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1相続財産の分け方は5種類ある
分け方①現物分割
相続財産には、いろいろな財産が含まれています。
不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。
相続財産の大部分が、不動産のような分けにくい財産で場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。
現物分割とは、広大な土地などを相続人の人数で分割して、相続する方法です。
広大な土地でないと、実現しにくい方法です。
もともと広大な土地であれば、現物分割をしても問題がないでしょう。
極端に小さい土地になると使い勝手が悪くなります。
不動産の価値が下がってしまいます。
あまり現実的ではないかもしれません。
分け方②代償分割
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人からその分のお金をもらう方法です。
土地を分割するわけではないので、極端に小さな土地になって価値が下がる心配はありません。
代償分割では、不動産を相続する相続人が他の相続人に払うお金を用意する必要があります。
不動産は、一般的に重要な財産であることが多いでしょう。
相続財産の大部分が不動産で、かつ、値段の高い不動産だった場合、代償金が用意できないかもしれません。
不動産の値段をいくらと考えてお金を払うことにするのか、話し合いが求まらないおそれがあります。
相続人のうちだれが現実に不動産を相続することにするのか、話し合いがまとまらないおそれがあります。
分け方③換価分割
換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。
実際に売れてから、お金で分ける方法です。
不動産の値段をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。
せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられるかもしれません。
売却することに対して、相続人全員の話し合いがまとまらないおそれがあります。
売却しようとしたのに買い手がつかないと、相続手続が長引くおそれがあります。
分け方④共有
共有とは、相続人全員で共有する方法です。
共有は、最も公平に見えやすいでしょう。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意ができない場合、共有が選ばれることがあります。
共有は弊害が多く、安易に共有にする方法はもっとも避けるべきです。
共有にした場合、共有者全員の同意がなければ売却することはできません。
共有者が死亡したら、相続が発生して関係者が増えることが予想されます。
関係者が多くなればなるほど、権利関係が複雑になります。
共有はデメリットが大きいから、後々、共有物分割をしようという話になるでしょう。
結局のところ、問題の先送りになるだけです。
相続トラブルが長期化しますから、家族の絆が壊されてしまいます。
分け方⑤用益権の設定による分割
用益権とは、不動産を自分で使ったり、人に貸して賃料を得たりする権利です。
用益権の設定による分割とは、一部の相続人に使う権利を設定して、他の相続人が使う権利のない所有権を相続する方法です。
家族が守ってきた不動産を手放すことなく相続ができます。
相続人のうち、だれが使う権利を得るのか、話し合いがまとまらないおそれがあります。
使う権利のない所有権をだれが相続するのか、、話し合いがまとまらないおそれがあります。
2債務不履行があっても一方的解除はできない
①代償分割の代償金を払ってくれない
相続財産の分け方について相続人全員の話し合いがまとまった場合、合意内容どおりに相続財産を受け取ります。
不動産のように高額で分けにくい財産を受け取った人は、自己の固有の財産から金銭を支払うことで調整することがあります。
一般的な売買契約において、代金を支払わない場合、契約を解除することができます。
相続財産においては、このような解除制度はありません。
いったん相続財産の分け方を相続人全員で合意した場合、遺産分割協議は終了します。
遺産分割協議が終了した後は、代償金を支払う人と受け取る人の問題になります。
金銭を支払う人と受け取る人の話し合いで解決を図ります。
代償金を支払うと約束した人が支払ってくれなくても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
相続財産の分け方の合意において、代償金の支払が重要な要素であっても債務不履行を理由として解除することはできません。
代償分割の代償金を払ってくれない場合でも、一方的解除はできません。
②遺産分割で決めた負担を履行しない
相続財産の分け方を決める際に、一部の相続人が負担をつけて、他の相続人より多くの財産を受け取る合意をする場合があります。
例えば、親の介護をすることを条件に財産を多く受け取るケースです。
他の相続人より多くの財産を受け取った相続人が負担を履行しない場合があります。
財産を多く受け取った相続人が充分に親の介護をしていないと、不満に思うこともあるでしょう。
親の介護を充分にしていなくても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
いったん相続財産の分け方を相続人全員で合意した場合、遺産分割協議は終了するからです。
遺産分割で決めた負担を履行しない場合でも、一方的解除はできません。
③相続債務の履行をしない
被相続人がマイナスの財産を残していることがあります。
例えば、相続財産に自宅と自宅の住宅ローンがある場合です。
相続財産というと、プラスの財産だけをイメージしがちです。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続財産です。
自宅と自宅の住宅ローンがある場合、一部の相続人が住宅ローンの支払をすることを約束して自宅を受け継ぐ合意をするでしょう。
自宅を受け継ぐ相続人が住宅ローンの支払いをする約束は、相続人間の内部的合意事項です。
相続人の内輪の合意事項だから、銀行には関係ない話です。
相続人間の合意事項に関係なく、銀行は相続人全員に対して法定相続分で住宅ローンの支払いを請求することができます。
自宅を受け継いだ相続人が住宅ローンを支払う約束をしたからと言って、住宅ローンの支払いを拒むことはできません。
遺産分割協議書に「自宅を引き継ぐ人が住宅ローンを引き継ぐ」と記載して相続人全員が署名して実印押印しても銀行には関係ありません。
自宅を受け継いだのに住宅ローンを支払わない場合であっても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
相続債務の履行をしない場合でも、一方的解除はできません。
3相続人全員で遺産分割協議の合意解除ができる
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定します。
その後に相続人が死亡しても、遺産分割協議のやり直しはできません。
例外は、相続人全員がやり直しに合意している場合です。
相続人全員が別の分け方の方が良かったと納得している場合です。
一部の相続人が遺産分割協議を法定解除をすることはできません。
法定解除とは、契約などで義務を負担する約束をしたのに履行されない場合に相手方が契約を一方的に解除することです。
遺産分割協議で約束したことを履行しない場合、他の相続人は遺産分割協議を一方的に解除することはできません。
遺産分割協議を相続人全員で合意解除をすることができます。
4遺産分割協議のやり直しの注意点
①第三者に渡った財産は取り返せない
当初の遺産分割協議で、財産を受け取った人が第三者に財産を譲渡している場合があります。
相続財産の分け方の合意をやり直すことはできても、第三者に渡ってしまった財産そのものは取り返せません。
当初の遺産分割から長時間経過した後に遺産分割のやり直しをする場合、財産状況が大きく変わっているおそれがあります。
遺産分割のやり直しまでに、財産を受け取った相続人が相続財産を使ってしまうからです。
遺産分割協議は、相続が開始したときの相続財産を前提に話し合います。
財産状況が大きく変わると混乱して、話し合いがつかなくなるおそれがあります。
②やり直しで不動産の名義が変わると名義変更が必要になる
当初の遺産分割協議で不動産に相続登記がされているでしょう。
やり直しをしたことによって別の人が相続することになった場合、あらためて名義変更が必要です。
当初の相続登記を取り消して、新たな遺産分割に基づく相続登記をします。
③税金の負担がある
相続財産の分け方の合意をやり直す場合、当初の課税が撤回されるわけではありません。
それどころか、新たな相続人間の合意は新たな財産の譲渡や贈与があったとされます。
高額な税金が追加で、課税されることになります。
相続財産の分け方について、相続人全員で話し合いによる合意をする必要があります。
新たに高額な課税があることを承知したうえで、相続人全員が合意しておくことが重要です。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
内容よりもとにかく文書さえあればいいという意識の低い人がいるのも事実です。
遺言書がなければ、遺産分割協議書は不可欠になると言って差し支えありません。
悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、他に財産はないからと言われてトラブルになることも多いものです。
有効な話し合いによる合意があって、有効な合意を文書に取りまとめるから、トラブルを防ぐことができるのです。
相続財産を分け方について相続人全員で合意すると、原則としてやり直しができません。
やり直しができる例外を紹介しましたが、他の相続人にとっては、合意を取り消すなど納得できないことも多いでしょう。
このような場合、証拠を用意して裁判所に持ち込むことになるでしょう。
裁判所で争うとなると、一般の人にとっては荷が重いので、弁護士に依頼することになります。
一方に弁護士がついたら、一般の人は対応しきれませんから弁護士に依頼することになるでしょう。
弁護士は依頼人の利益最大化のために働きますから、家族の絆が壊されてしまいます。
悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、納得できないときには、合意していないことをきちんと伝えましょう。
司法書士は合意を確認して書類を作成しています。
申告期限のために、とにかく書類だけ作るなど絶対にやめましょう。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。