遺産相続で何も言って来ない

1遺産相続で何も言って来ない

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②死亡届を出しても市区町村役場から通知されない

人が死亡すると、医師は死亡診断書を作成します。

死亡診断書を書いてもらったら、市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡届の提出は、相続手続のスタートです。

市区町村役場は死亡届を受理した後、戸籍に死亡を記録します。

戸籍に死亡を記録するだけで、相続人に通知しません。

死亡届を出しても、市区町村役場から通知されません。

③遺言執行者は通知義務がある

大切な家族が死亡したら、真っ先に連絡するでしょう。

さまざまな家族の事情から、被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合っていないことがあります。

自分が相続人になる相続が発生したはずなのに、何も言って来ないことがあります。

しばらくしてから見知らぬ司法書士や弁護士から、連絡があるかもしれません。

被相続人が生前に、遺言書を作成することがあります。

遺言書を作成する場合、司法書士や弁護士の助言を求めるでしょう。

遺言書作成に助言をした司法書士や弁護士が遺言執行者に指名されることがあります。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者が就任した場合、遺言執行者に就任したことを通知しなければなりません。

遺言執行者には、通知義務があります。

④遺言書検認の申立てがあると家庭裁判所から呼出し

被相続人が遺言書を作成することがあります。

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が取りまとめる遺言書です。

公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。

相続が発生した後、遺品整理をしていると遺言書を見つけることがあります。

生前に遺言書を預かってほしいと依頼されているかもしれません。

自宅などで自筆証書遺言を見つけた人や遺言書を預かっている人は、家庭裁判所に提出する必要があります。

封筒に入って封がされた遺言書は、家庭裁判所で開封してもらいます。

家庭裁判所に提出して開封してもらう手続を遺言書検認の申立てと言います。

遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を呼出します。

遺言書を開封するとき、相続人に立会いをしてもらうためです。

家庭裁判所に呼び出されても、欠席して差し支えありません。

検認期日に欠席しても、不利な扱いを受けることはないからです。

遺言書検認の申立てがあると、家庭裁判所から呼出しがあります。

⑤自筆証書遺言保管制度を利用していると法務局から通知

自筆証書遺言を作成した後は、自分で保管するのが原則です。

自筆証書遺言は、保管場所に困るのが難点です。

保管場所を家族と共有しないと、相続が発生した後に見つけてもらえないかもしれません。

保管場所を家族と共有すると、家族が遺言書を破棄したり改ざんしたりするかもしれません。

自筆証書遺言書を法務局に提出して保管してもらうことができます。

自筆証書遺言保管制度を利用していると、遺言者が死亡したときに相続人に対して通知がされます。

⑦相続手続期限のスタートは知ってから

相続手続には、期限があることがあります。

遺産相続で何も言って来ないと、手続ができなくなるのではないかと心配になるかもしれません。

相続手続に期限がある場合、原則として期限のスタートは知ってからです。

例えば、よくある相続手続の期限は、次のとおりです。

・相続放棄

相続の開始を知ってから3か月

・遺留分侵害額請求

相続の開始を知ってから1年

・相続登記

所有権の取得を知ってから3年

・相続税申告

相続の開始を知ってから10か月

相続があったことを知らなくても、知ってから手続すれば問題がありません。

遺留分侵害額請求は、相続の開始から10年経過すると請求ができなくなります。

相続開始を知らなくても10年経過で、請求が除斥されるからです。

2遺産分割協議は相続人全員で

①一部の相続人で遺産分割協議はできない

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

一部の相続人だけで、相続財産の分け方を決めることはできません。

一部の相続人を除外して、遺産分割協議はできません。

相続人全員の合意が必要だから、遺産相続で連絡をしてくるでしょう。

一部の相続人だけで、遺産分割協議を成立させることはできません。

②勝手に押印した遺産分割協議書は無効

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人全員の合意ができたら、合意内容を書面に取りまとめます。

合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議書の記載内容に間違いがないか相続人全員に確認してもらいます。

問題がなければ、相続人全員が記名し実印で押印します。

遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

一部の相続人だけで、遺産分割協議を成立させることはできません。

相続手続を進めるためには、相続人全員の押印が必要です

実印は、大切な場面でのみ使うことが多いでしょう。

実印を手許で保管しないで、実家などに預けたままになっていることがあります。

本人の同意がないのに、遺産分割協議書に押印がされることがあります。

勝手に押印した遺産分割協議書は、無効です。

③遺産分割協議のやり直しに期限はない

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続人本人の合意がないのに、遺産分割協議書に押印しても無効です。

遺産分割協議のやり直しを求めることができます。

遺産分割協議のやり直しに期限は、ありません。

3何も言って来ないときに注意すること

①凍結していない口座から引出し

銀行は口座の持ち主が死亡したことを知った時点で、口座を凍結します。

口座の凍結とは、口座取引を停止することです。

口座取引には、次のものがあります。

・ATMや窓口での引出し

・年金などの振込

・公共料金などの引落

銀行が口座を凍結するのは、口座の持ち主が死亡したことを知ったときです。

人が死亡すると、医師は死亡診断書を作成します。

死亡診断書が作成されても、病院から金融機関に連絡されることはありません。

死亡診断書を書いてもらったら、市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡届が提出されても、市区町村役場から金融機関に連絡されることはありません。

勝手に金融機関などに連絡したら、個人情報の漏洩になるからです。

口座の持ち主が死亡したら、家族が預貯金の有無や相続手続について問い合わせをするでしょう。

問合せを受けたとき、銀行は口座の持ち主の死亡を知り口座を凍結します。

口座の持ち主が死亡しても、家族が何も問い合わせをしないことがあります。

家族が何も言わなければ、口座の持ち主の死亡を知ることはないでしょう。

口座の持ち主の死亡を知らないから、口座を凍結しません。

被相続人の家族などは、日常的に預貯金の引出しを依頼されていたでしょう。

キャッシュカードの保管場所や暗証番号を知っているでしょう。

キャッシュカードを使って預貯金を引出して、自分のために使ってしまうかもしれません。

一部の相続人が凍結していない口座から引出しをしている可能性があります。

②現物財産が持ち出される

被相続人が自宅などで、高価な宝飾品や美術品を保管していることがあります。

自宅の金庫などに、現金を保管しているかもしれません。

銀行の預貯金や証券会社に預けている株式は、相続手続が必要になります。

遺産分割協議書などで相続人全員の合意があることを証明しなければなりません。

高価な宝飾品や美術品を勝手に持ち出すかもしれません。

現金などを持ち出して使い込んだら、財産の正確な金額は分からなくなるでしょう。

相続財産が少なく提示されると、取得できるはずの財産を取得することができなくなります。

一部の相続人に現物財産が持ち出される可能性があります。

③不動産は法定相続分で登記ができる

相続人には、さまざまな経済事情の人がいるでしょう。

経済的に困窮している相続人がいる場合、すみやかに財産を手に入れたいと考えることがあります。

相続人全員が法定相続分で相続する相続登記をすることができます。

相続人全員が法定相続分で相続する相続登記は、一部の相続人が申請をすることができます。

相続人全員が法定相続分で相続する相続登記は保存行為と考えられているからです。

相続人全員が法定相続分で相続する相続登記とした後、自分の相続分を売却することができます。

自分の持分を売却する場合、他の共有者の同意は不要です。

見知らぬ第三者と不動産を共有することになります。

相続人全員が法定相続分で相続する相続登記がされる可能性があります。

4相続発生は確認できる

①相続人は戸籍謄本を取得できる

相続が発生しているはずなのに、何も言って来ないと不安になるでしょう。

相続人は、自分で相続発生を確認することができます。

すでに死亡していれば、戸籍謄本に記載されているはずだからです。

被相続人が直系血族であれば、本籍地の市区町村役場でなく近隣の市区町村役場で戸籍謄本を請求することができます。

直系血族は、戸籍謄本の広域交付の対象だからです。

相続人は戸籍謄本を取得することで、相続発生を確認することができます。

②相続放棄の有無は家庭裁判所で調査

相続人になる人は、法律で決まっています。

遺産相続で何も言って来ないのは、相続放棄をしたからかもしれません。

相続手続に関与したくないからを理由に、相続放棄をすることができます。

相続放棄をしても、次順位相続人に連絡する義務はありません。

相続放棄をしたか家庭裁判所に質問することができます。

家庭裁判所に対してする質問を相続放棄申述の有無の照会と言います。

先順位の相続人全員が相続放棄をした場合、相続人になります。

相続放棄の有無は、家庭裁判所で調査することができます。

③公正証書遺言の有無は公証役場で調査

被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。

遺言書がある場合、遺言書のとおりに財産を分けることができます。

遺言書のとおりに財産を分けるから、何も言って来ないかもしれません。

被相続人が公正証書遺言を作成したか分からない場合、公証役場で調べてもらうことができます。

公正証書遺言を作った場合、公証役場は公正証書遺言を厳重に保管しています。

公証役場に保管されている公正証書遺言は、データで管理されています。

遺言した人の名前、公証人の名前、公証役場の名前、遺言書を作った日をコンピューターで調べてもらうことができます。

昭和64年1月1日以降に作った公正証書遺言、秘密証書遺言が対象です。

遺言者が死亡した後であれば、相続人は公証役場に対して遺言書作成の有無を調査することができます。

④自筆証書遺言保管制度利用の有無は法務局で調査

被相続人が自筆証書遺言保管制度を利用していたか分からない場合、法務局で調べてもらうことができます。

自筆証書遺言保管制度を利用していた場合、自筆証書遺言は法務局が厳重に保管しています。

法務局に保管されている自筆証書遺言は、データで管理されています。

遺言者が死亡した後であれば、相続人は法務局に対して遺言書保管の有無を調査することができます。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

keyboard_arrow_up

0527667079 問い合わせバナー 事前相談予約