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1不動産の所有者に固定資産税がかかる
①1月1日現在の所有者に固定資産税納税義務
固定資産税とは、固定資産に対してかかる税金です。
固定資産税ががかかる固定資産には、土地、家屋、製造設備や事業用資産などの償却資産があります。
固定資産が所在する市区町村に対して、税金を納めます。
固定資産税を納める人を納税義務者と言います。
納税義務者は、1月1日現在、土地、家屋、及び償却資産の所有者として、固定資産税課税台帳に登録されている人です。
1月1日現在の所有者は、固定資産税を納める義務があります。
②未払い固定資産税は相続財産
固定資産税は、まとめて一括する方法と年4回の分割払いする方法があります。
例えば、名古屋市では4月、7月、12月、翌年2月に分割払いをすることができます。
年4回の分割払いをしていた人が途中で死亡することがあります。
4月分と7月分を納付した後8月に死亡した場合、12月分と翌年2月分は未納になります。
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。
被相続人が税金を納める義務を果たさないまま死亡した場合、税金を納める義務は相続財産です。
未払い固定資産税は、相続財産です。
③相続発生で口座凍結
固定資産税は、納付書で納付する方法と口座引き落としで納付する方法があります。
被相続人が固定資産税を口座引き落としで納付していることがあります。
口座の持ち主が死亡したことを金融機関が知った場合、口座を凍結します。
口座の凍結とは、口座取引をできなくすることです。
口座取引ができなくなるから、固定資産税の引落ができません。
固定資産税の口座引き落としができなかった場合、市区町村役場に連絡して納付書で納付します。
2遺産分割協議中に固定資産税がかかる
①相続発生後の固定資産税は相続財産ではない
固定資産税とは、固定資産に対してかかる税金です。
1月1日現在の所有者は、固定資産税を納める義務があります。
所有者が死亡しても、固定資産税はかかります。
所有者が死亡したら、被相続人のものは相続人が相続するからです。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
遺産分割協議が成立するまで、相続財産は相続人全員の共有財産です。
遺産分割が成立しないまま1月1日を迎えた場合、1月1日現在の所有者は相続人全員です。
相続人全員に対して、新年の固定資産税が課されます。
新年に課された固定資産税は、相続財産ではありません。
被相続人は、死亡後の固定資産税を払う義務を負っていません。
被相続人から引き継いだ義務ではないからです。
相続人全員が新たに負担した相続人全員の固有の義務です。
②遺産分割協議中は相続人全員の連帯責任
固定資産税は、相続人全員の連帯責任です。
相続人全員が法定相続分で固定資産税を負担します。
遺産分割協議が長期化すると、固定資産税も高額になります。
③被相続人名義で納税通知書
固定資産税は、1月1日現在の所有者に課されます。
遺産分割協議中であっても新たに固定資産税がかかります。
遺産分割協議中の場合、事実上、不動産の名義変更をすることができません。
相続登記がされない場合、被相続人の住所に被相続人名義で納税通知が送られます。
納税通知が被相続人名義になっていても、固定資産税の納税義務は相続人全員の義務です。
④期限が過ぎると延滞税
被相続人名義で納税通知書が送られても、固定資産税の納税義務は相続人全員の義務です。
被相続人の住所地にだれも住んでいないことがあります。
納税通知に気づかないまま、期限が過ぎてしまうおそれがあります。
納税通知が届けられず、市区町村役場に返送されてしまうことがあります。
固定資産税を納めないまま期限を過ぎてしまったら、延滞税がかかります。
⑤滞納を放置すると代位登記のおそれ
固定資産税等を滞納した場合、滞納処分が開始します。
滞納処分が開始した場合、納税義務者の財産を差押えることができます。
差押の前提として、債権者代位で相続登記をすることができます。
被相続人名義の不動産に対して、相続人の税金で差押をすることができないからです。
相続人の名義にするため、法定相続分で相続登記をします。
債権者が代位登記をする場合、相続人に連絡することはありません。
相続人がどのような遺産分割協議をしているのかお構いなしで代位登記をします。
相続人が知らないところで、勝手に登記を入れてきます。
遺産分割協議が成立したから消して欲しいと文句を言うことはできません。
税金を取り立てるために差押をしたものだからです。
税金の滞納を放置した場合、代位登記がされるおそれがあります。
3固定資産税を含めて遺産分割協議
①相続代表者指定届を提出しても連帯責任
被相続人の住所地が空き家になっている場合、納税通知に気づかないおそれがあります。
相続代表者指定届とは、固定資産税の納税通知書を受け取る代表者を指定する届出です。
相続代表者指定届を提出した場合、納税通知書は代表相続人のところに送られます。
代表相続人のところに送られるから、納税通知に気づかないといったことを減らすことができます。
相続代表者指定届は、納税通知書を受け取る人を届け出ただけです。
納税通知書には、納付書が同封されます。
納付書が同封されても、代表相続人だけが納税義務者になるわけではありません。
相続財産は、相続人全員の共有財産だからです。
相続代表者指定届は、納税通知書を受け取る代表者を指定したに過ぎません。
納税義務は、相続人全員の連帯責任です。
相続代表者指定届を提出しても、納税義務は相続人全員の連帯責任のままです。
②固定資産税を納めても相続人全員の共有財産
1月1日現在の所有者は、固定資産税を納める義務があります。
相続代表者指定届を提出した場合、代表相続人のもとに納税通知書が届きます。
納税通知書には、納付書が同封されます。
代表相続人が納付書で固定資産税を納付しても、所有者になるわけではありません。
固定資産税は、相続人全員に納付義務があります。
代表相続人が納付した場合、他の相続人のため立替払いをしたと言えます。
他の相続人に対して法定相続分で固定資産税を清算してもらうことができます。
固定資産税を納めても、不動産は相続人全員の共有財産です。
③遺産分割協議は相続人全員の合意で成立
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続財産の分け方は、相続人全員が合意できるのであればどのように分けても差し支えありません。
遺産分割協議中に新たに発生した固定資産税は、相続財産ではありません。
相続人全員の固有の義務だけど、固有の義務を含めて合意をすることができます。
固定資産税は、1月1日現在の所有者に課されます。
例えば、2024年8月に相続が発生した場合、2024年1月1日の所有者は被相続人です。
2024年12月と2025年2月に納める固定資産税は、被相続人が納めるべき固定資産税です。
2024年12月と2025年2月に納める固定資産税は、未払い固定資産税です。
遺産分割協議が成立しないまま2025年1月1日を迎えたら、所有者は相続人全員です。
固定資産税の納税義務者は、相続人全員です。
2025年4月、7月、12月、2026年2月の固定資産税納付義務は、相続人全員にあります。
2025年1月10日に遺産分割協議が成立した場合、その財産を取得する人が固定資産税を負担します。
2025年1月10日に遺産分割協議が成立しても、2025年4月、7月、12月、2026年2月の固定資産税納付義務は、相続人全員のままです。
固定資産税は、1月1日現在の所有者に課されるからです。
2025年1月10日に遺産分割協議が成立した場合、2026年4月以降は不動産を取得する人が固定資産税を負担します。
何となく納得できない気持ちになる人も多いでしょう。
納税義務は納税義務として、相続人全員で実際の負担者を合意することができます。
キチンと納税されれば、実際の負担者についてあれこれ言われることはありません。
不動産を取得する人だけでなく固定資産税の負担についても、まとめて合意するのが合理的です。
4相続放棄をしても固定資産税の納税義務
①未払い固定資産税は払わなくてもいい
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、申立てをした人だけに通知します。
家庭裁判所は自主的に市区町村役場などに相続放棄を認めたことを連絡しません。
被相続人に未払い固定資産税がある場合、税金を払ってくださいと通知してきます。
相続放棄が認められた場合、被相続人の未払い固定資産税は引き継ぎません。
市区町村役場は相続放棄をしたことを知らないから、通知してきただけです。
通知があっても、あわてて納付する必要はありません。
被相続人の未払金を払った場合、単純承認と見なされます。
単純承認をしたら、相続放棄が無効になるからです。
②相続発生後の固定資産税の納税義務を負う可能性がある
納税義務者は、1月1日現在、土地、家屋、及び償却資産の所有者として、固定資産税課税台帳に登録されている人です。
相続発生後の固定資産税は、納税義務者の固有の義務です。
被相続人から相続した義務ではありません。
相続放棄のタイミングによっては、所有者として固定資産税課税台帳に登録されることがあります。
所有者として固定資産税課税台帳に登録された場合、固定資産税の納税義務を負う可能性があります。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそ、トラブルが防止できるといえます。
遺産分割協議書の書き方に不備があると、トラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。