしまいます。
3失踪宣告の取消は家庭裁判所に手続が必要
失踪宣告をされた人が生きていると分かっても、自動的に失踪宣告が取り消されるわけではありません。
家庭裁判所は失踪宣告された人が、その後、生きているかどうか分からないからです。
失踪宣告された人が生きていることが分かった場合や失踪宣告されたときと異なる時期に死亡したことが判明した場合、家庭裁判所に失踪宣告の取消の審判の申立てをします。
家庭裁判所が失踪宣告を取消した場合、失踪宣告による死亡の効果がなかったことになります。
失踪宣告の取消が確定した場合でも、家庭裁判所から自主的に市町村役場に連絡が行くことはありません。
失踪宣告取消の審判書と確定証明書を添えて、市町村役場に10日以内に届出が必要です。
失踪宣告の取消が確定した場合、家庭裁判所は官報にお知らせを出します。
失踪宣告が確定したときも官報にお知らせを出しますから、取消をしたときもお知らせを出すのです。
4財産は返還しなければならない
①相続財産は返還しなければならない
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとする手続です。
失踪宣告がされると、相続が開始します。
失踪宣告が取り消されると、行方不明者が死亡したことはなかったことになります。
死亡がなかったことになりますから、相続もなかったことになります。
相続によって財産を得た人は、行方不明者に財産を返さなければなりません。
たとえ、行方不明者が生きているとは思わなかったとしても、財産は返す必要があります。
返す財産は、現に利益を受けている限度とされています。
相続人が遊興費などで使ってしまっている場合は、返す必要がありません。
生活費や自分の借金の返済に充てている場合などは、現に利益を受けていると言えます。
その分は、返還が必要です。
現に利益を受けている限度とは、同じ形で残っている意味ではありません。
形を変えて残っている場合も含みます。
生活費として使ったのであれば、自分のお金をその分使わずに済んでいます。
生活費分の利益を得ていると言えます。
失踪宣告取消前に、行方不明者から相続した財産を売却している場合があります。
行方不明者が生きていることを知らずにした行為は、例外的にそのまま効力を持ちます。
失踪宣告が取消されることですべての行為が無効になると、安心して取引ができなくなります。
失踪宣告の事情を知らない第三者にとって、契約が取り消されると不利益が大きいからです。
行方不明者が生きていることを知らずにしたとは、相続人と売買の買主の両方が、行方不明者が生きていることを知らなかった場合です。
相続人が行方不明者の生存を知っていたら、売買の買主は知らなくても取引は無効になります。
失踪宣告によって相続した財産を売却した場合、行方不明者が生きていることを知らずにしたのであればそのまま有効です。
②生命保険も返還しなければならない
死亡により支払われるものとして、生命保険の保険金は高額なものでしょう。
失踪宣告が取り消されると、返還しなければなりません。
住宅ローンを組むときに団体信用生命保険に加入している場合、生命保険金で住宅ローンの残額を支払っているでしょう。
住宅ローンの残額を支払わなくてもよくなったという形で利益が残っていると考えられます。
現に利益を受けていると言えますから、この利益を返還しなければなりません。
5残された配偶者は再婚ができる
失踪宣告がされると、行方不明者は死亡した取り扱いがされます。
行方不明者に配偶者があれば、残された配偶者は再婚ができます。
行方不明者とは死別した取り扱いです。
残された配偶者が再婚していた場合、前婚は復活せず後婚のみ有効という意見が有力です。
後婚のみ有効になるのは、残された配偶者と再婚相手が行方不明者が生きていることを知らなかった場合だけと考えられます。
一方で、残された配偶者と再婚相手の認識を問わず、後婚のみ有効と考える意見もあります。
失踪宣告の取消がされると、前婚が復活して重婚になると考える意見もあります。
最終的には、裁判所の判断によります。
そもそも、再婚するためであれば、必ずしも、失踪宣告をする必要はありません。
3年以上の生死不明であれば、離婚理由に該当します。
婚姻を継続しがたい重大な事由にも、あたります。
悪意の遺棄にあたることもあるでしょう。
離婚事由がある場合、裁判所に離婚の訴えを起こすことができます。
裁判所に認められれば、離婚することができるからです。
6生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できないでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。