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1長期間相続登記等がされていないことの通知
①所有者が分からない土地は利活用ができない
所有者が分からない土地は、利活用ができません。
土地を買いたい人がいても、だれに売ってもらえばいいか分からないからです。
土地の利活用の内容が公共事業の場合があります。
土地を売ってもらうことができない場合、公共事業が中止したり中断することになります。
このような土地がたくさんあります。
法務局は地方自治体のニーズを考慮して、土地の所有者の相続人を調査します。
所有者が分からない土地は、利活用ができません。
②法務局から相続登記のお願いが届く
法務局の調査によって、土地の所有権登記名義人が死亡していることや相続人が判明するでしょう。
相続人に対して、長期間相続登記等がされていないことの通知を送ります。
長期間相続登記等がされていないことの通知は、法務局からのお願いです。
相続登記をしてくださいという内容です。
ひょっとしたら、登記名義人は祖父母や名前も知らない先祖かもしれません。
もしかしたら、不動産は見知らぬ土地かもしれません。
相続登記がされないまま、長期間経過している土地があります。
相続登記がされないまま長期間経過すると、法務局から相続登記のお願いが届きます。
③相続人は法務局が調べている
法務局から長期間相続登記等がされていないことの通知が届いて、戸惑っているかもしれません。
長期間相続登記等がされていないことの通知は、相続人あてに送られています。
通知の受取人が相続人である不動産があるはずです。
相続人は、法務局が調べています。
法務局は、相続人全員に通知しているわけではありません。
送付する人の順位は、次のとおりです。
(1)固定資産課税台帳上の所有者又は納税義務者
(2)当該土地の居住者
(3)当該土地の近郊(当該土地と同一都道府県内)の居住者
(4)その他の者
通知を受け取った人以外の相続人は、通知のことを知らないことがあります。
長期間相続登記がされていないことの通知は、一部の相続人にだけ届きます。
④法定相続人情報を請求
長期間相続登記等がされていないことの通知は、相続人あてに送られています。
長期間相続登記等がされていないことの通知に心当たりがない場合、相続関係を確認するといいでしょう。
法定相続人情報とは、法務局による調査内容を取りまとめた一覧図です。
長期相続登記等未了土地解消のため、法務局が相続人調査の結果を取りまとめています。
法定相続情報一覧図とは、別の書面です。
法定相続人情報は、法定相続人情報を出力した書面の提供依頼書を提出すると発行してもらえます。
提出先は、最寄りの法務局です。
不動産を管轄する法務局で管轄外の法務局でも、差し支えありません。
窓口に出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
法定相続人情報は、法定相続情報一覧図と同じように家系図のように取りまとめてあります。
法定相続人情報を見ると、見覚えがある親族が記載されているかもしれません。
法定相続人情報を請求すると、相続関係を確認することができます。
⑤相続登記の申請書に作成番号
長期間相続登記等がされていないことの通知は、相続登記をしてくださいという法務局からのお願いです。
そのまま相続する場合、相続登記をする必要があります。
通常、相続登記を申請する場合、たくさんの戸籍謄本を準備します。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人全員の現在戸籍です。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取った場合、あらかじめ法務局が相続人調査をしています。
あらためて、戸籍謄本を準備する必要はありません。
法務局による相続人調査の結果は、法定相続人情報に取りまとめてあるからです。
法定相続人情報には、作成番号が記載されています。
相続登記の申請書に、作成番号を記載します。
作成番号があれば、どの法定相続人情報なのか法務局で確認することができます。
相続登記の申請書に作成番号を記載すれば、戸籍謄本は提出不要です。
2長期相続登記等未了土地の通知が届いて相続放棄
①相続放棄は家庭裁判所の手続
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
申立てをする先の家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所です。
相続が開始した地とは、被相続人の最後の住所地です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
被相続人の最後の住所地が分からない場合、被相続人の除票や戸籍の附票を取得すると判明します。
除票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。
今でこそ保存期間は150年ですが、令和元年までは5年でした。
保存期間が経過した書類は、順次廃棄されます。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取っている場合、被相続人が死亡してから長期間経過しているでしょう。
被相続人の除票や戸籍の附票を取得できないことがあります。
除票や戸籍の附票の保存期間が経過しても、死亡届の記載事項証明書で住所を調べることができます。
古い死亡届は、法務局が保管しています。
法務局は、市区町村役場から送付を受けた年度の翌年から27年間保管しています。
戸籍の附票や住民票が廃棄された後でも、死亡届の記載事項証明書を取得できることがあります。
相続放棄の申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
②相続放棄の期限は3か月
相続放棄には、期限があります。
相続があったことを知ってから、3か月以内です。
相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取っている場合、相続があったことを知らなかったことが多いでしょう。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取ったことで、相続があったことを知ったかもしれません。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取ったことで、相続財産の存在を知ったかもしれません。
相続放棄を希望する場合、相続があったことを知ってから3か月以内に手続する必要があります。
法務局からの通知で相続があったことを知った場合、届いた通知は重要です。
相続があったことを知ってから3か月以内であることの証拠になるからです。
相続放棄の申立てを提出する場合、通知を一緒に提出します。
相続放棄の期限は、3か月です。
③相続放棄の期限のスタートは相続人によってちがう
長期間相続登記がされていないことの通知は、一部の相続人にだけ届きます。
法務局は、相続人全員に通知しているわけではないからです。
長期間相続登記がされていないことの通知を受け取った人は、通知を受け取ったときにスタートします。
他の相続人は、何も知らないでしょう。
通知を受け取った人は、他の相続人に連絡して相談するでしょう。
連絡を受けた時点で、スタートします。
疎遠な相続人がいる場合、連絡できるのはもっと遅くなるかもしれません。
相続放棄の期限のスタートは、相続人によってちがいます。
疎遠な相続人は、連絡されるまで「知ってから」がスタートしません。
各相続人が知ってから、3か月間の熟慮期間があります。
自分が知らなければ、3か月がスタートしないから安心です。
相続放棄の期限のスタートは、相続人によってちがいます。
④法定相続人情報を使えるのは相続登記だけ
相続登記を申請する場合、たくさんの戸籍謄本を準備します。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取った場合、登記申請書に法定相続人情報の作成番号を記載することができます。
法定相続人情報の作成番号を記載した場合、戸籍謄本は提出不要です。
あらかじめ、法務局が相続人調査をしているからです。
法定相続人情報は、法務局による調査内容を取りまとめた一覧図です。
法定相続情報一覧図とちがい、登記官の認証印はありません。
法務局以外では、証明書としての効力がありません。
相続放棄の申立てをする場合、たくさんの戸籍謄本を準備します。
相続放棄の申立てをするのは、家庭裁判所です。
法定相続人情報に、証明書としての効力は認められません。
法定相続人情報があっても、原則どおり、戸籍謄本を準備する必要があります。
法定相続人情報を使えるのは、相続登記だけです。
⑤相続放棄をしても長期間相続登記等がされていないことの通知
長期間相続登記等がされていない土地がある場合、所有権登記名義人の相続人を調査します。
法務局の調査は、戸籍謄本を確認する調査です。
相続が発生した場合、相続人は相続放棄をすることができます。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、家庭裁判所は申立てをした人にだけ通知します。
家庭裁判所は、自主的に市区町村役場などに通知しません。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、市区町村役場などに届出をするルールはありません。
市区町村役場は、だれが相続放棄を認められたのか知りません。
相続放棄は、戸籍や住民票などに記載されません。
法務局は、相続放棄をしたことに気づかないでしょう。
相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続人でなくなったはずなのに、長期間相続登記等がされていないことの通知が届くことがあります。
長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取った場合、法務局に連絡しましょう。
法務局は、相続登記をしてもらうために通知をしています。
あらためて調査をして、本来の相続人に通知をする必要があるからです。
相続放棄をしても、長期間相続登記等がされていないことの通知が届くことがあります。
3相続放棄で相続登記の義務を逃れる
①相続登記は義務
所有権移転登記をしない場合、所有者はソンをします。
不動産に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者のはずなのに権利主張ができないからです。
不動産には、不便な場所にあるなどの理由で価値が低い土地が存在します。
所有者にとって利用価値が低い土地に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者として権利主張する必要を感じないかもしれません。
相続登記は、手間のかかる手続です。
自分で相続登記をしようとするものの、多くの人は挫折します。
相続登記をする場合、登録免許税を納付しなければなりません。
相続登記を専門家に依頼する場合、専門家に報酬を支払う必要があります。
不動産の価値が低い場合、相続登記で手間と費用がもったいないと考える人が少なくありませんでした。
相続登記がされない場合、登記簿を見ても土地の所有者が分からなくなります。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
②相続登記は3年以内に申請
相続が発生した場合、相続登記の申請義務が課せられました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日」から3年以内に申請しなければなりません。
③令和6年4月1日以降に発生した相続が対象になる
相続登記の申請義務が課せられるのは、令和6年4月1日です。
令和6年4月1日以降に発生した相続は、当然に対象になります。
④令和6年4月1日以前に発生した相続が対象になる
ずっと以前に相続が発生したのに、相続登記を放置している例は少なくありません。
令和6年4月1日以前に発生した相続であっても、相続登記は義務になります。
⑤相続登記未了であればペナルティーが課せられる
相続登記は、3年以内に申請しなければなりません。
相続登記の申請義務を果たしていない場合、ペナルティーが課されます。
⑥相続放棄が認められたら相続人でなくなる
相続が発生した場合、相続登記の申請義務が課せられました。
相続登記が義務になったのは、所有者が不明の土地がたくさん発生したからです。
公共事業などで土地を利用する必要がある場合、所有者に土地を売ってもらいます。
所有者が分からない場合、だれにお願いすればいいか分かりません。
公共事業などを進めることができなくなります。
相続登記を義務にして、所有者不明の土地がこれ以上増えないようにしようという制度です。
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続人でないから、被相続人のものは何も相続できません。
被相続人が不動産を所有していても、相続放棄した人が相続することはありません。
相続放棄が認められた人は、相続登記をする義務が課されません。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
家庭裁判所で認められないと、マイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられません。
家庭裁判所で相続放棄が認められたとしても、絶対的なものではありません。
単純承認すると、その後の裁判で相続放棄が否定されることもあるからです。
相続が発生すると、家族はお葬式の手配から始まって膨大な手続きと身辺整理に追われます。
相続するのか、相続を放棄するのか充分に判断することなく、安易に相続財産に手を付けて、相続放棄ができなくなることがあります。
相続に関する手続の多くは、司法書士などの専門家に任せることができます。
手続を任せることで、大切な家族を追悼する余裕もできます。
相続放棄には、3か月以内の制限があります。
3か月の期間内に手続をするのは思うよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。