遺言者死亡で公正証書遺言に効力発生

1公正証書遺言の効力発生時期

①遺言者死亡で効力発生

遺言書は、遺言者が元気なときに作成します。

遺言書を作成しても、遺言書に効力はありません。

遺言書の効力発生時期は、遺言者が死亡したときです。

遺言書にどんなことが書いてあっても、遺言者の生前は相続人には何の権利もありません。

遺言者の生前は、遺言書に効力がないからです。

遺言者死亡で、公正証書遺言に効力が発生します。

②条件付き遺言は条件を満たしたときに効力発生

遺言書を作成して、相続財産の分け方を指定することができます。

相続財産の分け方を指定する場合に、条件や期限を付けることができます。

例えば、遺言書で「〇〇〇〇が20歳になったら、500万円遺贈する」と書くことがあります。

「〇〇〇〇が20歳になったら」が条件です。

条件が成就したら、遺言に効力が発生します。

遺言者が死亡しても〇〇〇〇が20歳未満の場合、20歳になるまで遺言に効力が発生しません。

遺言者が死亡したときに〇〇〇〇が20歳以上の場合、遺言者が死亡したときに効力が発生します。

条件を付けるときは、客観的に明確な条件がおすすめです。

客観的証明が困難な条件は、無効になるからです。

例えば、「〇〇〇〇が結婚したら」「〇〇〇〇が大学を卒業したら」は、無効になるリスクがあります。

③遺言者はいつでも書き直しができる

遺言書を作成してから遺言書に効力が発生するまで、長期間経過することが多いでしょう。

遺言書を作成した後に、財産や相続人の状況が変わることがあります。

財産や相続人の状況に合わせて、遺言書を書き直すことができます。

遺言書を書き直すにあたって、相続人らの同意は不要です。

遺言者の生前は、相続人には何の権利もないからです。

定期的に見直して、より良い遺言書にすることができます。

2公正証書遺言の効力持続期間の実態

①遺言書作成後長期間経過しても時効消滅しない

公正証書遺言に、有効期限はありません。

遺言書を作成してから長期間経過しても、遺言書の効力が無くなることはありません。

作成後長期間経過しても、遺言書の効力が時効消滅することはありません。

何十年も前に作成した遺言書であっても、遺言者死亡で効力が発生します。

②死亡後長期間経過しても時効消滅しない

遺言者死亡で、公正証書遺言に効力が発生します。

遺言書に効力が発生してから長期間経過しても、遺言書の効力が無くなることはありません。

死亡後長期間経過しても、遺言書の効力が時効消滅することはありません。

遺言者が死亡した後長期間経過してから、相続財産が見つかることがあります。

死亡後何十年経過しても、遺言書を執行することができます。

③公証役場は実質無期限保管

公正証書遺言を作成したら、遺言書原本は公証役場で厳重保管されます。

遺言者が死亡した後、相続人は遺言書の謄本を請求することができます。

公正証書の保管期間は、公証人法施行規則27条で20年と決められています。

特別な理由があるときは、理由がある間保管を続けます。

公正証書遺言は、特別な理由があると考えられています。

特別な理由とは、遺言者の生存や相続手続の必要性と言えます。

通常、次の期間保管されています。

・遺言者が死亡後50年

・公正証書遺言作成後140年

・遺言者の生後170年

多くの公証役場では、上記の期間を超えても保管を続けています。

公正証書遺言が必要なのに、取得できなくなることがないように運用されています。

④寄与分と特別受益の主張は10年

寄与分とは、被相続人の財産の増加または維持に寄与した相続人に対して法定相続分以上の財産を取得させる制度です。

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から受けた特別な利益です。

特別受益は、いったん相続財産に算入して遺産分割をします。

寄与分と特別受益は、相続人間の公平の制度です。

寄与分と特別受益の主張には、10年の期間制限が設けられました。

10年の期間制限は、裁判上の主張ができないだけです。

相続人間で合意できれば、遺産分割協議を成立させることができます。

証拠が散逸すると、相続人間で合意することは困難です。

10年の期間制限ができたことによって、証拠保全の重要性が増したと言えます。

相続人間の紛争を長期化させないため、遺言書の記載が重要になります。

例えば、「寄与分として相続人〇〇〇〇に財産〇〇〇〇を相続させる」と明記することができます。

10年の期間制限を回避して、遺言執行をすることができます。

実務的にも、早期の遺言執行が望まれます。

3公正証書遺言の効力発生におけるリスク

①形式不備は極めて稀

公正証書遺言作成におけるルール違反があった場合、公正証書遺言は無効になります。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成します。

手続不備で無効になることは、考えられません。

1年間に作成された公正証書遺言数万件に対して、無効判例はわずか数件です。

公証人は法律の専門家だから、手続不備がないように厳重にチェックするからです。

②遺言能力がないと遺言書は無効

遺言書を有効に作成するには、次の条件を満たす必要があります。

・遺言者が15歳以上であること

・遺言者に遺言能力があること

遺言能力とは、遺言書に書いた内容を理解し遺言の結果のメリットデメリットを充分に判断できる能力です。

高齢になると、判断能力が低下することが多くなります。

多少判断能力が低下しても遺言書に書いた内容が簡単なら、遺言の結果のメリットデメリットを充分に判断できるかもしれません。

大幅に判断能力が低下して、かつ、遺言内容が複雑なら、遺言の結果のメリットデメリットを充分に判断できないでしょう。

遺言能力の有無が心配な人が遺言書を作成する場合、医師の診断書があると心強いでしょう。

医師の診断書は、客観的な証拠になるからです。

できることなら、かかりつけの医師に公正証書遺言作成の証人になってもらうといいでしょう。

遺言能力が失った後に作成した公正証書遺言は、無効になります。

③複数の遺言書があると古い日付の遺言は撤回

遺言書が複数見つかることがあります。

複数の遺言書があっても内容が両立できるなら、遺言書は有効です。

複数の遺言書があって内容が両立できない場合、古い日付の遺言書は撤回されたと扱われます。

④公正証書遺言があっても遺留分侵害額請求

遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。

配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

さまざまな家族の事情から、一部の相続人に相続させたくないことがあるかもしれません。

遺言書を作成するだけで、相続人の遺留分を奪うことはできません。

他の相続人に財産を引き継ぐ遺言書を作成することがあります。

公正証書遺言があっても、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺言書を作成して、遺留分侵害額請求を認めないと書くことがあります。

遺留分侵害額請求を認めないと書いても、無効です。

遺留分に満たない相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

家族のトラブルを望む人はいないでしょう。

遺言書を作成するときは、遺留分を侵害しない内容がおすすめです。

⑤公正証書遺言があっても遺産分割協議

遺言書を確認したところ、内容が大きく偏っていることがあります。

一部の相続人の遺留分を侵害するような遺言書である場合、相続人間で大きなトラブルになるでしょう。

遺言者が高齢になってから作成した遺言書は、遺言能力を失った後に作成された可能性があります。

相続人間でトラブルを起こす可能性がある遺言書なのに、あえて執行してトラブルにする必要はありません。

相続人全員で相続財産の分け方を合意した方が合理的です。

公正証書遺言があっても、相続人全員の合意で遺産分割協議をすることができます。

4公正証書遺言の効力を争う方法

①遺言無効確認調停の申立て

相続人間で話し合いがつかない場合、家庭裁判所の助力を得ることができます。

調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする相続人全員の話し合いです。

相続人だけで話し合いをすると、感情的になってしまうかもしれません。

家庭裁判所の調停委員がいると、少し冷静に話し合いができるかもしれません。

調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスされると、納得しやすいでしょう。

調停委員のアドバイスを受けて、相続人全員の合意を目指します。

②遺言無効確認訴訟を提起

家庭裁判所の助力を得ても合意できない場合、地方裁判所で遺言無効確認訴訟を提起します。

訴訟は、法定相続人・受遺者・受贈者・遺言執行者などを被告として提起するのが一般的です。

訴訟を通して、原告被告が証拠を提出して互いの言い分を主張します。

最終的には、裁判官が判断します。

5公正証書遺言を確実に実現する方法

①遺言執行者の選任

遺言書を作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言者が死亡したときに、遺言書は効力が発生します。

遺言執行者が職務を開始したら、遺言書の内容を実現してくれます。

例えば、遺言執行者は単独で、銀行口座の凍結解除や不動産の名義変更ができます。

遺言執行者がいると確実に遺言内容を実現してくれるから、遺言者は安心です。

遺言執行者がいると手間と時間がかかる相続手続をおまかせできるから、相続人は安心です。

遺言執行者は、司法書士などの専門家を指名することができます。

司法書士などの専門家に依頼すると、相続人間のトラブル防止になります。

公平性と中立性が担保されるからです。

司法書士などの専門家であれば、相続手続がすみやかに進められます。

②信託を活用して財産保全

「〇〇〇〇が20歳になったら、500万円遺贈する」など条件付きの遺言があった場合、条件を満たすまで遺言に効力が発生しません。

条件を満たしたときに確実に遺言を実行するために、信託を活用することがおすすめです。

信託を活用すると、確実に財産を保全できるからです。

信託設定時には、税務上のリスクがある可能性があります。

税務署や税理士などと、相談するといいでしょう。

6相続人に対する遺贈を司法書士に依頼するメリット

遺言書を作成して、自分の財産をだれに引き継ぐのか自由に決めることができます。

書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。

遺言書の内容に不満を持つと、相続人は遺言書の無効を主張するでしょう。

ひとりで遺言書を作るより、司法書士などの専門家のサポートを受けるのがおすすめです。

遺言書を作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言書で遺言執行者を指名するのがおすすめです。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書作成をサポートする司法書士に、遺言執行を依頼することができます。

遺言書の内容を見て遺留分を侵害しないように、アドバイスをしてもらうこともできます。

円滑に相続手続を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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