賃貸マンションの賃借権は相続される

1賃貸マンションの賃借権は相続される

①賃借人死亡で賃貸借契約は終了しない

被相続人が賃貸マンションやアパートに住んでいることがあります。

賃貸マンションの賃借権とは、賃貸マンションやアパートのお部屋を借りる権利です。

賃借人が死亡しても、賃貸借契約は終了しません。

賃貸マンションの賃借権は、相続財産です。

賃借人が死亡したら、相続人に相続されます。

②相続人が住んでいなくても相続される

被相続人が借りていた賃貸マンションに、相続人が住んでいないことがあります。

賃貸マンションの賃借権は、相続人に相続されます。

相続人が住んでいても住んでいなくても、賃貸マンションの賃借権は相続されます。

賃貸マンションの賃借権は、相続財産だからです。

③賃貸マンションの賃借権相続に賃貸人の同意は不要

賃貸マンションの賃借権を相続する場合、賃貸人の同意は不要です。

相続は、被相続人の死亡によって当然に発生するからです。

賃貸人が反対しても、相続することができます。

④相続人が住んでいても遺産分割協議

相続人が複数いる場合、賃貸マンションに住んでいる相続人と住んでいない相続人がいるでしょう。

賃貸マンションのお部屋を借りる権利は、相続財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

賃貸マンションに住んでいる相続人であっても、当然に賃借権を相続できるものではありません。

賃貸マンションに住んでいても、遺産分割協議が必要です。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いです。

遺産分割協議で、賃借権を相続する人を決定します。

賃借権を相続する人が決まったら、賃貸人に通知します。

賃貸人の同意は、不要です。

⑤相続を認めない特約は無効

賃借権を引き継ごうとすると、賃貸人が難色を示すことがあります。

賃貸借契約書に「相続を認めない」「賃借人一代限り」などの特約が記載されていることがあるからです。

賃貸マンションなどの賃貸は、借地借家法の適用があるでしょう。

借地借家法とは、賃借人を保護するための法律です。

「相続を認めない」「賃借人一代限り」特約は、賃借人に不利な特約です。

借地借家法によって、無効になると考えられます。

「相続を認めない」「賃借人一代限り」特約は借地借家法によって無効になるから、相続することができます。

⑥終身建物賃貸借は終了する

終身建物賃貸借とは、60歳以上の賃借人が死亡するまで住み続けられる特別な賃貸借です。

終身建物賃貸借は、賃借人の死亡により終了します。

終身建物賃貸借による賃借権は、相続されません。

高齢者の住まいの安定を目的として、賃借人の終身の居住権を保障します。

終身建物賃貸借は、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく特別な賃貸借契約です。

都道府県知事の認可を受けた事業者だけが提供できる一代限りの契約です。

⑦使用貸借は終了する

賃貸借では、家賃の支払いがあります。

貸主と借主が特別な関係にある場合、賃料なしで貸し借りをすることがあります。

使用貸借とは、賃料なしで貸し借りをすることです。

使用借権者が死亡した場合、使用貸借は終了します。

使用貸借契約は、信頼関係に基づく契約だからです。

⑧公営住宅は相続しない

公営住宅は、住宅に困窮する住民のための福祉的制度と言えます。

一般の賃貸借契約とは、異なる取り扱いがされます。

公営住宅は賃借権ではなく、使用権と考えられています。

公営住宅による条件を満たすとき、使用が許可されます。

公営住宅の入居者が死亡した場合、使用権は当然には相続されません。

相続人が引き続き住み続けたい場合、相続人が条件を満たす必要があります。

相続人が条件を満たす場合、あらためて使用が許可されます。

相続人が条件を満たさない場合、退去義務が発生します。

2賃借権相続で家賃支払義務も相続

①遺産分割協議中に家賃が発生する

賃貸マンションの賃借権の分け方は、遺産分割協議で決定します。

遺産分割協議中は、相続人全員の共有財産です。

遺産分割協議中にも、家賃は発生します。

遺産分割協議中の家賃は、相続人全員に支払い義務があります。

賃貸人は、相続人の一人に家賃全額請求することができます。

相続分以上は弁済したくないなどと、意義を述べることはできません。

家賃の支払義務は、連帯責任と考えられています。

相続人はだれでも、賃貸マンションのお部屋全体を使う権利があるからです。

賃貸マンションのお部屋全体を使う権利は分割するができないから、家賃を全額請求することができます。

家賃全額を支払った相続人は、他の相続人に相続分の範囲で求償することができます。

②相続発生前の滞納家賃が相続される

被相続人が家賃を滞納したまま、死亡することがあります。

被相続人が滞納した家賃は、相続財産です。

プラスの財産だけでなくマイナスの財産も、相続人に相続されます。

相続発生前の滞納家賃は、各相続人に法定相続分で請求することができます。

家賃全額を請求されても相続分以上は、弁済を拒むことができます。

滞納した家賃は、分割できるからです。

法定相続分以上を弁済した相続人は、他の相続人に相続分の範囲で求償することができます。

③相続人は賃貸借契約を解約できる

賃貸マンションにだれも住まない場合、相続人は賃貸借契約を解除することができます。

賃貸借契約を解除しないと、家賃がかかり続けます。

多くの場合、〇か月前に申し入れをすることなどの条件が決められています。

解約手続は、賃貸借契約の内容に沿って進めます。

④敷金返還は遺産分割協議の対象にできる

賃貸借契約をする際に、敷金契約をすることが多いでしょう。

敷金契約とは、賃貸借契約に付随する契約です。

敷金とは、賃借人が賃貸人に預ける金銭です。

主に、未払賃料や原状回復費用の担保に充てられます。

賃貸借契約終了後にお部屋を明け渡したら、敷金が返還されます。

敷金返還請求権を遺産分割協議の対象にすることができます。

遺産分割協議で、敷金を受け取る相続人を合意します。

3賃貸マンションの賃借権の相続で起きやすいトラブルと解決策

トラブル①相続人間でだれが住むのか決まらない

相続財産の分け方は、遺産分割協議で決定します。

賃貸マンションの賃借権をだれが相続するのか、話し合いがつかないことがあります。

遺産分割協議中も、家賃は発生します。

解決策は、遺産分割協議で相続する人を決定することです。

一部の財産だけであっても、相続財産の分け方を決めることができます。

賃貸マンションの賃借権だけ、分け方を合意することができます。

賃貸マンションの賃借権だけ合意できたら、賃貸マンションの賃借権だけ遺産分割協議書に取りまとめることができます。

遺産分割協議がまとまったら、賃貸人に通知します。

トラブル②家賃の支払責任が不明確になる

遺産分割協議中に発生した家賃は、相続人全員の連帯責任です。

一部の相続人が家賃全額を払った場合、他の相続人とトラブルになりがちです。

トラブルになると思うと、家賃の支払を渋るでしょう。

家賃の滞納になると、さらにトラブルが大きくなります。

解決策は、家賃も遺産分割協議で合意することです。

遺産分割協議が成立して相続する人が決まった後は、以降はその相続人が家賃を負担します。

早期に遺産分割協議を成立させると、連帯責任になる家賃を少額にすることができます。

多くの場合、遺産分割協議中の家賃は、賃貸マンションの賃借権を相続する人が負担するでしょう。

トラブル③だれも住まないのに契約が続く

賃借人が死亡しても、賃貸借契約は自動で終了しません。

だれも住まないのに契約を放置すると、家賃がかかり続けます。

放置すると、滞納になるでしょう。

解決策は、速やかな契約解除です。

遺産分割協議が成立した後なら、賃借権を相続した人が賃貸借契約を解除することができます。

遺産分割協議が成立する前なら、相続人全員の合意で賃貸借契約を解除することができます。

遺産分割協議が成立する前は、賃借権は相続人全員の共有財産だからです。

賃貸人は、賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除することができます。

トラブル④敷金をだれが受け取るかでトラブルになる

賃貸マンションの賃借権と敷金返還請求権は、別の権利であると考えられます。

賃貸借契約終了後で建物を明け渡した後に、敷金返還請求権が発生します。

賃貸借契約継続中であっても、敷金の返還を受ける期待権があると言えます。

敷金返還請求権は金銭債権だから、分割することができます。

各相続人が相続分で受取れると期待すると、トラブルになるでしょう。

解決策は、遺産分割協議で敷金を受け取る相続人を合意することです。

一部の相続人が賃貸マンションの賃借権を相続しても、敷金は他の相続人と分割する可能性があります。

賃貸マンションの賃借権を相続した人が単独で敷金返還請求権を取得する合意をするのがおすすめです。

相続人全員による合意内容は、遺産分割協議書に明記することで混乱を防ぐことができます。

トラブル⑤事実婚・内縁の配偶者が住み続けられない

相続人になる人は、法律で決められています。

被相続人に配偶者がいる場合、必ず相続人になります。

相続人になる配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚・内縁の配偶者は、相続人になれません。

事実婚・内縁の配偶者は、賃貸マンションの賃借権を相続することはできません。

事実婚・内縁の配偶者が住む場所を失って、トラブルになります。

解決策は、遺言書で遺贈です。

遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

遺言書を作成して、賃貸マンションの賃借権を遺贈することができます。

賃貸マンションの賃借権の遺贈を受けて住み続けるには、賃貸人の承諾が必要です。

相続人が不存在である場合、借地借家法に基づいて事実婚・内縁の配偶者が賃借権を引き継ぐことができます。

4賃借マンションの相続を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

賃貸マンションを借りている場合、賃借権は相続財産になります。

相続人らはお部屋を借りているだけで相続財産とは考えていないことが多いです。

相続人間でトラブルが発生しなくても、家主や管理会社とトラブルになる可能性もあります。

司法書士は賃借権の相続についても適切にサポートします。

トラブルにならない相続手続を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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