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1相続放棄の管轄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
①相続放棄は相続が開始した地を管轄する家庭裁判所へ申立て
家庭裁判所に対して、必要な書類を添えて相続放棄を希望する申立てをします。
申立てをする先の家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所です。
相続が開始した地とは、被相続人の最後の住所地です。
相続放棄を希望する人の住所地の家庭裁判所ではありません。
例えば、被相続人の最後の住所地が名古屋市の場合、名古屋家庭裁判所に相続放棄の手続をします。
相続人の住所が東京であっても大阪であっても、名古屋家庭裁判所が管轄するからです。
被相続人の最後の住所地が分かれば、裁判所のホームページで管轄する家庭裁判所を調べることができます。
②相続放棄は家庭裁判所へ手続
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して手続する必要があります。
相続放棄をしたと言いながら、家庭裁判所に手続をしていないケースがあります。
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続財産の分け方を決める話し合いにおいて、相続財産を受け取らないと宣言することがあります。
相続人全員の話し合いで財産を受け取らないと合意しても、相続放棄ではありません。
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。
家庭裁判所に対して手続をしていない場合、相続放棄とは認められません。
2被相続人の住所本籍不明でも相続放棄
①家庭裁判所に除票を提出する
相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に提出する書類は次のとおりです。
(1)被相続人の戸籍謄本
(2)被相続人の除票
(3)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)
(4)収入印紙
(5)裁判所が手続で使う郵便切手
基本的には(1)~(5)の書類を添えて届出をすれば充分ですが、場合に応じてこの他のものが必要になることがあります。
被相続人の除票を確認すると、被相続人の最後の住所地が判明します。
相続放棄の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
被相続人の除票は、被相続人が住民票を置いていた市区町村役場で取得することができます。
被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合っていた場合、住民票を置く市区町村役場は知っているでしょう。
死亡した人について、広域交付住民票を取得することはできません。
広域交付住民票は、住民票を置いていた市区町村役場以外の市区町村役場で住民票を取得することができる制度です。
例えば、名古屋市に住民票を置いている人が名古屋市以外の市区町村役場で住民票を取得することができます。
名古屋市以外に住民票を置いている人が名古屋市の各区役所で住民票を取得することができます。
住民票の広域交付制度で、住民票の除票を発行してもらうことはできません。
相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して被相続人の除票を提出します。
②住所が分からなくても戸籍の附票を取得
被相続人の除票は、被相続人が住民票を置いていた市区町村役場に請求します。
被相続人や被相続人の家族と疎遠であった場合、住民票を置いていた市区町村が分からないことがあります。
住民票を置いていた市区町村が分からないと、除票は請求できません。
被相続人の除票の代わりに、被相続人の戸籍の附票を提出することができます。
戸籍の附票とは、その戸籍が作られてから住所の異動が記録された書類です。
戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場に請求します。
相続放棄を希望する人は、相続人です。
自分の戸籍からたどっていくと、被相続人の戸籍にたどり着くはずです。
被相続人の死亡時の戸籍にたどり着いたら、戸籍の附票を請求することができます。
被相続人の死亡時の戸籍の附票には、被相続人の死亡時の住所が記録されています。
住民票を置いていた市区町村が分からないと、除票は請求できません。
被相続人の戸籍の附票が取得できれば、被相続人の死亡時の住所が判明します。
③長期行方不明で住民票は職権消除
住民票や戸籍の附票に、最後の住所地が記載されていないことがあります。
住民票とは、市区町村が住民の居住関係を公証する目的で作成する帳簿です。
住民票の職権消除とは、市区町村役場が住民票の記載を消去することです。
例えば、住民票を置いているのに長期間更地である場合、居住していないことは明らかです。
市区町村役場から郵便が届かないまま長期間行方不明になっている場合、居住実態がない可能性があります。
居住実態の調査により、住んでいないことを確認したうえで住民票を職権消除します。
住民票が職権消除されている場合、被相続人の最後の住所地が判明しません。
被相続人が長期間行方不明であった場合、住民票が職権消除されていることがあります。
住民票が職権消除されると、最後の住所地が判明しません。
④住民票や戸籍の附票は保存期間経過で廃棄される
住民票や戸籍の附票は該当の市区町村役場に請求すれば、取得することができます。
住民票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。
今でこそ保存期間は150年ですが、令和元年までは5年でした。
市区町村役場は、保存期間を過ぎた書類を順に廃棄します。
相続が発生した後、長期間経過してから相続人であることを知ることがあります。
住民票や戸籍の附票は保存期間経過した場合、取得することができなくなります。
住民票や戸籍の附票が廃棄済になると、最後の住所地が判明しません。
3死亡届の記載事項証明書で住所を証明
①死亡届に死亡者の住所を記載する
相続放棄の手続をする場合、被相続人の除票や戸籍の附票を提出するのが原則です。
住民票が職権消除されると、最後の住所地が判明しません。
住民票や戸籍の附票が廃棄済になると、最後の住所地が判明しません。
被相続人の最後の住所地が判明しない場合、家庭裁判所の管轄が定まりません。
被相続人の最後の住所地が分かる公的書類を探す必要があります。
人が死亡した場合、市区町村役場に死亡届を提出します。
死亡届には、死亡者の氏名、本籍地の他に住所を記載します。
死亡届には、死亡者の住所が記載されています。
②特別な事情があれば死亡届の記載事項証明書を取得できる
死亡届の記載事項証明書とは、市区町村役場に提出した死亡届の写しです。
死亡届には秘密性が高い情報が記載されているから、原則として非公開です。
死亡届の記載事項証明書は、特別な事情がある場合に限り発行してもらうことができます。
③死亡届の記載事項証明書を請求できる人
死亡届には秘密性が高い情報が記載されているから、原則として非公開です。
死亡届の記載事項証明書を請求できる人は、限られた利害関係人のみです。
死亡届の記載事項証明書を請求することができる人は、次の人です。
(1)配偶者
(2)6親等内の血族
(3)3親等内の姻族
上記(1)~(3)の人であって、かつ、特別な事由がある人が死亡届記載事項証明書を請求することができます。
死亡届の記載事項証明書は、代理人に依頼して取得することができます。
代理人が取得する場合、請求人から委任状が必要です。
代理人が司法書士や弁護士などの専門家であっても、委任状を省略することはできません。
④令和6年2月までに受理された死亡届の記載事項証明書の請求先
市区町村役場で受理された死亡届は、一定期間経過後、法務局で保管されます。
死亡届を市区町村役場が保管している間の請求先は、次のとおりです。
・死亡届を提出した市区町村役場
・本籍地の市区町村役場
死亡届を法務局に送られた後は、管轄の法務局に請求します。
法務局は、市区町村役場から送付を受けた年度の翌年から27年間保管しています。
⑤令和6年3月以降受理された死亡届の記載事項証明書の請求先
令和6年3月以降に市区町村役場で受理された死亡届は、市区町村役場で保管されます。
市区町村役場で保管される期間と証明書の請求先は、保管方法によって異なります。
・電子化された届書の情報内容証明書
保管期間 10年
請求先 死亡届を提出した市区町村役場
本籍地の市区町村役場
・紙で保管されている届書の記載事項証明書
保管期間 5年
請求先 死亡届を提出した市区町村役場
⑥死亡届の記載事項証明書の発行手数料
死亡届の記載事項証明書の発行手数料は、請求先によって異なります。
法務局に対して発行請求をする場合、手数料は無料です。
市区町村役場に対して発行請求をする場合、手数料は市区町村役場が定めた金額です。
おおむね300円程度です。
4死亡者所有の不動産の登記簿謄本で証明
空き家等の登記名義人が死亡した場合、現在の管理者が適切に管理していないことがあります。
適切な管理を促すため、市区町村役場は相続人に通知を送ります。
市区町村役場から届いた通知を見て、相続の発生を知ることがあります。
ほとんど面識のない遠縁の親族の相続人である場合、被相続人に関する情報が全く分からないでしょう。
適切な管理を促すために市区町村役場が連絡する場合、長期間空き家等になっているケースでしょう。
多くの場合、住民票や戸籍の附票は保存期間経過で廃棄されています。
被相続人が不動産を所有していた場合、登記がされているのが一般的です。
所有権登記がされている場合、所有者の住所が登記されています。
不動産の登記簿謄本を取得すれば、最後の住所地は判明します。
5住所の手がかりが何もないときは東京家庭裁判所
被相続人が死亡してから長期間経過していた場合、被相続人に関する情報を全く取得することができないことがあります。
被相続人の住所に関する情報が全くない場合、家庭裁判所の管轄が定まらなくなります。
このような場合、法律の定めで事件にかかる財産の所在地の管轄の家庭裁判所が管轄します。
さらに、財産に関する手がかりもないことがあります。
最後の住所地について手がかりになる資料が全くない場合、東京都千代田区として扱われます。
東京都千代田区は、東京家庭裁判所が管轄します。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
通常の相続放棄と同様に、戸籍謄本や住民票が必要になります。
仕事や家事、通院などで忙しい人には、平日の昼間に市区町村役場に出向いて準備するのは負担が大きいものです。
戸籍謄本や住民票は、郵便による取り寄せができます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
事務負担は、軽いとは言えません。
戸籍謄本や住民票の取り寄せは、司法書士におまかせすることができます。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。