遺産分割協議-寄与分が認められるケース

1寄与分が認められるのはハードルが非常に高い

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、特別な貢献をした人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらうことで、相続人間の実質的な公平を図ろうとするものです。

寄与分が認められるためには次の条件を満たす必要があります。

①特別の寄与があること

②財産が実質的に増加したこと

③特別の寄与と財産増加に因果関係があること

①~③の条件のうち、①を満たすハードルが非常に高いのが実情です。

①が認められるためには、通常の寄与でなく特別の寄与が条件になります。

特別の寄与とは、被相続人との身分関係から考えて、通常期待される程度を超える貢献のことです。

通常、家業や療養看護で苦労してきた人は相続で報われたいと考えます。

寄与分の制度は、苦労してきた人に報いて実質的公平を図る制度です。

多くの場合、被相続人との身分関係から考えて、寄与が特別であると認められるのは非常に高いハードルがあります。

2寄与分が認められるケース

寄与の内容について、「相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法」と民法は定めています。

①相続人の事業に関する労務の提供のケース

典型的には、被相続人が農業や個人事業をしていたケースで、相続人が一緒に協力してきた場合です。

通常であれば従業員を雇用してやる程度の仕事を無償で、かつ、長期間継続していたことがポイントになります。

無償とは、完全に無償でない場合も含みます。

報酬名目ではあるが、無償と同視できるような低額の小遣いである場合などです。

会社のお休みの日に手伝っていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

帰宅してから短時間手伝っていた場合、①特別の寄与があったと判断されないでしょう。

特別な寄与があったと認められる場合でも、財産の維持増加に貢献したというためには、数か月では足りません。

明確な基準はありませんが、少なくとも1年以上は継続して従事していたことが必要でしょう。

労務の提供は被相続人個人に対してしたものである必要があります。

被相続人の事業が会社組織になっている場合があります。

被相続人が代表者の会社に労務を提供した場合、被相続人に対して寄与があったとは認められません。

会社と会社の代表者は別の人格だからです。

無償で、被相続人の事業に従事していた場合、相続人の生活費は被相続人が負担していたことでしょう。

寄与分が認められる場合でも、相続人の生活費分は減額されます。

②財産上の給付のケース

具体的には、被相続人が事業を始める際に、開業資金を援助した場合や借金の肩代わりをした場合です。

通常の生活費を援助していた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

日常の小遣いを渡していた場合、①特別の寄与があったとは言えないでしょう。

被相続人の経済状況を踏まえて、ある程度まとまった金額を渡したことがポイントです。

相続人による援助によって財産が実質的に増加し、かつ、相続発生時に増加の効果が残っていることが必要です。

相続発生時に増加の効果が失われている場合、寄与分が認められません。

被相続人にある程度まとまった額を貸し付けた場合、通常、相続人に返済を求めることができるはずです。

相続人に返済を求めることができる場合、①特別の寄与があったと認められるのは稀です。

労務の提供と同様に、給付の対象は被相続人でなければなりません。

被相続人が代表者を務める会社に対して資金を給付した場合、被相続人に対して寄与があったとは認められません。

会社と会社の代表者は別の人格だからです。

③被相続人の療養看護のケース

寝たきりや身体が不自由な被相続人のため、療養看護や介護をした場合です。

会社のお休みの日に自宅へ行って介護をしていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

仕事帰りに短時間介護をしていた場合、①特別の寄与があったとは言えないでしょう。

介護ヘルパーを利用していたケースであっても、ヘルパー代金を相続人が負担していた場合は財産の減少を阻止したと言える場合があります。

被相続人の収入や資産で生活していた相続人については、①特別の寄与があったとは認められにくいものです。

寄与分が認められるためには、①特別の寄与によって財産が実質的に増加したことが必要です。一生懸命介護したとか、心を込めてお世話をしたなどは、財産増加とは無関係です。

財産の実質的増加と無関係な事実は、寄与分になりません。

被相続人が完全看護の病院に入院していた場合、①特別の寄与があったとはほとんど認められません。

完全看護の病院なのに、相続人がつきっきりでお世話をしなければならないような事情があるような特殊なケースでは、①特別の寄与があったと認められる余地があります。

④被相続人と同居のケース

被相続人と同居して面倒を見ていた場合が考えられます。

単に、被相続人と同居して面倒を見ていた場合、①特別の寄与があったとは認められないでしょう。

夫婦であれば相互扶助義務がありますし、親族であれば扶養義務があるからです。

被相続人と同居して面倒を見ていた点は、通常の寄与と判断されることが多いです。

同居して苦労したなどは、財産増加と無関係な事実です。

財産の実質的増加と無関係な事実は、寄与分になりません。

⑤財産管理のケース

典型的には、被相続人が収益不動産などを所有していたケースで、相続人が財産管理をしていた場合です。

具体的には、被相続人に代わって、賃貸借契約を締結、家賃の回収、賃借人の立ち退き交渉など収益不動産の管理をしている場合です。

賃貸アパートの管理を管理会社に委託している場合、仕事がお休みの日に清掃や除草をしている程度では特別の寄与と認められないでしょう。

収益不動産を運用管理して、財産が増加したように見えるかもしれません。

実際に財産が増加していても、①特別の寄与があったとは認められにくいものです。

一般的に言って、資産運用にはリスクがあるからです。

資産運用のリスクは被相続人が負担しています。

資産運用が偶然うまくいったことを理由に寄与分を認めるのは、不公平だからです。

このことは不動産だけでなく、株式などのリスクのある資産運用全般に対して同じことが言えます。

相続人が被相続人の成年後見人に就任している場合があります。

成年後見人が報酬を得ていない場合は寄与分があるように見えるかもしれません。

成年後見人は公的な職務で本人の財産管理をするものです。

公的な職務でやるべきことをしただけだから、寄与分が認められるべき特別の寄与にあたるというのは難しいでしょう。

3生前対策を司法書士に依頼するメリット

通常、家業や療養看護で苦労してきた人は相続で報われたいと考えます。

わざわざ報われない苦労をする人はいません。

寄与分は被相続人のために貢献した人に対して、相続分以上の財産を受け取ってもらうことで報いようとする制度です。

相続人の貢献に報いることで実質的な公平を図ろうとする制度です。

寄与分が認められるためには、非常に高いハードルを超えなければなりません。

家業や療養看護で苦労してきた人はだれなのか、どれだけ苦労をしてくれたのか被相続人は分かっているはずです。

被相続人は、家業や療養看護で苦労してきた人対して、報いてあげることができます。

トラブルにならない形で、家業や療養看護で苦労してきた人対して、報いてあげることができるのは、被相続人だけです。

被相続人が生前に対策しておけば、家族のトラブルを確実に減らすことができます。

家族がトラブルにならず相続を経験すると、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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