配偶者がすべて相続する遺産分割協議書の書き方

1配偶者がすべて相続する遺産分割協議書の書き方

①財産を列挙する記載例

遺産分割協議書

共同相続人である私たちは、以下の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人の氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日

1.相続財産中、次の不動産については、相続人〇〇〇〇が相続する。

所在 〇〇市〇〇町〇丁目

地番 〇番〇

地目 宅地

地積 200㎡

所在 〇〇市〇〇町〇丁目

家屋番号 〇番〇

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡

2.相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人〇〇〇〇が相続する。

金融機関名 〇〇銀行 〇〇支店

預金種別  普通預金

口座番号  〇〇〇〇〇〇〇

金融機関名 〇〇銀行 〇〇支店

預金種別  定期預金

口座番号  〇〇〇〇〇〇〇

被相続人の財産を把握している場合、財産を詳細に列挙する方がいいでしょう。

遺産分割協議時点で相続人が把握していた財産を明らかにすることができるからです。

どんなに詳細に調査をしても、後日に財産が判明することがあるでしょう。

後日判明した財産をめぐって、相続人がトラブルになるおそれがあります。

相続人間のトラブルを避けるため、財産を列挙する方法はおすすめです。

②遺産をまとめて書く記載例

遺産分割協議書

共同相続人である私たちは、以下の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人の氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日

1.被相続人の相続財産は、相続人〇〇〇〇がすべて相続する。

ひとりの相続人がすべての財産を相続する場合、財産をまとめて書くことができます。

財産を列挙する方法は、財産を特定する必要があります。

客観的に特定する方法は、項目が多く間違いやすいかもしれません。

遺産分割協議書を書く側からすると、まとめて書く方法は簡単でしょう。

ラクに間違いなく作成するため、まとめて書く方法はおすすめです。

2配偶者がすべて相続する遺産分割協議の注意点

注意点①遺産分割協議は相続人全員で

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人調査をすると、ときには被相続人や被相続人の家族が知らない相続人が見つかることがあります。

相続人になることを知っていても、長期間音信不通になっているかもしれません。

疎遠になっても、相続人から除外することはできません。

音信不通であっても行方不明であっても、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意がないと、遺産分割協議は成立しません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

注意点②認知症の相続人は自分で遺産分割協議ができない

相続人になる人は、法律で決められています。

相当に高齢の人が相続人である場合、認知症になっていることがあります。

認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。

物事のメリットデメリットを適切に判断することができないのに、遺産分割協議をすることはできません。

遺産分割協議のつもりで書面に押印しても、無効です。

物事のメリットデメリットを適切に判断することができないなら、子どもなどが代わりに判断すればいいと考えるかもしれません。

例えば、赤ちゃんが契約などをする必要がある場合、親権者が代わりに判断します。

赤ちゃんは、物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。

親権者は、赤ちゃんの代わりにあらゆることを判断することができます。

親権者が代わりに判断できるのは、赤ちゃんが未成年者だからです。

認知症の人は、未成年者ではないでしょう。

未成年者ではないから、勝手に判断することはできません。

認知症の人は自分で判断できないから、サポートする人が必要です。

認知症の人の代わりに、成年後見人が判断します。

成年後見人は、家庭裁判所に申立てをして選任してもらう必要があります。

家庭裁判所が選任した成年後見人が遺産分割協議に参加します。

認知症の相続人は、自分で遺産分割協議をすることができません。

注意点③未成年の相続人は自分で遺産分割協議ができない

被相続人が若くして死亡した場合、相続人が未成年であることがあります。

相続人になるはずだった人が先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

代襲相続人が未成年であることは、よくあるでしょう。

未成年者は、物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。

未成年者が契約などをする必要がある場合、通常は親権者が代わりに判断します。

未成年者が相続人になる場合、未成年者の親権者も相続人でしょう。

被相続人の配偶者は、相続人になるからです。

未成年者と親権者が相続人である場合、親権者は未成年者の代わりに遺産分割協議をすることはできません。

未成年者と親権者は、利益相反になるからです。

利益相反とは、一方がトクすると他方がソンする関係です。

利益相反であるか、客観的に判断されます。

未成年者の利益を犠牲にして、親権者が利益を得ようとは考えないでしょう。

親権者の主観的な意見は、考慮されません。

親権者が未成年者を代理できないから、、サポートする人が必要です。

未成年者の人の代わりに、特別代理人が判断します。

特別代理人は、家庭裁判所に申立てをして選任してもらう必要があります。

家庭裁判所が選任した特別代理人が遺産分割協議に参加します。

未成年の相続人は、自分で遺産分割協議をすることができません。

注意点④遺産分割協議をしても借金は相続人全員に請求される

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員で合意ができれば、どのように分けても差し支えありません。

相続人全員の合意で、配偶者がすべて相続する遺産分割協議を成立させることができます。

配偶者がすべて相続する合意をした場合、プラスの財産もマイナスの財産も配偶者が相続する合意でしょう。

相続財産にマイナスの財産がある場合、債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。

マイナスの財産の分け方を決めても、相続人間の内部的合意に過ぎないからです。

プラスの財産を相続していないから、借金を払わないと文句を言うことはできません。

相続人間の内部的合意は、債権者には関係がない話だからです。

プラスの財産を相続していないのに、借金の請求がされると納得がいかないでしょう。

借金の請求がされると、相続人間でトラブルになるおそれがあります。

遺産分割協議をしても、借金は相続人全員に請求されます。

注意点⑤子ども全員が相続放棄で次順位相続人

被相続人に配偶者と子どもがいる場合、配偶者と子どもが相続人になります。

相続が発生したら、相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

配偶者がすべて相続する場合、他の相続人が相続放棄をすることを考えるかもしれません。

子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人ではなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属が先に死亡した場合、兄弟姉妹が相続人になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

親などの直系尊属や兄弟姉妹の合意がないと、配偶者がすべて相続することはできません。

子ども全員が相続放棄をすると、次順位相続人と遺産分割協議が必要です。

注意点⑥遺産分割協議成立後に遺留分は請求できない

遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。

遺留分は、被相続人に近い関係の相続人に認められています。

遺留分が認められる相続人を遺留分権利者と言います。

遺留分権利者は、次の相続人です。

(1)配偶者

(2)子ども

(3)親などの直系尊属

兄弟姉妹は相続人になっても、遺留分は認められません。

不公平な遺言書で遺留分に満たない財産の配分しか受けられなかった場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺産分割協議が成立した後で、遺留分侵害額請求をすることはできません。

遺産分割協議は、相続財産の分け方を決めるための話し合いです。

遺留分に満たない財産の配分しか受けられない場合、相続財産の分け方の合意をしなければいいはずです。

遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。

相続財産の分け方に納得したから、合意をしたはずです。

納得して合意したはずだから、遺留分侵害額請求をすることはできません。

遺産分割協議成立後に、遺留分は請求できません。

3子どもがいない夫婦の相続人は配偶者のみではない

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②相続人は配偶者のみは珍しい

相続が発生したら、配偶者や子どもが相続人になることはよく知られています。

子どもがいない夫婦の場合、配偶者のみが相続人になると誤解しているかもしれません。

配偶者以外に相続人はいないと言いながら、実際は疎遠な兄弟姉妹がいることがあります。

半血兄弟がいる場合、被相続人自身も半血兄弟の存在を知らないかもしれません。

被相続人が知らなくても、相続人は相続人です。

実際のところ相続人は配偶者のみは、珍しいケースです。

③遺言書を作成して遺産分割の方法を指定

子どもがいない夫婦であっても、残された配偶者のみが相続人になるのは珍しいケースです。

多くの場合、残された配偶者と被相続人の親族が相続人になります。

被相続人の親族と残された配偶者の関係が良くないことがあります。

長年疎遠になっていても、相続手続では協力してもらう必要があります。

被相続人が遺言書を作成して、相続財産の分け方を指定することができます。

遺言書で遺産分割の方法を指定した場合、遺言書のとおりに分けることができます。

疎遠な相続人と話し合いをする必要はありません。

関係が良くない親族がいる場合、残された配偶者の精神的負担は大きいでしょう。

遺言書のとおりに分けることができるから、残された配偶者はラクができます。

遺言書を作成して、遺産分割の方法を指定することができます。

④遺言執行者を指名して相続手続をおまかせ

遺言書を作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の中で、遺言執行者を指名することができます。

相続を何度も経験する人は、あまりいません。

だれにとっても初めてで、不慣れなものです。

相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。

遺言執行者がいる場合、手間と時間がかかる相続手続をおまかせできます。

遺言執行者にわずらわしい相続手続をおまかせできるから、残された配偶者には心強いでしょう。

遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれるから、遺言者にとっても心強いでしょう。

遺言執行者を指名して、相続続をおまかせすることができます。

4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

実は、民法に遺言書を作ることができるのは15歳以上と定められています。

死期が迫ってから、書くものではありません。

遺言書はいつか書くものではなく、すぐに書くものです。

遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

子どものいない夫婦の場合、遺言書の威力は大きいものです。

遺言書があることで、残された配偶者が守られます。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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